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目覚め前のドラゴンアイ

八幡平( 東北)

パーティ: 2人 (Yamakaeru さん 、ほか1名)

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行程・コース

天候

登山口へのアクセス

マイカー
その他: 八幡平山頂駐車場。八幡平山頂第二駐車場、70台ほど。無料。登山口まで徒歩5分程度。
登山口手前に八幡平山頂第一駐車場、80台ほど。こちらは有料だが、夜間は開放されている。業務開始が8:30からだったので、今回はこちらを使わせて頂く。結果的に無料だった。

この登山記録の行程

八幡平山頂第一駐車場(05:46)・・・登山口・・・ドラゴンアイ(鏡沼)(06:00)・・・八幡平・山頂(06:18)・・・ドラゴンアイ(鏡沼)(06:31)・・・湿地帯散策(ガマ沼・八幡沼)・・・八幡平山頂第一駐車場(07:32)

コース

総距離
約5.8km
累積標高差
上り約238m
下り約236m

高低図

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登山記録

行動記録・感想・メモ

早池峰山に別れを告げて、早朝の高速を飛ばして一路「八幡平」へと向かう。
どんよりした雲の合間に、一瞬、朝日が見えた。
「晴れてくれー!!」と空に向かって嘆願するが、雲の動きを見る限りでは望みは薄い。
道中、岩手山が見えた。
半分以上が雲の中にあったが、それでも半端ない存在感が伝わって来る。また登ってみたい山の一つだ。
目指す八幡平は、岩手山の先にある。二つの山は程よい距離にあって、峰伝いに素敵な縦走路でつながっている。以前、雑誌で特集されているのを見て知ったが、ページの半分を占めていた紅葉の写真は半端なく美しかった。東北の紅葉はレベルが違う。
名が示す通り八幡平は真っ平らな山だ。山頂付近まで車で行けるため一般の観光客も多く、本格的な登山というよりも気ままに縦走を楽しむスタイルの方が適した山と言える。
八幡平山頂第一駐車場に到着。
無料駐車場に停めようかとも思ったが、登山口に近い有料駐車場を選んだ。
車道の両脇には高さ2m程だろうか、雪の壁が残っていた。
駐車場に車を入れたものの、エンジンを付けたまま暫し外を眺める。
晴れ間は期待できないと覚悟していたが、想像を上回る悪天候に呆然とする。「ゴォーツ」と唸る風。霧のような雨も降っている。
「なんだ、怖気ついたのか?」と山仙人。
「そうじゃなくて単純にテンションがダダ下がりなんです」と答える。
そう。今回、八幡平を目指して遥々やってきたのは、いつか自分の目で見たいと思っていた「ドラゴンアイ」があったから。ドラゴンアイとは、八幡平の鏡沼が雪解け時に見せる奇跡的な自然の造形美で、白い残雪と溶け出た青い水によって、まるでドラゴンの目のような光景が大地に描かれる不思議な現象。
出現する期間が短いため、完全な状態を狙うこと自体難しいが、加えて青空になる確率を重ねると、かなりの「運」が必要と言える。もともと運には恵まれていないので、晴天までは期待していなかったが、出るのをためらう程の悪天候ともなるとさすがにテンションも下がってしまう。
とは言え、いつまでもボーっとしている訳にはいかないので、身支度をして車を飛び出す。
必要最低限の荷物だけを持って出発。
登山口は駐車場の道路を挟んだ反対側にあった。
入り口から石畳の道が延びている。登山と言うより散策だ。
石畳の階段を登っていくと、最初の分岐に「←(左)ドラゴンアイ」と書かれた看板があった。周囲には残雪が沢山残っていて、看板に導かれるままに左へと折れると、道もほどなくして雪の中に消えていった。その先は残雪の上を歩いていく。
単純なもので、雪の上を歩くとなっただけで、下がっていたテンションも自然と回復する。スニーカーで入ってくる観光客も多いとは聞いていたが、よく踏みしめられているので、確かにアイゼンが無くても歩行には問題がなかった。
