行程・コース
この登山記録の行程
二荒山神社前(10:00)・・・三合目・・・四合目[休憩 5分]・・・八合目[休憩 5分]・・・男体山(13:00)[休憩 40分]・・・八合目[休憩 5分]・・・四合目[休憩 5分]・・・三合目・・・二荒山神社前(17:00)
高低図
標準タイム比較グラフ
登山記録
行動記録・感想・メモ
深田百名山の一つ、男体山へ。
東京から宇都宮に向かう途中は青空で「今日は絶好の登山日和だ!」とテンションが上がったが、トンネルを抜けて日光付近に入ると曇り空に。やはり山の天候は分からないものだ。
日光二荒山神社の駐車場に9時半ごろ到着。駐車場は満車だったので、端っこの隙間に駐車させてもらう。こういう時やはりバイクは便利である。
鳥居をくぐると、「登山受付」の看板がすぐ見つかる。ここで500円を支払い、お守りとペーパーをもらう。登山口にも鳥居があり、厳かな雰囲気で御霊体に登らせていただくという感覚に思わずさせられる。
今日は同じ職場の後輩と登頂で、4、5年ぶりぐらいのグループ登山である。普段周りはグループばかりとはいえ、単独行に慣れると、隣に知り合いがいるのは不思議な感じである。登ってみて思ったのは、退屈はしないが、行動に色々と制約が出るということである。ちょっと休憩したい、写真撮りたい、靴紐直したい、景色を眺めたい、といった細かな小休止が気軽にできないのは、普段当たり前のようにやっていると結構不便に感じる。特に自分は植生の変化とか、苔むす枯れ木とか、眺望以外の要素も楽しむタイプなので、樹林帯はただの通過点というペースで進まれると(そして、そういう人は結構多い。自分の周りだけかもしれないが。)、もったいないな~と思いながら、先を行く同行人を追う羽目になる。やはり自分は単独行に向いているのだろう(もっとも後ろに書くようにグループ行のメリットも実感する体験もしたが。)。
登山口の鳥居を過ぎると、ブナなどの樹林帯に入る。樹木がそれほど密集していないので、開放感のある林を通過していく。光が入ってくるので、木の間にびっしり生えたクマザサの葉が光を通して綺麗な黄緑になっていてまるで新緑のようである。逆に後ろを振り返ると、光を反射したクマザサの葉がまたいい色をしていてどちらも良い景色となっていた。
3合目ぐらいからは舗装された林道を通る。アスファルトの道は単調だが非常に歩きやすい。ところどころ黄色い小さな花が咲いていて、夏の樹林帯では珍しい。
しばらく進むと、また山道に入る。ここから傾斜が厳しくなり、樹木の密度も上がって鬱蒼としてくる。クマザサは見られなくなり、苔がいたるところに生えて原生林の雰囲気になってくる。
フィトンチッドを十分に堪能しているうちに、ガレ場のエリアに。景色や山道の状況がどんどん変わって飽きさせないのは、さすが百名山である。ガレ場は先日の蓼科山と同様、結構急な斜面が続き、汗を搾り取られる。後輩は僕より体力があるため、彼を一生懸命追うような流れに。これはこれでトレーニングになるが、いやはやそうとうキツイ。
息をあげながらガレ場を何とか乗り越えると、落葉樹から針葉樹に植生が移り変わり、山頂に近づいてきたのを実感する。
その針葉樹林も徐々に密度が薄くなってくると、道が赤くなり、砂利が敷き詰められた道になる。こういった道は初めてだったのでとにかく歩きにくい。しかし、時折雲が途切れてくるようになったことから山頂がすぐ近くにあることは感じられ、体も軽くなるのを感じる。
そうこうしているうちに山頂の鳥居に到着。道中はやはり体力のいる高低差であったが、景色の移り変わりを楽しんでいるうちに着いてしまった感じだ。山頂には銅像や、山に刺さった4,5mはありそうな剣の模型など霊山を感じさせるアイテムがたくさんあり、なかなか楽しい。人がほとんどいない山頂で自然を満喫するのが好きではあるが、たまには観光スポットのような場所に来るのもよいものである。
記念写真を済ませると、2人で昼食をとる。やはり、食事のときは話し相手がいると楽しい。今日は雲が多く、中禅寺湖側は完全に雲にふさがれていてみれなかったが、女峰山側はたまに雲の隙から山々が見え、雄大な景色が見られた。
昼食を済ませて、来た方向に下山。
あんなに急だった道も、下りは楽にすすめる。後輩も「もう8合目ですよ!楽勝ですね~」とイケイケだ。
そのように快調に進んでいると、前にいた後輩が足を踏み外し、あっという間に姿が消えてしまった。急いで彼が落ちた場所に行くと、彼が仰向けになったまま動かなくなっていた。声は出ていたので気は失っていないようだったが、うめき声をあげるだけで動ける様子にない。彼が踏み外したところから、2、3mぐらい背中から落ちた様子であった。とりあえず脇に避けないと他の登山客が通れないので、肩を貸してスペースのあるところまで移動して横になってもらう。苦しそうに声が漏れるだけでとても動ける様子でなかったので119番通報しようと思ったが、彼が「少し様子をみさせてください」と、声を絞り出すように言ったので、とりあえずそばで様子を見ることにした。
しばらくすると、呼吸も落ち着いてきて、虚ろだった意識も戻ってきたようだ。30分もするととりあえず会話はできるようになった。荷物を試しに持ってみると、やはり腰にくるようで、重いものをこちらで引き取り、とりあえずゆっくり進んでみることにした。本人の気合いでもちなおした面がかなり強いと思うが、歩けるようになったのは不幸中の幸いであった。
とはいえ、腰に負担をかける歩き方はできないらしく、足の力だけで下山する必要があったため、ゆっくりのペースでもかなり体力的にきつかったようだ。何度か休憩をいれようかと聞いたが、早く麓にたどり着きたいという気持ちもあったのか、「大丈夫です」と返答したので進み続けたが、時間がたつほど顔の表情が険しくなっていった。下山といえど、標高差が1200mもあるので、麓までなかなかたどり着かず、通常時の私でもなかなか負荷がかかる行程であったので、ケガ人の彼はもっと辛かっただろう。
登りと同じくらいの時間をかけて、5時半頃に麓に到着。日没前に到着できてとにかくよかった。神社で休憩しているうちに彼も元気を回復し、会話は普通にできる状態にまでなった。腰に違和感はあるので、翌日病院に行くということであったが、とりあえず救助隊騒動にならなかったのは、不幸中の幸いだったとしか言いようがない。
今回はペースを上げすぎた彼のミスという要素が強かったが、滑落はいつ何時するかわからないので、単独行の危険性を改めて認識することになった。一人で行って、彼のように滑落していたら大変だっただろう。今回、自分が無事故だったのは、単独行では滑落が一番重大な事故に繋がることを普段から意識していたため、グループ行でも自然にペースをセーブできたおかげだと思うが、今日の出来事を教訓により一層、安全性を重視した装備、行程ルート、予定時間などを心掛けようと思った。
(追記)
滑落した彼が翌日検査したところ、腰椎圧迫骨折、腰椎椎間板ヘルニアで1か月療養が必要だと診断された。寝ていないと腰が曲がってしまうということで、仕事も休職することになってしまった。一歩間違えば下半身不随になるレベルだったとのことで、最悪の事態は免れたが、登山にはそういったリスクが付き物だということを肝に銘じられた。早く彼が仕事に復帰できることを心よりお祈りします。







