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「幻覚上等」に恥じぬよう平ヶ岳

下台倉山、台倉山、池ノ岳・姫ノ池、平ヶ岳( 上信越)

パーティ: 1人 (Yamakaeru さん )

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行程・コース

天候

晴れ

登山口へのアクセス

マイカー
その他: 平ヶ岳・鷹ノ巣登山口の無料駐車場を利用。檜枝岐からひたすら「酷道352号線(樹海ライン))をひた走る。舗装道路だが、狭い割には結構対向車が多いので運転は慎重に。座標は「37.03721 139.252784」(GoogleMapに張り付けるとナビ可能)。
駐車場は、舗装された駐車エリアとその付近の空きスペースで30台ほど停められるが、山の規模的に早朝から登り始める人が多いため、シーズンだと4時頃にはほぼ満車になる。簡易トイレあり。

この登山記録の行程

鷹ノ巣登山口駐車場(04:04)・・・林道分岐(04:12)・・・前坂・・・下台倉山(05:33)・・・台倉山(06:14)・・・白沢清水(06:22)・・・池ノ岳・姫ノ池(07:48)・・・平ヶ岳(08:23)(休憩~09:00)・・・水場南分岐・・・水場北分岐・・・玉子石(09:36)・・・水場北分岐・・・池ノ岳・姫ノ池(10:12)・・・白沢清水・・・台倉山(11:27)・・・下台倉山・・・前坂・・・林道分岐・・・鷹ノ巣登山口駐車場(13:49)

