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塔ノ岳古道@バリルートで大金沢左岸尾根から直登し尊仏岩詣でを!

オガラ沢ノ頭、塔ノ岳( 関東)

パーティ: 1人 (みや さん )

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行程・コース

天候

初日:雨のち晴れ、2日目:晴れのち曇り

登山口へのアクセス

バス
その他: 往路:新松田駅→寄バス停
復路:大倉バス停→渋沢駅

この登山記録の行程

●1日目
寄(07:55)・・・林道分岐(08:39)・・・やどりき大橋(08:48)[休憩 22分]・・・寄コシバ沢分岐(11:15)・・・鍋割峠取付(11:33)[休憩 2分]・・・鍋割峠(13:02)[休憩 8分]・・・オガラ沢分岐(13:38)・・・旧鍋割峠(14:02)・・・オガラ沢ノ頭(14:07)・・・山ノ神取付(14:57)・・・尊仏ノ土平(15:04)・・・尊仏ノ土平道標@箒杉沢分岐(15:15)・・・P892(16:15)・・・棚沢出合(16:25)ビバーク
●2日目
棚沢出合(05:50)・・・P892(06:20)・・・大金沢左岸尾根取付(07:00)・・・大金沢左岸尾根取付(07:00)・・・塔ノ岳西尾根合流点(08:22)・・・塔ノ岳山頂(09:09)[休憩 51分]・・・金冷シ(10:15)・・・花立山荘(10:28)・・・茅場平(10:51)・・・戸沢(12:05)[休憩 10分@車]・・・風のつり橋(13:05)・・・大倉(13:15)

コース

総距離
約14.8km
累積標高差
上り約2,001m
下り約1,722m

高低図

GPX ダウンロード KML ダウンロード

登山記録

行動記録・感想・メモ

 ユーシンに、まだ集落があった頃、塔ノ岳のお塔参りの道として、大金沢左岸尾根から不動ノ水場まで登り、そのまま塔ノ岳の山腹を北側へトラバースし、現在の尊仏岩まで通じていたという話を聞き、今は使われなくなった、通称「大金古道」と呼ばれるルートを歩いてみたくなった。

 現在も玄倉からの林道が通行止めとなっている丹沢の山々に囲まれたこのエリアは、もっともアプローチが容易なルートとして、寄から雨山峠を越えるルートの他、鍋割峠から旧鍋割峠を経て、鍋割北尾根を山ノ神まで下り、そこからオガラ沢出合、あるいは尊仏土平へ抜けるルートがある。

 これまで長いこと、一般登山道ということになっている雨山峠経由のルートを選択してきたが、雨山峠から先が2019年の台風で大きく崩れ、白ザレの急斜面にキックステップを刻んで登らなければならず、全体的に崩落が著しいルートとなっていることから、前回の記憶が当てにならないリスクがあった。
 そのため、今年5月の蛭ヶ岳への山行から、比較的安定している鍋割北尾根からのアプローチを使う様になった。

 鍋割北尾根は、綺麗なブナの原生林で、稜線にあるブナよりも酸性雨や強風などに叩かれる事が少ないためか、倒木などが少ない様に感じられた。
 そのような美しいブナの森が黄色の紅葉に彩られている下を歩いて行きたかったため、11月の時期を選んで行くことにした。

 当初、決行予定は11月の初旬であったが、都合が付かずやや時期送りの11月中旬となってしまった。すると前半の高気圧はどこへ行ったのか、冬型へ移行し始めた天候は連続的に高低高低と目まぐるしく天気が入れ替わり、理想的な週末は期待できなかった。
 そのため、なるべく早い時期かつ核心日の好天が期待できそうな日を選ぶことにした。

 初日、新松田の駅前に降り立った時は、姉が止んで折らず、平日の雨模様ということもあって、登山客の姿は皆無だった。寄のバス停に着いた時も、登山客の姿は見えず、雨降る中、傘を差してやどりき水源林のゲートを目指して歩き始めた。幸い、雨は霧雨程度だったため、ゲートまではリラックスした散歩の様な感じに靴紐も絞めずに歩いた。
 水源林ゲート側の登山届けのポストに登山届けを投函後、装備を整え歩き出す。雨はほとんど止んでいた。

