夜の山歩きにハマるのはどんな人?ヤマケイ新書『ナイトハイクのススメ』著者インタビュー②

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

異世界のような夜の山に魅了され、約30年にわたってナイトハイクに親しんできた中野純さん。ヤマケイ新書『ナイトハイクのススメ 夜山に遊び、闇を楽しむ』では、ナイトハイクの極意を紹介している。どんな人が夜の山歩きにハマっているのか、危険はないのか。中野さんに聞いた。

写真=中野 純

行列のできる店より、空いている店が好きな人におすすめ

――どんな人がナイトハイクにハマっていますか?

写真家、建築家、デザイナー、イラストレーターなど、ビジュアル関係の仕事の人が多いように感じます。先ほど言ったように、視覚情報が極端に減るなかで歩くので、ビジュアル面で、なにかしらの刺激があるのかもしれません。建築家の方で、ナイトハイクを経験してからは「光」をとりいれるのではなく、「闇」をどのようにとりいれるかを考えるようになったという方もいます。あとは好奇心旺盛な方、そして慎重な方ですね。そして私自身がそうなんですが、行列のできる店より、空いている店が好きな人。

――それはどういう意味でしょう?

行列のできる店はおいしいかもしれないけど、わざわざ並んでまでは食べたくない。それなら空いている店に入りたい。でも、空いている店がまずいかというと、必ずしもそうとは限らないじゃないですか。逆にとてもおいしかったりする。ナイトハイクもそうなんです。ほとんど人に会わない。人気の山のように、登山道で渋滞することはない。でも、めちゃ楽しくって、おもしろい。

――つまりナイトハイクとは、行列はないけど、入ってみたらとてもおいしい店である、ということですね(笑)。続いて、中野さんのこれまでのナイトハイク体験をおうかがいします。いちばん印象に残っているナイトハイクはどこを歩いたときのものですか?

最も印象的なのは八丈島の三原山の森です。葉っぱが光っていたんです。落ち葉がぼーっと光っている。まだよくわかっていないきのこの菌糸が付着して発光しているらしいんですが、明らかに光っているけど、少し離れるとはっきりしなくなる。そして夜の洞窟。現実と幻想の境を体験させてくれました。

ホタルの幼虫の光跡
NEXT ナイトハイクの危険と不思議体験
1 2

プロフィール

中野 純(なかの・じゅん)

1961年、東京都生まれ。「闇」に関する著作を数多く発表しつつ、ナイトハイクや夜散歩など闇歩きガイドとしても活躍。主な著書に『闇で味わう日本文学 失われた闇と月を求めて』(笠間書院)、『「闇学」入門』(集英社新書)、『闇と暮らす。』(誠文堂新光社)、『庶民に愛された地獄信仰の謎』(講談社+α新書)、『東京「夜」散歩』(講談社)、『闇を歩く』(光文社 知恵の森文庫)、『月で遊ぶ』(アスペクト)、など。東京造形大学非常勤講師。

Yamakei Online Special Contents

特別インタビューやルポタージュなど、山と溪谷社からの特別コンテンツです。

編集部おすすめ記事