行程・コース
天候
晴れ/晴れ
登山口へのアクセス
マイカー
この登山記録の行程
大曲(8:30)登山口(9:10)P2,250(12:00)権右衛門山(14:00)塩見岳分岐(2,660m/14:30)水源(2.380m/15:15)源頭幕営2,51
0m(15:50/6:25)本谷山(7:15)P2,460()小黒山(9:30)樺山(10:45)入山(12:15)P2,060(13:25)南沢(1,410m)大曲(14:30)
高低図
登山記録
行動記録・感想・メモ
久し振りの大曲の駐車場は、釣りのシーズンが終って車が少ない。淵の水はあくまでも澄み切って、川底の砂利と岩魚の姿が二次元に見える程だ。
ゲートは閉まっているが、林道を歩いていると作業車が追い越して行く。再び静寂が戻った道を、音を発てるのを憚るかの如くそっと踏み締めて歩を運ぶ。
橋の手前の登山口から大黒沢を渡って登りに掛かるが、この道は三峰川の増水時には渡渉出来ない旧登山道の迂回路として開かれた様で、尾根の末端を巻いて再び川原に下っており、折角稼いだ高度を無にしてガッカリする。
三角点 2,232mまで尾根の腹を一途に登る。漸く秋の気配が深まって気温も下がり、休憩する時には日溜りが恋しい。案内書の「塩見小屋への荷揚げに利用されて、道は確りしている」との記述とは違って、登山道には不明瞭な箇所も在る。
権右衛門岳の西の肩(2,500m)へ出ると塩見岳が始めて姿を現わす。頂上の北面は雪を纏い、黒々とした岩場とのコントラストが強い印象を与える。「やっとここまで登って来た。余す所幾許も無い」と気も緩み、秋の気配に満たされた山々を眺めながら陽光の下に腰を降ろして寛ぐ。
山腹を左へ廻り込み、巻道が右折する付近でザックを降ろして権右衛門山へ登る。頂上はブッシュに覆われて小五月蝿く、人の痕跡が微かに残っている。
ザックを担いで樹林の中の苔蒸した伸びやかな鞍部へ下り、登り返して三伏峠からの道と合流する。塩見小屋の水場は確実なのだろうからそこに泊る手もあるが、明日の行程がどの位のものになるか予想が付かず、先を急ぐ事にして本谷山の方へ向かう。
「紅葉の盛りなのに誰も居ないなあ」と朝から誰にも出会わないのに何と無く物足りなさを感じながら暫く行くと、塩見へ向かう3人組が登って来る。挨拶を交わして暫く下ると標高 1,800mで涸れ沢に出合い、地図よりは標高がずっと高いので不審に思いつつ先へ進むと、トラバース道となって次第に沢筋から離れて行く。このまま進むと水を得るためには三伏小屋まで行かなければならず、疲れた体で無駄な距離を稼いだ上に明日引き返す事を考えると、水汲みに大分下降せざるを得ないとしても涸れ沢に泊った方がまだましだと考え、引き返して源頭の涸れ沢の幕営跡地に荷を下ろす。
慌ただしく水汲みに下る。沢の源頭部は緩い地形で、覚悟はしていたものの 300m程下った所でやっと水の湧出を見て、「やれやれ」と一息吐く。登り返しには30分を費やし、「あーしんど!」
寒冷前線が東進して天気は悪化する様だが、水汲みに時間を取られて漁業気象の前半を聞き漏らしたので気圧配置がはっきりせず、明日の行動を如何するかは起きた処勝負だ。枯枝が豊富にあるので焚火を試みるが、水分を含んだ木の枝はなかなか燃え着かず、何回も失敗する。
夜、梢の上で引っ切り無しに風が騒ぐ。樹間から月の光がテントまで届いて元気付けられるが、シンシンとした寂寥感に捉われて追い払う事が出来ず、なかなか眠りに落ちる事が出来ない。
気が付くと5時で、シラビソの枝の間に星が見え、天気には恵まれそうだ。慌てて朝飯の準備に掛かる。ラーメンで簡単な朝食を済ませて出発する。平坦な道を辿って標高 2,500m地点で尾根に出る。
やはり二万5千分一地形図の登山道の位置は違っている。尾根通しに高度を上げると今冬初めて霜柱を見て、冬の到来を実感する。本谷山頂で塩見岳を往復するパーティーに出会い、一息入れる。悪沢岳の北面は白く、塩見岳の岩場は黒く重い。
豊口山は針葉樹に覆われているが、その先の緩やかな鳥倉山は黄赤色の落葉松に彩られた山肌を大きく広げている。北には、これから踏破しようとする二千m級の尾根が思ったより多くの盛り上がりを連ねて続いている。「果たして何時間で歩けるのだろうか。明るい内に大曲へ下山出来るだろうか」と多少の懸念を抱きながら、地図と見比べながら地形を頭に叩き込む。
這松の間に分け入って下を覗き込むと右手から顕著な尾根が北進しており、これに向かってトラバース気味に下降する。ハリブキの斜面を下って達した尾根には獣道がはっきりと付いており、「これなら足が捗って体力の消耗も少なくて済むし、明るい内に下山出来るだろう」と喜ぶが、「何処まで獣道が続いているかは、天のみぞ知る」だ。
緩く長いP2,420mを越える頃(8:30)、天気が悪化して雨粒や雪が落ちて来る。気圧が急降下している様で、最初のピーク小黒山付近では強風が間歇的に吹いて針葉樹が騒がしい。中間の樺山までは思ったより時間が掛かる。天気は次第に好転し、先の見通しが立って、山頂で大休止する。
鞍部から入山への登りに掛かる。標高2,150mを越えた頂稜に鋸目や鉈目が残っているのに気付き、やがて赤ペンキや赤布も現れる。山頂には「81年夏合宿 KWV」の表示が残っている。山頂からは、笹山と黒河山付近の盛んな笹原が見える。
本谷山から入山までの尾根は針葉樹の中高木の植生で、下生えが少なく獣道がはっきりしていて非常に歩き易く、藪漕ぎの難儀を覚悟していた身には拍子抜けする程だ。
入山山頂からは三峰川南沢へ向かって何本もの尾根が下っておりどれを採るか迷うが、山頂から北へ向かって下り2,010mの等高線が走っている付近から北東に派生している太目の尾根に入り、南沢の1,410m地点へ下降する。
沢に滝は無く、ガラガラの沢を下り、堰堤を迂回して大曲の川原に降り立って明るい紅葉に見入る。








