1から学ぶ登山の服装②/ベースレイヤーの選び方。素材やシルエットに注目

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ベースレイヤーは登山のレイヤリングで、肌の真上に着る服のこと。素材は3種類に分かれ、アンダーウェアと呼ばれるものもあります。今回は、素材と形状、シルエットの特徴を紹介。それぞれのメリット・デメリットを把握して、好みの一着を選びましょう。

 

Contents

 

ベースレイヤーの役割とは?

ベースレイヤーは登山のレイヤリングのなかで、肌に触れるウェアです。すばやく汗を吸収して不快感を軽減すると共に、吸い上げた汗を拡散蒸発させることで、濡れた服で体温が奪われる汗冷えや低体温症を防ぐ役割があります。

そのためベースレイヤーは主に、肌面に発生した汗をすばやく吸収する「吸水性」、吸い上げた汗を生地の表面で拡散する「拡散性」、そして、汗がすばやく蒸発して生地が乾く「速乾性」を備えています。

 

ベースレイヤーの選び方

ベースレイヤーの素材は、化学繊維、天然素材のウール、化学繊維とウールを混紡したハイブリッド素材の3つから選ぶことができ、首回りのデザインやシルエットでもタイプが分かれます。

今回は選び方のポイントを「①素材」「②首回りのデザイン」「③シルエット」の3つに分けて、詳しく解説してきます。

 

①素材|化学繊維かウールかハイブリッド

ベースレイヤーの素材は「化学繊維」「ウール」、化学繊維とウールを混紡した「ハイブリッド」の3種類。それぞれ特徴を見ていきましょう。

 

■化学繊維

メリット:吸水速乾性に優れる。擦れなどに強く破けにくい

デメリット:汗で濡れると乾くまで冷たさを感じる。何日も着続けると不快な臭いが発生しやすい

 

■ウール

メリット:汗で濡れても冷たさを感じにくい。保温性が高い。天然の消臭効果で不快な臭いが発生しずらい

デメリット:速乾性と耐摩耗性は化学繊維に劣る

 

■ハイブリッド

メリット:化学繊維とウールの長所を併せ持つ

デメリット:化学繊維100%、ウール100%の服と比べると、吸水速乾性、耐摩耗性、消臭効果が劣る場合も

体質的に汗を多くかくと分かっていれば、化学繊維のベースレイヤーがおすすめ。寒がりという方は最初からウールを選ぶといいでしょう。両方の性能をバランス良く手にれたい場合は、ハイブリッドが選択肢に挙がります。

 

②首回りのデザイン|ジップネックかラウンドネック

首回りのデザインは、立ち襟でファスナーが付いている「ジップネック」と、丸首と呼ばれる「ラウンドネック」の2タイプに分かれます。

 

■ジップネック

ザ・ノース・フェイス/エクスペディションドライドットジップハイ(化学繊維)

メリット:ファスナーを開閉して体温を調整できる。首回りの日焼け防止効果も

デメリット:テクニカルな見た目なのでタウンユースには不向き

 

■ラウンドネック

スマートウール/メンズ メリノスポーツ150ティー(ウール製)

メリット:カジュアルウェアに多いデザインなので、街中で着ても違和感がない

デメリット:体温を調整できない。首回りが露出するので紫外線を浴びる範囲が広い

日常でも登山用のベースレイヤーを着たい場合はラウンドネックがおすすめ。山でしか着ないと割り切れば、体温を調整でき、首回りも隠せるジップネックのほうが機能に優れるといえるでしょう。

 

③シルエット|一枚で行動するか考えよう

ベースレイヤーのシルエットは、タイトフィットかゆったりフィットの2種類に分かれます。タイトフィットの服は「アンダーウェア」、ゆったりフィットの服は「シャツ」と呼ばれることが多いです。シルエットは見た目だけでなく性能にも違いがあるので、それぞれの特徴を把握しましょう。

 

■アンダーウェア

メリット:肌に密着してすばやく汗を吸い上げる

デメリット:1枚での行動には適さない

 

■シャツ

メリット:ボディーラインが隠れるので、1枚で行動しやすい

デメリット:生地が肌から離れるので、アンダーウェアと比べると吸水性は劣る

1枚で行動したい場合は、もちろんシャツがおすすめ。寒い季節に常にミッドレイヤーを着て行動するようなら、アンダーウェアを選んでもいいでしょう。

ただ、シャツはシャツでもロンスリーブシャツになると、タイトフィットとゆったりフィットが混在しているの注意が必要。名称や写真だけでは判断しづらいので、実際に試着してシルエットを確かめることをおすすめします。

 

アンダーウェアは生地の厚さにも注目

肌着に近い意味合いをもつ「アンダーウェア」は、生地の厚さを選べるモデルが多いです。最後に、アンダーウェアの選び方についても紹介します。

 

春から秋は「ライトウェイト」か「ミッドウェイト」

アンダーウェアを選ぶとき、春から秋の無積雪期であれば、「ライトウェイト」(薄手)や「ミッドウェイト」(中厚手)がおすすめです。さらに、雪山用に保温性を高めた「サーマルウェイト」や「エクスディション」(いずれも厚手)と呼ばれるモデルもあります。

 

■ライトウェイト(薄手)

モンベル/ジオライン L.W. Tシャツ Men's

メリット:生地が薄いので汗で濡れても乾きやすく、行動中も暑くなりにくい

デメリット:速乾性に優れるが保温性は高くない

 

■ミッドウェイト(中厚手)

メリット:生地が厚くなり適度な保温性を備えている

デメリット:暑い時期に激しく動くと暑いと感じる場合もある

夏はライトウェイト、春や秋はミッドウェイトを選ぶといいでしょう。保温性に優れるミッドウェイトは、泊りがけの計画で防寒着として持ち歩く使い方もおすすめです。

 

コラム:半袖のウェアはここに注意

暑い時期は半袖のウェアが定番ですが、登山では少しだけ注意が必要。半袖は涼しくて快適ですが、腕が露出してしまうので、日焼けしやすい、虫に刺されやすい、植物に触れた箇所がかぶれやすいといった欠点があります。

そのため、半袖にアームカバーを組み合わせる方法があります。半袖の涼しさを感じながら腕もしっかり保護できるので、一度試してみるといいでしょう。

写真=福田 諭

プロフィール

吉澤 英晃

1986年生まれ。群馬県出身。大学の探検サークルで登山と出会い、卒業後、山道具を扱う企業の営業マンを約7年勤めた後、ライターとして独立。道具にまつわる記事を中心に登山系メディアで活動する。

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