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山深く踏み入る皇海山クラシック

庚申山、御岳山、駒掛山、薬師岳、白山、鋸山、皇海山、女山( 関東)

パーティ: 2人 (Yamakaeru さん 、ほか1名)

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行程・コース

天候

快晴

登山口へのアクセス

マイカー
その他: カーナビには「民宿舎かじか荘」をセット。駐車場はかじか荘から200m程奥のところにある。未舗装で約50台。トイレはなし。マップコード「489 844 245」。かじか荘の手前には銀山平キャンプ場もある。ここには立派なトイレがある。無断で使うのは失礼なので、管理棟でお断りをして使用させてもらった。
ちなみに「民宿舎かじか荘」では日帰り温泉も行っているが、15時受付締め切りなので、時間には注意のこと。

この登山記録の行程

銀山平駐車場(02:00)・・・抗夫滝(02:48)・・・天狗の投石(03:06)・・・一の鳥居(03:20)・・・百丁目石(03:45)・・・鏡岩(03:51)・・・夫婦蛙岩(04:01)・・・仁王門(04:12)・・・猿田彦神社跡(04:25)・・・庚申山荘・・・大胎内(分岐)・・・庚申山(05:58)・・・庚申山展望台(06:18)・・・御岳山(06:34)・・・駒掛山(06:50)・・・薬師岳(07:15~休憩~07:45)・・・白山(07:49)・・・鋸山(08:31)・・・不動沢のコル(08:58)・・・皇海山(09:37~休憩~09:53)・・・不動沢のコル(10:26)・・・鋸山(11:05)・・・女山・・・六林班峠(12:05~休憩~12:30)・・・天下の見晴(14:35)・・・庚申山荘(14:58)・・・猿田彦神社跡(15:08)・・・仁王門(15:19)・・・夫婦蛙岩(15:29)・・・鏡岩(15:37)・・・百丁目石(15:45)・・・庚申七滝(16:05)・・・一の鳥居(16:11)・・・天狗の投石(16:23)・・・銀山平駐車場(17:00)

コース

総距離
約25.7km
累積標高差
上り約2,511m
下り約2,512m

高低図

GPX ダウンロード KML ダウンロード

登山記録

行動記録・感想・メモ

※:GPSがバッテリー切れでSTOPしていました。距離計算のため、他の方の軌跡で同じルートのデータをアップさせて頂いています。

3連休を利用して、雪山前のトレーニングとして遠征を企画。
初日はまるまる移動日。二日目に皇海山を登り、三日目に日光白根もしくはその周辺の山々を気分に合わせて登るという工程。遠征というと独り気ままな山旅が通例だが、今回は同行したいという後輩を連れての二人旅。ついでなので、初日の移動日は観光も加えて宇都宮で餃子三昧を楽しんだ。初めて行ったが「来らっせ」という宇都宮餃子会が運営しているお店に行くと、「みんみん」や「香蘭」等の有名どころがフォードコート形式で軒を並べていて、いろんな味を楽しむことができる。みんみん等、お店に並ぶだけで疲れてしまうので、これはこれで面白い。宇都宮で餃子というと個人的には「正嗣」推しだが、一度は食べたいと思っていた「香蘭」の黒スープ餃子が最高だった。

