行程・コース
天候
晴れ
登山口へのアクセス
マイカー
その他:
カーナビには「相ノ沢キャンプ場」とセットするとよい。キャンプ場の駐車場がそのまま無料で使える。トイレあり。
この登山記録の行程
駐車場(13:08)・・・第1展望台(13:47)・・・石がま散策路分岐(13:53)・・・第2展望台(14:04)・・・鞍掛山(14:21)・・・第2展望台・・・分岐点・・・林道合流(15:03)・・・駐車場(15:19)
高低図
登山記録
行動記録・感想・メモ
東北冬の遠征1日目、姫神山登山を終えて盛岡市内へ戻って来た。
「バナナマンのせっかくグルメ」ではないが、やっぱり盛岡に来たなら「盛岡冷麺」と、山頂でカップラーメンを食べたにも関わらず、猛烈に冷麺が食べたくなってしまった。そして盛岡冷麺と言えば、「ぴょんぴょん舎」とミーハーながら相場は決まっている。
早速、車を走らせて「ぴょんぴょん舎稲荷町本店」へ向かった。
テーブルに運ばれてきた盛岡冷麺を見て悦に入る。半透明の滑らかな麺に室内の照明が反射してキラキラと輝いていた。箸で崩すのが勿体ないくらい、芸術品のように盛り付けされていたが、一旦口にするともはや止めることはできず「あっ」という間に平らげてしまった。
実はこの店、秋田駒ヶ岳下山後にも立ち寄ったことがある大のお気に入りのお店だった。
食後に温かいお茶を貰い、余韻に浸りながら午後の計画を立てる。
翌日のスケジュールに向けて秋田へ移動しなければならなかったが、お昼になったばかりでまだ時間はたっぷりある。そうなるともう一座登れそうだと「にやり」とした。
実は、昔から岩手県にはもう一つどうしても登りたい山があった。その名前は「鞍掛山」。低山過ぎて、わざわざこの山を目的に遠征することは無かったため今まで叶わなかったが、それでもいつかは登りたいと思っていた。
理由は2つ。
地元福井県のお隣石川県(小松市)にも同じ名前の山があることから、鞍掛山と言う名前そのものに愛着を持っていた。茶臼山や愛宕山のように、鞍掛山も同じ名前を持つ山が全国に21座あるという。いずれも地元民から愛されていて、小松の鞍掛山では「滝ヶ原鞍掛山を愛する会」という山の会が設けられており、愛するあまりに全国の鞍掛山を行脚しているという。実際に、茨城県の日立市にも僅か248mの小さな鞍掛山があるが、ちゃんと会が寄贈した山の標識が建てられているのを見たことがある。そんな親近感から鞍掛山と聞くとつい反応してしまうのだ。
しかし、一番の理由は「宮沢賢治」にある。
岩手県の「宮沢賢治記念館」には何度も足を運んでいるほど、宮沢賢治は自分の人生に大きな影響を与えた詩人。その賢治が好んで何度も登ったと言われているのが鞍掛山で、代表作「春と修羅」にも、ひとり雪の小岩井農場を訪れ際に作った「くらかけの雪」という詩が掲載されている。
ちなみに鞍掛山(標高897m)は、岩手山南東の麓にあるふたこぶの山で、見る角度によっては本当に鞍のように見える面白い形状をしている。前述の通り宮沢賢治との繋がりが深いことから、宮沢賢治をモチーフとした名勝「イーハトーブの風景地」の一つとして国の名勝指定を受けている。イーハトーブとは宮沢賢治による造語で、簡単に言うと「ドリームランド」という意味を持つが、「銀河鉄道の夜」から連想するように自分にとっては、「冒険」のそのものを指して、若かりし頃にその言葉を胸に星座だけを頼りに方角を確認しながら旅をした頃を冒険の原点として今も思い出す。
従って、今日の鞍掛山に登る機を絶対に逃してはいけないと思った。
13時ちょうどに登山口となる「相の沢キャンプ場駐車場」に到着。
準備は既に整っているので、そのまま出発をする。
姫神山同様、こちらも駐車場のところから、ふかふかとした積雪があった。
暫く森の中を水平移動で進んでいく。
緩やかだったのはつかの間で、蔵の形状をしているだけあって、斜面にたどり着くと一気に駆け上がっていく。
13時40分、斜面に終わりが見えた。
樹々のトンネルの向こうに青空が見えている。まるで真っ青な空へ続く「ヘブンズゲート」のようだと思った。あながちその表現は間違いではなく、登り切ったところには「第一展望台」があった。立ってみると眼下にどこまでも広がる雪原が見えた。遠くには屏風のように黒い山並みが続いていた。自然豊かで、まさにイーハトーブと呼ぶにふさわしい風景だった。(実際のイーハトーブ登録地は山頂にある)
その第一展望台から左側を見ると、これから向かう鞍掛山の頂がちょこんと見えていた。ここまで来ると残りはほぼ水平移動のようなもの。残り1.2kmを山頂に向けて歩き出す。
13時59分、第二展望台へ到着。
柵のところに、誰かが作った小さな雪だるまが5、6体置かれていた。とても愛らしかったので、雪だるまを背景に眺望を写真に収めた。遠くに見えている街並みはきっと盛岡の市街地で、その奥に見える特徴的な山は懐かしの早池峰山だろう。
再び歩みを進めると、今度は左手側に圧倒的な容積を持つ大きな山が見えて来た。樹々の間からなので、全体は確認できなかったが、そのスケール感から紛れもなく岩手山であることがすぐに分かった。
14時15分、左へ巻くように最後の斜面を登り切ると、その岩手山が真正面に「ドーン」と現れた。まるで覆いかぶさってくるような迫力だった。ここが鞍掛山の山頂で、6畳ほどのスペースには、鞍掛山と書かれた標識が建っていた。山座同定の台も設置されていたが、こちらは修復中なのかカバーで覆われていた。
眺望は素晴らしく、広々と遠くまで見渡せた。
午前中に登った姫神山からは、あるほどはっきり見えていた岩手山も、今は山頂に鉛色の雲がかかっていた。逆に振り向くと平野の向こうに成端な三角錐をした姫神山が見えたが、こちらは午前中の雲が取れて、山頂まで綺麗に青空に映えていた。自分が行く先々に雲がつきまとっているんじゃないかと、思わず苦笑してしまった。
持ってきたペットボトルを一気飲みしながら、暫し、目の前に展開されている東北の風景に魅入る。「思えば遠くに来たもんだ」だと自然と言葉が出た。
下山は、第二展望台を過ぎた分岐点で左へと曲がり、来た道とは違うルートで降った。
降り切ると林道に合流して、あとは牧場「相の沢牧野」に沿うようにゆっくりと歩いて、14時57分に駐車場へと戻った。
ファミリー向けの山としても有名で多くの登山者が来ていたが、想像していた以上に素晴らしい景色が手軽に楽しめた。ここは絶対の登るべき山だと思った。























