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日本千山 671/1357

知床岳( 北海道)

パーティ: 2人 (1357 さん 、ほか1名)

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行程・コース

天候

曇り

登山口へのアクセス

マイカー

この登山記録の行程

相泊(5:40)河口(6:10)二俣(7:05)スキーデポ(650m/8:40)鞍部(1,060m/10:25)知床岳(11:10~35)デポ(12:50)相泊(14:25)

コース

総距離
約16.4km
累積標高差
上り約1,321m
下り約1,322m

高低図

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登山記録

行動記録・感想・メモ

①初回 知床岳は『1003山』の栄えある第1番目の山だ。夏道は無いので、沢登りから這松を漕いで2泊3日の計画で登らなければならない上に熊が多く、「1人では無理だ」と半ば以上踏破を諦めていた山だが、ガイドの阿部さんが「3~4月なら、山スキーで頑張れば1日で登れる」と教えてくれたので「是非行きたい」と意思表示をすると、阿部、酒井の3人で出掛けることになる。
 北浜の『番屋』の2階に落着いて荷物を整理していると、『札幌登山ガイドセンター』の2人が600kmを走って到着する。1年振りの再会を喜んで缶ビールを開け、知床岳登山の打合せをする。天候が悪化するのは確実だが、「低気圧の接近との競走だから、早発ちして出来るだけ早い時間に山頂を踏もう」と、登頂への意欲は強い。
 暗くなる頃、一階へ降りて自炊を始める。ジンギスカンに舌鼓を打ち、ビールやワインを開け、番屋の主人も加わって話が弾む。主人の石田さんが、「予報通りの雪が降ると通行止になる可能性が高い。ここの除雪の順番は最後だから、数日間相泊から脱出できない怖れがある。明日中に出た方が確実です」と、インターネットで調べながら言う。
 
 シールを貼ったスキー板を担いで歩き始める(5:40)。浜に降りると鹿の死体にキタキツネとカラスが群れており、厳しい自然を身近に感じる。歩き難い玉石を踏んで波打際を行くと雪面が連なるようになり、板を履く。左手には番屋が軒を連ね、その後は10~20mの崖になっている。夏の間昆布を採りながら5ヶ月間ここで生活するそうで、電柱が建って電気も通じている。
 30分でカモイウンベ川に出合う(6:05)。雪面が開いて流れが顔を出しており、鉄橋を渡って尾根へ上がる。さらに一段上がると広い台地の上に出てスキーの跡も現れる(6:15)。5cmほど積った新雪の上にシールを走らせると絹のような感触で、すこぶる気分が好い。岳樺や針葉樹が繁って見通しが利かないので、沢から離れないように歩く。
 スノーシューの跡が明瞭に続き、デポキーを作るために持参した手斧の出番はまだ先だ。樹林の中を縦横に歩いている鹿に混じって、熊の足跡を見付ける。幅21cm、長さ35cmの迫力のある大きさで、滅多に居ない大物らしい。俄然声を発し、笛を吹いて目配り鋭く進む。
 雪雲は頭上10mの高さまで降りてきており、天気予報と併せ考えると、高度を上げるに従って雲は厚く風も強くなり、森林限界の上は吹雪いているのが確実で、登頂は困難と思われる。標高180m地点の二俣を雪が埋めていて渡渉の心配が無いのを確認した所で前進を止め(6:45)、一息入れて引き返す。
 一直線にカモイウンベ川の方に向かっている熊の足跡を見詰め、「大熊は沢へ水を飲みに行ったんだろう。出会いたくないなあ」と言いながらも、楽しく滑って瞬く間に海岸へ戻り(7:15)、本降りの雪に顔を打たれながら相泊へ帰る(7:50)と民宿の前でガイドが出発の準備をしており、スノーシューの跡は昨日入山した撮影隊(NHK)のものだと判る。鹿の死骸に話が及び、「熊の穴の主人が「そのうちに、熊が嗅ぎつけて現れる」と言っている」と聞き、「凄い嗅覚だ」と恐れ入る。(2006.3.19)

