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ドリームチームで行く夢の笈ヶ岳

山毛欅尾山、(冬瓜山)、シリタカ山、小笈ヶ岳、笈ヶ岳( 東海・北陸・近畿)

パーティ: 5人 (Yamakaeru さん 、ほか4名)

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行程・コース

天候

晴れ

登山口へのアクセス

マイカー
その他: 白山ホワイトロード料金所手前の白山自然保護センターから登るルート緒もあるが、この時期はまだ道が封鎖されている点。少しでも長く味わいたいと言うことで、白山一里野温泉スキー場側から登る。RCプラザというラジコンのサーキット場横の駐車場に停めさせていただくのが一般な模様。トイレはなし。GPS座標(37.036967,139.907483)。

この登山記録の行程

駐車場(04:04)・・・砂防ダム(04:24)・・・導水管取付き・・・山毛欅尾山(06:59)・・・小笈ヶ岳(11:39)・・・笈ヶ岳(11:48)(休憩~12:12)・・・小笈ヶ岳・・・シリタカ山(13:18)・・・冬瓜山の頂手前(13:48)・・・山毛欅尾山・・・導水管・・・砂防ダム・・・駐車場(20:08)

コース

総距離
約22.6km
累積標高差
上り約2,551m
下り約2,550m

高低図

GPX ダウンロード KML ダウンロード

登山記録

行動記録・感想・メモ

野坂山で冷え切った身体をお風呂で温め、軽く仮眠をとって出発に備える。
間違いなく今年最大級のハードなイベントになるであろう、長年、温めてきた「笈ヶ岳」への企画をついに発動する。できる限り万全の体調で挑もうと、布団に潜り込んだがどうにもアドレナリンが放出されてしっかり眠ることはできなかった。
笈ヶ岳(おいづるがたけ)。標高1,841 m。
二百名山であり、岐阜百名山の一つ。冬季にしか登れないという山屋にとって幻の山と呼ばれている。かの深田久弥が、「もし選定中に登っていれば、日本百名山に間違いなく選んでいたであろう」と言わしめた山だ。しかし、山懐深く、行程の長さや2,000mを超える高低差からしても、そう簡単に踏み込んで良い山ではない。
その最強の山へ、我らドリームチームで挑むべく、茨城・千葉・福井から仲間が集まった。
深夜、高速を飛ばして、一里野スキー場近くにある登山口駐車場へ向かう。
ちょうど一年前にも「百四丈滝」を目指してやってきたのを思い出す。
白山の加賀禅定道を雪まみれになりながら登っている時に見た、海原のように広がる山塊の中にあって一際強烈な存在感を放つ笈ヶ岳が、とても強烈で忘れられない。必ず一年後に登り、今度は笈ヶ岳の頂から白山を見てみたいと心に誓った。
いよいよ、その夢を実現すべく山の冒険が始まる。
準備を整えて4時に歩き出す。
車道脇から外れて、林道を使って川沿いに進む。真っ暗闇の中、ヘッドライトの光だけが揺らめいていた。
林道は直ぐに終点を迎え、コンクリートの階段が出現する。突き当りの階段を使ってさらに降っていくと、再び登りになった。
「なんだか変ですね?」と言っていたところに、上の方からヘッドライトが2つ降りてくるのが見えた。
「こっちじゃないみたいですよ」と言う声かけが無ければ、自分たちも同じミスを起こしていたに違いない。暗闇だから見落としても仕方がないが、そもそも看板も目印も何もないため、正直、GPSのログがないと分岐点が斑滅出来なかったと思う。
さて、ここから先が問題だった。
もし、世の中に「えぐい登山口ランキング」なるものがあれば、笈ヶ岳一里野側からの登り口は、間違いなくダントツの一位になると確信する。
分岐を過ぎて10mも進むとまず巨大な砂防ダムが出現した。噂では聞いていたが、のっけからアスレチックのようなルートとなる。
幅2m程の砂防ダムの上を通って対岸に渡るようだが、両岸の部分が競り上がっているため、ダムの上を歩くためには、一旦、設置されている垂直梯子を使って昇り降りをしなければならない。
明るい時ならまだしも、暗闇の中でやるものではない。
体感的には5m程にも感じる長い階段。足元は見えず、階段を降り切ったすぐ脇はダムの切り立ったところ。下の方にはゴーゴーと激しく音を立てて流れる川が薄っすらと見える。
