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無道二千m峰6/126/768

小鉢盛山( 北アルプス・御嶽山)

パーティ: 1人 (1357 さん )

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行程・コース

天候

曇後晴

登山口へのアクセス

マイカー

この登山記録の行程

野麦峠スキー場山頂駅(11:00)鞍部(2,035m/11:20)小鉢盛山(15:15)鞍部幕営2,195m(16:15/7:40)鉢盛山(9:35~10:10)五六峰(13:55)三角点幕営1,922m(15:30/7:15)最低鞍部(1,155m/10:55)P1,214(11:20)島々宿(12:25)野麦峠スキー場(13:10)

コース

総距離
約18.6km
累積標高差
上り約835m
下り約2,229m

高低図

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登山記録

行動記録・感想・メモ

 「夏に1人で藪を漕ぐよりも、積雪期に歩いた方が楽な所も多いだろう。ラッセルは1人では無理だが、山スキーだと1人でも如何にかなりそうで使えるかも知れない」と気付く。山スキーが有効となると年間を通じて山行が実残出来る訳で、横断縦走の達成も早まる事になって‘渡りに舟’だ。
 中央高速を順調に走って松本インターに着くが、国道158号線は積雪のためにダラダラ運転に近く、思ったより時間を要して野麦峠スキー場に着く。
 3連休の初日にしては混んでおらず、リフト2本を乗り継いで一気に尾根の上まで上がる。雪雲が切れ切れに流れてきて遠くの視界は無いが、小鉢盛山の方は時々山頂が見える。リフトの終点が地図上の何処に相当するのか見当が付かないので、1本滑降して地形を確かめる。
 ゲレンデは距離もあり傾斜も適当で、標高が高いので雪質も良く滑って楽しいスキー場で、気に入る。スキーヤーは1日券の利用者ばかりらしく、乗場でチェックしないので手元に回数券が残ってしまう。と言う訳で、リフトを利用して数回の滑降を楽しんだために出発が遅くなる。
 ゲレンデが左折する所で樹林の中へ入り、冬山支度をして板にシールを着け、いよいよ歩き出す。積雪は1m以上、時々雪が降って西風が冷たい。トレースは勿論無いが、夏の踏跡の切り開きらしいものも全く見当たらず、スキーヤーの群れから別れて唯1人山の奥へと進むのは幾許かの勇気が要る。
 木の枝から落ちる雪を被らないように注意しながらシラビソの間を2,035mの鞍部へ下る。地上から数mの高さにリングを付けたワイヤーが張ってあり、「少なくとも誰かがここを通った事があるんだなあ」と、妙に安心する。
 鞍部から尾根の背を拾って登る。傾斜は緩く、ほぼ最大傾斜線に沿って1ピッチ1時間のペースで新雪にシールを利かせて登る。3ピッチ目位からやや傾斜が急になり、尾根の背をジグザグに登る。概ねは下生えの笹の上の邪魔物の少ない雪面を順調に歩くが、倒木があると大回りして先へ進むことになる。笹の背丈が大きいと乗った時に「ズボッ」と(音はしないが)沈下して空洞に飲み込まれて転倒し、起き上がるのにもがき苦しんで荒い息となる。
 小鉢盛山頂手前の木陰からカモシカが飛び出して斜面を駆け下るが、5mも行くと立ち止まって恐れ気も無くじっとこちらを見ている。黒い房々した毛が如何にも暖かそうで、雪の中のカモシカは様になり存在感がある。小さなピークが連なり、細い尾根の部分もあって頂上はなかなか遠く、4ピッチ掛かって小鉢盛山に着く。天気は次第に悪くなり、頂上では弱い風雪に見舞われてゆっくり休む気がしない。
 頂上からの下りは小尾根が多く派生していて迷い易いので、慎重にならざるを得ない。視界が利かないので磁石と地図を頼りに進み、北側の大白川の上部に迷い込まないよう右側のヒル久保沢上部の急斜面の上縁沿いを拾う心算で歩く。
 ヒル久保沢に落ち込んで終っている小尾根に迷い込むのを際どいところで避け、鞍部の南西面の斜面に入り込んでやや安心する。ここには、シラビソの高木の間に1~2mの下生えの小木が隙間無く生え、積雪も2m近くある。上部は傾斜が急で、シールを着けたまま斜滑降でキックターンしながら下るが、何回も転倒し、起き上がるのに深雪でもがいて足腰の筋肉を酷使することになる。
 深い雪にラッセルリングを捕られて無くし、如何探しても見つからず、遂に諦める。下るに従って傾斜が落ち、樹木も少なくなって滑降を楽しめるようになる。下り切った鞍部の木陰に風を避けてテントを張る。何時もの事ながら、疲れた足で締まり難い雪を踏み固めてテント場を作るのは非常に疲れる仕事だ。テントに入り、コンロに点火してやっと人心地が付く。
夜、上空を風が走り、月齢13のぼんやりと明るい吹雪の夜を過ごす。

