例年とは少し違う夏山シーズン――、この夏は特に熱中症に気を付けなければならない理由

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

間もなく本格的な夏山シーズを迎えるが、例年以上に熱中症には注意しなければならない可能性が高い。この新型コロナウイルスによる登山への影響は、さまざまな部分に影響しているからだ。

 

長野県内では、近年、夏山シーズンにおける熱中症搬送が急増していますが、今シーズンはさらに注意が必要となりそうです。その理由のひとつが、外出自粛などにより、体が暑さに慣れていないことです。そして、もう一つは行動中のマスク着用で、熱中症リスクが高まる危険性が指摘されているからです。

厄介なことに、熱中症とコロナウィルス感染症の症状は似ているため、熱中症による救急搬送と決まっても、すぐには搬送できない可能性が高いことも懸念されます。

ただし、新型コロナウイルスに対して、熱中症は「防げる」病気です。登山者の皆さんは、下記に留意して、熱中症に絶対にならないようにしましょう。

 

暑さが体に慣れていないので、暑熱順化を!

今年は外出制限などによる運動不足や暑さへの慣れが不足し、熱中症の発症率増加が懸念されています。加えて、トレーニング不足による体力低下も心配されます。

今後、さらに移動制限が緩和されて、いざ高い山に行こう! としても、体がついていかない可能性があります。ひいては遭難につながるという危険性も考えられます。本格的な夏を迎えるまでに体力をつけ、暑さに体を慣らす(暑熱順化)よう努める必要があります。まずは、以下のことから始めておきましょう。

  • 近所で一人または少人数での速歩、ジョギング、軽登山など
  • 自宅での体操、ストレッチなど
  • 運動前・中・後も、体調の変化に常に留意する

 

マスクで体に負担がかかります!

普段の生活ではマスク着用が推奨されていますが、登山中にマスクやネックゲイターを使用すると、不快感が増大したり、息苦しくなったり、体温を下げにくくなったりする可能性が指摘されています。また、口が乾きづらくなり水分をとる回数が減ることも想定されます。

基本的には、登山中に常時マスクを着用する必要はありません。まずは、少人数で登山する、混雑期を避ける、ほかの人との距離を取る、という基本を徹底しましょう。そのうえで、人とのすれ違いや追い越し時、休憩場所など人がいるエリアに入る前に、マスクを着用するようにしてください。

長野県観光部山岳高原観光課では、新型コロナウイルス感染症拡大防止のため「入山注意報」を発表しています。 「入山注意」山域へ入山する際は、「登山者への5つのお願い(PDF)」を守ってください。以下の動画も参考にしてください。


また、飛沫感染を防ぐために、普段より運動強度を落として息が上がらないようにすることで、体への負担も軽減されます。

息苦しさ、のぼせ感を感じたときは、すぐにマスクを外して休憩をとって水分補給するなどしてください。くれぐれも無理のない登山を心がけましょう。

 

基本はいつもの「熱中症対策」を忘れずに!

登山中の熱中症対策の基本は、例年と同じですが、体が慣れていないことを考慮し、さらに用心深く行動しましょう。以下のチェック項目に従って、熱中症対策を行ってください。

  • 「暑さ指数」によっては登山自体が不適!いさぎよく中止!!
     →「暑さ指数(WBGT)」や天気予報をしっかりチェック!
  • 水分と塩分の適切な摂取(経口補水液も活用、登山前・後にも!)
     →しっかり食事をとることも大切!!
  • 体調不良、寝不足で入山しない!
     →疲労は熱中症リスクを増大させる!
  • 遮熱・放熱する(帽子、服装など、脱ぎ着もこまめに。)
     →日焼け防止グッズも有効ですが、放熱も意識して!

最後に――。

病気やケガの予防、遭難防止・コロナ感染防止対策に加え、他の登山者への配慮や優しさも、安全登山のためには大切なことです。私たち登山者一人一人の心がけと気遣いで、楽しく安全な登山シーズンにしましょう。

 

プロフィール

長野県山岳総合センター

長野県大町市にある長野県立の施設。「安全で楽しい登山」の普及啓発を主目的に、「安全登山講座」と動植物・地形地質をはじめ山の自然を総合的に学べる「野外活動講座」を、年間約60講習開催。講習参加者のうち、長野県外の方が約6割を占める。

⇒長野県山岳総合センター
⇒Youtube

山で必ず役立つ! 登山知識の処方箋

山に待ち受ける、大小さまざまなリスクから回避するには? 確かな知識を持った登山のセンパイや、登山ガイドたちが、さまざまな対処法を教えます!

編集部おすすめ記事