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浅間山(黒斑山・Jバンド経由/車坂峠~峰ノ茶屋)~4度目の山頂火口&極寒のダイヤモンドダスト

黒斑山2404m・蛇骨岳2366m・浅間山2568m・小浅間山1655m( 上信越)

パーティ: 3人 (イガドン さん 、ほか2名)

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行程・コース

天候

1日目:曇のち雪一時晴、2日目:快晴

登山口へのアクセス

バス
その他: 【往路】田無駅(05:39)~高田馬場駅(06:05/06:09)~上野駅(06:29/07:00)~小諸駅(09:13/北口09:22)~車坂峠バス停(10:00)
【復路】峰ノ茶屋バス停(11:10)~軽井沢駅(11:39/12:07)~高崎駅~拝島駅~田無駅(16:09)

交通費 ※1992年11月現在
【往路】JR東日本 上野~小諸 4,360円(自由席特急券含) JRバス 小諸~車坂峠 960円
【復路】草軽交通バス 峰ノ茶屋~軽井沢 840円 JR東日本 軽井沢~拝島 2,440円

この登山記録の行程

【1日目】JRバス車坂峠バス停(10:20)・・・車坂山・・・赤ゾレの頭(11:25/11:40)・・・トーミの頭(11:50/11:55)・・・黒斑山(12:15)・・・蛇骨岳(13:15)・・・Jバンド(14:10)・・・賽ノ河原(15:05)[幕営]

【2日目】賽ノ河原(06:45)・・・浅間山(08:00/08:35)・・・草軽交通バス峰ノ茶屋バス停(10:35)

