行程・コース
天候
晴れ
登山口へのアクセス
その他
その他:
鴛泊から歩いてバンガローに泊まる
この登山記録の行程
鴛泊(15:00)野営場(15:55/5:30)長官山(7:45)利尻岳(9:30)三跳山(10:40)登山口(13:25)沓形(14:50)・・・・香深(16:00)・・・本泊(16:40)起登臼分岐(17:10)礼文岳(17:50)本泊(18:45)・・・香深泊(19:30)
高低図
登山記録
行動記録・感想・メモ
一番列車で羽田空港へ向かい、{早朝割引+早割}で千歳空港へ飛ぶ。「天気が好ければ、日高山脈を見る事が出来る」と右の窓側の席を確保して期待したのだが、山並の一角を遠望はするものの、着陸態勢に入ると雲の下に隠れて期待は外れる。
利尻便までの7時間を潰すのは大仕事で、朝食に弁当を食べ、コンビニで2日分の行動食を買い、昼食を取ってやっと機上の人となる。
九州南方の台風の影響で東の風が吹く筈だから利尻島南西から北上して飛行場に着陸するだろう」と予想して、着陸時に利尻岳が見えるようにと右の窓側に座る。途中、雲の隙間から時々地上が覗かれ、天塩町付近の海岸線や道路、湖が見える。
100人乗り程度の双発ジェットA301は稚内上空から海上に出て西へ向い、半時計回りで利尻空港を目指し、YS11を思わせる急旋回で利尻空港に逆方向から着陸して、利尻岳の眺めは叶わない。
滑走路に降りると利尻岳の中腹以上は雲に隠れて見えない。バスで鴛泊まで行き、港町の岸壁付近から北麓キャンプ場へ向って歩き出す。「天気が好ければシュラフのみで野営しよう」とも考えていたのだが、この曇り空では雨が心配だ。キャンプ場に電話すると「キャビンは空いている。4時までに来て下さい」と言う。
舗装道路をのんびりと歩いて行くと下山して来る人と出会い、「山頂は雲海の上に出ていて、好い天気だった」と満足げに言う。使い捨ての携帯トイレとアンケート用紙、鍵をもらって三角屋根のキャビンに入ると、4人分の布団と毛布が備え付けてある。ビールを飲みながらのんびりと炊事をし、夕暮れて暗くなる頃、早々と横になる。両側のキャビンにも、遅くなってサイクリングカーに乗った泊り客が遣って来る。
予定より遅れて目覚め、慌ててラーメンを作って食べる。夜半の星空は跡形も無く、全天雲に覆われているが、雨の心配は無さそうだ。準備体操をしてスパッツを着けていると、傍らを年配の夫婦と女の子が登って行く。
甘露水の水場で2ℓを詰め、東屋で食事中の4人に挨拶して山道に入る。日帰り登山の装備に半シュラとコッヘル、固形燃料だけの身軽なザックで、コニーデ火山の緩い山裾部をテンポ良く登って行く。
徐々に傾斜が増す。ミヤマハンノキが登山道を低く覆い、油断すると強かに頭をぶつけて顔をしかめる。みっちり1時間歩いて、見晴しの好い大石の上で1本目を立てる。
鴛泊港が初めて見え、礼文島も雲の下に黒く横たわっている。長官山の斜面が見えたり隠れたりする天気で、上部は雲の中らしい。
女の子も登って来て一緒に休む。朝、野営場で若い2人が別れを惜しむ風情だったので、「地元の人?」と聞くと、「札幌の大学生で、民宿のアルバイトに来ている。彼女はアルバイト仲間です」との事。8月も終盤は観光客が少なくなるそうで、「今日は休みを貰った」と言う。避難小屋泊りの3人と擦違い、1ピッチで長官山に登り着く。折から山頂部のガスが霽れて明るい笹の山肌の利尻岳が姿を現し、「立派な山だなあ」と写真通りの均整の取れた姿に見惚れる。
