雪解けが進んで岩と氷雪が混在したコンディションでは特に滑落に注意を! 島崎三歩の「山岳通信」 第295号

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長野県が県内で起きた山岳遭難事例について配信している「島崎三歩の山岳通信」。2023年3月15日に配信された第295号では、雪解けが進み、稜線付近は岩と氷雪が混在したコンディションとなり、滑落や転倒のリスクが非常に高くなっていることを説明。過信せずに安全第一の行動を心掛けることを推奨している。

 

3月15日に配信された『島崎三歩の「山岳通信」』第295号では、期間中に起きた7件の山岳遭難事例について説明。以下に抜粋・掲載する。

  • 2月28日、北アルプスの六百山で、単独で2月27日に入山した35歳の男性が、霞沢岳を経由して六百山山頂から下山中に日没などにより行動不能となり、一晩ビバークしたものの自力下山できなくなる山岳遭難が発生。富山県防災ヘリが出動して男性を救助した。

  • 3月3日、北アルプスの西穂高岳で、2人パーティで入山した43歳の女性が、新穂高ロープウェイから西穂高岳に向けて登山中にバランスを崩して雪庇を踏み抜き、約150メートル滑落して行動不能となる山岳遭難が発生。女性からの救助要請を受け、岐阜県警ヘリで救助した。

  • 3月4日、八ヶ岳連峰の赤岳で、単独で入山した70歳の男性が、地蔵尾根を下山中に滑落して行動不能となる山岳遭難が発生。山梨県消防防災ヘリで男性を救助したものの死亡が確認された。

  • 3月5日、斑尾山で、2人パーティでスキー場管理区域外の斑尾山山林内を滑走していた32歳の男性が、滑走中に立木に衝突・負傷し、行動不能となる山岳遭難が発生。民間山岳ガイド、飯山警察署員、県警山岳遭難救助隊員、岳北消防署員、岳南消防署員で男性を救助した。

  • 3月8日、八ヶ岳連峰の赤岳で、8人パーティで入山した46歳の女性が、中山乗越付近で雪上訓練中にスリップして滑落・負傷する山岳遭難が発生。茅野警察署山岳遭難救助隊員及び諏訪地区山岳遭難防止対策協会救助隊員が出動して、岐阜県警ヘリで女性を救助した。

  • 3月9日、北アルプスの八方尾根で、7人パーティで入山した55歳の男性が南側斜面をスキーで滑走中に転倒、負傷して行動不能となる山岳遭難が発生。新潟県警のヘリが出動して男性を救助した。

  • 3月9日、八ヶ岳連峰の赤岳で、単独で入山した38歳の男性が、赤岳主稜を登攀中に足下の岩が剥がれ、滑落・負傷する山岳遭難が発生。山梨県消防防災ヘリが出動して男性を救助した。

 

長野県警山岳安全対策課からのワンポイントアドバイス

3月1週県内では、1件の死亡遭難を含む4件の遭難が発生しました。登山中の滑落、バックカントリーエリアでの遭難等、県内各地で遭難が相次いでいます。

六百山での遭難は、当初の計画では霞沢岳を日帰りで往復する予定で入山したものの、予定よりも早く登頂したため、計画とは異なるルートで下山したところ、日没となり行動不能となったものです。日帰り登山で入山していたため、食料や防寒着等は最低限しか携行していませんでした。幸い天候も良く、位置が正確に判明していたため、翌日ヘリコプターで無事に救助することができました。しかし、万が一、悪天候や樹林帯であったり、電波が通じず救助を要請することができなければ、救助隊が到着するまでに数日間ビバークをせざるを得ないことも考えられます。

また、バックカントリー遭難は、本年に入り既に13件発生しています。遭難の態様としては、道迷い5件、転倒2件、技量不足1件、立木への衝突1件等、遭難者の技量不足や不注意によるものが散見されます。滑走中にスピードコントロールができずに、立木へ衝突、崖や沢へ転落のほか、ホワイトアウトによる道迷い等、バックカントリー滑走には、様々なリスクを伴います。バックカントリーエリアに出る際は、これらのリスクを確認するとともに、必ず雪崩対策装備を携行しましょう。

3月2週県内では、3件の遭難が発生し、いずれも滑落や転倒によるものでした。八ヶ岳連峰や北アルプスでの遭難が相次いでいます。

3月は春の陽気とともに、山中では寒暖差が大きくなるため、稜線付近は岩と氷雪が混在したコンディションとなり、滑落や転倒のリスクが非常に高くなっています。このような場所での滑落や転倒は、すぐに停止することができなければ、致命的な遭難となります。アイゼンやピッケルを駆使した確実な雪上技術が求められます。「少しくらい大丈夫。」という過信が遭難に繋がります。危険箇所の通過には積極的にロープを使用するなど、安全を第一に考えた行動をしましょう。

これから春に向けて標高の高い山域でも日中の気温がますます高くなります。それに伴い融雪が進むなど積雪が不安定になる傾向にあり、積雪量が多い場所では、雪崩や雪庇崩壊のリスクが高まります。登山やバックカントリースキー、スノーボードの入山の際には、雪崩対策装備の携行はもちろんのこと、入山前の天候状況や当日の積雪状態を確認し、無理のない安全な行動を心掛けてください。

プロフィール

島崎三歩の「山岳通信」

信州の山岳遭難現場と全国の登山者をつなぐために発行。「登山用品店舗スタッフ」「登山情報サイトを利用する登山者」「長野県内の各地区山岳遭難防止対策協会」などに対して、長野県の山岳地域で発生した遭難事例を原則・1週間ごとに、「安全登山」のための情報提供をしている。

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島崎三歩の「山岳通信」

長野県では、県内の山岳地域で発生した遭難事例をお伝えする「島崎三歩の山岳通信」を週刊で配信。その内容をダイジェストで紹介する。

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