 登山道に向かう林道を歩いていると、崩れた路肩の補修作業をしている人がいたので挨拶したが、これ以降、人間に会うことはなかった。登山口で、いつもは少し山道に入って堰堤を左岸から撒いた所で川原に降りるルートを使うのだが、この日は「成長の森は川を渡った先です」という標識を見て、ちょっといつもと違う所をいってみようと思いそちらへ向かったものの、その先の川原では堰堤を負けそうな場所は見つからなかったため、元のところまで戻り、結局いつものルートで堰堤を撒いた。

 ゲートを出発して1時間程歩いた頃、沢ノ右岸の鹿柵際を歩いている時に、突然ドスンという大きな音がして、大きな黒い獣がヤブに駆け込んでいった。一瞬、熊かと思ったので動きを止めたが、黒い獣も少し先の茂みの影で息を潜めていた。静かにそちらを見ると大きなニホンカモシカで、向こうも石化けして人間をやり過ごそうとしていた。写真撮影してから足下の石を側に投げると慌ててかけだして逃げていった。
 やはり、雨の日は動物も人間に築くのが遅くなるのだと思い出し、ここから熊鈴をリンリン鳴らしながら進むことにした。

 前回、5月に来た時はガスが凄くて視界が20m弱しかなかった寄コシバ沢だったが、この日通過した時にはすっかり雨も上がって青空が見えており、見通しは良かった。しかし、この沢は豪雨の際に足長された岩が複雑な盛り上がりを見せて堆積していて、的確なルートファインディングを行わないと、余計な上り下りをしなければならなくなる。その際に浮いているしわも多く、慎重さが必要だ。

 前回、鍋割峠の取付きで誤った方へ進んでしまってかなりの時間をロスしたが、今回は天気も回復したため迷うことはなかったが、この辺りの標高になると落葉樹は概ね葉を落しているため、地面の落ち葉が多くて踏み跡が非常に分かりにくい。
 バリエーションルートでも、ある程度人が歩いている場所は、他の場所より踏まれて地面がくぼんでいるため落ち葉が溜まりやすい。そのような場所を探して歩いている内に、鍋割峠に到着した。

 鍋割峠からコース脇のロープを越えてオガラ沢ノ頭方向へ。鍋割北尾根も落ち葉が多く、踏み跡が分かり難いが基本的にヤセ尾根なので迷いそうなポイントはほぼなく、前回の通過時は雨で幹が濡れていたため気がつかなかったが、頻繁に木の幹に赤いスプレーで矢印が記載されている上、尾根の下部になると比較的真新しいピンクリボンがいくつもあって、ピンクリボンは尊仏土平まで続いていた。

 主だった丹沢の山々に囲まれた尊仏土平は、まさに丹沢のへそ。あらゆる尾根が数々の丹沢の山々につながっている。
 ここから先は初めて行く場所であり、地図や衛星写真で得た情報しかない未踏の地だ。
崩れかけた林道を熊木沢の峰へ少し戻ると箒杉沢出合に出る。林道はそこで分岐し、箒杉沢の峰へ向かっている。草に覆われた林道は川原で終わるが、川原を対岸へ渡ると棚沢の方まで続く林道が現れるのでそこを歩いた。日没まで約1時間。早く目的地に着いて、水と野営場所を確保しなければならなかった。

 箒杉沢を上流に向かって歩いて行くと、2番目の堰堤を過ぎた所で林道崩落箇所に突き当たったので川原を歩く。暗くなる前に水を確保しておこうと流れがあるだろう辺りまで行ったが、川は伏流していて流れは消えていた。残りの飲み物はポカリ1本とちょっととまずい状況だったが、地形的に周囲の山から沢が流れ込んでいるため、水音を気にしながら更に上流へ進む。
 地図上で確認できた箒杉沢左岸、三ノ沢の辺りで水音がしたので、茂みをかき分けて奥に入ると良い感じの流れを発見。水は確保できた。