コース

総距離
約21.7km
累積標高差
上り約1,969m
下り約1,966m

高低図

GPX ダウンロード KML ダウンロード

登山記録

行動記録・感想・メモ

折角の三連休初日というのに仕事をしていた土曜日。
元々、天気は悪かったので、それなりに諦めもついて集中できてよかったが、明日、明後日は好天気という。そうとなれば頑張って仕事を片付けて、帰りつくなり急いで山の準備をする。
翌日、日曜日はゆっくりと移動。目的地は、日本百名山の「平ヶ岳」。
途中で道の駅に立ち寄りながら、まずは大好きな檜枝岐村へやってきた。ここに来るといつもホッとするのはなぜだろうか。そのまま会津駒ケ岳に登りたくなるが、今回の目的地「平ヶ岳」はもう少し先の山奥にある。
ここで不安要素が一つ。
福島の県境を越えるまでに今晩と明日の食料を買い込んでおこうと思っていたのに、結局、まともなスーパーが一軒もなかった。正確には栃木県内には何度かチャンスがあったが、「もう少し先で良いか」と思っているうちに、檜枝岐村まで来てしまった。
自然豊かなのが、村のウリ。唯一、村の中で心当たりがあるのはJAのスーパーと道の駅「尾瀬檜枝岐」。しかし、どちらにも足を運んでみるが「弁当」になるようなものは見当たらなかった。念のためお店の人に聞いてみると「この周辺にはお弁当を扱っているようなお店はないねぇー」とのこと。つくづく自分の失態が悔やまれる。
とりあえず菓子パンと腹の足しになりそうなものを見繕って買い込む。
カードで支払おうとしたら、現金のみという。「ごめんね、田舎で」と一言。現金を持ち歩かない自分にとってこれも痛いが、いいえ、そもそもこんな素晴らしい場所にカードなんて無粋なだけ。「大丈夫ですよ!」と笑ってニコニコ現金払い。
結局、弁当を買えぬまま、「酷道352号線」をひた走る。
以前、大杉岳を経由して会津駒ケ岳から燧ケ岳までを縦走したが、その際に使った大杉岳の登山口脇を通る。懐かしい。
「酷道」と書いたが、基本、鷹ノ巣までは綺麗に舗装されている。ただし、道幅が狭い割には交通量が多いので、運転にはとにかく神経を使った。
鷹ノ巣駐車場に到着。
もう直ぐ夕方だというのに、いっぱい車が停まっていた。次から次へと下山してくる人がいるので、車の台数分はまだ歩いている最中ということか。さすが、平ヶ岳。
ゆっくり仮眠ができるように駐車場の端に車を停めて休憩する。
夜になり、大きな月が煌々と空を照らしていた。
今年は8年ぶりに、中秋の名月と満月が重なるという。その中秋の名月は数日後に控えていたが、今日の時点ですでに満月のように真ん丸で大きかった。
その名月にちなんで、今晩、友人がYoutubeを使って音楽とトークのライブショーをやるという。明日の長い行程を考えて、早く寝ておきたかったが、久しぶりに友人の顔を見たくなり、21時からのライブ配信にアクセスしてみた。auの電波がギリギリ入ったのは幸運だった。
ライブには世界中からの視聴者が参加していた。深い山の中で、何十年ぶりかに懐かしい友人の声を聴く。なんとも不思議な感覚だった。相変わらずいろんなこと挑戦し意欲的に活動しているようだった。気持ちが温かくなったところで就寝。
3時に起床する。ゆっくり準備をして4時に行動を開始。
駐車場脇の登山口から山へと入っていく。登山届は昨晩のうちにポストに出しておいた。
暫くは林道を進んでいく。小さな沢を渡ったところから本格的な登山が開始となる。
のっけから急登が待ち受けているが、これも暫くすると見晴らしの良い尾根に出る。前方に小さくヘッドライトが2つほど揺れていた。先行者がいるようだ。
尾根沿いに登っていくが、ここまでの痩せ尾根はなかなか見かけないというくらい両脇が激しく切れ落ちている。ヘッドライトで照らすと、切れ落ちた部分が影となり、肩幅分くらいの僅かな歩ける部分のみが浮かび上がり、なかなかのスリル感だった。
階段状に水平移動を繰り返しながら登ってきた尾根も、再び斜度を増して直登的に高度を上げていく。
ゆっくり空が明るくなってきた。振り返ると遠くの山際が赤く染まっていた。ただし、太陽を遮るように雲が張り出していたので、綺麗な朝日は拝めそうにはなかった。
尾根を登り切るころにはすっかり明るくなり、ヘッドライト無しでも充分足元がはっきり見えるようになっていた。
ここからは縦走モード。更にスピードを上げていく。
峰に沿うように延びる道。視界がよく、左手前方には大きな山が見えた。山頂付近にぶ厚い雲が覆いかぶさっていたため、その特徴的な双耳峰は確認できなかったが、がっしりとした山容から一目で大好きな燧ヶ岳と分かる。尾瀬が目の前にある。感動だ。
平ヶ岳のクラシックロードは、燧ヶ岳を眺めながら登ることができるコースと聞いている。今日は快晴の予報なので、そのうち雲も取れてカッコいい燧ヶ岳の全容が現れることに期待しよう。
見晴らしの良かった峰沿いから外れ、樹林帯へと入っていく。軽いアップダウンを繰り返しながら進んでいくが、単調なコースでもあって個人的にはここが一番長く感じた。
最後の斜面に取り付く。
空に向かって真っすぐに登山道が延びている。「直登、望むところ!」だ。
陽射しが強くなり、汗がにじんでくる。ただ、季節は既に秋。涼しい風がヒートアップする体温を優しく下げてくれて心地よかった。
登り切ったとたん別世界が現れる。
黄金色の草原に、蒼く空が写り込んだ大きな池塘。姫ノ池。
草原のはるか向こうには、たおやかな山容の頂が見える。平ヶ岳の山頂だ。
長い道のりを歩いてきた甲斐があった。「この風景が見たかった」と、池塘の手前に座り込み風景に魅入る。ゆっくりと白い雲が流れていく。
ふと、お腹が空いているのを思い出した。まともな食料がないのが不安だが、ここではいつも常備している非常食を少し口にした。
平ヶ岳の山頂へ向かって移動を開始。
見渡す限りの楽園ゾーン。黄金色の草原をのんびりと山頂へ向かって歩いて行く。
