行程・コース
天候
初日:雨のち晴れ、2日目:晴れ、3日目:快晴
登山口へのアクセス
マイカー
その他:
バイク利用で寄大橋駐車スペースに駐輪
この登山記録の行程
●1日目
寄大橋(07:35)・・・寄コシバ沢分岐(09:50)[休憩 10分]・・・鍋割峠(11:30)[休憩 5分]・・・オガラ沢分岐(11:55)・・・旧鍋割峠(12:25)[休憩 10分]・・・オガラ沢ノ頭(12:38)・・・オガラ沢出合(13:40)[休憩 20分]・・・熊木沢出合(14:20)・・・蛭ヶ岳南稜取付(17:30)ビバーク
●2日目
蛭ヶ岳南稜取付(06:30)・・・蛭ヶ岳山頂(10:20)[休憩 30分]・・・臼ヶ岳(12:15)[休憩 5分]・・・ユーシンロッヂ(16:22)避難小屋
●3日目
ユーシンロッヂ(05:05)・・・雨山橋(05:24)・・・雨山峠(06:30)[休憩 5分]・・・コシバ沢分岐(07:22)[休憩 5分]・・・寄大橋(09:15)
高低図
登山記録
行動記録・感想・メモ
以前より計画していた丹沢のバリエーションルートを繋いだ、蛭ヶ岳南稜へのアタックを、ゴールデンウィークの期間を使って決行した。
日程については、ナイトハイクを行えば日帰りで登っている人もいるが、ソロでの滑落のリスクや道迷いからのリカバー、体調と集中力の維持等を考慮し、初日は寄コシバ沢から鍋割山北尾根を通って、熊木沢を詰めて南稜取付きへのアプローチ、2日目に南稜アタックから臼ヶ岳の朝比奈尾根を下りユーシンへの移動、3日目に下山という計画で、丹沢の山の深さを存分に味わう計画だ。
問題は核心となる2日目の天気だったが、連休中は天候が不安定で直前まで決行日を決めあぐね、最終的に5月2日から4日で決定した。
初日はバイクで寄大橋のパーキングスペースまで向かったが、前日は曇りのち晴れとなっていた予報は外れ、移動中から雨が降り出した。最初からレインウェアを着けて寄から入山することになった。
幸い、雨量はそれほどでもなかったものの、渡渉の際の水量が比較的多く、落水しない様に注意しながらの渡渉を繰り返しながら最初のポイントである寄コシバ沢の分岐を目指す。寄コシバ沢の分岐に到着した時にはかなりガスが出始めていて、視程は20~30m程となっていた。
寄コシバ沢は予想以上に流木が多く横たわり、土石流の影響で地形の変化も大きかった。衛星写真にも写っている鍋割峠への分岐の目印になっている巨大な檜の倒木はその数を増して存在しており、その先の寄コシバ沢右岸から流入する枯れた沢にピンクリボンで目印がつけられており、そこから沢を外れて鍋割峠へ詰め始めた。
この時視界が悪くて見落としていたが、本来はすぐ右側にもピンクリボンの目印があり、そこから谷筋をへつる様に上がっていくのだが、涸れ沢を遡行する踏み跡があったため引き込まれ、その先の斜面を30分程彷徨ってしまい大きな時間をロスした。最終的に地形図を見直すと、取付きからそのまま谷筋をへつって上がっていくのが自然だと考え元の場所に戻り、ピンクリボンを見つけてルートに合流できた。
寄コシバ沢から鍋割峠へのルートの踏み跡は明瞭だったが、時折、崩落した箇所や倒木で覆われた箇所もあるが、立ち止まって周囲を見渡せば何らかの痕跡があるのでルートをつなげられた。予定より遅れて鍋割峠に到着したが、当日の下山を考えていないので気持ちに余裕がある。
鍋割山山頂手前にあるオガラ沢への分岐は、以前来た時は普通に登山道の様に続いていたが、周囲の階段などが整備されて綺麗になっていた代わりに、しっかりとロープが張られて初めて来た時には分からないかもしれない。ロープを跨いで鍋割山北尾根を下降する。