コース

総距離
約14.7km
累積標高差
上り約1,154m
下り約1,720m

高低図

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登山記録

行動記録・感想・メモ

【回想/1日目】大学の友人との初の山行が実現した。当初の目的地は八ヶ岳を有力候補地としていたが、今年・平成4年は、8月の初登頂以降すでに3度も登り続けている浅間山の年であることから、この際とことん浅間山に拘ってみよう!と4度目の浅間山行を決意した。とはいえ、オヤジも二平もほぼ初心者の部類なので、計画段階から普段より慎重な対応が求められた。
今回は早朝にJR上野駅集合と決めていたが、各自離れた自宅から別々の路線で上野へ集結するため「無事に合流できるのか?」と前夜は結構気になりなかなか寝つけず、結局1時間半しか眠れなかった。
JR上野駅には私が一番に到着した。16番線ホームの改札前で待っていたが2人とも現れない。10分ほど遅れてオヤジがやって来た。二平が来るまで私はこの場で待ち、オヤジには先にホームに入り座席の確保をお願いしたが、何故かきっぷの買い替えが必要になり余分に時間がかかってしまった。その間も二平は現れないため、乗車予定の特急の出発時刻5分前(6時55分)になったら待つのを断念するしかないと思い始めたころ、意外な方向から二平が現れた。なんとホームの方から手を振っているではないか。急いで駆け寄り電車に乗った。実は二平は反対側の改札で待っていたのだ。いずれにしても全員揃って安堵した。特急あさま1号は予定通り7時ちょうどに上野駅を出発した。指定席特急券を別々に購入したことから車内の座席はバラバラになってしまった。
車内では寝不足解消のためなるべく眠ることにしたが、フレームザックは座席側に入れることができず通路側に置いたが場所を取ってしまい、人が行き交うたびに気にしなければならず眠れるどころではなかった。上野を出た特急あさま1号は大宮、高崎、安中、磯部を経て横川駅に到着した。横川駅では碓氷峠を越えるため毎回機関車を接続する。その待ち時間を使ってホームでは、おぎのやの『峠の釜めし』を買う人々が列をなす。いつもながら何とも旅情をそそる光景である。
信越本線の横川~軽井沢間は標高差約550mの急勾配。機関車に牽引される特急電車もここだけは普通電車並みのノロノロ運転を強いられる。碓氷トンネルを抜け長野県に入ると、行く手の浅間山がわずかに雪をかぶりその姿を現わした。軽井沢、中軽井沢を経て御代田を通過する頃には浅間の雄姿はますます大きくなったが、小諸に着くと辺りはガスに包まれた。
小諸駅北口に出てすぐにJRバスに乗り込む。バスの運ちゃんが「上は晴れだよ。」というように高度を上げるにつれてガスが消え青空へと変わった。バスが進むチェリーパークラインの両側のカラマツは今まさに紅葉真っ盛りと言わんばかりの黄金色である。更に高度を上げると朝靄の佐久盆地のかなたに八ヶ岳連峰を望むことができる。
午前10時の車坂峠はひんやりとして肌寒い。身支度を終え記念撮影の後、歩きはじめる。オヤジにペースメーカーをお願いし二平、私と続く。オヤジは最初の登りで早くもバテ気味のようだ。歩を進めるにつれ空模様も怪しくなってきた。上空には厚い雲がたちこめ日射しは得られない。幸い風はないので歩いている分には寒さを感じなかった。左手に避雷針のある黒斑山が見えてくるといよいよ急登になり、避難壕の少し先に眺めの良い赤ゾレの頭がある。浅間山周辺には突然の噴火に備えるため所々に頑丈な避難壕が設置されている。
赤ゾレの頭に立ってはじめて大きな浅間山を眺めることができた。黒い山容が印象的だが上部に僅かながら白いすじがきれいに縦に伸びている。小浅間山方面から見る端正な山容とは異なり、どっしりとしている印象だ。年に4回も通っているのだから浅間山が女性なら完全な片想い状態である。ここからの眺めは浅間山だけではない。行く手のトーミの頭、黒斑山に加え、浅間山の右に牙(ぎっぱ)山や剣ヶ峰、佐久盆地も俯瞰できる好展望台である。
展望を楽しんでいると団体さんが登ってきた。浅間をバックに記念写真を撮りたそうだったのでザックを移動しようとしたところ「そのままで結構です。大きな荷物も一緒に撮ります。」と笑顔でおっしゃっていただいた。しばらくすると浅間山には嫌な雲がかかり始めた。
赤ゾレの頭からは一旦下った後、再び急登になるが一段落するとすぐにトーミの頭に着いたが休むことなく黒斑山へ向かった。ハイマツが少しうるさい尾根道を辿ると黒斑山山頂に出た。
黒斑山は湯ノ平高原側が絶壁になっており、その向こうに浅間山が控える絶好のビューポイントのはずだが、今日はあいにくの天候で、辺りも徐々に暗くなってきており、加えて狭いピークに人がごった返しているのであまり感動できずに山頂を後にした。下の方(湯ノ平)でカモシカを目撃したとの会話が聞こえてきた。
