行程・コース
天候
晴れのち雨
登山口へのアクセス
マイカー
その他:
北岳へは広河原からアプローチ。ただし、交通制限があるため芦安(あしやす)の駐車場を利用する。肩ノ小屋を訪れる登山者の約9割が芦安を利用するとの事。芦安~広河原はバスもしくは乗り合いタクシーでの移動となる。
カーナビには「南アルプス市芦安地区の市営駐車場(マップコード「167 163 378*54」)」をセット。駐車場は第一から第八まであり、お勧めはトイレのある第三。第三駐車場に隣接する白峰会館前よりバスが発着する。ここの券売所で乗車券を購入。シーズン時は5時前には満車になるため早めの到着が良い。
この登山記録の行程
<1日目>
広河原(06:34)・・・白根御池小屋(08:37)・・・肩ノ小屋(11:25)
高低図
登山記録
行動記録・感想・メモ
<1日目>
仕事終わり、金曜日の夜。2時間ほど仮眠をとって高速を飛ばす。
久しぶりの南アルプスに久しぶりのガッツリ夏山。目指すは日本で二番目に高い山「北岳」。これにテンションが上がらない訳がない。寝不足にも関わらず目ギンギンで高速をぶっ飛ばした。(法定速度内で 笑)
4時過ぎに市営芦安駐車場へ到着。
週末なので「満車かな?」と覚悟をしていたが、ガードマンの誘導で、一番停めたかった第三駐車場に入ることができた。
第三駐車場にはトイレもあり、バスの発着所も隣接しているので、とてもラッキーだった。
焦っても仕方がないが、ザックを背負った人を見かけると、出遅れた気がして我先へと進みたくなる。荷物を整えて、急いでバスの発着場へと向かう。
チケット売り場で片道切符を購入。1,160円と聞いていたが、1,460円だった。よく見ると1,160円のチケットの横に「南アルプスマイカー規制利用者協力金300円」と書かれたチケットがセットになっていた。元々なのか、コロナ禍等の影響で事実上の値上げなのかは分からない。
そうしているうちに続々と登山者が集まってくる。
5時前になり3台のバスが連なって入ってきた。始発は5:15。
1台目のバスは直ぐに一杯になり、2台目のバスへと乗り込む。
乗り込む際にチケットの半券を渡して、降りるときに残りの半券を渡す仕組み。途中下車のポイントが幾つかあるので、そのための確認かも知れないが、そもそも大半が広河原を目指すのであまり意味がないような気もする。
バスの一番後ろの席に座り、重いザックを膝の上に乗せて抱きつくようにして出発を待つ。
時間丁度になり、満員になったバスはゆっくりと動き出す。
窮屈で息苦しいが、これもアルプスに入る前の儀式だと思うと何となく楽しい。
バスに揺られること約1時間。
何度か激しく揺れたが、夜通し車を運転してきたこともあり、その大半は爆睡して記憶がなかった。
広河原へ到着。バスを降りて深呼吸。新鮮なアルプスの空気と窮屈だったバスから解き放たれた解放感を味わう。
広河原のバスターミナルには、真新しい綺麗な建物が2つ建っていて観光地のようだった。
早朝の空気が冷たくて心地よい。
空は快晴。
一週間前の天気予報では土日ともに完全雨マークだったが、必ず晴れに転じると天気図を読み切った。と言うか半分は「晴れてくれ!」との神頼みだったので、仕方なく聞き入れてもらったということか。ただし、今日の夕方には雨マークがついている。早めに登った方が良さそうだ。
登山ゲートを越えて、いよいよ北岳へ向かう。
北岳は日本百名山の一つで、標高は3193mと富士山に次いで日本で二番目の高峰でありながら、登山者を除き一般の人にはとても知名度の低い山だ。しかしながら、その実力は高く、白根三山と呼ばれる北岳、間ノ岳、農鳥岳の縦走ルートは雄大な南アルプスを代表するコースの一つだ。
吊橋を使って対岸へ渡る。下を流れる野呂川の水は、高山特有のコバルトブルーの透き通った色をしていた。まさに清流。
吊橋を渡る前に、対岸の向こうにこれから目指す北岳がしっかり見えた。いつもであれば「目で捉えた瞬間、着いたも同然」と表現するところだが、ここはアルプス。山全体のスケールが半端なく大きいので、いつもの倍以上に距離感の係数を設定しておかないと、体力配分を間違えてしまう。
広河原山荘の横を抜けて、暫くは水平移動で森を進んで行く。
やがて一つの尾根に取り付き、一気に高度を上げていく。
どっと汗が噴き出てくるが、久しぶりに手ごたえのあるアルプスらしい急登が嬉しくて仕方がない。登山道はよく整備されているので歩きやすかった。
団体さん御一行で団子状態になっていた列も徐々にバラけてくると、快適に登っていくことができた。でも急ぐことなく、今日はできる限りゆっくり丁寧に歩くことにしている。
急登が終わり、続いてトラバースで斜面を横切っていく。遊歩道のような心地よいコースだった。
森を抜けて視界が開けると、大きな小屋が目に入った。白根御池小屋。
小屋の周辺では多くの登山者が休憩をしていた。正面の玄関横では山水で冷やしたジュースが販売されていた。実に山小屋らしい風景だ。
名前の由来になっている御池へ行ってみる。緑色の水を蓄えた想像していたよりも小さな池。それを囲むようにテントが沢山並んでいた。とても素敵なテント場で、見上げると北岳の山頂が姿をのぞかせていた。三角形に鋭く尖った成端な形で、岩がむき出しの荒々しい岩稜地帯の頂。カッコイイ。
