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笹尾根・丸山(仲ノ平~上川乗)

丸山1098m( 関東)

パーティ: 1人 (イガドン さん )

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行程・コース

天候

利用した登山口

仲ノ平   上川乗  

登山口へのアクセス

バス
その他: 【往路】JR五日市線武蔵五日市駅から西東京バスで仲ノ平バス停下車
【復路】上川乗バス停から西東京バスで終点・武蔵五日市駅下車

この登山記録の行程

西東京バス仲ノ平バス停(08:25)・・・西原峠(09:30)・・・笹ヶ峠(10:10)・・・笛吹峠(10:45)・・・丸山(11:00/11:15)・・・小棡峠(11:25)・・・土俵岳(11:45)・・・日原峠(12:05)・・・浅間峠(12:30/13:55)・・・西東京バス上川乗バス停(15:30)

コース

総距離
約13.7km
累積標高差
上り約1,053m
下り約1,316m
コースタイム
標準5時間34
自己5時間40
倍率1.02

高低図

標準タイム比較グラフ

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登山記録

行動記録・感想・メモ

【回想】今回は久々の単独行である。平成4年(1992年)は年初から思うように事が運ばないことが多く悶々とした日々を過ごしていた。偶には自然の中に身を置いてすっきりした気分を味わいたくなり急に思い立ち決行した。前夜お好み焼き屋のバイトから帰宅したのが午前0時。結局いつもと同様明け方まで寝付けず自身初の徹夜登山になってしまった。
5時58分、自宅の玄関ドアを静かに閉めて出発。始発電車よりはかなり遅いので辺りはすでに明るくなっており、プラットホームには人も疎らにいる状況だ。単独行のときはいつも車内ではWalkmanを聴きながら過ごした。拝島駅でJR五日市線に乗換え武蔵五日市駅へ。武蔵五日市から数馬行きの西東京バスは1時間以上も来ないことになっていた。おかしいと思ったのだが、実は事前に調べたダイヤが平日のものだったことが判明。全て自分のせいである。現在時刻は7時40分、次のバスは8時53分発。念のため傍らにいたタクシーの運ちゃんに「数馬までどのくらい?」と問うと「6,000円だね」と返ってきた。思わず苦笑いするしかなかった。次のバスだと大幅に予定が狂ってしまうと途方にくれていたら、横に私と同じように困っていそうな少年たちがいた。彼らに「どこまで行くの?」と尋ねると一人が「数馬まで」と応えてくれた。二人に同伴者はいないようなので「1,000円ずつ出せる?」とあらためて尋ねてみると「出せます!」と言ってくれたので「おにいさんが残りの4,000円を出すからいっしょにタクシーに乗っていかない?」と誘うと、二人は「いいんですか?」と言いながらも快諾、3人でタクシーに乗り込んだ。二人は「こんなツイてる事があっていいのか!」と喜びを爆発させていた。
タクシーに乗ると、この運ちゃんはとても話好きでついつい話し込んでしまった。次々と話題あふれる楽しい車中となった。まずは今冬雪が少なかったという話題から始まった。近ごろの暖冬のせいで名物の(払沢の滝の)氷瀑が見られなかったというのだ。雪の多い年だとゴールデンウィーク辺りまで街道沿いに残雪があるのに、今春は3月上旬のいまでも雪がどこにも見当たらない。次に花粉の話になり、私が「毎年この時期に花粉症に悩まされているが、今年は花粉が少なく症状が軽くて楽です」と伝えると、運ちゃんも「今年は少ないよ」「去年は車で走っていても前が花粉で黄色かったよ」とおっしゃった。続けて「地元の人はなぜか花粉症にならない」ようだ。「長年住んでいるとこの環境に適応するんですかね?」と問うと、「それもあるかもしれないけど、全部飛んでっちゃって残らないのかも」と推測していた。また、小児喘息を患ったお子さんがココ(檜原村)に移住したら一遍に治ってしまったというお話も聞かせていただいた。確かに、夜空に輝く星の数をみても空気のきれいさは都心部と比べ断然違うのは明らかである。
話題は檜原村の深刻な「嫁不足」と「過疎化」の問題にまで及んだ。産業構造の変化も大きいという。古より檜原村を支えた林業が近年不振に陥ったため、村の活性化として観光業に力を入れることになり、この程深さ2,000mに及ぶボーリングで温泉が出たそうだ(水温24度・数馬)。観光業への傾斜は、一方で奥多摩周遊道路や都民の森などの負の遺産を生み出している側面もあるようだ。この二つの事業は東京都の失敗例といえる。まず奥多摩周遊道路は別名「金食い道路」と呼ばれるほど補修費がかかっている。後日調べた資料によると、昭和63年(1988年)の1年間で約9億円の補修費を支出している。かつての有料道路時代の料金収入が約6千万円で、補修費が大幅に上回っている。しかも年間の通行止め日数が55日もあったのは驚きである。運ちゃんも「都税の無駄使いだ」とおっしゃっていたが全くその通りである。次に都民の森は、平成3年(1991年)の台風12号で全壊してしまい、未だ再開されていないとのことだ。
