明治の日本の奥地ってどんな感じ? リアル過ぎる紀行本

今回は、ICI石井スポーツ登山本店の間瀬孝之さんが英国人女性の明治初期の日本を旅した記録が書かれた本について教えてくれました。日本国内に関する紀行文はいろいろありますが、この本、とにかくリアルで臨場感満載なのだそうです。

『日本奥地紀行』(平凡社)

この本は、およそ130年前、江戸が東京になって10年、新橋と横浜に鉄道が開通して5年、ひとりの英国人女性旅行家イザベラ・バードが、当時日本の奥地と呼ばれた日光から北の東北地方、及びアイヌの住む北海道を旅した話です。西南戦争の翌年で地方にはまだまだ文明開化の波が及んでいない時代。一人の通訳兼従者の伊藤という青年をお供に横浜から東京、粕壁・日光・会津・新潟・米沢・山形・新庄・横手・久保田(秋田)・八郎潟・大館・碇ケ関・津軽・函館・室蘭そして幌別・登別・いくつかのアイヌの集落を経て、函館に戻り、函館からは船で台風に遭遇しながらも横浜に戻ります。

イザベラ・バードから妹への手紙という形でこの紀行本は記されています。第一信(5月21日)は18日間の航海を経て江戸湾に進入した場面からはじまります。そして第四十四信(12月18日)の火葬場見学の記述と横浜港離岸で終わります。その最初と最後に船からの富士山の印象を綴っているのが象徴的に感じます。

ここで面白いのは各地で蚤の大群に襲われ、宿では絶えず興味本位の視線にさらされながらも、するどい観察と臨場感あふれる記述をしていることなのです。特にアイヌの村での記録は細部にわたり今でも貴重なもののようです。単なる紀行文というよりは調査と視察の旅と考えられます。外人が自由に日本の国内を歩き回れなかった時代の興味深い話で満杯です。

山とは関係ないです。関係ないですが、山好きの人ならきっと、ちょっと厚いこの本を気に入るような気がするのです。

著者:イザベラ・バード 翻訳:高梨健吉 発行:平凡社

教えてくれた山センパイ

間瀬 孝之(ませ・たかゆき)

1957年神奈川県生まれ。NPO法人山の自然学クラブ 山の自然学指導員。日本地図センター公認マップリーダー。ICI石井スポーツ登山本店勤務。

ICI石井スポーツ登山本店