山の日やお盆休みもあり、本格的な夏山シーズンとなる8月。山と溪谷オンラインに日々投稿されている「みんなの登山記録」をひも解き、この時期よく登られている山の概況の一部を前編にて紹介した。
前編のおさらいをすると、単体の山として多かったのは富士山、高尾山、霧ヶ峰。エリアごとの概況は以下の通り(2022年8月の記録調べ)。
北海道では、7月と同様に大雪山周辺のほか、十勝岳が多かった。東北では鳥海山、月山。上信越では、7月と変わらず谷川岳が突出。上信越エリアは全般的に7月よりも登山記録が多かった。関東周辺では、富士山がトップ。次いで高尾山、那須岳、大菩薩嶺、尾瀬エリア(燧ヶ岳・至仏山)など。
そして今回後編として、中部以西のエリア概況は以下の通り。
八ヶ岳周辺では、霧ヶ峰が断トツ。赤岳・横岳・硫黄岳周辺が続き、美ヶ原、蓼科山など。にゅう、高見石など白駒池周辺の山も多かった。
北アルプスでは白馬岳、穂高岳、槍ヶ岳、鹿島槍ヶ岳、立山。中央アルプスでは7月と同じく木曽駒ヶ岳、南アルプスでは北岳、鳳凰三山、甲斐駒ヶ岳、仙丈ヶ岳など。アルプスは7月よりも記録が大幅に増加していた。
北陸・東海・近畿では白山、伊吹山。中四国・九州では大山、剣山、雲仙岳、九重連山が多かった。
続いて、中部以西の山々からいくつかピックアップして以下に紹介しよう。
北八ヶ岳白駒池付近にある高見石(たかみいし)、にゅう。特徴的な名前だが、白駒池、北八ヶ岳らしい苔の森、そして展望のよい岩峰など多彩な魅力が味わえ、近年よく登られている。
国道が通る場所としては国内第2位の標高を誇る麦草峠からスタート。南側の丸山に向かって登っていく。樹林帯に入り、急登を経てしばらく登ると、みごとな苔の森となる。
展望のない丸山を過ぎ、揚げパンが人気の高見石小屋へ。小屋の北側にある高見石は、その名の通り岩が重なるピーク。白駒池など周囲の展望がすばらしいので、ぜひ登っておきたい。
高見石からは岩がちな道を登っていき、傾斜が緩むとしばらくで中山展望台に着く。視界が開け、周囲の展望がよい。ここから東に向かい、崖の脇に付けられた道を下り、にゅうへ。にゅうも岩が積み重なったピークで、展望がすばらしい。
あとは樹林帯を下って白駒池へ。白駒池周辺も、みごとな苔の森が広がる。白駒池は国道から近いので、観光客の姿もちらほら。あとは樹林帯の道を麦草峠へ戻る。
本コースは岩がちな道もあり、慣れていない初心者は想定以上に時間がかかるかもしれない。白駒池から高見石への周回コースや、にゅうの往復にするなど、うまくコース設定をアレンジしてもよいだろう。
高低図
雲ノ平(くものだいら)は鷲羽岳、三俣蓮華岳、黒部五郎岳、水晶岳などの名だたる山々に取り囲まれた黒部源流域にあり、数々の花々が咲き乱れる溶岩台地は、さながら別天地のようだ。場所柄、記録の数が多かったわけではないが、登山者であれば誰もがいつかは行ってみたいと思うあこがれの場所という理由で、今回セレクト。
この魅惑の楽園には行くのはそう簡単ではない。北アルプスの最奥部にあるため、入山だけでも1日以上かかる。その秘境感が、よりいっそう雲ノ平の魅力を引き立てているともいえる。
入山口はいくつかあるが、富山側の折立(おりたて)からが一番登りやすく、雲ノ平からは新穂高温泉に縦走するか、黒部五郎岳を巡って折立に戻る周回コースなどがとれる。3泊4日の行程だが、予備日や力量、また天候や体調によってはさらに日数が必要となる場合もある。相応の体力や経験、装備などが求められることを認識しておきたい。また近年、北アルプスに限らないが、予約制となっている山小屋が多いので、こちらも注意のこと。
