行程・コース
天候
1日目 晴れのちくもり 2日目 晴れのちくもり 3日目 くもり時々晴れ間のち雨 4日目 くもり
登山口へのアクセス
その他
その他:
往きはアルペンルート高原バス、帰りは黒部渓谷トロッコ電車
便数は豊富だが、気象条件により運休することもある
この登山記録の行程
【1日目】
室堂ターミナル(07:53)・・・ミクリガ池(08:03)・・・エンマ台・・・雷鳥平(08:32)・・・別山乗越(10:07)[休憩 21分]・・・剱澤小屋(11:26)[休憩 14分]・・・平蔵谷出合(12:52)・・・長次郎谷出合(13:18)・・・真砂沢ロッジ(14:21)
【2日目】
真砂沢ロッジ(05:06)・・・二股(06:46)・・・仙人峠(09:05)・・・池の平小屋(09:45)[休憩 10分]・・・池平山(11:50)[休憩 14分]・・・池の平小屋(13:25)
【3日目】
池の平小屋(05:58)・・・仙人峠(06:30)・・・仙人池ヒュッテ(06:50)・・・仙人温泉(09:10)[休憩 10分]・・・仙人谷ダム(13:23)・・・阿曽原温泉小屋(15:05)
【4日目】
阿曽原温泉小屋(05:21)・・・欅平(11:48)
高低図
標準タイム比較グラフ
登山記録
行動記録・感想・メモ
ピークハントにこだわらず、北アルプスの奥深くを心行くまで旅したい。今回はテント泊ではなく、これぞという山小屋を選んでのルートとした。
1日目 室堂~剱沢雪渓~真砂沢ロッジ
室堂平から雷鳥沢キャンプ場を通り抜け、雷鳥坂の登りに入る。以前の立山縦走で下山の際、登ってくる人のしんどそうな顔が記憶に残っていた。たしかにきつい勾配だが、どんどん小さくなって行くキャンプ場や室堂平を、時々振り返って見れば励みになる。なによりまだ旅の始めなので期待が上回る。トイレ休憩の別山乗越ではガスに包まれ風も冷たかった。剱沢キャンプ場受付棟で雪渓の状況を確認し、剱沢小屋の横から急坂を降りて行く。登山道から雪渓に乗り移る場所はここだなとすぐにわかり、軽アイゼンを装着。
日本三大雪渓のひとつである剱沢雪渓の、長く長く伸びるその先へと向かって行く。雪質はまだしっかりしており、端を歩かなければ不安はない。見上げるばかりの岸壁と、稜線へと伸びる平蔵谷に圧倒される。この広い雪渓に(ほぼ)自分ひとり。直射日光であればサングラスが必要だが、きょうは曇り空、でもそれほど涼しくもない。雪渓が大きく右へカーブする長次郎谷出合で左岸に大きくペンキマークが。ここから夏道に戻る。ところがすぐに行き詰まり、再び雪渓に降りることに。ピンクテープを目で追えても、実際にそこまで登山道を歩けるとは限らない。この区間でかなり消耗し、ようやく小屋が見えて一安心。到着してから聞けば、小屋が見えたら雪渓に降りると楽だったようだ。結局剱沢小屋から後は二組としか出会わず。
真砂沢ロッジではこの夜は10人程(以下?)、なのにテントは10張近くあった。部屋は一人分ずつ背丈より高くまでベニア板で仕切られ、窓はなく廊下側にはカーテンがある個室状態。さらにその日の人数によって部屋割りにも気を配ってくれていることが分かる。宿泊者は熱いシャワーを浴びることができるのも有難かった。限られた中でも出来るだけのサービスを提供しようとする小屋の姿勢が感じられた。どことは言わないが、ほっておいてもどんどん客が来る大きな山小屋では御座なりにされる様な事も、きめ細かく対応しようとしてくれているのがありがたい(この点は翌日の池の平小屋も同様)。
2日目 真砂沢ロッジ~仙人峠~池の平山~池の平(池ノ平)小屋