 今日の天気は昨日同様の弱い風雪で、視界は無いが雲はいくらか薄くなっている。着けっ放しにしたシールを点検して歩き始める。
 常緑樹と落葉樹の混生した平坦な台地を越え、樺等の間を抜けて深雪の上に柔らかくトレースを付けて歩き、標高2,195mの気持ちの好い鞍部から登りに掛かる。鉢盛山頂まで明瞭な尾根が伸びており、迷う心配が無く気が楽だ。下部は所々笹が頭を出しているが樹間が広く、オーバーペースにならない様に気を付けて登る。
 シール登行は、登ると言うよりはゲレンデを歩く時の感覚で歩幅が広くなってピッチが早くなり易く、息切れして休憩回数が多くなって結果的に疲れて時間も掛かってしまうことになり勝ちなのだ。
 天気は次第に良くなる様で、時々雲の切れ目から薄日が射してくる。樅の木が多くなり下枝が張って樹氷に似てくる。尾根の西面の雪は風で締まっているが、反対側はふかふかの深雪で、風を避けて主に東面寄りの斜面をキックターンを繰り返して進み、傾斜の増した尾根の樅の木を避けて蛇行して登る。
 木が少なくなり、目の前が少し開けて「頂上が近いな」と思いながら登ると『鉢盛山』の標識が目に入る。雪の上に1mほど頭を出して確りと立って安定感があり、「よく頑張った!」と言っているように思えて励まされる気がする。
 標高差250mを2ピッチ、2時間で登ったことになる。夏のコースタイムに比べると倍近くを要した勘定だが、ワカンでのラッセルに比べると恐らく数倍のスピードだろう。しかも、1人であることを考慮するとシール登行の威力は歴然としている。昨日は350mを4ピッチ、4時間で小鉢盛へ登ったのだから、1時間当り100m前後がテントを背負った深雪のシール登行の速さと計算して良さそうだ。
 頂上で大休止してゆっくり食事を取る。「連休だから、朝日村からの入山者が居るかも知れない」と期待しないでもなかったのだが、トレースは無く寂しく心細く思う。この頃、視界は数十~百mと良くなる。
 「どんなルートで本州横断の一環に鉢盛山を取り込もうか」と考えた挙句、「島々宿から南西に伸びる尾根がすっきりしていてベストだ」と決めた訳だが、記録に当たって見ても夏道が無い様なので、今回の冬の縦走を計画した次第だ。「再訪する事も無いだろう」と、頂上を去るに際して感傷的になる。
 頂上プラトーから雪の斜面を1段降り、樹木に覆われた小高い丘に登る。時々夏道らしい切り開きが現れるが、密生した樅の木の間を方向第一に歩く(標高2,400m付近)。いくらか傾斜が増し、2~3mの樅の小木の間を方向転換を繰り返して下る。
 木の根元の雪面の下には空洞があって頻繁に転ぶ。ザックが頭の上に被さって起き上がるのに苦労し、下りなのに体力は使うし遅々として高度も下がらず、今日、明日の行程が心配になり始める。やがて岳樺等の落葉高木も混じって樹間が広がり、傾斜は増すものの斜滑降で下れるようになる。
 前方の林の中を、兎が、時に立ち止まってゆっくりと逃げて行く。胡麻塩色で雪の中でも目立つ。下の斜面ではシュテムターンを楽しむ余裕も出てくるが、左足のビンディングが外れて立ち止まると右のシールが無くなっているのに気付き、この先の長いラッセルが頭を掠めて一瞬青ざめる。しかし、引き返して捜すと直ぐに見付かり、安堵する。
 鞍部の広い雪面に陽当りを求めて腰を下ろし、食事を取って大休止する(11:25~50)。トップ部分のシールとスキー板の間に雪が詰まってズレ易くなっており、板の裏の雪を取り除いて水分を拭き取って丁寧にシールを貼り付ける。
 この鞍部までは尾根形がはっきりせず、悪天と樹林に遮られて視界の無い斜面を地図を頼りにハラハラしながら下ったのだが、ここから先は尾根が明瞭で迷う様な所も少なく、天気も回復気味なので随分気が楽になる。
 鞍部から少し登り返して尾根の背を辿ると、木立の間に何となく切り開きらしい空間が続いている様に見える。雪がたっぷりの尾根には小さな登りはあるが、基本的に下りで、以外と樹木が少なくて傾斜も緩いので快調に歩く。
 ゆったりと大きい標高点2,202m峰付近(13:15)ではシール滑降にも慣れて次第に巧くなり楽しく滑るが、転倒した弾みにスキー帽を雪の中に落とすと探してもなかなか見つからず、狐に包まれた様な気がして、「ラッセルリングが見つからないのも宜なるかな」と昨日の失敗を思い出す。
 三角点2,172.8mの肩(五六峰、縦走時は無名)から尾根が左折して急落する。勾配の緩い北西側の斜面に入って斜滑降とキックターンで下るが、北西の風を正面に受けて雪が吹き飛ばされて木の根が出ていたり、クラストしていたりして難儀する。この200mの下りで1時間以上掛かってしまう。
 標高2,000m弱まで下ると再び傾斜が落ちるが、積雪も1m以下となり笹が随所に頭を出してスキー板が頻繁に引っ掛かってピッチが落ちる。天気図を取るのに間に合う限々の時間まで頑張って歩き、1,921m峰の直ぐ先の風下の窪地を整備してテントを張る。

