【唐沢山・三倉山~小白森山縦走】雲の晴れ間から見る雄大な那須連山の稜線美
唐沢山、三倉山、大倉山、流石山、三本槍岳、須立山、甲子山、大白森山、二杯山、一杯山、小白森山( 関東)
パーティ: 2人 (Yamakaeru さん 、ほか1名)
唐沢山、三倉山、大倉山、流石山、三本槍岳、須立山、甲子山、大白森山、二杯山、一杯山、小白森山( 関東)
パーティ: 2人 (Yamakaeru さん 、ほか1名)
曇り、時々、晴れと雪(強風)
マイカー
その他:
スタートポイントの三倉山登山口は、音金の村落にある。3台程度(無料)。駐車場と言うより路肩脇に停める感じ。トイレ無し。
ゴールポイントの二岐温泉小白森山登山口は、二岐温泉から橋を渡ってほどくなくしてある。登山口の真ん前にあり5台程度(無料)。トイレはなし。緯度経度(37.24022 139.988356)。
三倉山登山口(04:15)・・・唐沢山中間点(05:43)・・・唐沢山(06:18)・・・三倉山(07:15)・・・大倉山(07:47)・・・流石山(08:28)・・・大峠(09:07)・・・須立山分岐・・・三本槍岳(10:17)・・・須立山分岐(10:28)(昼食~10:39)・・・鏡ヶ沼分岐(11:02)・・・須立山(11:14)・・・笠ヶ松(11:29)・・・坊主沼避難小屋(12:53)・・・甲子山(13:43)・・・大白森山(15:19)・・・二杯山・・・一杯山(16:06)・・・小白森山(16:50)・・・二岐温泉小白森山登山口(18:07)
雲の間に延びるたおやかな稜線。。。
そんな一枚の写真に魅了され、裏那須の流石山から三倉山までを縦走したことがあった。あいにく、雨ふりの日で景色は何一つ見えない苦行でしかなかったが、歩いただけでも十分に素晴らしい稜線であるとその実力を実感した。
今年の3月。冬にしか登れないという300名山の男鹿岳に登った際に、山頂から一望した表から裏へとつながる那須連山の壮大な景色を見て、もう一度歩きたいと思った。
満を持して、山仙人からの裏那須縦走計画書が届く。今度の日曜日に車1台をゴールにデポして、唐沢山からスタートして三倉山から三本槍を目指し、その後、大白森山から小白森山までを1日で縦走するというロングな計画。距離もさることながら、あなどれない高低差がある。気合が必要だ。
長い行程の割にはスタート時間が遅かったので、「1時間計画を早めましょう」と答えて、直接、二岐温泉小白森登山口で待ち合わせをすることにする。土曜日が出勤だったので、終わってから車を走らせて夜のうちから現地入りした。
山仙人も気合が入って予定よりも早めの到着。少しでも前倒しの行動がいいと、山仙人の車で三倉山登山口へと向かう。車で飛ばして約40分。それだけでも今日歩く距離が伺える。
できる限り明るくなってから歩き出したいという山仙人の意見から、少しだけ時間を調整をして出発する。それでもまだ薄暗い中、林道を登っていく。横にはお墓があり、ヘッドライトを向けると、あちこちの墓石に反射して、火の玉が飛んでいるように見えた。お墓の手入れが行き届いていると、妙なところに関心した。
林道から登山道に入り斜面を直登していく。登山道と言ってもほぼ涸れ沢を登る。
大分、高度を上げたようで、振り返ると遠くにスタートした村落が見えた。日の出が近く、もうヘッドライト無しでも十分に歩ける。
涸れ沢を離れ斜面から尾根沿いに登っていく。以前、三倉山から唐沢山を眼下に見ながら、ちょっと足を延ばしてみようかと軽く考えていたが、いや、下から登るとこんなに急登で大きい山だとは思ってもみなかった。実にタフな山で面白い。
高度を上げていくと心配していた通り、残雪がかなり残っている。
危険なので、唐沢山の山頂で軽アイゼンを装着する。
今日こそは晴れて欲しいと願っていたが、どうも裏那須とは相性が悪いらしい。行く手には分厚い雲が湧き上がっていて、次の目的地「三倉山」も完全に雲の中だった。
唐沢山まで登ってしまえば、あとは緩やかな稜線を登るだけ。片側の斜面に残る雪渓を上手く使いながら、夏道と雪渓を交互に歩きながら先を進む。
1時間ほどで見慣れた場所に到着。三倉山の山頂。願い空しく、あの時と同じ真っ白な世界。雨が降っていないだけましか。
軽く水分を補給して、いよいよ裏那須の縦走モードに入る。
先が長いのでゆっくり歩くが、この縦走路はアップダウンも少なくとても歩きやすい。晴れていれば、アルプス並みの絶景が楽しめるはず。表那須のようにメジャーになりすぎて、人が増えるもの困りものだが、山を愛する人であればぜひ裏那須にも足を運びこの素晴らしさを共感して欲しい。
ほどなくして大倉山に到着。そのままの勢いで流石山へと向かう。
その途中、霧がスーッと大きく動く。真っ白な世界に、突如、緑の稜線が浮かび上がった。まだらに残った残雪が、初夏の飯豊連峰を思い起こす。
