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加賀禅定道 ホワイトホールの旅

檜倉、長倉山、口長倉、奥長倉、美女坂ノ頭、百四丈滝( 東海・北陸・近畿)

パーティ: 4人 (Yamakaeru さん 、ほか3名)

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行程・コース

天候

晴れのち雪

登山口へのアクセス

マイカー
その他: カーナビには「一里の温泉スキー場」をセット。ただし、実際には数キロ登ったところにある無料駐車場を利用。座標は(36.26273305755402, 136.7227897521502)。GppgleMapで検索すると直接ナビができる。残雪期はいっぱいになることが多い。トイレ無し。

この登山記録の行程

駐車場出発(01:08)・・・山頂駅(02:21)・・・檜倉(02:48)・・・長倉山・口長倉・・・<日の出:05:37>・・・奥長倉避難小屋・奥長倉(06:48)(休憩~07:00)・・・(美女坂ノ頭(08:14)・・・百四丈滝のビューポイント(08:38)(休憩~09:01)・・・女坂ノ頭・・・奥長倉・奥長倉避難小屋・・・口長倉・長倉山・・・檜倉(13:32)・・・山頂駅(13:56)・・・駐車場(17:00)

コース

総距離
約18.2km
累積標高差
上り約2,072m
下り約2,074m

高低図

GPX ダウンロード KML ダウンロード

登山記録

行動記録・感想・メモ

長い間、温めてきた計画をついに発動する。
その名も「加賀禅定道 ホワイトホールの旅」。
「死ぬまでに行きたい〇〇の絶景」という本があるが、自分にとって今回の企画は、まさにそんな場所の一つ。体力があるうちに実際にその場所に立ち、自分の目に焼き付けておきたい!と願っていた。それが残雪期の百四丈滝。
アップダウンが激しく、夏道でも往復12時間以上のハードな工程となるため、奥長倉避難小屋で一泊するのが一般的とされている。雪山ともなれば雪のコンディションひとつでさらに時間が膨れ上がる。また、避難小屋を過ぎた奥長倉から女坂ノ頭までの区間は、アイゼンとピッケルワークが必須となり、雪山装備と十分なスキルや経験がないと正直危険である。
「もろもろ」を考えて、1時に駐車場を出発。
夜間登山自体は珍しくもないが、状況の分からない初めての雪山に、深夜に踏み入る行為にはさすがに緊張が走る。とにかく、雪崩と雪庇には気を付けなければならない。
スキー場の導水管脇から登るか、ハライ谷方面から登るかを悩んでいたが、結局、駐車場の手前100m程のところにあった林道から尾根へと取り付き、スキー場のゴンドラ駅「山頂駅」をダイレクトに目指して直登する。
見上げると満天の星空。
天気予報では曇りだったが、「なんとか持ちこたえてくれ!」と願う。
なにげに取り付いた尾根だったが、これが思いの外手ごわかった。真っ暗闇で一体どんな場所を登っているのかさえ分からない。とにかく歩みを止めることなく、ただ無心で登っていく。
今回の全工程に言えること。「ある意味、暗闇で良かった」と言うこと。
下山時にどこまでも続く尾根を見下ろして、「よくこんな急登を登ってきたものだ」と感心した。暗闇では雪崩や雪庇に気を張っていたため、疲れを感じることもなかったが、明るかったら早々に心が折れていたかも知れない。
山頂駅で小休止を入れたのち、檜倉へと向かう。
なだらかな稜線。ただし、痩せた箇所もあり、雪庇を回避しながら慎重に進む。
緩やかだと思っていたのもつかの間、再び急登が始まる。
ライトで先を照らしてみたが、延々と続く斜面の先は闇に消えていて距離感が全く分からない。とりあえず樹林帯があるうちは、雪崩の心配がないだけましと、無言で足を動かし続ける。
振り返ると小松市だろうか、遠くに街灯りが揺らめきながら綺麗に見えていた。
空を見上げると少し雲がせり出してきたものの、星はまだくっきりと透明感のある輝きを見せている。
長倉山付近で周囲が明るくなってきた。同時に左手側の山塊が赤く染まってきた。残念ながら薄い雲がせり出していたため、日の出の瞬間は拝めそうにないが、それでも綺麗な朝日は見ることができそうだった。
ヘッドライトを収納するついでに初めての水分補給。口に軽く含むつもりが、美味しくてつい飲み過ぎてしまった。知らず緊張と疲れで身体が水分を欲していたのだろう。
行く手を阻む藪が無くなり、純白のロードが空に向かって延びているのが見えた。
「ここでも充分高度を上げているのに、更に登るのか」。。。
地図を読み込んでいたので、分かり切った自問自答だったが、そうつぶやきたくなるほどに容赦ない登りが待ち構えている。しかし、厳しさに比例して圧倒的な美しさも広がっている。負けてられないと気持ちを引き締めて、モルゲンロートに赤く染まった雪を踏みしめながら進んでいく。凍った雪面に「サクッ、サクッ」とアイゼンの歯が奏でる音が心地よい。
口長倉付近で完全に太陽が昇ってきた。生まれたばかりの太陽から放たれる熱量。光を浴びただけで、元気が盛り返してくるから不思議だ。
