行程・コース
天候
晴れ
登山口へのアクセス
マイカー
その他:
霧降高原キスゲ平園地の駐車場を利用。24時間開放で無料。第1~第3駐車場あり全部で約170台。第3駐車場は少し離れているため第1かその下にある第2が良いが、日の出スポットでもあるため早朝から観光客が沢山来るため、早めの到着をお勧めする。トイレはレストハウスが使用できるが、早朝は閉鎖されているため注意。
この登山記録の行程
霧降高原レストハウス(05:38)・・・小丸山(06:14)・・・赤薙山(07:14)・・・赤薙奥社跡(08:11)・・・一里ヶ曽根独標(09:18)・・・女峰山(11:17)・・・(昼食)・・・一里ヶ曽根独標(12:49)・・・赤薙奥社跡(13:44)・・・赤薙山(14:21)・・・小丸山(14:59)・・・霧降高原レストハウス(15:52)
高低図
登山記録
行動記録・感想・メモ
ピッケルをガシガシ使って、「当分、山はいいよ!」と思えるようなハードな山登りがしたくなり、「距離」、「累積高低」、「雪山としての難易度」の3要素から日光の「女峰山」を選定した。
丁度1年前にも、同じ衝動でTRYしたが、独りラッセルで奮闘したものの、山頂目前で時間切れとなり撤退となった苦い経験がある。どうせなら忘れ物(頂)を回収しようと思った。
前回と同様に「道の駅 日光街道ニコニコ本陣」で車中泊を行い、ルーチンとなった行きつけの喜多方ラーメン「達磨」で塩肉盛りそばを食べて翌日に備える。
前回と違うのは行動開始の時間のみ。敗因の一つだった時間切れを反省して、スケジュールを1時間早めて、5時前に「霧降高原キスゲ平園地」へ向かった。
少し前の記録では17時間かけて登った方がいたようだったが、天候条件的にもさすがにそこまではかからないだろうと踏んだ。
暗闇でゲーターやワカンを装着しているうちに、なんやかんやで時間が過ぎてしまったが、5時38分に出発を開始。
日の出目的で集まってきているバカモノ。いや失礼、奇声を上げて騒いでいる若者を横目に、黙々と斜面を登って行く。
これは毎回お約束の言い回しになっているが、知らない人のために解説をしておくと、霧降高原キスゲ平園地には「天空の回廊」と呼ばれるものもの凄く長い階段があり、それを登り切った先に設置されている展望台からは、それはもう最高の景色が楽しめる。そこから最高の日の出を見ようと、休日ともなると多くの若者が暗いうちから集まり一種お祭り騒ぎになっている。時にはカーステレオから爆音で音楽を流す、それこそバカモノもいて、朝の静寂さが台無しになってしまう残念な時もある。
早く展望台を越えて静寂さを取り戻したいと頑張って登って行くが、駐スタート地点から展望台までが、実はコースの中でも最もキツい斜面で、温まり切っていない身体にはかなり応える。
なんとか展望台を過ぎて小丸山まで来ると、叫んでいる若者の声が遠くに聞こえるようになってきた。
振り向くと暗闇に浮かぶ街の明かりがだいぶ薄くなり、代わりに遠くの空が徐々に赤く染まり出した。日の出が近い。
尾根沿いに真っすぐに延びた登山道。霧降高原から登るコースの中で、ここの部分が一番のお気に入りだ。遮る樹木が無く、高度を上げていくと、まるで空を飛んでいるかのような眺望が楽しめる。天空の回廊と呼ばれる見晴らしの良い縦走コースは幾つもあるが、これだけ空に向かって登って行くジェットコースターのような高揚感と、高度を上げた時の解放感が味わえる楽しめるコースはなかなかないと思う。
振り向くともうあと10分もしないうちに太陽が生まれでるであろう証拠に、空の赤さが最高潮に増しそこに黄色を混ぜたような複雑な色をしていた。
左手眼下には、ゴツゴツした山塊がその光を受けて暗闇に浮かび上がって見えた。武骨でカッコいい山容は那須の連山だ。
天気予報では快晴と聞いていたが、まだ気流が安定していないのか、全体的に雲が張り出していた。太陽が昇り青空が広がることを祈りながら登って行く。
ふと左手を見ると、三角形の成端な形をした山が見えた。朝日を受けて頂の雪が赤く染まっている。
周囲を寄せ付けない大きさを持つその山は、まぎれもなく日本一の「富士山」。条件の良い日に何度か見たことはあるが、今日の富士山は格段にくっきりと綺麗に見えた。これだけでも今日来た価値が充分にあると言えた。
樹林帯ゾーンに突入し、樹々の間を縫うように登って行く。
雪質はサラサラとしていて良かったが、明らかに去年登った時よりも積雪が少ないと感じた。
暗いうちに集中して高度を上げたこともあり、思っていたよりも早く赤薙山に到着した。
ここへ来ると、いつも祠の向こう側に見える男体山をのぞき込む。いつものように迫力のある山容だったが、空が曇り気味なこともあって少し薄暗い感じだった。
赤薙山の祠に向かい、今日の登頂と安全登山を祈願してから再び歩き出す。
ここから先は、キツメのアップダウンを繰り返しながら高度を上げていくことになる。