食料を買い込んで銀山平の登山者用駐車場へ向かう。山間部なので日が暮れるのが早い。車を停めてビールを飲みながら、テントを設営と夕飯の準備をする。
皇海山。言葉の響きからSKY(空)を想像するが、名前には「海」を有する。その割には海とは真反対となる、群馬と栃木の山深い県境に連なる足尾山地に座している。なんとも不思議な山だ。標高2,144m。百名山の中でも最も地味と言われているが、深田久弥が登ったとされる銀山平からのコースはクラシックコースと呼ばれ、通常1泊以上必要となる長距離や2,000mの高低差、加えて崩れやすい岩場の難所や藪漕ぎのような笹の道もあることから、栃木県で最も難易度が高いグレーディングDの山に指定されている。しかし、ルート上には奇岩怪石がゴロゴロしていて飽きない。また「庚申講修験者の山」と呼ばれる鎖場が続く厳しい修行の山と聞くと行かない訳にはいかない。雪山のトレーニングにもぴったりだ。ビビる後輩そっちのけでテンションが上がる。
陽が沈むと震えるほどに冷え込んできたので、早々と寝袋に滑り込む。18時に就寝。日が暮れて真っ暗闇というのに、次々と登山者が戻ってきた。一番遅かった人で20時過ぎだろうか。それだけでも、登る人も登る山も普通ではないことが分かる。最終的に駐車場には10台ほどの車が残った。おそらく山小屋で宿泊しているのだろう。