黒斑山から少し行ったところに良い場所があったので昼食にした。コッヘルの容量から3人分の湯を一度に沸かすことができず二度に分けて準備していると、空から白いものが落ちてきた。雪は見る見るうちに積もり始めた。雪が降るくらいなのでもちろん気温もグッと下がり一同震え出した。初心者2人にこの仕打ちはあまりにも出来過ぎ?で思わず笑うしかなかった。この先の行動を迷っていると蛇骨岳方面からパーティーがやってきたので「このまま進めますかね?」と様子を伺った。するとパーティーのお一人が「やめておいた方がいいかもね。」と返してきた。我々にとって悲観的な見解だったが、2人共まだ意欲があったのでJバンドまでの稜線を進むことにした。この先は私が先頭を行くことにした。
雪の勢いはすごいもので辺りが銀世界になるのはあっという間だった。進行を妨げるハイマツの枝に雪が積もり始めると通過するたびに背中に冷たいものが入ってくる。それでも歩いている間はまだましな方で、蛇骨岳に着き歩を止めるともう耐え難い寒さになってくる。記念撮影のみで早々に立ち去ったが、この頃になると想定外の降雪で一種のハイテンション状態になりつつあった。仙人岳のピークは気づかずに通過してしまった。その先で積雪に足を取られ転倒、その弾みでカメラのフィルターを割ってしまったが本体には影響はなかった。
ようやく稜線上の終点Jバンドに到着した。安堵したのも束の間、Jバンドからの下りが急な崖状でかなり激しそうに見えた。ここでオヤジが「俺たち初心者だぞ!これは遭難だ!」と声を上げ、その表情は険しくなっていた。二平は終始無言をとおしていたが、いよいよ緊張感高まる過酷な雪中ハイクに突入した。この状況で記念写真を撮ろうと言った私に2人は半ば呆れ顔だったが、こういう時こそ心のゆとりが必要なのは甲武信ヶ岳遭難の経験からくるものかもしれない。各自片足にアイゼンを装着し、引き続き先頭は私が務めることにした。
岩に張り付きながらの下りは過酷そのもので、岩をつかむ手はかじかんで痛い。それでも(剱岳ではないが)蟹の横這いを強いられる道だ。背中側は断崖絶壁のスリル満点の道だ。寒さと苦痛に耐え更に下るとはっきりと下の方が見えてきた。一同安堵感が漂う。崖もなくなり緩やかな斜面になったところで踏跡を外れ斜面を駆け下りた。下っている最中に辺りが明るくなってきた。ほどなく青空が、そして雪化粧をした浅間山が眼前に突如現われた。山肌に西日が射した瞬間、賽ノ河原は一面のダイヤモンドダストに包まれた。自然が織り成す最高の芸術、ここはまさに夢の空間。まるで苦難を乗り越えた我々を称えるかのようなご褒美の一瞬だった。
湯ノ平の一角にさしかかると付けていたアイゼンを外し、判然としない道なりではなく岩が疎らになっている平原を浅間山の取付点を目指し真っすぐ進んだ。振り返ると黒斑山からJバンドまでの岩壁も雪化粧をしたせいか先ほどまでとは趣を異にしていた。時折ガスがかかるもののすぐに青空が顔を覗かせ西日が浅間山を照らしてくれるだけで何となく少しあったかい気分になれた。
ようやく取付点(前掛山登山口)が見つかり、あとは幕営適地を探すだけになったが、一面岩塊重なる湯ノ平高原でそれを見つけるのは至難の業である。そこらじゅうを探し回ったが適地といえる場所は見当たらず結局浅間山側に少し登った道沿いに強引に張ることにした。日が落ちると急激に寒くなりテントを張るしかなかったが、いざ中に入ると床はゴツゴツしていて傾斜もあり明らかに幕営不適地である。暗くなると悪いことに風が出てきた。深夜にかけて次第に突風が吹き荒れた。四方八方から容赦なくテントを揺さぶり続ける強風に「まるでカモシカが乗っかっているかのよう」とはじめのうちは笑いになったが、一晩中となるとたまらない。夜空に星は瞬いていたが、足先は凍るように冷たく、味わう余裕などどこにもない。”カモシカの逆襲”は我々の想像を遥かに超えて厳しいものになった。ランタンの灯を消すとすぐにテント内の全てのものが凍りはじめた。
【回想/2日目】やはり殆ど眠れなかった。午前0時を過ぎた頃には、あまりの寒さにシュラフから這い出てランタンを点けて暖を取り徹夜態勢に入った。もはや靴下も軍手も帽子も全てが凍り付いている。水筒の水も凍りかけている。使い捨てカイロもここまで寒いと役目を果たすことができない。明るくなるまでの辛抱と覚悟を決めてテントを支え続けた。
長い夜が終わり周囲が明るくなってきた。朝になったのは有難いが依然として強い風はおさまらない。こうなると飲んだり食ったりするしか寒さをしのぐ方法はない。身体は中から温めるのがやはり正しい。テント内で昨晩と今朝の2回、飯盒で飯を炊いたがこの極寒でもまずまずの出来栄えだったのは不幸中の幸いといえる。そして最もイヤな時間を迎えた。テントを畳む時である。フライシートも本体も強風にあおられなかなか畳むことができない。しかも手がかじかんでいるため袋に収めるサイズにまで小さくならず結局無理やりザックに括り付け出発した。
前掛山の単調な登りは凍っている箇所が多く足元が不安定なのと、凍てつく山肌を吹き下ろす『浅間おろし』が身に染みるほど冷たい。まるで冷凍庫の中を彷徨い歩いているかのようである。やがて黒斑山の稜線に朝日が射してきた。高度を上げると四阿山方面の濃いガスがしだいにこちらへ流れてきているのがわかった。ふと振り返ると2人が遅れていた。特に二平の足取りが重く感じる。ほぼ一睡もせずに歩いているのだから無理もない。更に高度を上げると、黒斑山の向こうに新雪をいただいた北アルプスが朝日を浴びて白く輝いていた。