 3番目の堰堤を越えた辺りで残っている林道があったので、林道に上がったがすぐに地図上では対岸に渡る道がある場所で林道がなくなった。再び川原に降りて箒杉沢を渡渉し、棚沢出合で棚沢を渡渉した。箒杉沢左岸にある林道は、棚沢に削られて断面を見せており、崩れやすい林道の切断面をよじ登ると、河畔林が広がるビバークに最適な場所を発見した。

 取りあえず、計画では大金沢出合に近いP892付近をビバーク地と考えていたが、実際にいってみた所、先程の棚沢出合の河畔林の中の方が良さそうだったので、引き返してシェルターを設営した。時間は既に日没10分前だったが、地形は西側に開けているため、予想通り日没時刻を過ぎても、そこそこ明るい時間が続いたので、ビバーク準備に支障はなかった。
 ビバークの支度が済むと、すっかり陽は落ちて真っ暗闇になった。周囲は尾根の影になって稜線の山小屋の灯は全く見えず、人工の灯は自分のヘッデンとLEDランプだけ、幸い、風もなく極端に寒くない過ごしやすい夜だった。

 夕食はアルファ化米の山菜おこわに今年になってから重宝しているレトルトの焼鳥を混ぜてチリの炊き込みご飯っぽくアレンジしたものと、汁物を兼ねたチキンラーメン、野菜摂取用にほうれん草のドライ味噌汁だ。ただ、この日はレトルト焼鳥の味に飽きてきたのか、やたらと胸焼けがしたが、チキンラーメンの味変とドライ味噌汁のほうれん草の野菜感に癒された。
 食後30分程、ウィスキーのお湯割りで晩酌し、20時には就寝したが、出入り口のメッシュを全開にして寝たのにもかかわらず、風がなかったため結露がひどく、朝起きた時には全てが湿った感じで不快だった。

 2日目、自然と3時頃に目が覚めたので、まずはお湯を沸かして甘いコーヒーを。
続いて、シェルター内の撤収を開始した。シェルター内の結露は拭くと雫が落ちて中のものを逆に濡らすので、シュラフ等は内壁に当てない様に静かに取り出し、そのままザックに詰め込んだ。こんな時に80Lもあるザックだとパッキングに気を遣わなくて作業が早い。
 シェルター内が空になったら中の結露を拭き上げて乾かすため荷放置し、その間にお湯を入れて置いたドライフードのマカロニペペロンチーノを食べ、ワカメのドライ味噌汁を飲む。
 最後にバーナー類を収納し、シェルターを撤収したが、全然乾いていないので、自然乾燥を期待ザックの背面にバンドで取り付けた。

 日の出の30分前になると空がだいぶ明るくなってきたので出発し、大金沢出合へ向かった。途中、箒杉沢のせせらぎでポカリの空のペットボトルに水を汲み、経口補水液の粉末を溶かす。
 大金沢出合の堰堤に揚がり、後ろを見ると雪を被った真っ白な富士山が見えた。天気は快晴、絶好のアタック日和だ。大金沢は堰堤の先で小金沢が合流しており、その間にあるのが大金沢左岸尾根で、取付きとなる鞍部が樹間に透けて見えていた。
 しかし、小金沢出合の辺りは豪雨で地形がかなり荒れていて、ルートファインディングに苦労した。最終的に少し離れた場所までの取り、高い所まで登って全体を見渡すことで、弱点を見つけることができたが、計画より1時間遅れの大金沢左岸尾根の取付き到着だった。

 大金沢左岸尾根は、蛭ヶ岳南稜ほど旧ではなく、危険箇所もほとんどない。1250m付近で岩が露出した区間があり、一部がヤセ尾根となっていて滑落の危険があったこと、さらに一部が崩落した箇所もあるものの、全体的には歩きやすかった。
 なお、大金沢左岸尾根の記録で紹介されている「左ユーシン・右塔ノ岳」と書かれた石碑は標高1254m地点にあり、遭難碑ということで背面を確認したが苔などで文字が不鮮明であり判読できなかった。
 これまでは右手に西尾根の稜線が見えるだけであったが、1300m辺りからは前方の西尾根との合流となる鞍部が樹間に透けて見える様になった。合流の手前はやや急傾斜だが、歩ける所を登っていけば西尾根の登山道と合流できる。

