梅雨の時期、悪天候のリスクを理解して状況に応じた登山計画と判断を 島崎三歩の「山岳通信」 第301号

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長野県が県内で起きた山岳遭難事例について配信している「島崎三歩の山岳通信」。2023年6月8日に配信された第301号では、梅雨入りして悪天候のリスクが高まる可能性を理解して、状況に応じて登山計画の中止や延期などの判断を行えるようにしておくことを促している。

 

6月8日に配信された『島崎三歩の「山岳通信」』第301号では、期間中に起きた7件の山岳遭難事例について説明。以下に抜粋・掲載する。

  • 5月27日、八ヶ岳連峰の東天狗岳で、2人パーティで入山した22歳の女性が、東天狗岳に向けて登山中に、岩場において掴んだ岩が剥がれて滑落して負傷する山岳遭難が発生。県警ヘリが出動して女性を救助した。

八ヶ岳連峰・東天狗岳での遭難現場/長野県警察本部 ホームページ 山岳遭難発生状況(週報)5月30日付

  • 6月1日、北アルプスの爺ヶ岳で、単独で入山した36歳の男性が、爺ヶ岳に向けて柏原新道を登山中にスリップして滑落、負傷する山岳遭難が発生。県警ヘリが出動して男性を救助した。

北アルプス・爺ヶ岳での遭難現場/長野県警察本部 ホームページ 山岳遭難発生状況(週報)6月5日付

  • 6月1日、下高井郡山ノ内町大字平穏地籍の山林内で、山菜採りのために4人パーティで入山した94歳の男性が、山中で仲間とはぐれて行方不明のままとなっている。中野署、県警山岳救助隊及び志賀高原地区山岳遭難防止対策協会北志賀班が捜索を実施している。

  • 6月4日、八ヶ岳連峰の蓼科山で、単独で入山した54歳の女性が、山頂から下山中に岩場でバランスを崩して転倒し、足をひねって負傷する山岳遭難が発生。県消防防災ヘリで女性を救助した。

  • 6月4日、御嶽山で、2人パーティで入山した43歳と45歳の女性2人が、三ノ池方面に下山中にルートを誤って道に迷い、行動不能となる山岳遭難が発生。県警ヘリで2人を救助した。

御嶽山での遭難現場/長野県警察本部 ホームページ 山岳遭難発生状況(週報)6月5日付

  • 6月4日、北アルプスの奥穂高岳で、4人パーティで入山した42歳の女性が、ザイテングラートを下山中に滑落し負傷する山岳遭難が発生。北アルプス南部地区山岳遭難防止対策協会救助隊員が出動して、県警ヘリで女性を救助した。

  • 6月4日、北安曇郡松川村乳川の上流で、渓流釣りのために単独で入山した70歳の男性が、出掛けたまま帰宅しない山岳遭難が発生。大町警察署山岳遭難救助隊員が捜索を実施している。

 

長野県警山岳安全対策課からのワンポイントアドバイス

5月4週は、1件の山岳遭難が発生しました。岩場を通過中につかんだ岩が剥がれて滑落したものです。
登山では、登山道を歩くだけではなく、場所によっては岩場やはしご・鎖場を通過する場面もあります。このような場面では、つかんだ場所や足を置いた場所が必ずしも安全とは限りません。つかんだ岩が「動くかもしれない」、はしごや鎖が「緩んでいるかもしれない」と危険を予測した行動をとることによって、遭難のリスクを減らすことができます。

また、登山経験が浅い登山者による遭難が増えています。登山初心者でも年齢が若い方であれば、ある程度体力でカバーできてしまうことがあるかと思いますが、登山の知識や経験は、山を歩かなければ身につけることができません。

山域選びでは、体力だけを基準にすることなく、自身の登山経験や技術に見合った山域を選び、余裕を持った計画を立てましょう。

登山や山菜採りを計画されている方は、必ず事前に天気予報を確認しましょう。悪天候の中での行動は、様々なリスクをもたらし、悪天候が続くとその場で停滞せざるを得ない場合もありますので、事前の天気予報で悪天候が予想される場合は、計画を中止や延期することも必要な判断です。

6月1週は、6件の山岳遭難が発生しました。うち2件は、山菜採りや渓流釣りに出かけたまま行方不明となっています。その他、残雪が起因する山岳遭難も発生しています。

梅雨入りした地域があることや気温が高い日が続いているので、いまだ雪が残っているとは想像しにくいことかも知れませんが、信州の標高が高い山々には、夏になっても登山道上に雪が残る箇所があり、滑落や道迷いのリスクが伴います。今の時期は、アイゼンやピッケルの携行を迷うところですが、登山計画の際には、必ず最新の登山道情報を確認し、少しでも不安がある場合には装備品を見直しましょう。また、自身や仲間の技量に見合った山域を選び、決して無理をしない登山をお願いします。

残雪は、雪が締まり硬いためとても滑りやすいです。アイゼンやピッケルを装着するのが面倒で、持っているのにもかかわらず何も装着しないまま、残雪ルート上でスリップして滑落する遭難や、残雪によりルートが不明瞭で沢筋に迷い込むといった道迷い遭難が多く発生しています。残雪対策をしっかりしましょう。

プロフィール

島崎三歩の「山岳通信」

信州の山岳遭難現場と全国の登山者をつなぐために発行。「登山用品店舗スタッフ」「登山情報サイトを利用する登山者」「長野県内の各地区山岳遭難防止対策協会」などに対して、長野県の山岳地域で発生した遭難事例を原則・1週間ごとに、「安全登山」のための情報提供をしている。

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島崎三歩の「山岳通信」

長野県では、県内の山岳地域で発生した遭難事例をお伝えする「島崎三歩の山岳通信」を週刊で配信。その内容をダイジェストで紹介する。

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