2月下旬の八ヶ岳バリエーションルートで実感! 新しいアクティブインシュレーション、ファイントラック「ポリゴンアクト」の魅力とは
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高機能なアイテムを企画し、国内での製造を徹底している「ファイントラック(finetrack)」から、この冬のシーズンに向けた新しいアイテム「ポリゴンアクト」が登場した。昨今、増えてきた「行動保温着」「アクティブインシュレーション」と呼ばれるアイテムだ。
千葉県習志野市津田沼にある老舗登山用品店「ヨシキ&P2」のベテランスタッフ、吉野時男さんが、発売に先立って、2月から「ポリゴンアクト」をテスト。当時の山行では、なんと通気性を目視することができたのだとか。気になるアクティブインシュレーション「ポリゴンアクト」の魅力を伺った。
―― さっそく「ポリゴンアクト」の魅力を伺いたいのですが、その前に、ポリゴンアクトはいわゆる"アクティブインシュレーション”にカテゴライズされるウェアです。聞きなれない言葉だと思うので、まずはこのアクティブインシュレーションについて教えてください。
「アクティブインシュレーション」とは、通気性がある中綿入りのウェアを意味します。従来の中綿入りウェアには通気性がなく、保温力の高さから主に“休憩時などに着る保温着”として使われてきました。しかしアクティブインシュレーションには通気性があるため、行動中に着ることが可能。いわゆる“ミッドレイヤー”として活躍します。
―― アクティブインシュレーションは、進化した保温着ととらえて間違いないでしょうか? これさえあれば一枚で保温着とミッドレイヤーを兼用できそうです。
これはよく勘違いされる点なので丁寧な説明が必要ですね。アクティブインシュレーションは従来の保温着と同じ中綿入りのウェアですが、単に保温性だけで比べると、通気性を持たないダウンジャケットや化繊綿のジャケットの方が優れています。あくまで行動中に着るミッドレイヤーととらえてください。
―― 冬山のミッドレイヤーで真っ先に思い浮かぶウェアにフリースがあります。フリースとアクティブインシュレーションでは何が違いますか?
一般的に冬山登山で選ばれる中厚手のフリースと比べると、概ね軽量でかさばらない点が特徴といえます。かさばらないというのは収納状態が小さくなるのはもちろん、装備を詰めたバックパックのわずかな隙間に押し込みやすいという意味合いもありますね。さらに比較すると、通気性と汗処理能力に優れている。これは実際の山行で実感することがでました。
―― 通気性も汗処理能力も、どちらも目で確認できる特徴ではありません。どのように実感できたのか、ポリゴンアクトを試した状況について具体的に教えてください。
今年の2月から3月にかけて、八ヶ岳にある峰の松目沢や広河原沢左俣などのアイスクライミングルートで、フードが付かない「ポリゴンアクトジャケット」を何度か試しました。中でもいちばん活躍したのが、今年の2月下旬に同じく八ヶ岳にあるバリエーションルートのひとつ、阿弥陀岳北稜に友人たちと登ったときです。当時の気温は出発時でマイナス12℃くらい。ベースレイヤーの上にポリゴンアクトジャケットを着て、さらにハードシェルジャケットを羽織り、美濃戸山荘から行者小屋に向けて出発しました。
―― まさにミッドレイヤーとしてポリゴンアクトを着たのですね。ハードシェルジャケットは着たまま行者小屋まで歩いたのでしょうか?
スタート時は体が温まっていないのでハードシェルジャケットを着ましたが、少し歩くと体温が上昇してきて寒さにも慣れてきたので、ハードシェルジャケットを脱いでベースレイヤーとポリゴンアクトジャケットだけで再び歩き始めました。
―― 上着が2枚だけになって寒くなかったですか?
ポリゴンアクトの保温性と、フリースよりも優れると感じた防風性のおかげで、寒いと感じることはありませんでした。そして通気性のおかげで暑くなりすぎることもなかったです。この通気性については印象深いエピソードがあって、後ろを歩いていた友人から「背中から白い湯気が出てる」と言われたんです。休憩中ならともかく、行動中もウェア内の湿気が外に逃げていく様子を確認できるウェアは、ほかにないと思います。
―― それは面白いエピソードですね。ポリゴンアクトの通気性の高さが具体的にイメージできます。汗処理能力についても同様のエピソードがありますか?
行者小屋に到着すると、ここから先の行程がバリエーションルートになるので、ハーネスを装着するなど、装備を整えないといけません。行動が一度ストップするのでハードシェルジャケットを再び羽織るのですが、汗でミッドレイヤーが濡れていると、止まっている間に体が冷えてしまうんです。そのため到着の30〜40分前からペースを落として、できるだけ汗をかかないように歩くんですが、それでも背中はどうしても濡れてしまう。フリースを着ていたときは湿った感がずっと残っていました。それがポリゴンアクトジャケットでは、準備している間にじわじわと乾くような感覚があったんです。目で見て確かめることはできませんでしたが、フリースとの違いを実感できました。
―― 水分を補給したり行動食を食べたり、休憩中でもウェアが濡れたままだと体が冷えてしまいますよね。いわゆる汗冷えという現象ですが、素早く汗を処理してくれるポリゴンアクトなら、汗冷えも回避することができそうです。
この汗処理能力の高さは、ポリゴンアクトが吸汗性と拡散性にも優れているからでしょう。ポリゴンアクトの肌面の生地は汗を素早く吸い込み、さらに吸収した汗を広範囲に拡散させます。これが最終的に汗の乾きやすさにつながるわけです。優れた吸汗拡散性もポリゴンアクトの特徴ですね。
―― 行者小屋までの話でポリゴンアクトの特徴を理解できた気がします。ほかにも、阿弥陀岳北稜に取り付いて山頂へ向かう行程で感じた良さはありますか?