鍋割山北尾根は土がふかふかの素直な尾根で、そのまま下降していけば道迷いはないだろう。やがて明確な鞍部になった旧鍋割峠に到着し、その前の小高いオガラ沢ノ頭を登ってすぐに右に折れる尾根に進行方向を変えて下降を続けると、やがて美しいブナの森は終わり、杉の植林に植生が変わった辺りで左手に折れてオガラ沢へ合流する。
この日は行き過ぎて山ノ神に登りそうになったが、違和感を感じて地図を見返し、正規のルートへ復旧した。オガラ沢への下降天には杉の木に赤ペンキで矢印が書いてあるが、バリエーションルートにこうした過剰な配慮は無粋だと感じた。オガラ沢に合流後はそのまま下流となる右側を沢に沿って進んでいくと、堰堤をいくつか過ぎてオガラ沢出合の橋に出た。
オガラ沢出合で昼食のおにぎりを食べた後、崩落著しい林道を通って熊木沢へ。毎回感じるのが、熊木沢橋の脚立が難燃も全く劣化していない感じなのだが、定期的に誰かが入れ替えているのだろうか?
橋を越えてからは熊木沢右岸を進むと少し高いところに林道の路肩が見えたので、そこから斜面をよじ登り、林道に乗った。熊木沢の第1堰堤を越えた辺りで、有名な「警笛鳴らせ」の標識があった。そこからしばらく進むと林道は終わり、再び川原に降りる。そのまま第2堰堤を目指して進むと、堰堤に倒木が立てかけてあるのが見えた。堰堤は左岸の土砂が堆積した箇所から高巻きすることも可能であるが、こちらの倒木を足掛かりに越えた。
第2堰堤を越えた後、対岸に渡るとススキ等の茂みに覆われてよく見えないが、右岸の林道があるので林道に上がる。林道上は落石が多く、思った以上に劣化が著しい。そのまま進むと写真でよく紹介されている陥没箇所があるが、昨年秋の記録にあった写真より、先端部分が大きく崩落していた。崩落箇所の手前に高巻き箇所があるので、そこから上流へ巻いていく。
高巻き箇所から林道に復旧する際に林道の始点がヤブに埋もれて非常に分かり辛く難儀した。また、この時点で雨は上がっていたが雲は低くて目指す蛭ヶ岳の全容は見えなかった。この先の林道は更に落石が多く、荒れ果てた様子。途中似合った一抱え程ある岩の上にはケルンが積まれており、人の気配を感じさせた。
第3堰堤を越えた頃に後ろを振り返ると、雨山や檜岳上空は既に晴れ間が見え始めており、天候の回復を感じさせた。さらに里道終点、第5堰堤に到達した頃には蛭ヶ岳も山頂には雲が掛かっていたものの、山麓には日差しが当たり始めていた。
この時点で当初の予想では、林道がそのまま有名な赤いミニキャブのある場所に通じていると考えていたが、林道は左の山の方へ大きく曲がって終わっていた。第5堰堤も右岸側は段差が大きく乗り越えられなかったため、渡渉して左岸の土砂の堆積している部分を乗り越えた。その先の沢は東沢と西沢、ミカゲ沢に分岐していて、赤い車の広場は見当も付かなかったので、西沢の左岸堰堤際にある南稜取付きを目指して登っていった所、右岸の少し高い所に赤い車体を発見し、ようやくたどり着くことができた。跡から分かったが、正解のルートは第5堰堤を越えた後、そのままミカゲ沢の涸れ沢を遡上するのが近道だった。
ビバーク地に到着した頃には青空が見え始め、翌日の好天が予想できた。日没前にシェルターの設置と、ミカゲ沢の細流から水を汲んで浄水し、飲料水の確保をした。陽が落ちる頃には気温がグングン下がって、4℃まで低下した。手早くお湯を沸かしてアルファ化米とレトルトの焼鳥で夕食をとった後、寝酒にウィスキーのお湯割りを飲んで就寝したが、シェルター内の結露がひどく、一晩中、シトシト雨に打たれている様で熟睡できなかった。シュラフカバーの中も結露がひどかった。
