高山植物の楽園を
未来へ残すためにやるべきこと尾瀬保護財団
文=大関直樹 写真提供=尾瀬保護財団
[PR]2025.09.29
1995年、オーバーユースによる自然破壊の危機感から、尾瀬保護財団が設立された。登山道や湿原の荒廃、水質悪化、交通渋滞など、尾瀬の自然に大きな負荷がかかっていたためである。
財団設立以前、尾瀬の山々でも特に至仏山は、高山植物の宝庫として多くの登山者が訪れる一方、植生荒廃や裸地化が深刻に進んでいた。89年には一部登山道が閉鎖されるまでに。そんな状況から科学的調査に基づく保全計画が策定された。同財団は、そんな尾瀬の自然を守るため、利用者への啓発活動や関係機関との連携による保全を進めてきた。
現在でも、登山道の一方通行化や残雪期の登山道閉鎖、携帯トイレやポールキャップの使用推奨など、自然への負荷を減らす取り組みが続いている。
限られた人員と財源のなかで行なわれる活動は、登山者の理解と協力によって支えられている。現在は、かつてのようなオーバーユースは見られなくなったが、至仏山の豊かな自然を次世代につなぐためにも、ルールを守り、自然と共に歩む意識が求められる。
残雪期の至仏山で登山道閉鎖期間を設定
至仏山では毎年5月上旬から6月末にかけて、登山道が閉鎖される。これは融雪期に踏み荒らされやすい植生を保護し、登山道周辺の荒廃を防ぐため。閉鎖期間の判断は、4月中旬に行なわれる現地調査に基づき、至仏山保全対策会議の委員が残雪状況を確認したうえで行なっている。ゴールデンウィーク前後は雪解けの状況を見ながら、植生保護と安全確保の観点から重点植生保護区域と危険区域を設定。登山者や山スキーヤーに向けてフライヤーを配布し、適切な行動を促す啓発活動を行なっている。
至仏山の東面登山道を「上り専用」区間に
至仏山の山ノ鼻から山頂へ向かう東面登山道は、植生保護と安全確保のため「上り専用」とされている(山ノ鼻~森林限界は除く)。この登山道は急勾配が続くうえに、滑りやすい蛇紋岩が多いため、下山時には登山道を外れ脇道の植生を踏むリスクが高いエリアとなっているからだ。
至仏山や笠ヶ岳の登山道における柵の設置
尾瀬保護財団では、群馬県から委託を受けて至仏山や笠ヶ岳などで登山道からの踏み出しを防ぐ柵を設置。このような活動により、かつて傷んだ植生が少しずつ回復し始めている。このような長い年月のかかる地道な活動は、美しい自然を未来へつないでいくための大切な一歩だ。
関連リンク
問合せ先
尾瀬保護財団
https://oze-fnd.or.jp/