誰かのレポートに「ちっとも平らじゃなかった平ヶ岳」という表現があったが、まさにその通りだった。尾瀬周辺の山は、平ヶ岳のみならず、田代山や鬼怒沼山も然り。山頂に池塘と大湿原を有する山は、山頂が平たい代わりにそこまでの経路はどれも急峻だ。隆起してできた山ではなく、平地が侵食されてできた証だと聞いたことがある。(たぶん 笑)
山頂に到着。
山頂というよりは小高い丘といった感じ。草原の中に小さな森があって、三角点がぽつんと設置されていた。
百名山の中でもその距離の長さから「日帰り登山の最難関」と称される平ヶ岳。ここに攻略。その攻略のため、本日、着込んできたのは「TJAR2021年度版のTシャツ」。
実際のレースは台風の影響でやむなく中断という残念な結果に終わってしまったが、記念にと思い1枚購入しておいた。背中には「幻覚上等」の文字が刻まれている。まさに変態集団のレースに相応しいTシャツで、平ヶ岳に向けて気合を入れるのに丁度よいと思っていた。
木道の脇に設置された休憩用の「板の間」に座り休憩する。木道は、歩いてきた道から更に延びて新潟側へと続いている。最短で平ヶ岳へアプローチできる、いわゆる「プリンスロード」だ。
空腹感がMAXに達したので、菓子パンを食べようと思ったが、口の中の水分が取られ、食が進まない。これは想定済みだったので、秘密兵器としてこっそり買っておいた「はんぺん」をザックから取り出す。こちらは少し湿り気があって食べやすい。しかも、どっしりしていて腹持ちもよさそうだ。山食としてありかもしれない。新たな発見だ。
目の前に尾瀬方面の大パノラマが広がっている。予想通りすっかり雲が取れて、2つの槍のような頂を持つ燧ヶ岳が存在感を大きく示していた。その右手側に、ひと際大きい山がひとつ。燧ヶ岳と双を成す、云わずと知れた尾瀬のもう一つの百名山「至仏山」だ。
燧ヶ岳の左側へと目線を持っていくと、その先にはこれも大好きな会津駒ケ岳が聳えている。会津駒ケ岳山小屋のご主人風に言えば、ステーキ、カレー、パスタにピザと大好物がテーブルの上に一同介している状態だ。よだれが止まらない。
暫し、「ぼー」っと時間を過ごした後。後ろ髪を引かれながらも絶景に別れを告げて、移動を開始する。
姫ノ池に戻る途中の分岐点(水場南分岐)で左へと木道を折れる。
平ヶ岳に来たら必ず寄りたいと思っていたもう一つのポイント「玉子石」を目指す。
コースは一旦降って、小さな沢へ。水場と書かれた看板があったので、掬って水を飲んでみる。清らかな自然の恵みだ。
再び緩やかな登りで更に分岐点(水場北分岐)を左へと進む。平ヶ岳の山頂と同じように、ゆっくりと丘を登るように隣の山へと歩いていく。振り返ると姫ノ池から平ヶ岳山頂にかけて、黄金色に輝いているのが見えた。草紅葉だ。
草紅葉(くさもみじ)といっても、もちろんそんな種類の草がある訳ではなく。高山に生える草が、秋になると赤や黄色に紅葉する様を表す言葉として用いられる。もみじとは全く関係がないが、秋の情緒を表す素敵な言葉だ。
大きな丘を越え、降っていくとついに目的のものが目に入ってきた。樹林帯の中に大きな丸い岩がちょこんと顔を出している。よく見ると、土台に大きな岩があり、その上にその丸い岩が乗っかっている。まるでコロンブスの卵だ。
そして卵の先には草紅葉の黄金の草原が広がっている。池塘が点在していて絵画の様だった。「うわー!」と声が出る。こんなに素晴らしい風景が広がっているなんて。足を延ばしてやってきてよかった。
水場北分岐まで戻り、周遊するように姫ノ池へ。
池塘の前に座り込み、もう一度、目の前に広がっている風景を目に焼き付ける。
天空の楽園。花のシーズンにもいつか訪れてみたいものだ。
帰路モードに入る。
平ヶ岳の行程(クラシックコース)は往復20kmを越えるロングコース。標高差や長い登りはむしろ好物だが、長い降りはメンタル的に辛い。特に今回、食事ができていないため、明らかにシャリバテ状態。頼みの「はんぺん」パワーも底をついてしまったようで、どうにも足が進まない。それでも、だましだまし休憩を取りながら、なんとか痩せ尾根まで降ってきた。
最後のひと踏ん張りで、痩せ尾根からの急斜面を駆け下りる。林道手前にあった沢が目に入った時は、達成感よりも安堵感の方が強かった。
実は、シャリバテに挫けそうな心を奮い立たそうと、下山中、ずーっとこの沢のことを考えていた。「着いたら飛び込もう!」と。
きつく縛った紐をほどき、靴と靴下を岩の上に投げ捨て、素足でざぶざぶと入っていく。キーンとする冷たい水。想像以上に気持ちがよかったが、冷たすぎて10秒と入っていられない。一旦、岩の上に退避してから、今度は上半身裸になって水浴びをする。「最高だ!」。
長い山の〆はこれに限る。 :)
手洗いした服を上着だけを着込み、最後の林道を降っていく。ヒンヤリした服がとても心地よかった。
平ヶ岳の旅、これにて終了。

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装備・携行品

みんなのコメント

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  • クマさんは大丈夫でしたか?。

  • シャリばてはあかん。例の塩あめは入ってなかったのですか?

  • キスミレさん、熊に会うより熊より黒いということで間違えて打たれないか心配でした。笑

  • Showさん、それは江戸時代から伝わっていると言うあのかぴかぴの飴ですか?
    さすがに蒸発しました^_^

登った山

平ヶ岳

平ヶ岳

2,141m

よく似たコース

平ヶ岳 群馬県 新潟県

平ヶ岳登山口から平ヶ岳往復 日帰り

最適日数
日帰り
コースタイプ
往復
歩行時間
10時間50分
難易度
★★★★
コース定数
46
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