できるだけ涼しい時間に標高を稼ごうと朝5時に出発し、剱沢左岸を下って行く。三ノ沢、四ノ沢の雪渓も念のため軽アイゼンを装着。なお、三ノ沢雪渓が不安定になると右岸へ迂回することになるらしいので小屋で要確認。やがて左岸の崖にクサリが渡された所に出る。足下は急流、岩と細い丸太の足場をクサリを伝って通過する。クサリが緩めで支点の真ん中あたりでぶら下がってしまうと、体制を取り戻すのに大変なことになる。まあ楽しいが慎重を要する場所。県が設置したりっぱな二俣の吊橋を渡り、仙人新道の激登が始まる。前半は樹林帯なので体力を消耗する。ややきわどいトラバースもあり、ベンチまで来れば人心地がつく。氷河認定された三ノ窓雪渓や八ツ峰の眺めがすばらしく、ここまで来れてよかったと思う。
池の平小屋にザックを預け、サブザックで池の平山に向かう。ガスとの競争になるのは夏山の定番、そしてガスに追い越されて山頂では眺望なしというのもよくあること。池の平山は森林限界を越えると中小のガレた岩が山頂近くまで続き、通行があまり多くはないので不安定な岩が多い。さすがにアルプスの山、そう簡単には登らせてはくれない。とくに下りは慎重に。写真のとおりちょうど開花の最盛期、剱の鋭い岩峰を背景にした一面のお花畑は、この世とは思えない光景だった。
一度は来てみたかった池の平小屋。きっかけは3年前に見た小屋番さんのユーチューブ動画だった。ドローンで撮る大自然の映像には、人間には許されてこなかった神の目線を感じる。だからテレビ番組のなんでもドローン、とりあえずドローンとばかりの安易なエンタメ化はいただけない。その点、池の平小屋のドローン映像は抑制が効いた好感の持てるものだった。客室は二人分ずつ仕切られた二段式で頭の高さも充分あり、定員にはほど遠かったのでソロ客は二人分を使わせてもらえた。ひとつ要望すれば、カーテンがあればよかった。通路の対面がカップルだったので目が合わないように気を遣ってしまった。そしてここには沸かし湯の風呂があり、到着順に貸し切りで入浴することができる。街の銭湯には富士山の絵が描かれていたりするが、こっちは実物の剱岳八ツ峰を眺めることができる。その浴室の窓にはちょっとした遊び心ある仕掛けが・・・それは行ってからのお楽しみ。
[深夜の不思議な体験]ふと目を覚まし窓の外を見やると、そこにはぼんやりとだが深い谷間が連なる小黒部谷が闇に浮かび上がっている。いや、深夜なのに見えるはずがない、昼間の記憶が現前しているだけではないのか。しかし目を凝らせば谷に蠢く霧の流れまでもが、あたかも薄墨で描かれた一幅の水墨画のよう。これは夢か幻なのだろうか・・・。たぶん、雲越しの淡い月の光が垣間見せてくれた一時の奇蹟だったのだろう。
3日目 池の平小屋~仙人谷~仙人ダム~阿曽原温泉
この山行で最も苦労するのは3日目と予想していた。剣沢に比べて小規模なぶん雪解けの進み具合が複雑な仙人谷、暑い時間に通る雲切新道・・・それは予想以上だった。仙人谷は7割方夏道だったが、「ノド」と呼ばれる滝のある辺りで崩落気味の斜面と雪渓の淵が微妙に嫌な感じだった。だがすぐに状態は変わっていくだろう。仙人温泉源泉の湯煙が見えるあたりからの夏道は草が伸びるのが早いのか、なかなか手強い登山道だった。休業中の仙人温泉小屋ベンチでほっと一息。姿は見えなかったが中で作業中の小屋番さんに挨拶して行く。これは礼儀もあるが、自分の安否確認でもある。沢にはすでに木橋が掛かっており、冷たい水で手と顔を洗う。飲み水は対岸の急登を上がった所に湧き水があるので、そこまでがまん。
1629mピークの前後はなだらかだが、じきに雲切新道名物の急降下が始まる。三連梯子に垂直梯子、だが梯子があるのはまだよかった。残置ロープのような古ぼけたロープが垂れ下がるすべりやすい急斜面を、ズルズルとずり落ちるように降りることが何度あっただろう。ここの手強さは距離と斜度だけではなく、乾いた地質にあることが、実際に歩いてみて解った。降り積もった落ち葉が腐葉しておらず滑るため、かなりの踏ん張り力が必要なのだ。それが長く続くことで徐々に脚力を奪われていく。風もなく発汗がものすごくてメガネも外して歩く。樹間から黒部川が見え、ダムの施設がちらちら覗いてもなかなか着かない。飲み水も残り少なくなり気が焦るなか、ふとした弾みで谷側に転落した。ほんの1-2mだったし草を掴んですぐに復帰したのだが、臀部を岩か何かに打ち付けたようだ。長い長い雲切新道を下り終え、仙人谷の最後の丸太橋を渡った河原で頭から水をかぶった。と、腰掛けた岩が血に染まっているではないか。打撲と思ったのが出血を伴っていたのだ。さらにはあの転倒現場で、メガネを落としてしまったことに後にテント場で気付くことになる。