1:00丁度に起床。外に出ると凛と空気が張り詰めていて痛いほどだった。満天の星空が出迎えてくれる。出発前に確認した「てんきとくらす」の予報通り、「ビュービュー」と風は強そうだが天気は申し分なさそうだ。
ヘッドライトを点けてスタート。星を見上げながら歩いていたら、いきなり道を誤ってしまった。駐車場から直ぐのY字は左に進むのが正解。車両進入禁止のゲートをくぐり、延々と林道を4km程登っていく。途中、「抗夫滝」や「天狗の投石」の名所が続くが真っ暗で何も見えない。
林道の終点にある小さな鳥居「一の鳥居」をくぐりようやく登山開始。小さな沢に沿うように登っていく。登山道というよりは遊歩道のようで、落ち葉が羽毛布団の綿のように積み重なってフカフカしていた。
「百丁目石」を過ぎ、「鏡岩」の看板がライトに浮かび上がる。ライトで照らしても入りきらない程の大きな岩があった。近くの看板に鏡岩にまつわる逸話が書かれていた。昔、父親の命を救った大猿との約束を果たすために、猿に嫁いでいった娘と父親の悲しい話。そういえば小説で読んだことがあると記憶が蘇り、猿になった娘を前に後悔の念で嗚咽する父親の哀しい姿を想像し、胸が締め付けられた。皇海山を登っている最中に、猿の群れに何度か出会った。最初に向かう庚申山はそもそも古来よりサルを山の神として祀っている場所とのこと。山深い自然豊かな場所だけに猿も多く生息しているのだろうか。
歩きやすい道が続く。随所に目印の反射板が設置されているため、ライトを向けるとキラッと反射して誘導してくれるため夜でも迷う心配はない。鹿の群れが人の侵入を察知して、甲高い鳴き声を上げながら、「ザザザッ」と音を立てながら斜面を移動していく。甲高い音は侵入者に対する鹿の警戒音。どうやら鹿の群れの中に足を踏み入れたようだった。
夫婦蛙岩に到着。やはり暗すぎて何が蛙だか分からない。
仁王門を抜けて暫く進むと、暗闇に唸るエンジンのような人工物の音が聞こえてきた。発電機が稼働しているのだろうか。大きな三角屋根が闇の中に見えてきた。庚申山荘。工程の長い皇海山では多くの方が利用するだけあって無人ながらとても立派な建物だ。素泊まりで2,000円程度。事前に国民宿舎かじか荘で支払って利用する仕組みらしい。
庚申山荘を過ぎると本格的な登山道に突入する。ビビる後輩には暗くて丁度良かったが、程よい危険個所が続く。鎖場や梯子で岩をよじ登るように進む。
小高い岩の上に立つと遠くに街の灯りが見えた。方角的に群馬の桐生市付近だろうか。また朝日には時間がある。
ただでさえ暗闇なのに難所が続くため、思うように速度を上げることができず。感覚的に庚申山がとても遠く感じた。
周囲がだいぶ明るくなってきた頃、ようやく庚申山の頂に到着。樹林帯の中に三角点と標識があるだけで、眺望は全くない。樹の間から真っ赤に染まった空が少しだけ見えた。日の出が近い。おにぎりを一つだけ口にして庚申山の展望台へと移動する。
展望台と言っても櫓がある訳ではなく、森を抜けたところにある高台を単純にそう呼んでいるだけ。しかし、暗闇と樹林帯で視界の効かないまま4時間歩き続けてきたこともあり、目の前に広がる大パノラマに自然と感嘆の声が上がる。太陽は背後の樹林帯に隠れているので直接日の出を楽しむことはできないが、生まれたての太陽の光が周囲の山々を真っ赤に染めていく。朝のひと時、モルゲンロートだ。進行方向には、険しい峰を持つ鋸山が聳えている。その右奥にひと際大きい山がある。空間を押しのけるように存在する大きな質量を持った山。目的の皇海山をようやく捉えることができた。右手には、日光白根山や男体山も見える。夜通し登ってきた甲斐があったというもの。雄大な風景がモルゲンロートで刻々と変化している。先ほどまで立ち止まると肌寒かったのに、温かい陽射しが心地よい。さぁ、一気に皇海山を目指そう!
ここからは大きく降り鋸十一峰と呼ばれる幾つもの峰を越えて、皇海山の手前に聳える鋸山を目指す。目前の鋸山と皇海山があまりにも大きいため、スケール感を見失っているのかアップダウンの高低差が激しく見える。
完全に明るくなった。暗闇ではないので後輩も自分のペースで歩けるだろう。我慢していた速度を開放して、暫し自分のペースで進ませてもらう。御岳山から駒掛山、そして薬師岳へ。
早朝の澄んだ空気に包まれながら鳥の囀りを聴いているだけで、心も身体も軽やかになる。歩くのが楽しくて仕方がない。気持ちよすぎてスピードを上げ過ぎたのか、後輩が全くついてきている気配がない。危険ゾーンに入る前に、薬師岳の山頂で後輩を待つことにした。