そう、これが見たかった。
たおやかな稜線。山が雲を分け、片側の斜面にだけ雲が滞留している。大好きな石徹白から別山の白山へと続く稜線に似ている。
更に雲が動き、表那須の主役達が姿を現してきた。裏那須のたおやかさとは、正反対の荒々しい姿。ごつごつした無骨さで最も存在感があるのが茶臼岳。左へ視線を移していくと、鋭く尖った朝日岳。高く成端な山容をした三本槍岳も見える。一般的にはこの三山を総称して那須岳と呼ぶ。
このまま晴れてくれるとよいのだが。。。
流石山に到着。もう少し季節が進むと綺麗な花畑になるが、現時点では雪の下で準備中といったところか。
流石山からは急斜面を一気に降って大峠へ。石がゴロゴロしていて歩きにくいため、軽アイゼンを外そうかとも思ったが、惰性でそのまま降りていく。いつの間にか、また雲がせり出してきた。今日は残念ながら晴れは期待できないようだ。
大峠に到着。懐かしのお地蔵さんが出迎えてくれる。以前にも紹介したが、大峠は戊辰戦争の戦場となった場所でもあり、その縁があるお地蔵さんと聞いている。濃霧の中、佇むお地蔵さんを見ていると、確かに歴史を感じる。
さて、次は一番のボス山「三本槍岳」。雲の切れ間から中腹までは見えているが山頂は見えていない。同じルートを真夏に登ったことがあるが、あまりの暑さにヘロヘロになったのを覚えている。
急登ハンターとしては、武者震いがするスケールの大きい山だ。気合を入れて、一歩目を送り出す。
登れど登れど、どこまでも果てしなく続く斜面。偽ピークが幾つもあって、記憶が残っているにも関わらずつい騙されてしまう。
山頂に近づくにつれて風が強まってきた。体感で6mくらいかと思っていたいが、あっという間に倍ほどに強まる。飛ばされないよう帽子を片手でおさえながら山頂へ。
誰もいないと思っていた山頂には、先客が一人休憩していた。しかも女性。挨拶を交わして、標識を写真に収め早々に折り返す。山頂で昼食を食べようと思っていたが、風が強くてとてもじゃないが、それどころではない。
須立山への分岐点まで戻り、草木に身を隠して昼食をとる。風が体温を奪い、寒さで身が震える。残雪の冷気が山全体を覆いこんでいるようだった。
昼食後は縦走後半戦へと入る。
ここから先は自分も初めてのコース。仕事に追われて事前調査が出来ていなかったが、地図を確認した限りでは、前半戦よりも後半戦の方がアップダウンがありそうだった。三本槍岳にはほとんど雪が無かったので、もう軽アイゼンを外しても大丈夫かと思ったが、ぬかるんでいる場所も多かったため、念のため装着したまま歩くことにする。
分岐点から最初の目的地「須立山」を目指す。
途中、左下に鏡ヶ沼が見えた。湖畔でのんびりしたことがあるが、透き通るような湖面が広がった素敵な場所だった。濃霧で見えないかと心配していたが、見れてよかった。
喜んでいるのもつかの間。須立山を過ぎて、バリエーションルートか?と思うような急斜面が待っていた。雪が再び現れて、夏道を覆い隠しているので、注意深く進まないと方向を簡単に見失ってしまう。
そのうち完全な雪山モードに突入。この時期、こんなにも豊富な雪が残っているのかと驚きだった。これなら12本アイゼンを持ってくるべきだったか。
目の前に巨大な質量を持つ山が現れた。圧倒的なスケールに「うひゃーでかい」と思わず声が出る。「あさひだけ」。三本槍岳の隣にある朝日岳と読みが同じでややこしいが、こちらは旭岳という。
尾根の雪庇に沿いながら登っていく。中腹手前だろうか。まだ山頂は遥か上にある。登山道が切れていたので、地図を確認すると山頂へは破線ルートに切り替わっていた。代わりに斜面をトラバースするように登山道が延びている。山頂へは登らず迂回するように進むようだ。しかし、斜面は完全に雪に覆われている。しかも、かなりの斜度。目を凝らしてみると遠くの雪の切れ目に道のような跡が見える。問題は距離と急斜面の雪面。斜面の下方は末広がりになっているので、例え滑落しても命に支障はないが、無事、渡り切るにはそれなりの経験が必要。
一度、先行しようと試みるが、山仙人が「ここは安全をとって一旦降って別な角度から攻めてみよう」と一言。確かに、山仙人の軽アイゼンでは、この雪渓は辛い。その言葉に従って、来たルートを少し戻りながら降りるポイントを探す。勾配の緩やかなポイントはそう簡単にはなかったので、最終的には藪に突っ込みもみくちゃになりながら、なんとか下に降りることができた。まさか、こんなところで藪漕ぎをするとは。。。