緩く登って下ると避難小屋で、ここから山頂への急な登りとなる。溶岩砂のガレ道は、足元が定まらず滑り易い。沓形への分岐点に気付かないまま登ると、思い掛けず早く見覚えのある山頂の社が目前に現れ、途中で追い抜いて本日の初登頂者たる栄誉を奪った若者が笑顔で迎える。
山麓から眺める利尻富士は針峰を従えて鋭く屹立しているが、山頂に登って見下ろす岩稜や岩峰群は一層迫力がある。しかし、山肌に刻み込まれた急峻な沢も、流れを辿って行くと海岸の緩やかな地形を覆う緑の中に吸収されて穏かになる。「せっかくだから」と北峰より2mだけ高い南峰まで足を伸ばすと、イワギキョウやリシリリンドウが頂上稜線直下の斜面に咲き残っており、「お花の利尻岳に登った」と僅かに愁眉を開く。
好天に恵まれたので沓形港を目指す。急なガレ道の下半に沓形への分岐点があり、岩肌を覆ったハンノキの間に登山道が通じている。落石の危険があるガレを少し登り返しながら横断し、穏かな北稜の尾根道に出る。
三眺山の先では登山道の両側にコケモモが真赤な実を着けている。誰も採った形跡が無く、「百名山達成記念のコケモモ酒を造ろう」と手を出すが、暫く下るとあまりにも見事な群落を見付けて手が止らず、気が付くと1時間が経っている。
這松やハンノキの間にはいろいろな茸が生えている。高度を下げるに連れて傾斜が落ち、七合目避難小屋の先からは登山道兼水道の歩き難い所が続く。右方へトラバースすると間も無く林道に出て、登山口から舗装道路を右へ上がると見返台園地の広い駐車場があり、その上の展望台へは遊歩道が通じている。
車が数台停まっておりヒッチハイクしたい誘惑に駆られるが、「海抜ゼロから登って山頂を踏み、海抜ゼロまで歩いて下山する事に意味がある。初志貫徹!」と強がって歩き始める。
道の両側には山葡萄が青い実を豊富に着けて成熟間近で、サルナシもすくすくと育っている。地元の人は採らないのだろうか?
沓形港の待合室で汗を拭い、塩アメの土産を買う。徳永君への土産には、郵便局の出張販売員から絵葉書を買って切手を貼り、スタンプを押してもらう。最近、登山者が増えて有名な山ではトイレ問題が深刻になっている。富士山が世界遺産になれなかったのはトイレの悪臭の所為だと言う説がある程で、利尻では山中に数箇所の使い捨てトイレ用の設備(テントやユニークな形の仮設建物)が設営してあって力の入れ方の程が分るが、大の出番は無く、初体験とはならなかった。
香深行フェリーに乗って心地好い風に吹かれながら、海上に浮ぶ利尻富士の黒いシルエットに幾度も目を遣って飽きず眺め入る。
香深港の観光案内所で「登山口付近に民宿は無い」と言われ、目の前の『ひまわり』を紹介される。しかし、民宿のお上さんは歓迎する風でも無くこちらを品定めしながら、「部屋は空いているが、早朝に登山口まで送る事は出来ない」と、とんでもないと言わんばかりの口調である。「登山口付近に泊って夜明とともに礼文岳に登り、その足で稚内へ取って返す計画は無理だ」と考え直す。
タクシー会社に行って「朝4時半頃、登山口まで走ってくれない?」と聞くと、「朝は7時からです。昼間目一杯走っているからねえ」と連れ無い返事で、「さらば」と民宿の前で女の子と話し込んでいるレンタバイクのお兄ちゃんに料金を聞くと、「1時間千円です。4時間以上は4千円」と意外と高い。「隣のレンタカーは軽で4時間まで5千円」とも言う。ここで、運転免許証を持ってこなかったのに気付き、最後の手段のレンタサイクルは如何と聞くと、「1時間500円です」と安いが、登山口まで15kmあると知っては諦めざるを得ない。