結局、後輩が到着するのに30分以上も待たされる羽目になった。「遅いぞ!」とゲキを飛ばしたらヘロヘロになりながら「足が攣ってもう歩けない」と。マジか。でも、確かに夜間登山は昼間以上に気力体力を消耗する。また、庚申山までの道のりは難所の連続でそこそこの急登だった。少し休憩を入れて作戦会議。予定では、鋸山から皇海山をピストンした後、別ルートを使って鋸山から六林班峠を通り、円を描くように庚申山荘まで戻ろうと考えていた。しかし、後輩の様子を見る限りとてもじゃないが、皇海山へは行けそうにない。行けたとしてもきっと下山が難しくなってしまう。ツエルトは持ってきているので、まぁそれはそれで野宿でも問題はないが。。。後輩も自分で悟っているのか、皇海山は諦めるという。「じゃ、折り返して庚申山荘で落ち合おう」と指示すると、庚申山がよほど怖かったのか、一人ではとても降りられないとのこと。一方、これから向かう鋸山は、皇海山クラシックルート最大の難所と呼ばれているエリアにあたる。庚申山程度で手こずるなら鋸山はやめた方がいい。そう言っても、戻るのは嫌だという。彼の考えとしては同じ怖い思いをするなら降る危険より登る危険の方がまだましと考えているようだった。まぁ、テクニック的は間違いではないし、鋸山まで行くことさえできれば、地図の等高線から判断しても比較的アップダウンの少ないルートで戻ることができる。と、そこへ一人の年配の方がやってきた。常連さんだというので鋸山までのルートを聞いてみると「確かに危険な鎖場があるが、こんなおじいちゃんでも行けますよ。」とのこと。「ホントかぁ?」。その一言にやる気を出した後輩。仕方がないので、次の3つのルールを設定。
①たっぷり休憩してから鋸山を目指すこと。
②無理だと判断したらその場で引き返して庚申山荘で待つこと。
③もし、鋸山までたどり着くことができたら山頂で体力の回復を待つこと。
その間、自分は先行して皇海山まで行ってとんぼ返りをしてくる。スマホを取り出してみるとギリギリ圏内だったので、4つ目のルールとして「暫くは機内モードを解除して、お互いの連絡を取り合うこと」を追加して先を進む。
ほどなくして、のぞき込んでも下が見えないような垂直降下の鎖場が出現した。妙義山のビビリ岩を思い出す。はっきり言って、アグレッシブなコースは大好物なので、個人的には嬉しくて仕方がない。しかし、後輩のことを考えると浮かれてはいられない。切り立った崖になっているので、滑落をすると数mの落下では済まない危険性がある。早速「最初の鎖場は危険だから引き返せ!」「来るなぁ」とLINEを送る。が、数分待っても既読にならない。機内モードを解除するよう指示したのに、守っていないのか?嘘だろ?安全に関する指示を蔑ろにするなんて、と内心イラっとする。待っていても仕方がないので、そのまま進む。ど素人ではないから、状況判断はきちんと自分でできるだろう。
コルから鋸の頂へ向かって登り返し。危険個所は先ほどの垂直鎖場だけだと勝手に思い込んでいたが、実際は登りもなかなかのコース。アグレッシブな鎖場やザレて危険な個所が連続していた。その度に「来るな!引き返せ!」とLINEを送るが、やはり既読にはならない。「まだ機内モードを解除していないのか、いやそれとも無理やり鎖を降って滑落してしまったんじゃないか」と様々なシーンが頭をよぎる。置いてくるべきじゃなかったか。後悔の念で、一旦、歩んできた道を振り返る。ちょうど最初の垂直鎖場を過ぎた処に、先ほどの年配の方が歩いているのが小さく見えた。近くには後輩の姿はない。年配の方には特に慌てているような異常な様子は見受けられない。状況証拠的に冷静に考えれば、後輩はまだ合流地点で休憩している可能性が高い。あれほど言ったのだから、いずれLINEも入るだろうと、先を進むことにした。
鋸の山頂に到着。まさに鋸の刃先のような頂。漫画であれば「ドンッ!」と効果音が入りそうな大きな皇海山が目の前に聳えている。
「さて、後輩からの連絡は来たか?」とスマホを取り出すが、地形の関係か圏外になっていた。「だから直ぐに機内モードを解除しろと言ったのに」。お陰で不安が払しょくできず折角の感動もそぞろだった。
圏外エリアで佇んでいても仕方がないので先を進む。登ってきた程ではないが、垂直の長い鎖を使いながら降っていく。ザレているので滑らないようにゆっくりと降っていく。
不動沢のコルに到着。
ここでついに沈黙を破ってLINEの着信音が鳴る。慌ててスマホを取り出すと「なんとか鋸山につきました」とのメッセージ。普通のゴシック体なのに文字までとぼけて見える。安堵の半面、怒り倍増。「どうして無視したんだ!!」と刺々しく返したら「疲れで機内モードを解除し忘れてました」と、一気に火に油を注ぐ。「突き落としてやる!」殺意が芽生えた瞬間だった。