 西尾根の登山道に合流し、階段が出てくると旧にきつく感じた。これまでは自分の歩幅で歩けていたのが、階段ではペースが乱される性だろう。
 不動ノ水場は相変わらず、チョロチョロとした感じに水が流れていた。すぐに出発したが、少し上がった所で西尾根を登ってきたらしい登山者が不動ノ水場で休憩しているのを見た。久しぶりに見る人間だった。
 情報では不動ノ水場から少し上がった場所に紫苑物がんへのアプローチがあるとの事だったが、踏み跡に沿って行くと崩落箇所に突き当たり、良い感じに行けそうにない。
 その後、塔ノ岳山頂に到着するまで尊仏岩へアプローチできそうな箇所を探したものの、見つからなかった。

 9時9分、塔ノ岳山頂に到着、概ね計画通り。大金沢左岸尾根が思った以上に歩き易く、時間が短縮できた感じだ。休憩せずに山頂から丹沢山方面へ向かい、尊仏岩への経路を探しに向かう。途中、明確な踏み跡を見つけ入ってみたが、更に先の丹沢山への登山道に出てしまった。闇雲に探してもらちがあかないので、再調査ごとライすることにして、塔ノ岳山頂に戻ることにした。

 塔ノ岳山頂に戻り、尊仏山荘で休憩。コーヒーを注文したが、程よい酸味と豊かな香りでやたらと美味く感じた。少し浅めのローストなのかな?
 尊仏山荘を出ると、予報通り雲が出始め蛭ヶ岳の山頂にも雲がかかり始めていた。
 あとは下山、茅場平の天神尾根分岐まで慎重に下る。
 天神尾根は初めて通ったが、完全な杉の植林で、階段などが作られていたが多くの場所で大雨での濁流に削られ、段差が1m異常ある様な箇所も多く一般登山道というレベルではないと感じた。
 途中、川崎から来たという下りの登山者と出会い、話をしながら戸沢まで下った。その方が車で下まで送って頂けるということなので風の吊り橋まで乗せてもらい大倉に到着。
 バスの時間まで、YAMACAFEで鶏豆乳うどんを食べて大倉を後にした。

 今回の丹沢もほとんどが登山道で無い道という事もあって、負傷して行動不能に至った場合、絶望的に発見してもらえる可能性は低い。そのため、エスケープルートを含め、登山計画書どおりの行動と、エイヤーで行かない慎重な行動が必要だと感じた。また、棚沢出合を起点とした ルートはいくつも考えられるので、今後も未知の丹沢を開拓していきたい。

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装備・携行品

シャツ アンダーウェア ダウン・化繊綿ウェア ロングパンツ 靴下 レインウェア
登山靴 バックパック スタッフバック 水筒・テルモス ヘッドランプ
タオル 帽子 グローブ サングラス 着替え 地図
コンパス 腕時計 カメラ 登山計画書(控え) ナイフ 修理用具
健康保険証 ホイッスル 医療品 熊鈴・ベアスプレー ロールペーパー 非常食
行動食 テーピングテープ トレッキングポール GPS機器 ストーブ 燃料
ライター カップ クッカー カトラリー
【その他】 装備重量:約12.0kg(水@ポカリ500mlペットボトル×2)
食料:1日昼食@ランチパック×2、夕食@アルファ化米+チキンラーメン+レトルト焼鳥
   2日朝食@カルボナーラ+ランチパック×1、昼食@行動食
非常食:えいようかん×3、シリアルバー×2、柿ピー×3、塩飴多数
水:1.0L@ポカリ500ml×2(使用量/保有量@初日:0.8L/1.0L、2日目:0.6L/1.0L)
ガス使用量:51g(調理回数2回+コーヒー沸かし)
気温:日中:11~12.5℃程度、夜:8℃、明け方:6.5℃
その他:エアピロー、インナーシュラフ、浄水器(未使用)

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登った山

塔ノ岳

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1,491m

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