秋山の多くの時間で着ていられる! finetrackのインサレーション「ポリゴン2UL」を、フリーライターの森山憲一さんが、北八ヶ岳でインプレッション

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北海道・東北、アルプスの山々を皮切りに、各地の山で紅葉シーズンが始まった。朝晩と日中の気温差、歩行中と休憩中に感じる寒暖の差が激しく、秋山を快適に過ごすためにも、インサレーションウェアが欠かせない。

この秋、「finetrack(ファイントラック)」から発売されたインサレーション「ポリゴン2UL」。独自開発のシート状素材「ファインポリゴン」の重ねる枚数を変えることで保温力にバリエーションをもたせるポリゴンシリーズは、ウェア、シュラフなどいくつかのラインナップがある。

今回、山と溪谷社の山岳雑誌・書籍編集のOBであり、現在は各種の山岳雑誌や、ウェブメディアで活躍しているフリーライターの森山憲一さんに、「ポリゴン2UL」のフィールドインプレッションをお願いした。

登山経験、アウトドア経験が豊富で、これまでに様々な登山用品に触れてきた森山さんの視点で、紅葉の始まった北八ヶ岳で着用してもらい、「ポリゴン2UL」の使用感を語ってもらった。

 

北八ヶ岳ロープウェイを降り、標高差があまりない雨池峠を通過し、岩山の三ツ岳から北横岳へ周回した。

「本来、この時期、このくらいの標高があれば、もっと涼しいはずなんですけど……。9月も末なのに、今日は気温が高いです。それでも標高が2400mあるので、インプレッションには適しているでしょう。finetrackによると、この『ポリゴン2UL』という商品は、行動保温着、つまり行動中も着っぱなしでいける中間着、という位置づけです。なので、寒くなってから着るのではなく、なるべく着たままで歩いてみました」

「『ポリゴン2UL』は初代モデルを持っていて、濡れることが前提の沢登りや、明らかに天気が悪く、雨に降られると予想される山行で重宝してきました。なぜなら『ポリゴン2UL』は、濡れても保温力が下がりにくく、乾くのが早い、というメリットがあるからです。この夏も、北アルプスの雲ノ平への3日間の山行があったのですが、ずっと天気が悪く、激しく降られました。レインウェアの下に初代モデルの『ポリゴン2UL』を着て行動しましたが、気兼ねなく着ることができます。これがダウンのインサレーションだったら、着ないで我慢します。雨でも気兼ねなく使える、という精神的なメリットはとても大きいですね」

着心地が格段によくなった、と語る森山さん


雨の山行や、沢登り以外でも、テントの結露や朝露、あるいは自分の汗など、山の中で濡れる、湿気るというシチュエーションは多い。「ポリゴン2UL」はそんな時でも、濡れを気にせず着用できるアイテムだといえる。

「今回は、その『ポリゴン2UL』がリニューアルしたということで、一日、インプレッションをしたわけですが、最初に結論を言ってしまうと、『着心地がよくなった!』というのが、一番の印象です。どの部分、どのパーツが、というよりも、ジャケット全体として、着心地がよく、フィット感もよかったですね」

森山さん自身は、仕事で「ポリゴン4」という保温着も着たことがあるそうだが、「ポリゴン2UL」は、重量(軽さ)、嵩(ウェアの厚み)、保温性のバランスがちょうどよく「これが一番、汎用性が高い」と評価している。

光を通すほどの薄さ。ウェア内部のシート状保温素材「ファインポリゴン」が透けてみえる


「もうひとつのポイントは、『着たときの軽さ』でしょうか。保温力を出すための『ファインポリゴン』自体は変わっていないと思うのですが、着心地が格段によくなって、軽く着られる、というのを感じました」

「また、前モデルがインナーで着ることを前提に作られていたのに対し、新しいモデルは、アウターとしても違和感なく、かっこよく着られるように改良されていました。初代モデルより表生地が滑らかで、全体に『シュッとしている』と言ったらよいでしょうか」

森山さんが持ってきてくれた初代モデルとの比較。
写真のグレーの方が、初代モデルの表地、ブルーが最新モデルの表地。

 

化繊Tシャツより早く乾く!? 濡れに強い「ポリゴン2UL」

秋は一日の気温差が激しい。行動中は汗をかくほど暑くなり、休憩時や朝晩は寒くなる。不要なときは、コンパクトに持ち運べる、というのも、インサレーションを選ぶポイントだ。

「コンパクトさについては、これで十分小さいし、持っていくのにためらわれるような大きさではないですね」

収納状態で500mlのペットボトルと比較。ザックの隙間にスッと収まるサイズだ


もちろん、コンパクトさ、着たときの温かさ、軽さを単純に比較すれば、ダウン(羽毛)をつかったアイテムに軍配が上がる。

ただ、finetrackのポリゴンシリーズの長所は、濡れた時、湿気った時にも、ロフトを維持して保温性が落ちにくいこと。濡れに強いメリットは、山行が長くなるほど表れてくるだろう。

内ポケットにもなる、付属の収納袋に収納できる


「最近、化繊綿のアイテムは各社から出ていて、一昔前に比べると随分コンパクトになっていますね。その中でもfinetrackのポリゴンが優位な点は、圧倒的に乾くのが早い、ということ。実体験で言いますが、Tシャツなんかと比べても、中間着の『ポリゴン2UL』のほうが早く乾くのではないか、と思うことがあります。ここが他社の化繊綿と比較したときの一番のポイントでしょう」

