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極上の雪山をゆく越後の名峰 守門岳

大岳、青雲岳(あおくもだけ)、守門岳(袴岳)、藤平山( 上信越)

パーティ: 1人 (Yamakaeru さん )

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行程・コース

天候

晴れ

登山口へのアクセス

マイカー
その他: 一般的な保久礼コースを目指す。冬季は積雪による道路封鎖で、登山口の駐車場まで行くことができない。二分橋付近手前の最終除雪ポイントが駐車場となる。一部、除雪されて5~6台程度が駐車できるようになっている。直ぐに一杯になるので、あとは雪の壁に沿うように縦列駐車するしかないため、できるだけ早めに到着することをお勧めする。最終除雪ポイントのGPS座標は「37°23'48.1"N 139°05'18.5"E」(GoogleMapでルート案内が可能)。
トイレはないので、宿泊は道の駅「とちお」がお勧め。

この登山記録の行程

最終除雪ポイント(05:28)・・・<保久礼コース>・・・保久礼登山口・・・保久礼小屋(06:46)・・・キビタキ避難小屋(07:09)・・・大岳(08:01)・・・青雲岳・・・守門岳(袴岳)(09:14)(昼食&休憩~10:02)・・・<藤平山コース>・・・藤平山・・・大池登山口・・・最終除雪ポイント(12:56)