対岸側の梯子を昇り、砂防ダムの上へ出たと思ったら、今度は垂直のような斜面が待ち構えていた。緊張が解けないまま、設置されていたロープを使って斜面上の林道までよじ登る。粘土質で足元が滑るため、踏ん張りが全くきかず、とても危険だった。
林道に出た時はホッとしすぎて、地図も確認せずに右の登り方面へと進んでしまった。
が、正解は左へと折れて少し降ったところ。しかもそこには次なる試練が待ち構えている。
数100m程進むと、右手に巨大な導水管が右手に見えてきた。山登りをしていると導水管脇の点検道を使って山に入ることはよくあることだ。しかし、ここの導水管の階段は今まで見たこともないけた違いのレベルで、通称「1,000階段」と呼ばれている。
ライトで照らすと不気味な階段が暗闇の中、空に向かって延びている。歩いてみると分かるが、まるでバイオハザードに出てきそうな世界観で、個人的には楽しいが昇るには地獄の階段となる。
1,000段と言ってもあくまで感覚的な表現だろうとなめて挑むが、歩いてもあるいても一向に上端にたどり着かない。山登りと違って階段は足への負担が大きいので、登り切る頃には足がパンパンになってしまった。
導水管を昇り切ったところに、大量の水を蓄えた貯水槽があった。この貯水槽を過ぎるとようやく本格的な登山開始となる。
登って行くと、徐々に雪が見られるようになってきた。
いつの間にか、太陽が昇ってきたのか、周囲の山がモルゲンロートで真っ赤に染まっていた。この時期にあって未だ周囲は山々は深い雪に覆われていた。
最初に目指す「山毛欅尾山」までは、貯水槽からの急登を一気に登って行く。
ちなみに山毛欅尾山とは、なかなか読めるものではないが、「ブナオ山」と読む。はなっから覚える気がない自分は終始「ヤマケ山」と呼んでいた。笑
山毛欅尾山の山頂に着いた瞬間、全員から「うぉー」と大きな感嘆の声があがった。
先日の積雪もあってか、頂は見事な樹氷に囲まれていた。まさかこの時期にこれだけの樹氷に出会えるとは思ってもいなかった。
急登で乱れた息を整えて、樹氷の間を縫うように雪面を歩いていく。
平らな頂だと喜んでいたのもつかの間。コースは尾根伝いに、一旦、大きく降って登り返しに延びていた。
痩せ尾根が多く、藪に阻まれながら歩きにくいことこの上ない。この時期でこれだけ苦戦するのだから、夏時期はきっと数分で心が折れてしまうに違いない。
途中、右手に純白の大きな山が見えた。
際立って白い。説明不要の白山。ついにご対面だ。
早く笈ヶ岳の頂に登り、真正面から白山を眺めたいと、歩く足にも力が入った。
しかし、ここからが長かった。。。
少し進んだところで、ようやく目的の笈ヶ岳を捉えた。
尖った頂を中心に、翼を広げたまるで鷲羽岳を連想させるかのような成端な山容。
見とれて「カッコいい」と、自然に声が出てしまった。数時間後には、あの頂点に立っているのかと思うと、ゾクゾクした。
冬瓜山(かもうりやま)とシリタカ山を見上げるように、斜面をトラバースしながら進む。
雪がしっかりと締まっているからよいが、かなりの急斜面なので滑落したら谷底まで一気に落ちていきそうだった。この付近から頂までは、そんな感じのトラバースと直登の連続で、アイゼンとピッケルを駆使しながらの緊張の連続だった。それが体力を一段と削っていった。
経験上、目視した瞬間に、おおよその距離と到達時間が把握できるが、笈ヶ岳にいたっては、感覚が狂うほどの大きなスケールで、思った以上にアップダウンが激しくなかなか近づくことができなかった。予想はしていたが、やはりタフで手ごわい山だ。
ようやく笈ヶ岳の稜線に出る。
この時点でうっとりするような最高の景色が広がっていた。
偽ピークを越えて小笈ヶ岳が見えるとラストスパート。
小笈ヶ岳から笈ヶ岳までは10分程度で到達する。
頂に着いた瞬間のガッツポーズ。感無量だった。
あらためて白山を眺める。純白の堂々たる姿にシビレる。昨年、登った百四丈滝までのルートが手に取るようにわかる。おそらく総合的には笈ヶ岳よりもハードだったと思う。
それにしても笈ヶ岳からの眺望は素晴らしい。360度、雪を冠した山々に囲まれている。遠くには霞の中で北アルプスがぼんやりと浮き上がっていた。
小さな頂きのスペースを陣取り、景色を堪能しながら昼食をとる。
栃木の四天王の一つ「大佐飛山」に持っていった雪達磨製造機(笑)を今回もザックに忍ばせてきたので、登頂記念に高崎雪達磨を一個作り、笈ヶ岳の標識の上にちょこんと乗せてみた。ちょっとしたいたずら。