阿曽原温泉小屋は川床近くに位置する。なのでその前後はかなりの上り下りを覚悟しなければならない。おまけに湿気が多く苔で滑りやすい。温泉、温泉と自分を励ましながら痛い足をかばいつつ到着した。テント場には自分を含めて三張だった(トイレは和式水洗、紙無し)。小屋からさらに10分程登山道を降りたワイルドな露天風呂には、スノコと石鹸・洗面器が置いてあるだけで、屋根や覆いはなく、前日には下の河原を歩くクマが見られたらしい。宿泊者以外も800円で入浴可(1時間ごとの男女入替制)。
4日目 阿曽原温泉~欅平
今回はツェルト泊で済ませてしまったが、のんびり過ごしに来たいテント場をあとに下山の途に就く。昨日メガネをなくしてしまい、足元は見えても景色はピンボケ。水平歩道で道迷いはないだろうが、小屋泊の男性に同行をお願いすると、快く応じてくださった。
山での出会いは一期一会。登山歴半世紀の大ベテラン、奈良のNさんと共にゴールの欅平を目指す。とはいえお互い普段からソロ山行で口数少なく、Nさんの方が足も速い。所々でタバコを吸いながら私が来るのを待っていてくれる。ずいぶんあちこち登られ、辛い出来事もあったそう。それでもまた山に戻って来る。そう多くない会話の中で、山に対する思いは似ているものだなと感じた。
水平歩道は思ったより道幅もあり、それほど危険とは感じなかった。もっとも、その高度感もメガネなしであまり見えてなかったのかもしれないが。トロッコ列車の汽笛やアナウンスが聞こえてきて、いよいよゴール間近の展望台(枝が伸びてあまり展望はなかった)から駅までCTは20分。けれどもNさんきっぱりと「無理です」。観光客も来る所なのに、かなりの急な登山道と丸太梯子が連続して予定の便を逃してしまった。
今回のルートは標高2750mの別山乗越を最高点に、欅平(590m)へ向けて基本的に下って行く。なので一日平均コース定数22と甘目に算出されてしまうきらいがあるが、神経を使い危険を伴う箇所も少なくない。これから季節が進むと、さらに雪渓通過の難易度が上がることが予想され、数字以上のレベルと認識すべきと思う。なお、ルートの最新状況については池の平小屋、阿曽原温泉小屋がその都度ネットに掲載。谷間に位置する真砂沢ロッジはネット環境がなく、上記小屋が代わって掲載している。
(追記)
8月18日、山岳警備隊より剱沢雪渓の通行について注意喚起が出ています。
https://twitter.com/toyama_sangaku
フォトギャラリー:56枚
装備・携行品
| シャツ | アンダーウェア | ダウン・化繊綿ウェア | ロングパンツ | 靴下 | レインウェア |
| 登山靴 | バックパック | スタッフバック | スパッツ・ゲイター | 水筒・テルモス | ヘッドランプ |
| 傘 | タオル | 帽子 | サングラス | 着替え | 地図 |
| コンパス | ノート・筆記用具 | カメラ | 登山計画書(控え) | 修理用具 | ツエルト |
| 健康保険証 | ホイッスル | 医療品 | 虫除け | 熊鈴・ベアスプレー | ロールペーパー |
| 非常食 | 行動食 | テーピングテープ | 軽アイゼン | トレッキングポール | 燃料 |
| カップ | クッカー | ||||
| 【その他】 携帯浄水器、ヘルメット、体温計、消毒スプレー、除菌シート、 | |||||























































