読めば読むほど登りたくなる! 山岳書のベストセラー3冊

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名作が多い、山岳書の世界。「どれから読み始めれば良いかわからない・・・」なんて方もいるのではないでしょうか。そこで今回は、ICI石井スポーツで書籍部門を担当している、間瀬さんにおすすめの山岳書の名作を教えてもらいました!

 

今回の3冊は山岳書のベストセラー。先ず読むべし!

 

「単独行」

1936年1月吹雪の槍ヶ岳北鎌尾根に消えた加藤文太郎の遺稿集。彼は、新田次郎の『孤高の人』のモデルとしてよく知られている人物です。単独行で有名ですが、本を読むとなぜ単独行者にならざるをえなかったのかが理解できます。独りで登ることの不安や切なさをふっ切るが如く飛ばして歩くその姿に、単独でのカモシカ山行が多かった40年前の自分は密かに重ねあわせていたのだと思います。

本の中に「山に迷う」と題した一篇があります。病に倒れた父親にずいぶんと心配されていたようで、登山は危険だから止めて欲しい、と顔を合わせるたびに懇願された様子が書かれています。ぼくも親には心配をかけ続けていたので大いに共感するところ・・・。山に取りつかれた子どもへの親の困惑は永遠の命題なのかもしれません。

 

「風雪のビヴァーク」

1949年1月厳寒の北鎌尾根に若くして逝った松濤明の記録と紀行、随筆をまとめた本。この本に出会った頃、よく登っていた山が北岳でした。そのバットレス中央稜の初登者として認識していたことがこの作品を読むきっかけとなりました。

(全身硬ッテ力ナシ.死ヲ決ス オカアサン アナタノヤサシサニ タダカンシャ.)
(サイゴマデ タタカフモイノチ、友ノ辺ニスツルモイノチ、共ニユク.)

初めは登山の記録だったものが最後には遺書へと変わっていく・・・。友人の有元克己との死を選んだこの手記は衝撃でした。しばらくの間わが身に置き換え真剣に悩んだことを記憶しています。

 

「山靴の音」

 

はじめて冬の八ヶ岳に登ることを決めた日、たまたま「山靴の音」を買いました。ページをめくると詩が6篇書かれていて、次に著者自身の遭難が記されています。なかでも硫黄岳から赤岳のルートは、その当時の私の行動と重複する部分で、実にショックでした・・・。というのも、まだ見ぬ冬の八ヶ岳がとても恐ろしく感じられてならなかったのです。他にもいくつかの詩や登攀記、随筆などが収録されています。読み返してみると、あの当時の自分が懐かしく思い出される作品です。ちなみに、この本の著者・芳野満彦は、新田次郎の小説『栄光の岩壁』の主人公のモデルとなっています。

 

プロフィール

間瀬 孝之

1957年神奈川県生まれ。NPO法人山の自然学クラブ 山の自然学指導員。日本地図センター公認マップリーダー。ICI石井スポーツ登山本店勤務。

ICI石井スポーツ登山本店

登る前にも後にも読みたい「山の本」

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