「利尻岳を順調に登って礼文島まで来たのに、足が無くて登れないとは」と残念がると、「今から登ったら?」とさっきから傍で聞いていた女の子が口を挟む。「今日、利尻岳を登ってきたばかりだよ」と顔を向けると、「ダブルヘッダーでも良いじゃない?」と気楽に言う。「そういう手も有るか!」と考え直し、「7時前までは何とか明るい」と確めて連チャンを決意する。兄ちゃんが、「帰りはヒッチハイクだね」と知恵も授けてくれる。
民宿のおばさんに「これから礼文岳に登ってくる」と言うと、「夕食は8時までです」との返事。「ちょっと遅れるかもしれないけど、その時は堪忍して」と言い置いてフェリーターミナルでタクシーを拾う。「近い方の登山口に着けてくれ」と言うと、「起登臼からは登れません」と言われ、「付いてないなあ」とぼやくものの、行くしか無い。帰りのバスは19時5分があると言う。
内路で降りて登山口の階段に腰を下して靴紐を締め、歩き始める。香深の民宿に8時までに帰って夕食に有り付く為にバスに乗ろって帰ろうとすると、2時間25分で礼文岳を往復しなければならない勘定だ。
筋力がギブアップせずに持続して歩けるギリギリのスピードでどんどん飛ばす。山頂までは距離4kmで標高差500mと傾斜が緩いので、急いで登るには適した山ではある。両側の笹が綺麗に刈り払われている登山道を行くと下山して来る3人(の大学生)と出会い、こちらの気迫に押されたかの如く、何も言わずに道を空けてくれる。
起登臼分岐まで30分で登り、「コースタイムの半分で来たから、ぎりぎりセーフだ」と少し目算が立つ。山頂までの70分を20分短縮して礼文岳到着18時を目標にして更に先を急ぐ。夕闇が迫る樹林を抜け、少し下って登り返して樹木と笹の割合が拮抗する小丘の上に立つと、びっしり笹に覆われた正面のピークの先にガスに霞んで礼文岳の頂上部だけが見えている。かなり距離がある様だが、「手前のピークまで20分、更に20分で何とか登れるだろうか」と、時間を読む。
P410の上に立つとやっと礼文岳が全貌を現し、夕暮間近の山頂には2つの影が立っている様に見える。潅木の間の道を息を弾ませながら登り、岩稜の上に立つ『礼文岳』の山名板と一等三角点を確認する。時に18時45分、頑張って予定より15分早く着いたので「5分間だけ休もう」という気になり、腰を下して一息入れながら水を飲みパンを食べる。
登山道にはぬかるんだ所も多く、樹林の下は薄暗くなって足元がはっきりしないが、懐中電灯を点けるのも面倒なので、足元は見当で歩いてどんどん飛ばして下る。
最終バスには余裕のある時間に内路に帰り着き、「早く民宿に帰れば、ゆっくり風呂に入ってから夕食を食べられる」とヒッチハイクを試みるが、最初の1台に拒否されて気弱になり、蚊に刺されながらバスの来るのを辛抱強く待つ。
待ち侘びたバスには他に乗客は無く、真面目な運転手の几帳面な運転で人影が途絶えたフェリーターミナルに帰る。風呂に入り、生ビール2杯ですっかり好い気分になり、長い1日を思い出しながらゆっくりと夕食を取る。
最終日は初便のフェリーで稚内に渡るが、宗谷岬へのバスは既に無く、海産物の店を覗いたりして時間を潰す。全日空ホテルの前庭を埋める黄色いタンポポが緑の芝生に映え、『幸せの黄色いハンカチ』をも思い出させて印象的だ。稚内空港から羽田行全日空便に乗って帰還する。
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