長らく夢見ていた瞬間は突然やってくる。というか、逆にあっけない。
山屋としては何時間もの行程を経てへとへとになりながら絶景を目にする喜びを糧としているが、歩き出して僅か15分足らずで目的が達成できてしまうとなんだか寂しい気分になる。
濃霧で諦めていたが、それでも薄っすらと写真でよく見ていた光景がそこにあった。
ドラゴンアイ。
雪面に円を描くように薄くブルーに透き通った水の帯が出来上がっている。それが円の中心に残った残雪を浮かび上がるように見せている。陽の光が当たっていればもっと鮮やかで神秘的に見えるに違いない。
目の中央部分が微かにくぼんでいたが、まだ「開眼」には至っていないようだった。自然現象にタイミングを合わせるのは本当に難しい。
雪解けが魅せる自然の造形美。正直、残雪期の白山でも似たような風景は見ることができる。たぶん、白山以外でも。それでもドラゴンアイにはいつか訪れなければいけないと思っていたので、ついに達成できたことに感無量だった。
目覚め前のドラゴンアイを何枚か写真に収めて、次は八幡平の山頂を目指す。
雪面を「ザッ、ザッ」と音立てながら森の中を抜けていく。
山頂と言っても、八幡平ほどはっきりしない山頂は他にはないと思う。しかも、駐車場から山頂までの距離が登山と呼ぶには極端に短く、身体が温まる前に到着してしまう。
事前に聞いてはいたものの、山仙人の「さぁ、着いた!」との一言に「えっ?」と思わず周囲を見渡してしまった。なぜなら周囲にはただ森が広がっているだけ。斜面を登ることもなく、ほぼ水平移動で歩いてきたのに、「ここが山頂」と言われてもピンとこない。
よく見ると前方に、薄っすらと霧の中に浮かび上がるように櫓が見えた。「あの展望台が山頂だ!」と山仙人が指をさす。確かに展望台の脇に八幡平と書かれた大きな標識があった。今まさに、これまで登ってきた百名山の中で、最も歩行距離が短く最も高低差が少ない山として、自分の中で認定された。
山頂からそのまま周遊をしようかとも思ったが、歩いているうちに一瞬でも霧が晴れないかと、もう一度ドラゴンアイまで戻ってみるが、むしろ雨が強まってきた。分かってはいたが、今日はずっとこんな感じだろう。
このまま駐車場に戻るには忍びなかったので、山仙人にお願いしてガマ沼と八幡沼を巡る遊歩道に沿って一周して戻ることにする。
遊歩道のほとんどはまだ1m以上の雪の下。雨によって雪面から立ち上る蒸気が、一層周囲の霧を濃くしているようだった。
展望台からガマ沼を見下ろす。濃霧の中で何も見えなかったが、本来であれば八幡沼や八幡平の全景が見渡せることで有名な絶景ポイントだ。
陵雲荘を過ぎ八幡沼の遊歩道を進む。
湿地帯と池塘のエリア。この周辺は雪解けが進んでいて、湿地帯の一部を臨むことができた。木道と雪の上を交互に進んでいく。
湿地帯では、既に春の準備が始まっていた。木道の脇に僅かながら赤紫色をしたショウジョウバカマや水芭蕉が顔を出していた。
徐々に強まってくる雨。それでも足を延ばして良かった。いや、むしろ誰もいない中で、この素敵な空間を独占できて最高のご褒美だ。霧の中に延びていく木道に佇み、純白の水芭蕉をそっと眺める。厳しい自然に耐えながら、美しく四季が巡っていく。いつかまた、次は花が咲き誇るころに訪れたいものだ。

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装備・携行品

みんなのコメント

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  • きっと違う季節に来て欲しいっていう、ドラゴンからのメッセージなのかもしれませんね。

  • 八幡平から岩手山の縦走はいつか実現しないといけません。
    東北にどうしても行きたい山があるので、いつか必ず。。。ですね。

登った山

八幡平

八幡平

1,613m

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