2日目、4時に起床し、最初に湿ったシュラフ等を風に晒して乾かす。平行してお湯を沸かし、フリーズドライのパスタを戻す間にコーヒーを飲んだ。空が明るくなり始めると、薄い雲が掛かっていて概ね良好。食後は片付けたものからパッキングして行くが、40Lのザックにきっちり持ってきているので、雑なパッキングができず手間が掛かる。2日目は南稜から稜線に上がるため水の確保ができないことから、ハイドレーションにミカゲ沢の水を浄水して2L入れて背負う。
6時30分、西沢を渡った蛭ヶ岳南稜取付きから登頂開始。いきなりの急登で、木の根につかまりながらよじ登っていく。恐怖感を感じるザレたヤセ尾根をひたすら登っていき、標高1150m辺りで尾根が広くなり始め、ようやく安心した気分になった。取付きの尾根を越えるとふかふかの崩れやすい土の急斜面をキックステップを刻みながら、テムレスを着けた手を土に食い込ませながらひたすら登る。こけたらかなり落ちるだろう。
やがて斜面は木の根や岩に覆われた明確な尾根に変わってきたが、急登なのは変わらない。標高1380m位の場所で左側を見ると、冠雪した富士山が綺麗に見えた。この辺りはブナの綺麗な原生林で秋の紅葉に季節に来たら素晴らしいだろう。
南稜が牙をむき始めたと感じたのは標高1450m付近になって脆い岩と草付きの壁が始まった辺りからだ。ホールドにする立木や灌木も枯れてないことを確認しながら根元の方を注意しながらつかまないと折れたり抜けたりする恐れがあるし、大きな岩もつかんだ所がポロッと取れたり、土から抜けて落ちてきたりする。一度、岩を右足の上に落した時には「やっちまった!」と行動不能になる可能性が頭をよぎったが、幸い、靴でガードできてダメージはなかった。以後、3点保持で3点に均等に加重することを心がけながら、更に慎重に足を進めた。
やがて日差しが強くなり始めると南の鍋割山方面に積乱雲が発生し始めたので、落雷のリスクを感じてやや焦る。そんなときは水を飲んでクールダウン。標高1500m付近から、コイワザクラの群落があちこちに見られ始めた。
1600m付近で一度傾斜が緩くなり、山頂が見える様になった。荊の密度が濃くなり始める。有名なお助けロープを地面に発見した先から、岩登りの最終ステージになり、灌木につかまりながらひたすら登った。逃げようのない荊のトゲに前腕が傷だらけになりながら登っていくと、不意にシートが貼られた雨水溝が足下に見えて、唐突に蛭ヶ岳山頂に到着した。雄叫びを上げたかったが、変な所から出てきた自分をビックリした顔で見つめる登山者がいたので静かに記念撮影。
予定通り、蛭ヶ岳山荘で蛭カレーを食べた後、丹沢主稜縦走路を臼ヶ岳方向へ移動、途中、登ってきた南稜を真横から眺められる箇所があったので立ち止まると、よくあんな所を登ってきたなとビックリする程の急斜面だった。やがて臼ヶ岳山頂手前のベンチに到着。そのまま朝日向尾根へ直進した。
朝日向尾根の出だしは緩やかで歩きやすい尾根だったが、道標は全くない。緩やかで幅広な箇所が多く、誤った尾根に引き込まれやすいという印象だ。また、等高線に現れない急峻な地形も多く、この日はGWのど真ん中であったが誰にも会わなかった事からも、行動不能になった場合は遭難に直結だ。
