新春のおみくじは、神仏との親密度を測るバロメーターになる? 〜初詣前に知っておきたい山の神仏の話②

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年始のお楽しみ、初詣。せっかくの機会におみくじをひいて今年の運勢を占う人も多いはずですが、わるい結果が出ても落ち込んではいけません。むしろ、神さまや仏さまと親密になるチャンスなのです。

文=太田昭彦、写真=PIXTA

神さまや仏さまとうまくコンタクトする方法とは?

神社やお寺に行くと、おみくじをひいてみたくなる人は多いのではないでしょうか。大吉が出れば「やった~!」という感じで天にも昇るようなうれしさ、それとは反対に凶が出たらがっかりして、なかにはもう一度ひき直す人もいるかもしれません。それで次に大吉が出ると安心する。でもそれって、実は神仏とうまくコンタクトできていないことを意味しています。

神仏とうまくコンタクトできている人は、大吉なら大吉が続けて出ます。そして小吉なら小吉が続けて出ます。

それはなぜかというと、おみくじは今の自分の状態を表わしているのです。大吉が出たから、これから運勢がよくなるということではなくて、今のあなたの運勢がすでに大吉なのです。だから大吉をひいたのですよ。

ですからコメントをよく見ると「気を引き締めて」とか「おごらずに」とか「酒や異性に溺れることなく」などというような、自分を戒めるようなアドバイスが並んでいたりします。今がいい状態なので、この状態をキープするために、マイナスになるような要因を排除しましょうという神仏からのメッセージなのです。

私もおみくじが大好きなのですが、私がひくのは神仏に聞くべき相談や迷い事があるとき、あるいは今のままでいいのかを確認したいときと決めています。

現代のおみくじの形は、比叡山の元三慈恵(がんざんじえ)大師良源が考え出したといわれており、横川(よかわ)の元三大師堂はおみくじ発祥の地として知られています。元三大師堂でおみくじをひく場合、まず相談事を紙に書き、その内容について僧侶がお伺いを立ててくじをひき、説明してくれるという手順になるので、普通のおみくじとは違います。

元三大師堂
横川にある元三大師堂。おみくじ発祥の地として親しまれている

元三大師と呼ばれる方は比叡山の第十八世座主(最高位)で、比叡山中興の祖。正月の三日に亡くなったのでそう呼ばれるようになりました。このお方、そのあらたかな霊験による「厄除(やくよけ)大師」として知られていて、鬼のような姿で我々の災厄を降伏(ごうぶく)して下さる角(つの)大師や、小さなお大師さまの並んだ豆(まめ)大師などに変化されたお大師さんの護符をいただくことができます。私の家の玄関にも元三大師のお札を貼ってあります。おかげさまで、かなり神仏との親密度が増してきたようで、いつもおみくじで的確なコメントをいただいています。

では、どうすれば神仏との親密度が増すのかといえば、それは彼氏や彼女をつくるときと似ているかな・・・。相手のことを知り、足繁く通い、会えないときは自宅や職場にいてもできることをする。たとえば座禅やお写経をする、お経や真言を唱える。お気に入りの神社に向かって二礼二拍手一礼する。鳥居や祠を見かけたら軽く会釈する、などなど。できることはたくさんあります。こちらがそれだけの熱意を持って接すると相手もそれに応えてくれるようになります。

もっとも、なかには初めから通じてしまう人もいます。それってやはり、生まれ持っての素質ということなのでしょうか? たしかに登山の場合も、初めてなのに岩場をスイスイと登っていく人っていますもんね。

ただし、ひとついえることは、この文章を読んでいるあなたは、すでにその時点で読んでいない人に比べて、神仏との親密度が増す確率がかなり高まったということです。ですから安心して、そして心を込めてお参りを続けましょう。

*本記事は著書『山の神さま・仏さま 面白くてためになる山の神仏の話』(山と溪谷社刊)から一部抜粋・再編集して掲載しています。

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山登りがもっと楽しくなる「山と神仏」の雑学集。人気登山ガイド、太田昭彦さんによる「山と神仏」にまつわる書き下ろしエッセイ。山に関連する神様の話や、登山道で見かける宗教遺跡の謎、山麓に伝わる伝説などについて、わかりやすい語り口で解説。

太田昭彦
発行 山と溪谷社(2016年刊)
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プロフィール

太田 昭彦

1961年、東京生まれ。高校ワンゲル部時代に登山の魅力にはまり、高校卒業後は社会人山岳会に入会。岩・沢・雪とオールラウンドに活躍。ヒマラヤやヨーロッパアルプスの山々にも足跡を記す。登山教室・歩きにすと倶楽部主宰。日本山岳ガイド協会認定・山岳ガイドステージⅠ、埼玉山岳ガイド協会会長。

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