コース

総距離
約16.7km
累積標高差
上り約1,555m
下り約1,555m

高低図

GPX ダウンロード KML ダウンロード

登山記録

行動記録・感想・メモ

ハンドルを握る手に自然と力が入る。
雪山をやっていていつか行ってみたいと思っていた山へついに足を向ける。
並いる百名山を横目に、目指すは二百名山、冬山の雄。その名も「守門岳」。
約1kmに渡る東洋一と呼ばれる美しい雪庇で知られている。
この時期は山間部の道が冬季封鎖されており、最短で越境することができず、一旦、福島へ周りこみ新潟をぐるりと回り込むようにはしらなければならず、総走行距離300km強はとても遠い。
土曜日の丸一日を移動に使い、道の駅「とちお」で車中泊をして、前日は早めの就寝で疲れをとることにした。
冬季の守門岳は登山口まで近づけず、二分橋付近の最終除雪ポイントが駐車場になっている。そこには僅かな駐車スペースしか確保されていないため、いつも争奪戦で、あとは邪魔にならないよう除雪された道にずらりと縦列駐車が続くという。
少しでも早く行こうと4時過ぎに現地に到着。幸いリ一台分の駐車スペースがギリギ余っていた。
まだ薄暗かったが5時に出発しようと準備を整えた。ただ、その前に、車をできる限りバックさせておこうと、後ろの雪壁を削って停め直そうとしたが、これがいけなかった。雪壁にソフトタッチで触れるくらいにバックをさせたつもりが、意外に勢いがついてしまい、ガシッと雪壁に突っ込んでしまった。降りて確認すると、バンパーがベコっと凹んでいる。念願の雪山に登るというのに、出発前から心まで凹ませてしまった。
そんなこんなで余計な時間を使ってしまい、出発は5時半を過ぎていた。もうヘッドライトが要らないほど明るくなっていた。確か今日の日の出は5時40分過ぎ。もう10分ほどで完全に明るくなるだろう。
先だっての西吾妻山ではスノーシューをチョイスしたため、今回は「ワカンだ!」と意気込んでザックの後ろに装備してきたが、まだ雪面が硬かったアイゼンを履いて行くことにした。
小さな橋を渡ってすぐのY字分岐(トレース)を左へと進む。最も一般的な保久礼コースを使って登って行く。
昨日、福島から新潟へ越境する際、季節外れの雪が吹き荒れていた。山にも積もったようで、新雪がとても気持ちが良かった。
序盤、樹林帯を縫うように緩やかな斜面を登って行く。
名物「保久礼小屋」へ到着。
かまぼこのような形がとてもユニークだ。
更に進むと、屋根までがスッポリと雪に埋まったキビタキ小屋があった。これを過ぎると、斜度が一気に増して本格的な登山モードへ突入していく。
森林限界を超えて尾根をひたすら直登していく。
空へ向かって延びる真っ白な道。汗が吹き出してくるほどの斜面で、急登ハンターとしては嬉しくて仕方がない。
振り返ると遠くに日本海が見えていた。
周囲にはまだ雪が残った山々が連なって海原の波のように広がっている。なんて雄大な景色だろうか。土地勘がないので、はっきりとは分からないが、おそらく特徴的な形と存在感のある山は、越後三山だろうか。遠くには妙高山らしきものも見える。この風景を見ることができただけでも、はるばるやってきた価値がある。
頂の先に昇ってきた太陽が重なって、目を細めながら登って行く。これもまた絵になる光景だ。
頂に到着。
守門岳は標高 1,537mの袴岳を主峰に青雲岳、大岳との三峰からなる越後の名峰の一つと言われている(中津又岳を入れる場合もあり)。保久礼(ほっきゅれい)コースの直登尾根を登ってたどり着いた最初の頂が大岳。
山頂は広く緩やかで頂という雰囲気はない。釣鐘が設置してあると、何かの記事で読んだことがあるが、今はすっぽりと雪原の中に埋まっていた。代わりに誰かが風よけに作った雪洞が掘られていた。カメラマンの撮影用かも知れない。なぜなら、大岳は守門岳で一番の雪庇のビューポイントになってるからだ。
実際に、大岳の頂に立ってみると、まさに恋焦がれていた風景が目の前に広がっていた。手が届くように近い。例年よりも季節の移り変わりが早いのか、ポスター等で見るようなはっきりとした雪庇は消えかかっていたが、それでも東洋一と呼ばれるだけあって美しいくカーブを描いたラインが見事だった。
写真を撮っていると、下の方から雲が競り上がってきて、あっという間に視界が遮られてしまった。多分、雲が競り上がってきたのは一時的なものだと思うが、ギリギリのタイミングで雪庇を見ることができて、また、競り上がってきた雲との躍動感ある写真が撮れて逆に嬉しかった。
登山開始時に出会ったおじさんが、「多くの登山者は大岳で雪庇を見たら折り返してしまう」と言っていたが、こんな天国で折り返すなんてとんでもない。
守門岳の雪庇は約1km。ということは1kmに渡って天空のロードが続いていると言うことだ。これを堪能しない手はない。
中津又岳にも足を延ばそうかとも考えたが、帰りの時間もあるので、ここは計画通り青雲岳へと向かうことにした。
大岳から青雲岳へは、一旦、激しく降り、V字のごとく激坂を登り返すコースとなる。
競り上がってきた雲に突入すると、完全に視界がゼロになり、「滑落したらこのまま地の底まで落ちていくんじゃないか」と、結構なスリル感があった。
雲を突き抜けて、青雲岳へ到着。名前にぴったりな場所で、真っ白な雪に映えるように真っ青な空が広がっていた。特に、雪原から眺める上越県境に連なる山稜素晴らしく、深くどこまでも広がっている景色に感動が止まらない。小さな山の一つひとつの名前は分からないが、どれをとっても登ってみたくなるような魅力的な山容をしていた。
