山小屋や登山道はこうしてできた! "黒部の山賊"のあの頃がわかる写真集

みなさん、山を歩くとき、どんなことを考えながら歩きますか?「あとどれくらいで着くかな?」とか、「遠くに見えるあの山の名前、なんだっけ?」とかでしょうか。今回は、みなさんが歩いている登山道や宿泊する山小屋が、どのようにして作られたのか、そんな山の開拓時代が見て取れる1冊を石井スポーツ登山本店の間瀬孝之さんが教えてくれました。

『伊藤正一写真集 源流の記憶 「黒部の山賊」と開拓時代』(山と溪谷社)

「ここに行きたい!」

この写真集を見て真っ先に感じたことは、この頃の雲の平に、高天原に、行ってみたいという実に切ない思いでした。昭和30年前後の北アルプス最奥の地。登山者を迎え入れるべく山小屋が建てられ、登山道が整備されようとしている時代です。今から見たら掘っ立て小屋のような山小屋で"黒部の山賊"達からクマやカモシカ、イワナ釣りや河童の話など、酒を酌み交わしながら聴けたら、どれほど面白いことでしょう。

山好きにもファンが多い『黒部の山賊 アルプスの怪』。この写真集は、その著者であり、北アルプス最奥部の山小屋の経営に携わってきた伊藤正一さんによるものです。

一枚一枚の写真にドラマが見えます。モノクロが多いのですが、それらを目にするや、ぼくの脳裏にはカラーで映し出されます。写真集というよりはこの時代のこの場所の空気を雄弁に物語ってくれる語り部のような本なのです。

『定本 黒部の山賊 アルプスの怪』を先に読んだほうがこの写真集を理解できると思います。筆者のあとがきと巻末の森村誠一の寄稿もより興を高めてくれます。

著・写真:伊藤正一、発行: 山と溪谷社
著・写真:伊藤正一、発行: 山と溪谷社
教えてくれた山センパイ

間瀬 孝之(ませ・たかゆき)

1957年神奈川県生まれ。NPO法人山の自然学クラブ 山の自然学指導員。日本地図センター公認マップリーダー。ICI石井スポーツ登山本店勤務。