それでも檜原村にとっては暗い話題ばかりではないらしい。笹尾根を貫く甲武トンネルが開通して以来、上野原方面へのアクセスが良くなったことだ。昔から数馬と山を越えた山梨県側は交流が盛んで親族も多いので連絡がとりやすくなったのだ。これまで飲みに行くのはどうしても五日市や八王子方面に限られていたが、甲武トンネルのおかげで上野原へ飲みに行くことができるようになったそうだ。上野原市街まで車で約20分だから五日市よりもずっと近くなったとのこと。
運ちゃんのお話は檜原村の歴史にも及んだ。この辺の地名は面白い読み方をする。例えば人里と書いて「へんぼり」、笛吹と書いて「うづしき」と読ませる。それはこの一帯が戦国時代の天正10年(1582年)の天目山の戦いで敗れ滅亡した武田氏の落人が隠れ住んだのに由来する。地名に仲間内だけに通じる隠語を多く用いたためらしい。数馬は武田氏ゆかりのものが多く、「数馬」という地名自体が武田氏の武将である中村数馬からとったそうで、今もその末裔がお住まいになり、地元では今も「殿様」扱いというのだから面白い。また今日の下山口になる上川乗にある武田組という会社は、武田氏直系の子孫が経営されており、表札には武田菱が光っていた。
ところで、タクシーに同乗した二人の少年はヤマメ釣りに来たらしく、釣り竿を片手に握りしめていた。運ちゃんがおっしゃるには、この辺のヤマメは養殖ものばかりだそうだ。天然のヤマメは養殖ものとは色つやが違う。また養殖のヤマメは純粋なヤマメではなく、マスとヤマメのかけ合わせと教わった。
登山口の仲ノ平に到着し運ちゃんに一礼しタクシーを降りた。4,000円の出費は大きかったが、それ以上に興味深いお話をたくさん伺うことができたのは何よりの収穫だった。小学6年生の二人もここで下車。早く釣りたいと急ぐ彼らを見送った。冒険心の旺盛な年頃の彼らにとって今日一日が良い想い出になることを願いつつ山へと向かった。
仲ノ平からの入山には少し手間取ったが、登山道に入ると道ははっきりしていた。途中、木こりのおやじさんがいたので「その木は何に使うんですか?」と聞いたが、おやじさんもわからないらしく苦笑していた。歩を進めると辺りは静まり返り、いつの間にか山を独り占めしていた。再びWalkmanを出し聞き始めると足取りは軽快になってきた。
西原峠の手前で単独行のおじさんに追いつき、峠にたどり着くとまた一人おじさんが休んでいた。西原峠からの富士山は大きい眺めである。ここでは殆ど休まず出発。歩き始めてすぐの場所に「これぞ笹尾根!」というに相応しいカヤトの原が広がっていた。東面には浅間尾根の奥に御前山と大岳山が、北を振り返ると三頭山と、その右奥に鷹ノ巣山の眺望が得られる気持ちの良い場所である。笹ヶ峠からは更に美しい富士を望むことができた。
笛吹峠を過ぎ、タクシーのおかげもあり行程にかなりのゆとりがあったので、当初立ち寄る予定のなかった丸山に立ち寄ることにした。丸山山頂からは雲取山も視認できた。その後も尾根道をひたすら歩き続け、かなりのハイペースで土俵岳に着いた。相前後していたおじさんに「和田峠まで行けますかね」と聞いてみたが微妙な表情を浮かべていた。
日原峠を越し浅間峠で昼食をとった。予定ではここから上川乗に下るだけなので、食事を済ませてからものんびりした。ザックからサントリーオールドを取り出し湯を沸かし始めた。カップに双方を注ぐ。早春の陽だまりでホットウイスキーを堪能。休むと少し肌寒かったので身体中が温まった。峠に一番に着いた私がほろ酔い気分で日向ぼっこを楽しんでいる間に次々と人が通り過ぎ、人の気配がなくなった頃に峠をあとにした。上川乗までの下山はとても速く14時半を回ったところ。バスの時刻までかなりあったのでビールの自販機を探したが見当たらず、仕方なくカルピスウォーターで喉を潤した。
停留所の脇にある休憩所を覗くと、登山中何度も相前後し浅間峠で抜かれ一足先に下山していたおじさんがいらした。バスの到着まで約1時間もあるため、私同様退屈していたらしくすぐに話が弾みだした。話題は多岐にわたったが、まずは互いに登った山を紹介しそこでの出来事を語り合った。この方は高田馬場にお住まいだったのでバスの中だけでなく西武線までご一緒し話し尽しすことになった。この方も私と同じく「丹沢より奥多摩が好き」だそうだ。「丹沢はどうしても好きになれない。特にバカ尾根がね」とおっしゃっていた。また、私が飯盒で飯を炊いていると話すと、「ボクはコッヘルで炊くよ」と。「30分位かかりませんか?」と問うと「いや15分位で炊けるよ。キミは弱火すぎるんじゃないの」とのアドバイス。次の機会に試してみようと思う。あと「車を持っている”便利”な友達がいるといい」と笑いながらおっしゃっていた。
山で出会った方たちとの数々の語らい。単独行ならでは実現できた意義深い一日だったと、夕空を見上げながら回想した。

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登った山

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