多くの登山者が赤薙山で折り返すように、ここから先は登山レベルのギアが一段高くなる。このルート自体は、後輩の雪山トレーニングを含めると何度も足を運んでいるため、完全に地形は把握しているが、気を引き締めて「行くか!」と気合を入れてから足を踏み入れた。
岩場も所々に増えてきて、ワカンの取り回しに苦労したが、爪をひっかけながら強引に登って行く。
赤薙奥社跡に到着。
赤薙奥社跡を越えると更に登山者が減るため、トレースが薄くなった。
隣に見えるピークに向かい、大きく降って登り返していく。登り返した後はほぼ水平移動となり、ゆっくりと歩きやすくなるが、樹林帯に囲まれて見晴らしが利かない分、体感的に距離が長く直ぐに飽きてしまう。
行く手を阻む枝をよけながら歩くが、時々、よけ切れずに枝が頭に突き刺さる。気が付くとニットの帽子から毛糸がはみ出しズタズタになっていた。お気に入りだっただけにショックだった。
樹林帯を抜けると、一気に視界が開けて真正面に大きなピークが飛び込んできた。そこから左へと峰が続き、さらに高く鋭く尖ったピークへと続いているのが見えた。
ここが一里ヶ曽根独標。
鋭く尖ったピークが女峰山の頂、、、なら良いが、実際の頂は更に奥にあって一里ヶ曽根独標からは見えない。
ここまで「登山レベルのギアが云々」と書いてきたが、健脚の方でも冬はここで引き返す人が多く、一里ヶ曽根独標から先は難易度が飛躍的に高まり、距離以上に技術と体力が必要となる、去年もまさに、ここ一から先は完全にトレースがない状態で、黙々とラッセルを下が、尖ったピークを越したところで頂を目前にタイムアウトとなり折り返した。
リベンジとなる今日の戦いはまさにこれからが本番と言える。
水分補給のためいったん休憩を入れてから歩き出す。
まずは目の前の大きなピークに向かって、グッと降って登り返す。
気合を入れて踏み出したが、さすがにここ最近、天気が安定していたこともあり僅かながらトレースが残っていた。
「ラッセル地獄、上等!」と挑むつもりだったが、気合空回りで少々ガッカリしてしまった。ラッセルをせずに済んでガッカリという表現も変だが、この辺が山屋=マゾと言われる所以かも知れない。
とか、カッコつけてみたが、歩き出すと「トレースがあるって幸せだぁー」と鼻歌交じりに斜面を降っていく。相当の距離を歩いて来たため、多少なりとも足には疲労がたまっているが、雪を蹴散らし軽快に降っていくとテンションも自然と上がる。
個人的には誰も歩いていない雪面をラッセルしながら歩くのが雪山の醍醐味だと思っているが、実際にはトレースがあるのとないのでは、大きな違いがある。更に雪質や天候などの条件が異なれば、予測がつかないほど雪山は変化する。以前に普段であれば1時間で登る山を、腰を越える新雪が降った時に登ったことがあるが、頂までのフルラッセルで実に5倍の5時間を要したことがある。ゆえに雪山をやる時には、地図や天候を押さえておくことは必須として、更に山に入った際に雪質や気温・湿度等現地でしか分からない情報を、いち早く収集し体感しておくことが肝要だ。
足元が安定しないワカンに苦労しながら、垂直のロープ場をなんとかよじ登り尖ったピークを攻略。ついに頂を捉えた。まだ遥か遠くにも見えるが、目測にして残り1時間も要さないだろう。
軽いアップダウンを繰り返しながら頂に向かい稜線を進んでいく。
斜面で乱れた息を整えようと、頭を上げた目の先に小さな祠が見えた。
見覚えのある祠だった。
その5m上に目指していた女峰山の標柱が立っていた。
久しぶりの再会だった。
女峰山は、男体山をお父さんとする日光ファミリーの中で、お母さんと称される山であるが、「かかあ天下」なのかその道のりはどのコースをとってもファミリーいち険しい。標高2,483mの頂に達するにはそれなりの苦労を越えていく必要があるため、頂に立った時の達成感は半端ない。まさに今日の目的「当分、山はいいよ!」にピッタリな山だ。
苦労して辿り着いたご褒美に、目の前には、女峰山とほぼ同じ高さを持つ男体山(標高2,486m)と、関東以北で最も高い日光白根山(標高2,578 m)の雄大な姿が間近で堪能できる。それぞれ趣が異なるが、どれも男っぽい魅力的な山容をしている。
登ってくる途中で見た富士山は、雲の中に隠れてしまい見えなくなってしまったが、代わりに富士山並みの存在感を放つ、純白の浅間山が遠くに見えた。更に、尾瀬の至仏山や燧ヶ岳や、会津駒ケ岳も良く見えた。山座同定まではできなかったが、おそらく位置的には巻機山や越後駒ケ岳等も視界に入っていることだろう。
見渡す限りの深い山並み。新潟や福島の県境がもう目と鼻の先にあると思うと、ワクワクが止まらず、もっと先まで歩きたくなる。あまりの絶景に、下山するのが名残惜しくなり、時間を忘れて暫し風景に魅入ってしまった。
この景色と時間を独占できるなんて、山屋冥利に尽きる良い山旅だった。
かくしてリベンジと「当分、山はいいよ!」企画は大成功するが、その一週間後にはすっかり忘れて雪山に出かけてしまう山バカだった。



