予想はしていたが、降ってはみたもののどこもかしこも藪と雪に阻まれて進むことが出来ない。進んでは戻っての繰り返し。こんなところで時間と体力を消耗している訳にはいかないと、当初のトラバースを試みた斜面の真下へ移動し、できる限り藪に沿いながら登っていく提案をした。仮に滑落しても藪が受け止めてくれる。しかも、トラバースより、登る方がバランスもとりやすく断然安全だ。自分が先行して足がかりを作るように、出来る限りステップを強めに入れながら、一歩一歩登っていく。
結果的にそれほど距離はなかったが、登山道に無事たどり着いた時にはホッとした。斜面一つを抜けるのに、相当な時間を浪費してしまった。
旭岳の山頂を左に見上げながら水平移動で進むと赤い小屋が見えてきた。坊主沼避難小屋。最近建てられたのか、真新しくて中も綺麗だった。
旭岳を完全に迂回して甲子山へ。真正面から山頂に挑んでいく感じの気持ちの良い登りだった。
山頂で振り返ると、正面に旭岳。左側に三本槍や朝日岳がよく見えた。
滑るような急な斜面を降り、甲子峠へ。これが異常に長く感じた。
甲子峠で小休止を入れる。正午を過ぎて気温が下がっている。風が一層寒く感じた。
見上げると大白森山が見えた。ゴールまでの距離はまだ遥か彼方にあるが、ようやくゴールが実感できる場所までやってきた気がした。
息を整えて、大白森山を目指す。看板に「登り40分」とあったので、「簡単な山なのか?」と思ったが大間違い。登っていくと、直ぐに沢道にたどり着く。しかも、涸れ沢ではなく、雪解けの水が岩の間を流れ落ちている。滑りやすくて、まさに沢登り状態。激しい急登で岩がせり出しているので木の枝を掴まないと身体が持ち上げられない。加えて雪が残っていて、乗る度に踏み抜いてバランスを崩し落ちそうになる。1m進むのに倍以上の時間が必要だった。
超人の山仙人も文句を言いながら登っている。これほどの悪路はなかなかない。「白い森の山」と可愛らしいネーミングにすっかり騙された気分だった。
登り切ると嘘のように穏やかな道になった。登山道はそのまま山頂を経由せずに次の頂へと延びているが、当然のように「よし、山頂に寄ろう!」と山仙人。よく分かってらっしゃる。ここでショートカットしたら頑張った意味がない。
大白森山の山頂からは、最後のパートとなる小白森山までの稜線がよく見えた。気がかりは、雪がかなり深そうだということ。遠目から見ても雪の深さが伺える。ひょっとしたらこの雪深さから大白森山と小白森山の名前がついたのか。
大白森山から小白森山の間には、一杯山と二杯山というこれもユニークな名前の付いたピークがある。残雪が登山道を覆い隠し、その都度、ルートを探し確認しながらでないと進むことができなかったため、時間がいくらあっても足りなかった。
小白森山に到着。風のギアがまた一段上がったようで、尋常じゃない風きり音が空に響いていた。樹林帯の中を進んでいるので、直接、影響はないが、怖いくらいの音だ。
小白森山まで来ればあとは降るだけ。日の入りが近づいてきたが、なんとかなるか。。。
しかし、ここのパートが今回最大の難関だった。困ったのが、ぶ厚く残る雪渓。壁のような急登一面に雪が残っていて下が見えない。登りはまだしも、「この斜面を降るのか」というようなポイントが幾つもあった。不謹慎な表現ではあるが、個人的には危険な個所は大好物で自信はある。ただし、今日は二人組。滑落したらリカバリーはできないため、できる限り、樹木のある近くを沿うように降りるしかない。しかし、夕暮れが刻一刻と近づいている。ただでさえ、ルートファインディングが難しい悪条件なので、暗くなると雪渓の急斜面を降りるのは確実に無理だろう。太陽の角度と時計を気にしながら、さすがに緊張が走る。
気を落ち着かせて、冷静に現在の標高から下山にかかる時間を計算する。あと数百m高度を下げれば、雪渓を脱することができるはず。登山道にさえ乗ることができれば、夜であろうと問題はない。とにかく明るいうちに雪渓を抜けることに全神経を集中して、ピッチを上げて、ただし正確に且つ安全に雪渓を降ることに専念する。
シミュレーションを繰り返しながらリスク・コントロールをする。今のペースであれば、十分、時間内に雪渓を抜けることができる。
読みよりもさらに早く、雪渓を脱して登山道に復帰。
尾根沿いに降っていくが、今までの苦労が信じられないくらい、穏やかな道だった。これであれば更にスピードを上げることができる。足の疲労は全然感じられず問題はない。
尾根伝いから左に折れて、斜面を降りゴールの二岐温泉方面へ。
長かった工程。変化の激しい登山だったが、ガッツリ歩けて楽しかった。
森を抜けて、昨晩置き去りにした自分の車を見た時には、「よく歩いた!」という充実感でいっぱいだった。
途中、雪渓を抜けた頃から雪が舞いだしたが、車に戻って少しすると大粒の雨に変わった。つくづくスタートを1時間早めておいて正解だった。
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