目の前にはこれから登らなければならない「草スベリ」のコースが見えていた。草スベリとはよく言ったもので、まさに草で覆われた緑の壁。その壁に豆粒のような登山者が数人アタックしているのが確認できた。こんなところを登るのかと思わず笑いが出てしまった。これは登り甲斐がある。
草スベリへクライム・オン。
どんどん眼下の御池が小さくなっていくが一向に上が見えてこない。急登好きの自分もさすがにここは苦しかった。幸いなことに風が心地よかったので元気が出たが、これで蒸し暑かったら死んでいたかもしれない。
しかし、苦労した分だけ達成時の感動は大きい。
稜線へ出た瞬間、ドーンと「仙丈ケ岳」が飛び込んできたインパクトは凄かった。南アルプスの女王と呼ばれる風格が何とも言えず素晴らしい。残念ながら、その横に見えるはずの甲斐駒ヶ岳はあいにく雲の中だった。
ここまで来れば目的地「肩ノ小屋」までもあと僅か。
稜線を進むこと30分弱。黒い壁の北岳肩ノ小屋が見えてきた。その小屋を覆い隠すように、雲がすごい勢いで競り上がってきている。
雨が近いかもしれない。走り寄って小屋の前にあった標高3,000mの看板を写真に収めた。
本来であれば農鳥岳までピストンしたかったが、今回の目的は「北岳でゆっくり」だったのでまずは、肩ノ小屋でチェックインを済ませ、ザックを降ろしてのんびりモードに入る。
少し休憩をとってから山頂へ散歩に出かけようと思っていたのに、思った通り、ポツリポツリと雨が降ってきたと思ったら、アクセルを踏んだかのように一気に激しい雨音へ変わっていった。「まじか」。夕方前に雨マークがついていたが本当に降るとは。。。
仕方がないので山頂を諦めて、ここはウエルカムドリンクではないが食堂で生ビールを注文する。ちなみに、肩ノ小屋ではモンベル会員特典があって、二食付きで宿泊すると、食堂でのオーダーが1回分500円引きとなる。お得感満載だ。
泡がこぼれそうな生ビール。透明なプラスティックのカップには、マジックで書かれた「北岳に来ただけ」という優しい絵文字入りのメッセージがとても愛らしく嬉しかった。
頑張って草スベリを登ってきたご褒美に、グッと喉に流し込む。
「うーーーん、この一杯のために登ってきた(だけ)」 笑。 最高だ!。
雨音が更に強くなってきたので、部屋に戻り本を読みながらまったりと時間を過ごす。
個人的な予想では、そう長くは続かず、夕陽前には止むだろう。きっと、雲も取れて夕陽を見ることもできるだろうと期待する。
部屋は、二段ベット形式になっていて、更に二人分が就寝できるように小さく壁で仕切られていた。また、二人の寝具の間にも感染症対策としてパーティションが設置されていたので、かなりプライベートが確保されていて快適だった。
そうこうしているうちに雨が上がってきたので、外へ出てみた。
雲が目の前で刻々と変化している。時折、雲の切れ間から光が射しこんで周辺を照らしている。この調子なら夕陽を行けるだろう。
テーブルの一つを陣取って、コーヒーを淹れる。
何もしない。何も考えない。ただゆったりと流れる時間を楽しむ。高山での最高の過ごし方だと思う。下に見えるテント場では、濡れたシートを干している人がいた。テント場の下方に広がっていた雲が切れてきて、そこに大きな虹がかかっていた。虹を見下ろすなんて、普通、飛行機でしかありえない。さすがは3,000mの世界だ。
お腹が空いたので、一旦部屋に戻って夕飯を待つ。
17時を少し回って、山小屋のスタッフの号令で食堂へと向かう。
配膳されたのは、肩ノ小屋名物「豚肩ロースのステーキ」。
厳選した肉厚な豚肩ロースを独自ブレンドした甘辛いタレで更に美味しさを際立たせた絶品と言われている。見た目はキャッチコピーほど豪華ではなかったが、試しに一口食べてみると、これが不思議!。街中のレストランなんか目じゃないほどに美味しい。ご飯と一緒にがっついた。ご飯とお味噌汁もお代わり(無料)してあっという間の完食。大満足の夕食だった。山小屋のご飯って、どうしてこんなに美味しいのだろう。
夕食後、もう一度、外へ出てみる。
今日の日の入りは18時54分。あと30分ほど。
大きな入道雲が太陽を覆い隠しているが、思った通りかなり青空が広がってきている。登ってくる時には見えなかった甲斐駒ヶ岳も顔を出していた。やはり格段に美しい。反対側には富士山の裾野部分が姿を現していた。あと少し雲が取れてくれれば完全な富士山が見えるのに。。。
雲がどんどん流れていく。
白いキャンバスに赤と黄色の絵の具を塗りたくったように、とても複雑で鮮やかな色彩が刻々と変化していく。ドラマティックでため息が出る。
日の入り1分前。ついに太陽を覆い隠していた大きな雲が外れた。なんという幸運。周囲から大きな歓声が上がった。
黒い山影に真っ赤な太陽がゆっくりと沈み込んでいく。今日の最高のエンディングだ。
感動の余韻を味わいたかったので、太陽が完全に沈んでも暫くその場に立ち尽くして空を見ていた。夜のとばり。夜空には一番星が光っていた。明日もきっと晴れるだろう。
部屋に戻り、明日の日の出に備えて早めの就寝とする。
というか、横になった瞬間、爆睡していた。見事な程に記憶が完全に飛んでいた。
<2日目>
https://www.yamakei-online.com/cl_record/detail.php?id=250945





