足を止めて、周囲の風景を深々と眺める。遥か彼方まで連なっている山々。なんと山深いエリアだろうか。その中でもひと際白く存在感を持つ山があった。山座同定のスキルなんて不要。間違いなく深田久弥が愛したという「笈ヶ岳」だ。実に素晴らしい山容。いつかあの頂にも立ちたいものだ。
尾根伝いに高度を上げていくと、沢山の人影が見えた。
「ひょっとして」と思ったら、やはり奥長倉の避難小屋だった。雪の中から赤い屋根の三角の部分だけが頭をのぞかせている。一体どれだけの積雪があるのだろうか。
小屋の周辺では10人程が休憩していた。聞くところによると、狭い小屋に20人程が宿泊していたという。日帰りは体力的に厳しいが、狭い空間に身を寄せ合って一晩過ごすのも正直厳しいなと想像して苦笑した。
軽く食べ物を口にしてから奥長倉へと進む。
目の前に、とても大きなピークが聳えて見えていた。
ピークのトップ付近は緩やかなカーブを描いている。「美女坂ノ頭」と呼ばれる大雪原で、そこまで登り切ってしまえば、目的地はもう目の前となる。しかし、奥長倉から美女坂ノ頭までが想像以上に長く、コース中、もっとも危険な個所と言われている。
立ちはだかるのが、壁のような斜面。
ここまでにも、ピッケルとアイゼンワークが必要な斜面が数か所あったが、明らかに難易度と危険度が異なる。
キックステップでアイゼンの前歯を打ち込み、ピッケルで三点確保しながら登っていく。振り返ると、足元の斜面が数m下で切れ落ちていて谷底が見えない。逆に見上げると、えげつないことに反り返った斜面が覆いかぶさってくるように見える。なかなかの緊張感だ。
一つひとつの動作を丁寧にこなさないと、一回のミスがそのまま命取りになってしまう。
ところが、その動作を繰り返している最中に、右足大腿部に針を刺したような激痛が走った。
「ぐっ」。
深夜1時から登山を開始して、暗闇の中で恐ろしく神経を使いながら登って来た。知らず体力と精神力を大きく消耗していたに違いない。
滑落しないようピッケルでビレイをとり、うずくまりながら足の回復を待つ。
すかさず先輩が近寄ってきて、薬を手渡してくれた。足がつった時の「コムレケア」。初めて飲んだが、フラシーボ効果もあってかすぐに効いた気がした。
慎重に立ち上がり足の状況を確認する。
「よしっ、いける」。
力が入らず踏ん張りは効かないが、丁寧に歩けば前には進めそうだ。先輩ありがとう。
キツかった斜面にも終わりは必ずやって来る。
グッと体を持ち上げて、安定した雪面に両足で立つ。
そこには待ちにまった美女坂ノ頭の大雪原が広がっていた。純白の大雪原。その表面をなでるように薄い雲がスーっと流れていく。息を飲む光景だ。
「もう、死んでもいい」と自然と言葉が口からあふれ出したが、慌ててそれを止めた。帰りも垂直のような斜面が待っている。「もう死んでも・・・」は冗談にはならない。
長かった行程もついに終わり。目指す幻の滝は雪原の先にある。
周囲の風景を楽しみながらゆっくり歩みを進める。空は快晴。青空が広がっている。最高だ!。
雪原の端に到着。足元の1m先には雪庇があり、重みから割れ欠けていて大きな亀裂が走っていた。そのギリギリに立って眼下の奇跡を見下ろす。
雪の中から一条の滝が流れ落ちて、ホワイトホールと表現すべきか、巨大な雪で出来た壺の中へと吸い込まれている。
風向きが変わると「ゴーーーッ」という音が微かに響き伝わってくる。
どうしたらこんな風景が出来上がるのだろうか。流れ出る多量の水を、まるで地球が飲み干しているかのようで圧巻だ。
いつまでも見ていたかったが、帰路もあるので最後にもう一度だけゆっくりと風景を心に焼き付けてから来た道を折り返す。
不思議なことに、その途端、雲が競り上がってきて周囲の風景を覆い隠していった。冷たい風の中には雪が混じっている。吹雪だ。
まさにタッチの差。登山開始を1時か2時かで悩んだが、結果、1時にして正解だった。
元々、天気は下降気味ではあったが、神様がきっと自分たちのために待っていてくれたに違いない。おかげで長年あたためてきた企画も無事成功!
間違いなく心に残った山のひとつになった。

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みんなのコメント

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  • 世の中にこんな景色があったなんて
    素晴らしい時間をありがとうございます!

  • 仲間がいたからたどり着けた。そんな風景でした。有難う。^_^

  • パソコン見てたら見つけました。
    Yamakaeruさんのおかげで素晴らしいものを見ることができました。また、素晴らしい体験ができました。本当にありがとうございます。

  • お礼はこっちの方ですよ。レオさん達がいなかったら多分辿り着いていなかったです。なにより、あの景色をみんなで共有できたことが宝ですね。もっとそんな経験を増やしたいですね。これからもよろしくお願いします。^_^

  • 死ぬまでに見たいところがいっぱいあります。ありすぎて困っています。

  • キスミレさん、同感ですね。
    人生足りないです。笑

登った山

長倉山

長倉山

1,640m

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