行者小屋から出発して稜線に取り付くと樹林帯を抜けるため、冷たい風に晒されます。そこでいいと思ったのが、ハードシェルジャケットを上に着ると、しっかりと保温してくれる点です。山頂付近の気温はマイナス14℃くらいでしたが、行動が完全にストップするビレイ中でも保温着を着る必要がなく、そのまま山頂へ抜けることができました。
―― 通気性が高いので、逆に保温性は低いのかなと気になっていたのですが、その心配はなさそうですね。メーカーがおすすめする厳冬期にも安心して使えそうです。ちなみに、ほかのアクティブインシュレーションとの違いを挙げるとしたら、どの点が特徴になるでしょうか?
ポリゴンアクトにはベンチレーションが付いています。ファイントラックのウェアの代名詞ともいえるリンクベントが両サイドにデザインされているので、万が一ウェア内に熱がこもっても素早く換気することが可能です。また、カッティングがいいので腕を伸ばしても袖口がずり落ちることがなく、クライミング中も快適に行動できました。
―― 逆に、ここは改善してほしいと思った点はありますか?
今回試したポリゴンアクトジャケットは、ハードシェルジャケットの内側に着ることを考えてデザインされているため、チェストポケットはあるのですが、ハンドポケットが付いていません。これが唯一不便に感じました。ただ、フード付きの「ポリゴンアクトフーディ」は、アウターとしての使用も考慮しているため、ハンドポケットがデザインされています。ポリゴンアクトを選ぶときのポイントですね。
―― 話を伺って、ポリゴンアクトはバリエーションルートを目指す登山者におすすめのウェアだと感じました。
私がポリゴンアクトジャケットを試したストップ&ゴーを繰り返すバリエーションルートを登る山行以外に、トレースがない斜面をラッセルするような、行動量が多くなる計画にも最適だと思います。またアクティビティーだけでなく、たとえば行動するとすぐに体温が上昇してしまう暑がりな方や、人よりも発汗量が多い方にもポリゴンアクトはおすすめです。逆に、トレースの上をゆっくり歩くような山行や、もともと汗をかきづらい人、フリースのミッドレイヤーに不満がない人には、ポリゴンアクトの良さは感じにくいかもしれません。
―― ポリゴンアクトの良さを感じるか感じないかは、山行形態や個人の体質によって変わるのですね。
これはどのウェアにもいえることですが、万能なアイテムは存在しません。それはポリゴンアクトも同様です。ほかのミッドレイヤーと比べて、すべてにおいて優れているものではなく、冬山登山のレイヤリングを考える上で、選択肢を広げてくれる新しいアイテムと考えるといいでしょう。
―― どうしたらポリゴンアクトの良さを自身の山行で活かすことができますか?
まずはポリゴンアクトの特徴を正しく理解することが大切です。中厚手のフリースと比べると、通気性が高く汗処理能力にも優れ、ハードシェルジャケットを上に着ることで充分な保温性も得ることができる。これがポリゴンアクトの良さです。そして、これらが自身の山行形態や体質と照らし合わせて、メリットになるか考えてみましょう。その過程を経てポリゴンアクトを購入すれば、きっと今後の冬山登山で手放せない頼れる相棒になるはずです。
構成・文=吉澤英晃、写真=水谷和政、協力=finetrack
finetrack ポリゴンアクトフーディ
通気性と濡れに強い保温性を備える”行動保温着(ミッドレイヤー)”。さらに汗処理能力が特筆すべき特徴で、独自開発した裏地が汗を吸収し素早く拡散。行動中も常にドライな着心地を提供する。
- 価格
- 29,600円(税別)
- サイズ
- S、M、L、XL
- カラー
- 4色
- 重量
- 370g
プロフィール
吉野時男
1974年生まれ。沢登りからトレッキング、冬はアイスクライミングまで、満遍なく山のアクティビティーを楽しんでいる。実感を伴った商品説明に定評があり、指名して来店する顧客も多い。その人柄と豊富な知識で雑誌などにも頻繁に登場し、幅広い活動でお店のアピールに奮闘している。
■山とスキーのアウトドアショップ ヨシキ&2P
店内には、道具に精通したスタッフ自らが展示会に足を運び、厳選した専門用品が所狭しと並んでいる。種類も豊富で、トレッキングからクライミング、沢登り、トレイルランニング、山スキーなど、様々なアクティビティーに応えてくれる。
Webサイト:http://www.yoshiki-p2.com/
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特別インタビューやルポタージュなど、山と溪谷社からの特別コンテンツです。