 3日日もシールを着けて尾根を下る。歩き始めは上手く滑れないが、次第にバランスの取り方が巧くなって尾根の背を楽しく滑り、時々転びながらも順調に高度を下げる。楽しく滑ったり歩いたりしていてPl,625の先で左へ乗り移る様に尾根がズレているのに気付かず、目の前が切れ落ちているのを見て驚くが、落葉松林を左へ下り笹原を横断して正しい尾根に就く。一本立てる頃には暑くなってヤッケの上着を脱ぎ、帽子も目出帽を薄いスキー帽に替える(1,605m、8:10)。
 今日は快晴で風は冷たいものの、日溜りに風を避けて休んでいても体を動かした余韻で何時までも暖かい。雪はだんだん少なくなり、西側の斜面と尾根の上は風で積雪量が少ない上に陽射しで融けてしまって斑模様に地肌が出てくる。右の林の中には相当の積雪があるが、黒川谷側の急斜面に掛かるので歩くことが出来ない。
 1,563mの三角点を越え(9:00)、1,400m付近でターンした弾みに板が外れて両方のシールが剥がれてしまう。よく見ると片方のシールの止金具が無くなっている。折れて飛んでしまった様で、小さな部品なので捜しても見つかる筈も無く、遂にスキーを諦めて歩く事にする(~10:15)。幸い積雪も30~40cm位で、煩わしい笹も無くなってきて登りらしい登りも無いので、それ程悲観する必要は無さそうだ。とは言え、スキー板は7kgもあり、ザックに付けて担ぐとズッシリと重く感じる。
 板の先が木の枝に引っ掛かるのを気にしながら相変わらずの尾根を下ると、鉄塔が現われる。点検用の道が付いており、立木に煩わされる事無く雪の斜面を快適に下る。傾斜が緩くスキーで滑降出来そうな道になるが、板を外すのが面倒なので、そのままP1,214手前の鞍部まで下って大休止とする。
 まだ11時で、時間に余裕があるので初志を貫徹して尾根を辿って島々まで行く事に決める。Pl,214へは、有るか無きかの道を拾って雑木林の中を適当に登る。頂上(11:20)からの下りは薮になり、小枝が茂って踏跡を完全に塞いでいる。
 兎でも探して歩いたと思われる人の足跡が林の中を右に登ったり左へ下ったりしているのに元気付けられ、薮を掻き分けて遮二無二進む。1,167mの三角点(11:40)を越えると雑木が伐採してあり、はっきりした仕事道が付いて歩き易くなり、俄然ピッチが上がる。
 この道も1,050mの鉄塔から下方では消え、再び五月蠅い薮を漕ぐ。左下方に白く雪面が輝いて見えるのは畑で、その脇の道路目指して下り(835m、12:10)、舗装された道路を歩いて梓川に架かる斜張橋を渡る(730m、12:20)。
 少し登って国道に出て島々宿に入り、島々谷川に架かる橋の上に立って大きく深呼吸をし、深雪の中に取り残された孤独な3日間を思って暫し感慨に耽る。
 タクシーでスキー場に戻って3本程滑って楽しんだ(13:10~15:00)後、木曽駒高原へ向かう。

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登った山

鉢盛山

鉢盛山

2,447m

よく似たコース

鉢盛山 長野県

4つの川の源流となる奥深い森林の山

最適日数
日帰り
コースタイプ
往復
歩行時間
5時間15分
難易度
★★
コース定数
19
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