行程・コース
天候
1日目;晴 二日目;晴れのちガス
利用した登山口
登山口へのアクセス
タクシー
その他:
新宿から23:15発扇沢行の中央高速バスで安曇野穂高まで。安曇野穂高に翌朝4:17着。
JR穂高駅に徒歩で移動後、乗合タクシーで中房温泉登山口へ。深夜割増料金だが、5人乗車、一人当たり1900円。
この登山記録の行程
【1日目】
中房・燕岳登山口(05:40)・・・第2ベンチ(06:30)[休憩 10分]・・・合戦小屋(07:55)[休憩 20分]・・・燕山荘(09:11)[休憩 14分]・・・大下りの頭(10:15)[休憩 5分]・・・切通岩(11:35)・・・大天荘(12:07)[休憩 58分]・・・大天井岳(13:14)[休憩 22分]・・・大天荘(13:43)
【2日目】
大天荘(06:20)・・・切通岩(06:39)・・・大下りの頭(07:44)[休憩 5分]・・・燕山荘(08:40)[休憩 6分]・・・合戦小屋(09:17)[休憩 8分]・・・第2ベンチ(10:17)[休憩 3分]・・・中房・燕岳登山口(10:57)
高低図
標準タイム比較グラフ
登山記録
行動記録・感想・メモ
表銀座縦走を計画しましたが、台風接近で大天井岳までの往復にとどめました。合戦尾根上部ではナナカマドが、稜線ではウラシマツツジが紅葉し始めていました。
誰憚ることなく登山とは、なかなかいかない今シーズン。仕事もひと段落し、ようやく取れた夏休みに、自問自答しつつも北アルプスに出かけてきた。北アルプスにはもう2年も通っていないし、自宅の改装やら転居、さらにはコロナ禍で昨年来思うように登山もできておらず、体力や感覚も衰えているに違いない。万が一にも他人に迷惑をかけないよう、余裕のある計画を意識した。一方、山小屋の完全予約による制限など今シーズンの特殊さを考えれば、例年なら大勢が詰めかける人気コースもゆとりがあるかもしれない。そこで考えたのが、定番とされる表銀座縦走コースである。
とはいえ、計画を立て始めれば欲が出てくるもので、槍ヶ岳からさらに南岳まで足を伸ばし、大キレットの絶景を眺めて天狗池に降り、逆さ槍まで眺めようと希望は膨らんだ。9月の4連休はさすがに混雑するだろうから、日程もずらした。秋雨や台風12号発生で計画は順延と度重なる縮小を余儀なくされ、結局は中房温泉と大天井岳を往復するだけとなってしまったが、振り返ってみれば秋が深まりゆく北アルプスの展望や、楽しい出会いなどもあり、しばらくぶりの本格的登山の醍醐味を味わうことができた。
新宿発扇沢行きの夜行高速バスは、定員の半分程度隣の席も空いていた。早朝に安曇野穂高に降り立ち、徒歩3分程度で穂高駅に移動、6:40発の中房温泉行きのバスを2時間ほど待つ予定だった。幸い後続のバスから合流してきた登山者が5人揃い、乗合タクシーで中房温泉に移動(深夜割増料金でも一人当たり1900円ですんだ)、予定よりも2時間早く登り始めることができた。初日は、燕山荘をこえて大天井岳まで進む予定だったので、これは大変ありがたかった。
順調に合戦小屋を超え、燕山荘脇の稜線に飛び出す。合戦尾根は積雪期に二度ほど登ったことがあるが、無雪期は初めて。よく整備され歩きやすい。合戦尾根上部はナナカマドの紅葉が始まっており、槍ヶ岳も現すなど気分も上々。2時間も早く出発できたし、コースタイム比0.8と例年のペースを保って歩けたので、燕岳往復もちらと頭をよぎった。しかし、すでに何度か登っているし、天候は全般的には下り坂なので、ガスが上がる前に大天井岳からの大展望を楽しむ方が良いと判断。燕岳を横目にそのまま進む。彼方に本日の目的地、大天井岳と大天荘と、そこに連なる稜線が見える。
ここからは初めて歩く区間だ。森林限界を超えたひらけた稜線を、風化した花崗岩の造形やウラシマツツジの紅葉、槍ヶ岳を常に眺めながらの縦走は気分が良い。大下りの頭を越えるとしばらく灌木帯となり展望が無くなるが、それを抜けると大きくなった大天井岳や槍ヶ岳が迫ってくる。切通岩の露岩帯を超えて登り返すと、大天井ヒュッテとの分岐から大天井岳への急登が待っている。斜度はそれほどでもないはずなのだが、6時間以上歩いてきた後だからか、今シーズンの体力劣化のためなのか、本日最後の登りは殊更キツく感じられた。登山者を励ます「あと500m」などの標識も「まだ」と読めてしまう。喘ぎつつそれでも少しづつ足を前に出し続ければ、大天荘。さらに大きくなった槍ヶ岳などの展望を楽しむ。
