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大峯山一日修験体験②:修験の道を大峯山寺へ

山上ヶ岳( 東海・北陸・近畿)

パーティ: 10人 (犬山好人 さん 、ほか9名)

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行程・コース

天候

くもり

登山口へのアクセス

その他

この登山記録の行程

龍泉寺・・・清浄大橋(08:15)・・・洞辻茶屋(10:28/10:46)・・・鐘掛岩(11:20)・・・西の覗き(11:40)・・・龍泉寺宿坊(12:20/12:50)・・・裏行場・・・大峯山寺本堂(14:12)・・・龍泉寺宿坊(14:47)・・・清浄大橋(16:06)・・・龍泉寺

コース

総距離
約10.1km
累積標高差
上り約1,159m
下り約1,159m
コースタイム
標準4時間25
自己6時間56
倍率1.57

高低図

標準タイム比較グラフ

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登山記録

行動記録・感想・メモ

 修験道の開祖役行者(役小角)が発見した湧き水が起源とされる龍泉寺に集合。登山ガイド兼コースリーダーにあたる先達(せんだつ)は大師山妙法寺の大塚知明住職、参加者10名とサポート役3名の計14名が揃う。30~40代の比較的若い人も多い。
 まずは龍王の滝にて水行を行う。落差数メートル程度だが、まともに受けると脳震とうを起こしかねないとのことで、肩から背中・首筋を滝に打たれる。深く息を吐き、それとともに体内の汚れを洗い流すことをイメージする。6月とはいえ早朝の水は冷たく、その勢いに体がよろけることも。

 先達から通常の登山とは違い、本日は修行である旨の話がある。一、修行中の私語は禁止。二、すれ違いの挨拶は「ようおまいり」(よくお参りになりました)。三、先達の判断、言うことに従う。以下本文中のかっこ内は大塚先達の言葉(大意)。
 登山口の清浄大橋を渡ると女人結界門がある。いまも女人禁制を貫く大峯山(山上ヶ岳)であるが、その起こりは役行者の母親が山中の修行について来るのを止めるため、と謂われる。
「女性差別ではなく、親思いから来た事なのです」

 先達の法螺貝の音が谷間に響き、いつもとは違う厳かな山道である。
「この音で山の精霊や獣に私たちの存在を知らせるのです」
「仲間とおしゃべりしながらも楽しいですが、こうして黙々と歩けば鳥や虫や風や、さまざまな山の音に気づかされます」 いつも単独行動の私は、わが意を得たり。
 奥駈道と出会う洞辻茶屋で休憩。「もし何かあったときに助けてくれるのはここの人たち。けれどもここでご商売ができなくなれば、助けてくれるひとはいません。できれば買い物などしてあげてください。」
 出迎え不動の前で読経、松清茶屋から道は二手に分かれる。右はおもに階段の下山用、左が表行場の道で、油こぼしと呼ばれる濡れた岩のクサリ場を通過。
 次に鐘掛岩というほぼ垂直の岩場が現れる(一般向け巻道あり)。ここでは足の置き方手の突き方を、文字通り手取り足取り教えてくれる。要は三点確保の原則で、全員無事に登り切ると先達に続けて『アビラウンケンソワカ』と歌詠みを行う。

 いよいよ西の覗きである。写真でよく目にする、断崖絶壁から上半身を乗り出す行である。今回知ったことが二点ある。この行は新客と呼ばれる初参加者のみ、つまり一生に一回だけ。もう一点、縄は固定されているわけではなく、先達が握っているだけ・・・いのちを預けるのだ。初参加の3名が順に、縄に両肩を通して腹這いになる。先達ともうひとりが足を持って前方に押し出す。ここでじたばたしては却って危ないので、しっかりと合掌して腕を伸ばす。「親を大切にするか」「仕事に励むか」などの問いかけに、谷間に響き渡るよう大声ではいと返答する。率直に言って、腹這いなので高度感はそれほどでもなく、立って覗き込む方が足が震えて怖いと思う。ただ、先達の発する緊張感ある声音と体を徐々に前にせり出される、なんともいえない感覚は得難い体験であった。

 大峯山寺の等覚門をくぐり、龍泉寺宿坊でお昼休憩。大きな握り飯3個入りの行者弁当、お茶・お味噌汁をいただいた。きょうは雨の心配はなく風も穏やか、参加者の顔ぶれから裏行場に向かうとの先達の判断がくだされる。二度三度と来ている人も、だれも行ったことがない裏の行場。伸びた草を分け入った先には勝手に入るべからずとあり、初参加でここまで体験できるのは運がよかったというべきか・・・。
 不動岩、胎内くぐり岩、東の覗き、蟻の戸渡など緊張を強いられる難所の連続に、楽しいと言っては語弊があるが、アドレナリンが出まくる感じ。皆の表情も高揚してくる。上級者向けルートなのにセルフビレイなし、怖気づいても後戻りはできない。初心者でも何でも無我夢中でついて行くしかない。最後の平等岩の前は少し広くなっており、歌詠みで高ぶった気持ちを落ち着ける。

 こうして予想外の裏行場を無事に終えた我々は、大峯山寺の本堂に迎え入れられた。鉢巻きに御朱印をいただき、履物を脱いで薄暗い内陣に導かれる。そこには前鬼後鬼を従え、水鏡に映る己が姿を彫ったと伝えられる役行者像が祀られていた。ここまで至る道中にも大小様々な役行者像が祀られており、前を通る時はお参り(合掌一礼)をと先達の指示であった。最後にお目にした行者様は、瘦せこけてあばら骨もあらわに、ぎろりと玉眼が光るリアルなお姿であった。(この役行者像は洞川温泉の山上ヶ岳歴史博物館にレプリカが展示されている) 
 下山後、龍泉寺にて護摩行を行い、本日の修行体験は終了した。身に余るというか、あまりにも中身の濃い一日であった。
「つらい、苦しいのが修行なのではありません。達成感が得られるのが修行です。」
 登山に置き換えても通じると思った。

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フォトギャラリー:11枚

朝もやの大峯山と洞川の町

龍泉寺の滝行場

コアジサイは紫陽花のなかで唯一香りをもつ

油こぼしのクサリ場

裏行場

裏行場

裏行場にて

大峯山寺本堂

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装備・携行品

登った山

山上ヶ岳

山上ヶ岳

1,719m

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山上ヶ岳 奈良県

「男たちの山」――世界遺産の聖地を歩く

最適日数
日帰り
コースタイプ
周回
歩行時間
7時間50分
難易度
★★
コース定数
34
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