②二回目 枝幸のKitに女満別空港で拾ってもらい、石北峠を越えて羅臼を目指す。昨年お世話になった番屋に泊ろうと思って立寄ると、二階の廊下は点灯しているものの鍵が掛かってひっそりとしており、そっとドアを叩いても返答が無い。道路終点の民宿熊の穴も鍵が掛かって静まり返っており、港の駐車場にテントを張って寝る(22:30)。
 カモイウンベ川を渡り台地へ上がってスキーを履くと、今日の物らしいスノーシューとスキーの跡に気付く。森の中を行くと、昨年同様に冬眠を終えた熊の足跡が数本横切っている。
 二俣の川原の雪原の端を進み、左・右俣の中間台地へ上がる。トレールがはっきり残っており、緩い草原に出ると左前方に目指す尾根が姿を現し、落葉樹林の中を気持ち好く高度を上げる。やがて針葉樹と潅木の疎林の雪稜となり、部分的にクラストする。視界は100~数百m程度だ。急斜面を上がった所にスノーシュー6個が存置してある。スキーでもう一段上がり、当初の目標地点の急斜面基部に板をデポする。 
 雪雲の下の急斜面にスノーシューの数より多い姿が見え隠れする。過去に経験した中では最も急な部類に入る斜面で、スリップすると沢底まで200mは落ちると思われる。先行隊がザイルを固定しているが、人様の物を頼りにして登る訳にはゆかない。中間に見える潅木を目指し、アイゼンを蹴り込んで小さいステップを作り、慎重に斜上して高度を稼ぐ。100mほどで傾斜が落ち、休憩中の十数人に追付いて挨拶する。視界は50m前後となり、赤テープを付けながらツアー隊と平行して登る。
 風が強く視界も更に悪くなった上に這松帯の雪原に入って目印とすべき物が無くなる。腰を下ろしてツェルトを被り、天気が良くなるのを待つ(925m)。ザックカバーの上のお尻は直ぐに冷たくなり、カバーの上に地図を敷くと意外なほど暖かく感じる。1時間半粘る(10:10~11:40)ものの、天気はむしろ悪化するように思われる上にお尻の冷たさも限界に達し、登頂を諦める。
 急斜面の下降を懸念するが、ガスで下の方が見えないので高度感が無く幸いする。雪壁下方のスキーデポの位置を探して雪原を彷徨い、GPSを頼りに発見する。「帰りに迷うのが怖くて前進出来なかったのに、GPSで軌跡を辿れば迷う心配は無かったと気付く。(2007.3.31)

③登頂 相泊港の岸壁にテントを張り、港を埋める流氷が発する微かな金属性の音を子守唄に眠る。
 二俣の雪面が開いているので200m程上流へ廻り込んで右俣を渡る。標高250m付近では、緩斜面の岳樺やトドマツが広範囲に薙ぎ倒されている。「凄い雪崩だ。でも、こんな所で発生するだろうか」と腑に落ちないでいると、「強風の通り道になって倒されたんだわ」と言う。昨年、北見で竜巻が発生して工事関係者数名が犠牲になった事を思い出す。
 昨年と同じルートを採って標高650mまで登り、スキーをデポしてアイゼンを履き急な雪壁に取付く。雪が緩んで靴が潜り過ぎて苦労するほどで、高度を上げると尾根の背に這松が顔を出している。雪面と這松の境目を100m程稼ぎ、上方に黒く見えるP1,159mの左の鞍部目指して這松の間を登る。陥没したりして歩き難いのに耐えて進むと、遂に、知床岳が白い姿を現す。東端のP1,243mと山頂三角点を繋ぐ頂稜は1㎞もの長さで、前面に広い緩斜面を抱いて大きく横たわっている。
距離を節約すべく雪原を直進して横断し、念願の知床山頂を踏む。天気は出発時よりは好転し、体を休めながら山頂の眺めを楽しみ感慨に耽る。知床岳の奥にも幾つかのピークが目立ち、その先には流氷に覆われた冬の海が茫と広がり、オホーツク海側には、所々に丸い蓮の葉状の大きな流氷塊が見える。
 スキーデポまで下り、右俣へ滑り込んで二俣へ降り、相泊へ戻る。羅臼へ出て熊の湯でゆったりと温泉を楽しみ、地元の人の教えに従ってビジターセンターの駐車場にテントを張り、寝不足の疲れた体を横たえる。

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登った山

知床岳

知床岳

1,254m

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