気象変化や寒暖差が激しい時期、雪の状態が変化による転倒・滑落に注意を 島崎三歩の「山岳通信」 第296号

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長野県が県内で起きた山岳遭難事例について配信している「島崎三歩の山岳通信」。2023年3月29日に配信された第296号では、この時期の山は急激な気象変化や一日の寒暖差が激しいことを説明。残雪の山では雪の状態が変化しやすく、アイスバーン状の雪面で滑落や転倒に注意を促している。

 

3月29日に配信された『島崎三歩の「山岳通信」』第296号では、期間中に起きた3件の山岳遭難事例について説明。以下に抜粋・掲載する。

  • 3月17日、八ヶ岳連峰の赤岳で、単独で入山した61歳の男性が、美し森登山口に向けて県界尾根を下山中に道に迷い、行動不能となる山岳遭難が発生。19日に県警ヘリが出動して男性を発見・救助した。

八ヶ岳・県界尾根での遭難現場/長野県警察本部 ホームページ 山岳遭難発生状況(週報)3月20日付

  • 3月20日、八ヶ岳連峰の赤岳で、単独で入山した57歳の男性が、前日に宿泊していた山小屋付近の凍結した地面で足を滑らせて足を負傷する山岳遭難が発生。諏訪地区山岳遭難防止対策協会救助隊が出動して県警ヘリで男性を救助した。

  • 3月20日、北アルプスの八方尾根で、単独でバックカントリーに入山した47歳の男性が、八方尾根北側斜面をスキーで滑走中にルートを誤り、引き返すためスキーを外して稜線に向けて歩行中、スリップして滑落・負傷して行動不能となる山岳遭難が発生。県警ヘリが出動して男性を救助した。

 

長野県警山岳安全対策課からのワンポイントアドバイス

3月3週県内では、八ヶ岳連峰で1件の道迷い遭難が発生しました。県界尾根における道迷い遭難は、本年に入ってから2件目となり、2件ともほぼ同じ場所で発生しています。
尾根道は一見して歩きやすそうに見えますが、下りでは、尾根は谷に向かって小さく枝分かれしている箇所があるため、道に迷いやすいのが特徴です。また、尾根は常に真っ直ぐとは限らず、急角度で曲がったり、主稜線だと思っていた尾根が支尾根となっていることもあります。このようなところでは、登山者が迷い込んだ踏み跡に釣られて迷い込んでしまうこともあり、注意が必要です。

3月4週県内では、2件の遭難が発生し、うち1件はバックカントリーによる遭難でした。そのほか、遭難には至っていませんが、バックカントリーエリアを滑走中に道に迷い、一時的に行動不能となる事案も発生しています。
この時期のバックカントリーエリアは、融雪により軟らかい雪とアイスバーン状の硬い雪が混在しているほか、ルートが不明瞭となっている箇所があるため、滑走する技術だけではなく、リスクを回避しながら滑走する技術が求められます。
麓では徐々に気温が上昇し、高山でも積雪期から残雪期へと変わりますが、残雪期だからといって油断は禁物です。

残雪期は、周期的に天候が変わりやすいため、急激な気象変化に注意が必要です。また、一日の寒暖差が激しいため、雪の状態も変化しやすく、毎年アイスバーン状の雪面で滑落や転倒による遭難が発生しています。
登山を計画されている方は、様々なリスクを想定し、万全な準備と安全を優先した判断を心掛けましょう。入山前は、必ず天気予報を確認し、悪天候が予想される場合は中止する判断も必要です。

プロフィール

島崎三歩の「山岳通信」

信州の山岳遭難現場と全国の登山者をつなぐために発行。「登山用品店舗スタッフ」「登山情報サイトを利用する登山者」「長野県内の各地区山岳遭難防止対策協会」などに対して、長野県の山岳地域で発生した遭難事例を原則・1週間ごとに、「安全登山」のための情報提供をしている。

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島崎三歩の「山岳通信」

長野県では、県内の山岳地域で発生した遭難事例をお伝えする「島崎三歩の山岳通信」を週刊で配信。その内容をダイジェストで紹介する。

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