皇海山への登り返し。コルから樹林帯の中を登っていく。きつい斜度ではないが、コロナの運動不足がたたってかスピードが乗らない。でも、皇海山への登りは、深い森の中を歩いているようで、とても気持ちの良い道だった。
斜度が緩やかになり、水平移動に入るともう間もなく。突然、森の中に山頂を示す標識が出現する。山頂を極めた!という感動は薄く「えっここ?」というのが正直な感想。眺望はないとは聞いていたが、まさしくその通りで標識がなければそのまま通過していただろう。
三角点にタッチしておにぎりを頬張る。登山口からここまで、実に気持ちの良い山歩きだった。水もほとんど消費していない。しかし、これが夏だったらかなり手強いコースになるのは間違いない。変態(自覚在り)としてはそれも一度は経験してみたいものだ。
食事を終えて、立ち上がって戻る準備をする。ふと、樹々の間から白い山が見えた。枝が邪魔をしていたので、5メートルほど斜面を降りてみると、整った双耳峰が見えた。正三角形のような綺麗な頂が並んでいる。ドキドキするほど美しい。百名山の一つ燧ヶ岳に違いない。まさかこんなにはっきり見えるポイントがあるとは。落ち葉が落ちたこのシーズンでなければ見落としていたかも知れない。眺望を諦めていた分、感動が大きかった。
さて、後輩が舞っている。いや、頭をハタいてやらなければいけないので早く戻ることにしよう。
コルまで戻ったところで小休止。鋸山が空を貫くように鋭く尖っていた。シルエットになった山頂に人影が見える。カッコイイではないか。
鎖を手繰りながら鋸山を駆け上る。
山頂に戻ると、思ったより多くの人で溢れていた。
果たして、人の心配とLINEのメッセージを無視した惚けた後輩は、何事もなかったように山頂で休憩していた。ふざけたヤツだ。
戻りは鋸山から六林班峠に抜けて円を描くように庚申山荘へと戻る。下山モードとは言え、まだ相当な距離があるため、時間がもったいないので説教は歩きながらにする。心配だったのは後輩の疲労具合。自分はそもそも休憩不要なので、後輩さえたっぷり休んで回復してくれているならOKだ。
長い距離の降りに備えて、足の負担を減らすため保険で持ってきたストック(1本だけ)をザックから取り出しながら後輩に尋ねる。「筋肉痛は大丈夫か?」。。。すると「痛みはとれたんですが問題が、、、」と言う。「どうした?」と聞くと、鎖で垂直降下している時にあまりにもビビり過ぎて、ストックを谷底に落としてしまったとか。思わず「はぁ?!」と言ってしまったが、谷底に消えたのが本人でなかったのは幸いだった。
「無くても平気か?と」聞いたら、ダメとのこと。ザックから出したストックをそのまま無言で渡す。2回目のイラっ(笑)。
山頂から分岐する尾根の一つを使って六林班峠を目指す。地図から判断して楽なルートだと思っていたが、行く手を阻む笹の壁で道が不鮮明な個所もあり意外に時間を要した。
峠で休憩。コーヒータイムとする。夜は凍えるほど寒かったのに、日中の陽射しは暖かい。晩秋の小春日和だ。しかし、秋の日はつるべ落とし。ゆっくりしているとあっという間に陽が陰ってくるので早々に歩き出す。六林班峠からは尾根を外れて斜面をトラバースしながら水平移動で谷間を進む。高低差が少ないのでスピードを上げることができると考えていたが、利用者が少ないのか登りに比べて道が荒れていた。見失うほどではないが、全工程、笹の道。しかも、斜面の笹を草刈り機で刈上げただけの箇所もあり、真っすぐに足を降ろせず、とにかく滑りやすい。何気に歩いているが、谷底まではとんでもない急斜面になっていて、どこを踏み外してもきっと致命傷の滑落になることは必須だった。
表現上「草刈り機で刈上げただけ」と失礼な書き方をしてしまったが、逆を言えばこれだけの長いルートをよく草刈りしたものだと感心する。地道なご苦労があって、はじめて我々が安心して歩けるのだと、メンテして頂いている方々に改めて感謝する。
笹に足を取られて滑りそうになっているのか、時折、「うへー」と奇声を上げながら後輩がついてくる。峠からのコースは斜面をなぞるように進むので目測する以上に距離が長い。どこまで行っても笹の草原が続く。変わらぬ風景を歩いていると余計に疲労感が溜まりそうだった。
太陽の力が弱まり、風が肌寒くなって来た。歩き出してから12時間が過ぎようとしていた。
少しペースを上げる。
地図で確認すると長かった笹地獄もあと少し。小屋も目前だ。
後輩の足運びを確認すると、弱気発言の割にはしっかりしている。まだ大丈夫そうだ。実は小屋の前にどうしても寄りたい場所があった。事前に説明すると「嫌です」と断られそうだったので、分岐の看板を身体で隠し会話で誘導しながら後輩を別な道へと誘う。我ながら見事な誘導で何も気づかずに着いてくる後輩。分岐点から進むこと300m。「あれ?」とさすがに何かおかしいと気付く後輩。大きな岩が立ちはだかり行き止まりになっていた。これが寄りたかった場所「天下の見晴」。天下と言えば唯一無二みたいなもの。きっとよほどの絶景があるに違いない。そうなれば行かない訳にいかない。岩の横に設置されていた梯子を使って岩をよじ登る。
「うぉーーーーー」。
360度の視界が広がる。森の大海原に立っているようだった。振り返ると庚申山がデンと聳えている。登りの際は暗くて位置関係がよく掴めなかったが、確かに壁のような険しい斜面が見える。
暫し絶景で疲れを癒したのち、もと来た道へと戻る。流石に素晴らしいと感じたのか、後輩も特に文句はなかった。往復600m程度。疲れていても立ち寄るべきお勧めポイントだ。
小屋まで来ると、あとは遊歩道のような道のり。大凡の目算で一の鳥居に16時と予測していたが、ドンピシャで到着。そこからは約4kmの林道を降るだけの1時間ほどの工程だ。その前に陽が落ちてしまうが、林道であればヘッドライトなしでも歩ける。
横に並びつまらない馬鹿話で盛り上がりながら、とぼとぼと降っていく。疲れたという後輩の気も紛れてよい。
これまた目算通り17時に駐車場へ帰着。出発の時と同じく暗闇の中。トータル15時間の工程。よく歩いたと後輩を褒めると、緊張が解けてヘナヘナと座り込む。ガス欠寸前で、もう一歩も歩けないとのこと。「明日も登山なんてとんでもないです」と言っていた。
この程度で歩けなくなるなんて、まだまだ苦行が足りないなと言いたいところだったが、後輩にしてみれば頑張ったのも事実。それに免じて明日は休憩することにした。一人残して登山しても可哀そうだ。

