雪道は無雪期よりも大幅に時間が掛かることを考慮して計画・行動を 島崎三歩の「山岳通信」 第330号

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長野県が県内で起きた山岳遭難事例について配信している「島崎三歩の山岳通信」。2024年2月16日に配信された第330号では、八ヶ岳連峰で遭難が集中していることを指摘。過去にどんな遭難が発生しているのか下調べをして必要な準備を整えてから入山するよう促している。

 

2月16日に配信された『島崎三歩の「山岳通信」』第330号では、期間中に起きた7件の山岳遭難事例について説明。以下に抜粋・掲載する。

  • 2月5日、八ヶ岳連峰の硫黄岳で、単独で入山した59歳の男性が、なんらかの原因により行動不能となる山岳遭難が発生。男性は死亡した。

  • 2月7日、竜王山で、スキー場を滑走していた19歳の男性が、管理区域外へ迷い込んで行動不能となる山岳遭難が発生。男性は無事に救出された。

  • 2月10日、八ヶ岳連峰の天狗岳で、2人パーティで入山した41歳の男性が、東天狗岳周辺を登山中に同行者と別行動中、道に迷って行動不能となる山岳遭難が発生。男性は無事に救出された。

  • 2月10日、八ヶ岳連峰の根石岳で、単独で入山した64歳の男性が、根石岳から本沢温泉に向けて下山中、疲労により行動不能となる山岳遭難が発生。男性は死亡した。

  • 2月10日、八ヶ岳連峰の天狗岳で、単独で入山した59歳の男性が、天狗岳から黒百合平に向けて下山中に、道に迷い行動不能となる山岳遭難が発生。男性は無事に救出された。

八ヶ岳連峰・天狗岳の遭難現場/長野県警察本部 ホームページ 山岳遭難発生状況(週報)2月13日付
  • 2月12日、八ヶ岳連峰の雨池山で、5人パーティで入山した5歳の女性が、雨池山付近を登山中に疲労などにより行動不能となる山岳遭難が発生。女性は無事に救出された。

  • 2月12日、北安曇郡小谷村地籍の親沢で、3人パーティでバックカントリーのために入山した55歳の女性、57歳の男性、54歳の男性が、技量不足により行動不能となる山岳遭難が発生。3人は無事に救出された。

北安曇郡小谷村の遭難現場/長野県警察本部 ホームページ 山岳遭難発生状況(週報)2月13日付

 

長野県警山岳安全対策課からのワンポイントアドバイス

2月2週は、2件の死亡遭難を含む、7件の山岳遭難が発生しました。7件中5件は、八ヶ岳連峰で発生し、今シーズンの八ヶ岳連峰では、既に11件の遭難が発生し、うち3件は死亡遭難です。

冬季の八ヶ岳は、晴れていても稜線付近は強烈な風が吹き荒れます。このような条件の中で行動すると、低体温症による行動不能や視界不良による道迷いのリスクが高くなります。また、稜線に限らず、樹林帯の登山道も凍結箇所があるため、常に転倒や滑落の危険性があります。
2週に発生した八ヶ岳連峰での遭難は、道迷いによるものがほとんどであり、いずれも日没間際まで行動していたところ、道に迷って行動不能となったものです。日没後の行動は、視界が狭まり、登山道の印やほかの登山者のトレースが見えなくなり、行動に支障をきたし、そのまま行動不能となれば、ビバークせざるを得なくなります。
ビバークする際に、寒さに耐えるための装備を携行していなければ、低体温に陥り、最悪の場合、命を落としかねません。また、冬山は積雪などにより、無雪期よりも大幅に時間がかかることを考慮し、早めの行動とゆとりをもった計画を心がけてください。

道迷いにより、行動不能となれば、長時間寒さに耐えなければならない、ルート判断をしなければならないなど、通常の登山よりもリスクが高まります。特に冬山は、積雪で登山道が不明瞭となっていますので、こまめに地図などでルートや方向を確認し、道迷いを防ぎましょう。

バックカントリーエリアでも遭難が発生しています。今後、登山やバックカントリースキー・スノーボードに行く際には、計画している山域やルートには、どのような危険があるのか、過去にどんな遭難が発生しているのか、しっかりと下調べをして必要な準備を整えてから入山しましょう。 

 

スキー場およびバックカントリーエリアにおける日本人向け安全啓発動画

長野県では、スキー場およびバックカントリーエリアにおける安全啓発動画を日本人向けにも公開しています。

長野県内のスキー場利用の注意点、バックカントリースキーの魅力とリスクや安全に楽しむ方法について、ぜひ事前にご覧ください。

スキー場編

バックカントリー編

⇒長野県山岳総合センター啓発動画一覧
(長野県山岳総合センター Youtubeチャンネル)

プロフィール

島崎三歩の「山岳通信」

信州の山岳遭難現場と全国の登山者をつなぐために発行。「登山用品店舗スタッフ」「登山情報サイトを利用する登山者」「長野県内の各地区山岳遭難防止対策協会」などに対して、長野県の山岳地域で発生した遭難事例を原則・1週間ごとに、「安全登山」のための情報提供をしている。

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島崎三歩の「山岳通信」

長野県では、県内の山岳地域で発生した遭難事例をお伝えする「島崎三歩の山岳通信」を週刊で配信。その内容をダイジェストで紹介する。

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