帰りの時間もあるので休憩もそこそこに急いでザックを背負い折り返す。1時間はゆっくりと余韻を楽しみたかったが仕方がない。
下りルートには、迂回して登ってきたシリタカ山を通ってみた。茶碗一杯につめたご飯をひっくり返したような丸い頂をしている山で、その頂の広い雪原から見る白山は最高に綺麗だった。白山はここから眺めるのが一番かもしれない。
シリタカ山から冬瓜山を通り登って来た道へ復帰する予定が、冬瓜山の手前でトラブル発生。
雪崩が酷くて進めないと判断して、冬瓜山の頂を諦めて手前から無理やり斜面を降ることにした。最初は余裕だったが、徐々に斜度が増し危険度もアップしていく。
オーバーハング気味の斜面で、上の方からは完全に視認できなかったが、大きく割れたクラックが数か所隠れ潜んでいてとても危険だった。もし、滑落してクラックに落ちれば大けがでは済まなかっただろう。
できれば別なルートを探したいところだったが、既に登り返す訳にもいかないところまで来てしまったので、慎重に時間をかけながら降っていく。メンバーのスキルであれば問題はなかったが、今回、最も緊張したところとなった。
降り切ったところでコースに復帰。
その後もいろいろあって、思うように歩みが進まず、気が付いたら山毛欅尾山のところで、夕方を迎えてしまった。かなりの計画オーバーだった。
暮れていく山々。朝見たモルゲンロートよりも真っ赤に染まっていて、神秘的で目が離せない。夜間、歩くことにはなんの抵抗もないのに、暮れていく夕陽を見ると、心寂しく少し不安になるのはどうしてだろうか。
と、いつまでも感傷に浸っている訳にはいかなかったので、足元が見えるうちに山毛欅尾山の激坂を降ってしまおうと加速する。
予想はしていたが、積もっていた新雪が解けて、ぬかるみ状態の危険極まりない坂が待ち受けていた。気を抜くと瞬時に転んでしまいそうで、泥だらけだけはなんとしてでも避けたかった。
それでもかなりの速度で降り切り、なんとか貯水槽に到達することができた。
急ぎながら降っていく中でも、登山道脇に絨毯のように群生するカタクリには心が和まされた。開花には少し早いようで蕾のものが多かったが、きっと時期になると辺り一面を紫に染めることだろう。
完全に陽が暮れて真っ暗になったところで、導水管の階段地獄が始まる。
ライトで先を照らしても先が全く見えない。ぼんやり照らされた階段が地の底まで延びているようで不気味極まりない。
「よくこんなところ登ったものだ」。
導水管を降り切り、ふと時計を見たら8時手前だった。「えっ、こんなにかかったのか」と驚きだった。
最後の難所、ドロドロ壁と砂防ダムの垂直梯子を乗り越えて、駐車場へと向かう。
ふと見上げると、夜空にいっぱいの星座がきらめいていた。
念願の笈ヶ岳。
想像以上に手ごわかったけど、それを上回る絶景に出会えた。
その絶景を大切な山仲間と共有できたことが最高の喜びだった。
また、いつか、、、

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みんなのコメント

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  • 恐怖、不安も含めて最高の景色でした。ありがとございます!

  • 緊張の連続でしたね。
    キンチョーの冬
    ^_^

  • スマホで探せなくてパソコンでやっと見つけることができました。
    文章と写真で感動が蘇りました。ありがとうございます。
    困難でしたがそれだけに記憶に残る山行になりました。
    冬瓜平から見た笈ケ岳の雄姿は絶対に忘れないです。
    下山した時は二度と登らないだろう思ったのにもう一度登りたいと思うのはなぜでしょう。

  • 同感です。^_^
    極上の山へ最強のメンバーで行ったからですね。
    再び、ドリームチームで挑み、さらなる感動を共有したいですね。

登った山

笈ヶ岳

笈ヶ岳

1,841m

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最適日数
日帰り
コースタイプ
往復
歩行時間
0時間
難易度
★★★★
コース定数
31
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