朝日向尾根のブナの森は、やがて杉の植林に変わると、ユーシンロッヂが近い。ユーシンロッヂの真東辺りに来ると、右に下降する踏み跡があるので、そこを下降するとユーシンロッヂのトイレ裏にある森の中に出た。ユーシンロッヂには人の気配はなく、避難小屋日誌を見ると日中、2名程が立ち寄っていた。現在は水道も電気もないユーシンロッヂで、南稜の疲れを癒すためにタップリ寝た。
翌 朝、3日目は荷物をまとめて掃除を済ませ、5時に出発。昨日の蛭ヶ岳登頂後より痛み出した左膝をかばいながら、雨山峠を越える。昨年7月以来の雨山峠の荒廃は更に進み、周囲の沢からの土石流のため、河原が広くなってしまっている箇所がいくつかあった。雨山峠を越えてからも、峠のすぐ先にあった階段が倒壊。流出し、鋭く切れ込んだ急峻なゴルジュの中を歩いた。寄大橋へは計画よりやや遅れたものの、概ね予定通りに到着した。
とにかく、3日間のほとんどが誰もいない深い山奥での行動だったため、致命的なミスをしないことを念頭に過ごした事でもの凄く消耗した感じだ。しかし、蛭ヶ岳南稜にガッツリ取り組めた満足感は何事にも代えがたく、記憶に残る山行であった。
ちなみに、蛭ヶ岳南稜を山のグレーディング表に照らし合わせると、以下の様なグレーディングではないかと思っている。さらに難易度に関していえば、かなりEに近いかもしれない。
【体力度】
6~7:1~2泊以上が適当
【難易度】
◆D
登山道=◇厳しい岩稜や不安定なガレ場、ハシゴ、くさり場、藪漕ぎを必要とする箇所、場所により雪渓や渡渉箇所がある。◇手を使う急な登下降がある。◇ハシゴ、くさり場、や案内標識などの人工的な補助は限定的で、転落、滑落の危険箇所が多い。
技術・能力=◇地図読み能力、岩場、雪渓を安定して通過できるバランス能力や技術が必要。◇ルートファインディングの技術、高度な判断力が必要。
フォトギャラリー:57枚
装備・携行品
| シャツ | アンダーウェア | ダウン・化繊綿ウェア | ロングパンツ | 靴下 | レインウェア |
| 登山靴 | バックパック | スタッフバック | スパッツ・ゲイター | 水筒・テルモス | ヘッドランプ |
| タオル | 帽子 | グローブ | サングラス | 着替え | 地図 |
| コンパス | ノート・筆記用具 | 腕時計 | カメラ | 登山計画書(控え) | ナイフ |
| 修理用具 | ツエルト | 健康保険証 | ホイッスル | 医療品 | 虫除け |
| 熊鈴・ベアスプレー | ロールペーパー | 非常食 | 行動食 | テーピングテープ | トレッキングポール |
| GPS機器 | ストーブ | 燃料 | ライター | カップ | クッカー |
| カトラリー | |||||
| 【その他】
装備重量:約10kg(水0L)40LザックでULスタイル 食料:1日昼食@コンビニおにぎり&パン、夕食@アルファ化米+レトルト焼鳥 2日朝食@アルファ化米+汁物(豚汁)、昼食@蛭カレー(10:30から)、夕食@フリーズドライパスタ+汁物 (ナスとトマトのスープ) 3日朝食@アルファ化米 非常食:アルファ化米+行動食残り 水:ポカリ2本を携行し、水は浄水器にて現地調達、蛭ヶ岳登頂時は野営地側のミカゲ沢で給水し、ハイドレーションで背負う。 ガス使用量:88g(調理回数4回) 日出/日没(04:43/18:39) エスケープ:蛭ヶ岳登頂前は寄に向けて下山、蛭ヶ岳登頂後は一般登山道を通り、大倉へ下山する。 その他:マグマ×2、ザイル7mm×11m他、シュリンゲ120cm×2、カラビナ2枚 |
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