低山ならまだ見られるかも・・・!? 初冬に咲く花の話。

落葉も終わり、そろそろ冬本番。ちょっと待った・・・! まだ見られる花があるんですって。植物写真家の高橋修さんがこの季節にも見ることができるお花を教えてくれましたよ。

晩秋~初冬、ちょっと紅葉している関東の低山を歩いていて、周りが白く中心部が黄色の清楚な雰囲気の野菊を見たら、それはたぶんリュウノウギクだ。

あまり知られていないが、キクの仲間(キク属)は種類がたくさんある。なぜ、キク属にたくさんの種類があることが知られていないかというと、それぞれのキク属は日本中に細かく分かれて分布しているからだ。白いキクだけでも、若狭湾を中心としたワカサハマギク、徳島県だけに分布するナカガワギク、西日本の瀬戸内海周辺、四国、九州にはノジギク、北海道から東北関東北部にはコハマギク。それぞれ行儀よく住み分けている。住み分けているため、それぞれの地域に同じ色の花のキク属は1種類だけのことが多く、キク属が違う種類がたくさんあると気がつくことができない。だから、関東近辺ならリュウノウギクなのだ。

キク属の中でもリュウノウギクは特に分布が広い種だ。本州四国、九州の山地の岩場に広く分布する。海岸に生えることが多いキク属の中では異色の存在である。

葉を触って見るとキク属の植物の多くは独特の香りがする。中でもリュウノウギクの揮発油成分の香りが、龍脳という香料に香りが似ているからリュウノウギクと呼ぶ。ちなみに竜脳香とはボルネオ島などに生える竜脳樹の木から撮れる香料のことで、非常に稀少な香料だ。

キク属の花は、たくさんの花が集まってできている。花をよく見てみると、ただの粒のように見える中央の黄色い部分はそれぞれ一個ずつ星形をした小さな花であることがわかる。リュウノウギクの白い花びら状のものもひとつの花である。キクの仲間は、一見シンプルなようで、非常に複雑な形をしている。植物の中でも、高度な進化をしたグループなのである。

教えてくれた山センパイ

高橋 修(たかはし・おさむ)

自然・植物写真家。子どものころに『アーサーランサム全集(ツバメ号とアマゾン号など)』(岩波書店)を読んで自然観察に興味を持つ。中学入学のお祝いにニコンの双眼鏡を買ってもらい、野鳥観察にのめりこむ。大学卒業後は山岳専門旅行会社、海専門旅行会社を経て、フリーカメラマンとして活動。山岳写真から、植物写真に目覚め、植物写真家の木原浩氏に師事。植物だけでなく、世界史・文化・お土産・おいしいものまで幅広い知識を持つ。