大パノラマを堪能しながら天空の雪原を歩く。こんなに感動の雪山にはなかなか出会えない。久しぶりに「もう、死んでもいいな」と独り言がこぼれた。こんな日はいつも何かある。。。笑
荒島岳の最後の登りを彷彿とさせるような斜面を登っていく。クラスト状になった雪面に、キックステップでアイゼンの歯を打ち込み、ピッケルでバランスを整えながら軽快に登って行く。「うん、いい感じ」。
登り切った先に「守門岳」と書かれた標識があった。最高峰の袴岳に登頂。一般的にはここを守門岳という。
陽射しは温かかったが、風がとても強かった。一瞬で手がかじかんだので慌ててグローブをはめた。
本当は、袴岳の頂から分岐して藤平山コースを使って下山しようと考えていたが、競り上がってくる雲が濃密で、全く先が見えず躊躇してしまった。GPSがあるため無視界でも歩ける自信はあったが、土地勘のある山ならいざ知れず、何かあった時のリカバリーを考えるとさすがに初めての山ではリスク回避を重視すべきだと断念した。
歩いてきた道を戻って、袴岳の直下で風をよけながら昼食とする。持ってきた手巻き寿司とおいなりさんが美味しかった。
風さえなければぽかぽか陽気の再考の天気。目の前には雪山の大パノラマが広がっている。できるものなら1時間でも長くここにいたいものだ。
名残惜しいと思った瞬間、もう一度、山頂からの景色がどうしても見たくなった。見上げるような袴岳の壁が、「もう一度登るのか?」と笑っているように見えたが、でも、滅多に来れる場予ではないので、もう一度、心に刻んでおきたいと登り返すことにした。
土地勘がなく山座同定ができないのが悔しいくらいに良い山がいっぱいあった。
飯豊山くらいは分かるだろうと思っていたが、遠くの方は霞が強くてよく分からなかった。
充分、堪能してから下山モードに入る。
昼食をとったポイントを過ぎて、どんどん降っていくと、下の方から大勢の登山者が列を作って登ってきた。楽しそうな笑い声が聞こえてくる。こんな素敵な場所はやっぱり仲間と来て感動を分かち合いたいものだと羨ましく思った。
何気なく横を見たら、さっきまで雲で覆われていた藤平山コースの尾根がくっきり表れていた。完全に雲が取れている。
「なんだよ~、いまさら遅いよ~」と呟いたが、緩やかにカーブを描きながら延びている素敵な尾根を見た瞬間、「やっぱりあの尾根を降ろう!」と身体を翻した。
かくして今日三度目の頂を踏み、そして藤平山コースを降っていく。
人気のある保久礼コースと違い、こちらは僅かにBCのスキー跡があるだけだった。
ワカンに履き替えようかとも思ったが、斜度があるうちはアイゼンの方が良いと思い、そのまま降っていく。
踏み跡のない斜面に最初のトレースを作っていく、雪山歩きで最も幸せな行為だと思う。
「青い空に雪原! 最高!!」と思ったとたん、世界が暗転した。
一瞬の出来事でわが身になにが起こったのかさえも分からなかったが、雪の壁に囲まれているの自分を確認して「クラックに落ちた」と気が付いた。周囲には雪崩れていた場所が沢山あったので、当たり前のようにクラックに注意しながら歩いていたが、昨日の雪が覆い隠したのか、完全なる雪原でクラックの予兆も見つけることができなかった。
お笑い番組でよく芸能人が落とし穴に落にはまっているが、まさに落ちる瞬間までそんな未来があるなんて気づくことはできなかった。
クラックに落ちること自体、そんなに珍しいことではなく、胸まですっぽりと落ちた経験は過去にも何度かあったが、さすがに頭まで落ち込んだクラックは初めてだった。
それにしても綺麗に落ちて良かった。誤ってアイゼンで自分の足でも切れば大変なことになる。不幸中の幸いだった。
ピッケルとアイゼンを使い穴から這い上がる。改めて穴を上から見て苦笑した。
気を取り直して、少し降ったところで腰を下ろし、デザートタイムにした。
持ってきたプリンの蓋を開けると、甘い香りがした。スプーンがないため割りばしで食べる。山男っぽくて良い。いや、山男はプリンなんぞ食べないか。笑。
キャラメルの優しい甘みが、身体に染み渡った。
「下山したくないなぁ」と思える風景に出会えた喜びを噛みしめながら再び歩き出す。
藤平山コースは、降っている最中も常に雄大な山々の風景が真横にあって、下山しているというより縦走している感覚に近く、とても素晴らしいこーすだった。ただ、下山してからが長く、くねくねと森を抜けたり林道を歩いたりと、山頂での感動が薄れるくらい延々歩かされたのは残念で、スタート時点に渡った橋が見えた時は、「やっと着いたか!」とため息が出るほどだった。
でも、こんなに良い雪山はない。今度は仲間を連れて雪庇の絶景を一緒に楽しみたいと思った。
帰りの道中で、何度か車を停めて守門岳を眺めた。
周囲の山に比べても別格に白く、神々しい美しさを放っている。下山したばっかりというのに、もう登りたくなってしまった。

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  • 青と白の世界 どう見えるかは、自分の心レベル次第ですね。

  • この山はでも、仲間と感動を共有したい山でしたね。

登った山

守門岳

守門岳

1,537m

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