前掛山の鞍部まで登ってきた。ここはかつて火口だったところだが、目の前には浅間山本峰の山頂部があるのみ、ずいぶん高いところまでたどり着いた。積雪はわずかだが気温が低く全てが凍り付いているようだ。11月初旬でもここはもう冬山である。先ほどこちらへ流れてくると思われたガスもいつしか消えてなくなり一面の青空に変わった。あと一息で浅間山の火口を拝めるのだが、標高2500mで吹き付ける風は顔が痛い。瞼も重い。鼻の孔もすでに凍っていて指先の感覚もないに等しい。一同終始無言で道なき道をただ登りつめるだけ。はるか上に見えていたブルドーザーのところまで行くとそこは山頂の一角。視界に大きな火口が広がった。うっすらと雪を被った火口壁は、8月や10月中旬に眺めた光景とは一味違うものだった。何より火口から吹き上げる風がすさまじい。まるで地獄の様である。”地獄の淵”を最高点へ向けて歩き始めたが、遮るもののなくなった風は強烈そのもので普通に上体を維持するのが難しく這うように歩き続けた。
監視カメラ設置工事の途中と思われる山頂付近は部材などが散乱し荒れているが、アルプスと八ヶ岳を除けば、押しも押されぬここが上信越で最も高い場所なのである。火口の眺めもさることながら、奥秩父連山の上に富士山が頭を覗かせている。辛く長い行程の中で2人が唯一歓声を上げたのが富士山を見つけた時である。富士はどんな時でも日本人の心の山なのだと思った。
ここから先はひたすら下るのみ。だが2人にとってはこの単調な下りがまた一段と堪えたようである。見た目は小諸側よりも軽井沢側の方が積雪が多いように感じる。登山道にも降雪があり滑らないよう雪を避けて端の方を選んで歩くことになる。勾配も結構あるので緊張の連続である。先ほどから工事用と思われるヘリが行き交っていたが、監視カメラ設置工事の作業員の方々も続々と山頂目指して登ってきた。下るにつれ2人が遅れ始め、だんだん2人の姿が小さくなっていった。特に二平は相当遅れてしまい、優に500mは離れてしまったのではないだろうか。ここまで来たら自分のペースで一歩ずつ確実に下っていくしかない。下りの眺めも申し分ない。真下に小浅間山、その向こうに浅間隠山と鼻曲山が両側に控え、その間に榛名山、その奥に赤城山。右に目を転ずると軽井沢の街並みと離山、その奥に妙義山、西上州の山々が連なっているのがわかる。途中、自転車を担いで登る人に出会った。浅間山荘方面に下る予定とのこと。「すごい!」の一言に尽きる。
一足先に着いた鞍部にザックを置き、カメラのみ持って空身で小浅間山を往復した。小浅間山まではあっという間で、一度見えなくなった浅間山がまた一段と高くそびえるのがわかった。小浅間山山頂にも自転車持参のおじさんがおり雑談に花が咲いた。その方は浅間山を眺めながら「以前あの雪のあるところを(鬼押しハイウェイ/国道146号線の)駐車場の方へスキーで下ったことがある。」とおっしゃっていた。「新聞によると浅間は厳戒態勢にあるらしい」、「いまやっている工事もそれと関連しているのではないか」、「近々浅間は噴火するかもしれない」など非常に興味深い情報もいただいた。実はこの方、今年6月に発生した富士山頂のセスナ機墜落事故を間近に目撃したというのだ。機内を覗いたところ血だらけの惨状だったという。この方の友人が事故現場を撮影し新聞社に投稿したところ月間賞を受賞、賞金をもらったそうだ。「私も出せばよかった」と冗談交じりに苦笑いされていた。浅間山噴火は間近なのか?これからも目が離せない山であることは確かである。
鞍部まで下り2人と合流。峰ノ茶屋に無事下山した瞬間の二平の憔悴し切った表情が忘れられない。バスに乗り込むと疲れと緊張感からの解放、そして車内の暖かさも相まってすぐに睡魔に襲われた。


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装備・携行品

シャツ アンダーウェア ダウン・化繊綿ウェア ロングパンツ 靴下 レインウェア
登山靴 バックパック スタッフバック スパッツ・ゲイター 水筒・テルモス ヘッドランプ
タオル 帽子 グローブ 着替え 地図 コンパス
ノート・筆記用具 腕時計 カメラ 登山計画書(控え) ナイフ 医療品
ロールペーパー 非常食 行動食 テント シュラフ シュラフカバー
スリーピングマット 燃料 ライター カップ クッカー アイゼン
【その他】 防寒具(トレーナー等)、雨具、登山靴、ザック、水筒、カップ、ヘッドランプ(もしくは懐中電灯)、地図、方位磁針、筆記用具、ナイフ、ビニール袋、時計、食料、非常食、コッヘル(鍋)、食器、バーナー、ライター、ティッシュペーパー、タオル、ガイドブック、カメラ、三脚、割り箸、軍手、スパッツ、アイゼン、帽子、テント、マットレス、シュラフ、しゃもじ、缶切り、ポリタンク、飯盒、ランタン、生米(水で研いだもの、1食1合が目安)、酒類(ウイスキー等)、定期券、使い捨てカイロ(※登山計画表記載内容)

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登った山

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