戸外で風に吹かれながら昼食をとり、割り当てられた寝床に案内してもらうと、屋根裏部分に真新しく仕切られた一畳半ほどの区画になっていた。ハイシーズンともなれば布団を分け合ってぎゅうぎゅうづめの雑魚寝が当たり前だろうが、これなら感染症拡大の気兼ねもせず、それどころか隣を気にすることもなく、ゆったり休める。通常の定員を絞り込んだ上での完全予約制は、今シーズン限りの特殊な事情かもしれないが、これは新たな山登りのあり方になるかもしれないと感じた。
燕山荘グループの山小屋は、山仕事の飯場などに起源がある雨露が凌げれば御の字だろといった小屋とは異なり、初めから観光サービスとして運営をしていると理解している。それでも夕食は肉にしますか、魚にしますかと問われた時には驚いた。夕食を美味しくいただいた後は、昔ながらの灯油ランプに照明を換えてワインやコーヒー、手作りのケーキまで楽しめる。欧州の山小屋を思い出させた。
一休みした後、小屋から10分ほどの大天井岳に登頂。すでにガスが渦巻き、時折槍ヶ岳の姿が見えるだけ。小屋到着時に展望を楽しんでおいてよかった。
さて、夕食後に支配人から伝えられた天気予報では、翌日は台風12号の接近に伴い午後から天候が崩れ、翌々日は風雨とのこと。計画通りヒュッテ大槍まで進むことは問題なさそうだが、その日のうちに槍ヶ岳まで往復しなければ展望は楽しめそうもない。風雨が予想される翌々日も槍沢に30分ほどで逃げ込めそうだが、7時間も雨に打たれそうな上に、今シーズンの上高地では外来入浴を中止している施設がほとんどだとの話も聞いた。
進むか引き返すか判断に迷うときは、目的に立ち返るのが重要だと思う。私は冒険に来たわけではなく、自分が風雨を突いてピークを踏めることを証明に来たわけでもない。安全に、人に迷惑をかけず、爽やかな山歩きと、素晴らしい展望などを楽しみに来たのだ。となれば、微妙ではあるが予定を変更して、下山した方が良さそうだ。常念岳を経て一ノ沢に下るか、燕岳を経て中房温泉に引き返すかが、次の問題となったが、一ノ沢は公共交通機関がタクシーしかない上に温泉もない。ここまで苦労して登ってきたのだし、元来た道を引き返すのは芸がないようにも思われたが、結局中房温泉に戻るのが一番良さそうだ。小屋で知り合った方々と、楽しい山談義を挟みながら、お互いを慰め合い、納得させあいながらこう結論した。
翌朝は、晴れ。下り坂と知りつつもこのまま進んだ方が良いとの考えがちらりと過ぎる。再び大天井岳頂上に登り、雲海に浮かぶ常念山脈、後立山連峰、立山と劔、裏銀座の山々、槍穂高連峰の360度の大展望を満喫する。踏ん切りをつけて燕岳方向に引き返せば、7時前にはガスが湧き上がってきて山々の姿を隠して行ってしまう。やはり判断は正しかったのだと言い聞かせながら引き返す。快晴の山もいいが、ガスに書かれた山というのもそれはそれで変化に富んでいる。大天井岳で出会った登山者らと、抜きつ抜かれつしながら中房温泉に無事下山。
親切な登山者のマイカーに有明荘まで、大天荘で語り合った他の登山者共々乗せていただき、久しぶりの露天風呂と昼食を楽しみ、さらに穂高駅まで同乗させていただいた。感謝に堪えない。
帰りの中央高速バスは、途中から雨に変わり、やはり計画を早めに切り上げたのは正しい判断だったのだと言い聞かせた。
コース定数51。信州山のグレーディングはC。定番コースで登山道はよく整備されているが、蛙岩付近などでは廃道扱いの踏み跡があり、誤って進まないようにしたい。なお、大天荘宿泊にあたっては、連絡先と健康状態についての記入(事前にHPからダウンロードして記入しておくのが良い)のほか、マスク着用、消毒用アルコールジェル、シーツの役目を果たすインナーシュラフ、ジップロックなど封ができるゴミ袋などの持参を求められる。大天荘には各所にアルコール消毒噴霧器備えられ、定期的な換気を実施。また、使い捨ての枕カバーが提供された。ご飯などのおかわりも、その都度新しい食器を使うという気の使いよう。
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