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みんなのコメント

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  • 笑うポイント満載でした。険しい山なんですね。

  • そうなんですよ。某氏が相変わらず面白すぎで。
    険しい山。
    面白かったですよ。でも、いつか紹介しようと思っていますが、実は他にも外の山にない魅力があるのです。乞うご期待。 :)

  • こんなに厳しいとは皇海山を少し舐めていました。
    5時間程度で往復できるコースもあるんですよね(^.^)

  • レオさんのコメントの通り、短いルートもありますよ。でも、我々であれば全然問題ないですね。今回もレオさんと一緒であれば2~3時間は普通に短縮できていたと思います。冬の遠征お待ちしております。
    なにげにレオさんのアイコンは鏡平ですね。久しぶりに見たくなりました。

  • そうですymakei のアイコンは思い出の鏡平です。
    毎週のように山には登っているのですが、それ以上に食欲が止まらず体重が増えてしまいました。
    Yamakaeru さんと雪山にご一緒できるように頑張ります(^.^)

  • 綺麗に水面に写った槍が素敵ですね。自分はガスった風景しか見たことがありません。
    レオさんと行った雪中キャンプは快晴で素晴らしい風景でしたが、肝心の池は雪の遥か下に埋まっていましたし。笑。
    来年、双六とかご一緒したいですね。その前に、雪山の計画を練りましょう。よろしくお願いします。

  • 日帰りでこのコース歩くんですか?。朝日神々しいです。

  • 夢は、キスミレさんのような超人の山仙人になることです。 :)

登った山

皇海山

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2,144m

庚申山

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