紅葉シーズン目前の北八ヶ岳でインプレッションを行った


細かいところをさらに見ていこう。生地に水滴を落としてみると、コロコロと水玉になって落ちていった。

「適度な撥水でちょっとした雨をはじいてくれて、アウターとして着るならこのくらいの撥水力がほしいところです。初代モデルの表生地と比べると、つるんとした滑らかな素材感で、風を通しにくい印象でした。このバランスはちょうどよいと思います」

表生地が適度な撥水をするのに加えて、内側の保温素材「ファインポリゴン」は、水を含みにくい素材でできている。ウェアとしての速乾性や、濡れても保温性を維持することにつながっている。

表生地に水滴を垂らすとこのように撥水した


「細かいところですが、襟がしっかり立つように、高さやパターンが改良されています。初代モデルでは、インナー使いが前提でした。新しいモデルは、山小屋やテント場などで、アウターとしても着られるよう設計しているのでしょう。襟を立てれば風も避けられます」

襟が高く、しっかり立つことで、稜線の冷たい風を避けられる


アウターとしても使えるという点では、適度な防風性や撥水性があった方がいい。着っぱなしにするには適していると言えるだろう。

また、中綿が入った中間着は、着っぱなしだと汗もかくし、身体が熱くもなる。しかし、finetrack独特のベンチレーションを開けば、驚くほど換気ができる。

「左右のジッパーをガバッと開けると『お腹の前を空気が抜けていく』という感覚でした。フロントジッパーも調整することで、服の中で熱くなった空気が、すっと出ていく、という感じです」

左右に配されたベンチレーション。大きく開き、瞬時の換気が可能


ベンチレーションは、アウターシェルと重ねたときに、さらに効果を発揮する。finetrackの中間着、アウターシェルには、同じ位置で換気ができるようにベンチレーションが設計されていて、「リンクベント」と呼んでいる。

これが「リンクベント」。アウターシェルと中間着の同じ位置にベンチレーションを設計


中間着やアウターシェルを重ねて行動すると、服の中に熱がこもり、余計な汗をかいてしまい、汗冷えのリスクも高まるが、このリンクベントでかなり解消できるという。アウターシェルにベンチレーションを備えているものは多いが、インサレーションにもその機能を備えているものは少ない。finetrackの中間着の独自の特長でもあり、ウェア一枚一枚の単体の機能だけでなく、トータルで最大の機能を発揮するという合理的な考え方に基づいているのだ。

雨が降ったと想定して、「ポリゴン2UL」とアウターシェルを重ねて歩いてみた

 

軽く、適度に保温し、着たまま行動する……、ウインドシェルのように使える秋山向け保温着だ!

finetrackの資料によると、内側の生地には「親水加工」が施されているという。写真ではわかりにくいのだが、水滴を垂らすと、生地に染み込んで広がっていくのがわかる。表生地の撥水性とは反対の動きだ。

この機能について、森山さんはこのような言葉で表現してくれた。

「今日は気温が高く、『リンクベント』で換気をしても、背中に汗をかいてしまったのですが、着ていて感じたのは、背中全体に湿気が広がっていって、しっとりとしているものの、汗でベチャベチャとか、湿気のベタベタ感というのがなかったことです。何度も言ってしまいますが、乾くのは早いので、汗をかいて湿気ってしまっても気になることがありません」

防風性と通気性をバランスよく組み合わせた生地設計によるものだ。

内生地に水滴を落とすと、生地に浸透して広がっていった


山を登り終えて、森山さんがとてもわかりやすい例えをしてくれた。

「夏山では、薄いウインドシェルをよく使いますよね。ちょっとした雨を除けられ、防風、保温、軽さなどの点で、山シャツなんかより扱いやすい。これが秋山になると、夏用のウインドシェルだけでは寒いので、その代わりにもなるのが、この『ポリゴン2UL』でしょう。ちょっとした雨を防げて、防風、保温、軽さの点で常時着ていられる。登りなどで暑くなれば、換気もできる…。もちろん、雨が本降りになれば、レインウェアを着るのは、夏のウインドシェルと同じです」

「紅葉を迎える秋山の山行に、行動中の多くの時間で着ていられて、換気をすれば涼しい風が抜けて、脱ぎ着を減らせる。濡れても気にならないし、濡れてしまっても早く乾く。そんなメリットがある、秋山向けの『保温性のあるウインドシェル』と言ってよいのではないでしょうか」

登山経験豊富で、山と用具を知り尽くした森山さんだからこその表現だが、秋山を安全に快適に過ごすための提案として、興味深い、インサレーションウェアの使い方なのではないだろうか。

 

写真=宇佐美博之、構成=編集部、協力=森山憲一、finetrack

取材日=2019年9月30日

 

finetrack ポリゴン2ULジャケット

finetrack ポリゴン2ULシリーズには、上記ジャケットのほか、ハーフスリーブジャケット、パンツ、ニーパンツの全4モデルがラインアップしている。女性用モデルもあり。

価格
19,800円(税別)
サイズ
S、M、L、XL
カラー
3色
重量
210g

詳細を見る

 

プロフィール

森山憲一さん

1967年神奈川県生まれ。早稲田大学在学中は探検部に所属し、延べ10ヶ月、アフリカに通い、未知の動物探索や未踏の岩塔への登攀などを行う。卒業後、山と溪谷社に入社。『山と溪谷』の編集に9年半、『Rock&Snow』の編集に約2年、携わる。2008年に枻出版に入社し、『PEAKS』の創刊から5年にわたって携わる。2013年に独立。フリーランスのライター、編集者、カメラマンとして、雑誌、ウェブ媒体で、登山、クライミングなどをメインテーマに活動している。

ウェブサイト「森山編集所」:https://www.moriyamakenichi.com/

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