高低図
中国地方の最高峰・大山(だいせん)は、『出雲風土記』にも登場し、日本を代表する由緒ある山のひとつ。古くからあがめられてきた信仰の山である。南北に岩壁を擁し、見る角度によって山容が異なるのが特徴だ。日本海に面しているので、冬季は寒気の吹き出しの影響を直接受け、非常にハードな気象条件となる。
大山はいくつかのピークで構成されており、周辺の野田ヶ山、矢筈ヶ山などの山々を含めると、大山一体が一大山域といってもよいかもしれない。最高地点の剣ヶ峰は崩落が激しいため、山頂付近までの一般的な登山道としては弥山頂上までの夏山登山道と、ユートピア小屋までのユートピアコースがある。
弥山頂上ヘは大山寺バス停から舗装路を進み、夏山登山道入口へ。ここから樹林帯を登っていく。階段の道をひたすら登り、元谷への分岐である行者谷分れに着く。避難小屋がある六合目からは、北壁と元谷方面の眺めがよい。
八合目を過ぎると傾斜も緩みはじめ、やがて木道歩きになる。周囲には大展望が広がる。避難小屋を過ぎ、着いた頂上からは日本海をはじめ、剣ヶ峰方面の荒々しい山並みなど、三六〇度の大展望だ。帰路は同じ道をたどるが、夏山登山道大山寺を経由するコースもよく歩かれている。
高低図
徳島県にある百名山・剣山(つるぎさん)は標高1982mを誇り、石鎚山に次いで、四国はもちろん西日本第二の高峰である。ミヤマクマザサが広がる山頂一帯は高山の雰囲気を漂わせ、すばらしい景観が広がる。登山リフトが利用できるので、初心者を含めて多くの登山者を集めている。山岳信仰の山だが、ソロモンの秘宝伝説など興味深い山である。
見ノ越(みのこし)から登山リフトを利用して15分。西島駅からスタート。いくつもルートがとれるが、まずは歩きやすい遊歩道コースから次郎笈(じろうぎゅう)方面へ向かう。二度見展望所を過ぎ、剣山山頂への分岐へ。ここから、正面に次郎笈の優美な山容を見ながら稜線を進んでいく。着いた次郎笈の山頂からは、剣山や三嶺(みうね)方面への稜線が美しい。
もと来た道を戻り、遊歩道コースの分岐から剣山山頂をめざす。木道が出てくればなだらかになり、雄大な景色が広がる山頂部となる。展望を満喫したら西島駅へ下山する。行場コースには8月に見頃となるキレンゲショウマの群生地があるので立ち寄ってみてもよいだろう。
高低図
大分県に位置する九重山(くじゅうさん)は、阿蘇くじゅう国立公園にあり、九州本土最高峰である中岳(1791m)を最高峰とし、平治岳(ひいじだけ)、大船山(だいせんざん)など名だたる峰々を有する連山。
豊かな湿原をいだく長者原(ちょうじゃばる)や坊がつるのほか、法華院温泉、ミヤマキリシマなど、一度では味わいきれない多彩な魅力にあふれている。
連山の南部に位置する久住山(くじゅうさん/1787m)は、角度によってはきれいな三角錐の形をしているのが特徴的。牧ノ戸峠登山口から歩きやすい道を進み、岩場を越えて沓掛山へ。扇ヶ鼻分岐から、久住山方面へ向かう。西千里ヶ浜を過ぎ、久住分かれに到着。避難小屋があり、周囲の山々が見渡せる。雄大な景色を見渡しながら、石の転がる道を登って久住山山頂へ。山頂からは、九重(くじゅう)の山々だけではなく、遠く阿蘇山や祖母・傾(かたむき)山地へと連なる景色が一望できる。
帰路は星生山(ほっしょうざん)を経由するが、また一度登り返す必要があるため、時間と体力次第では寄らなくてもよいだろう。また九州本土の最高峰・中岳も気になる所だが、かなり歩行時間が増えるため、こちらも力量に応じて判断したい。
高低図