行程・コース
天候
晴れ
登山口へのアクセス
マイカー
その他:
カーナビには「赤岳山荘」をセット。登山の拠点となる「美濃戸口」のバス終点前に建つ山小屋。前泊には赤岳山荘の仮眠室利用(3,000円)がお勧め。駐車場も利用可。今回は、赤岳山荘で仮眠をして早朝、さらに林道突き当りの「やまのこ村」まで移動して車を停める。やまのこ村の駐車場は未舗装1,000円/1日。有料トイレあり。やまのこ村まで車を上げると、林道歩きが1時間カットできて便利だが、かなりの悪路につき、自信の無い方はやめた方が良い。
この登山記録の行程
やまのこ村(04:35)・・・北沢と南沢分岐点・南沢ルートの登山口・・・行者小屋(06:21)・・・中岳のコル(07:10)・・・阿弥陀岳(07:37)・・・中岳(08:16)・・・赤岳(南峰)(09:05)・・・赤岳(北峰)(09:13)(休憩~09:28)・・・地蔵の頭(09:53)・・・横岳(10:59)・・・硫黄岳山荘(11:31)・・・硫黄岳(11:55)(休憩~12:10)・・・赤岩の頭(12:20)・・・赤岩の頭山頂(12:22)・・・赤岳鉱泉(13:09)・・・北沢と南沢分岐点(14:21)・・・やまのこ村(14:27)
高低図
登山記録
行動記録・感想・メモ
久しぶりにタフな登山だったが、結論から言うと待ちにまった待望の「赤岳登山」は最高の一言に尽きる。ワインに例えるならフルボディーの芳醇な香りが詰まった最高の赤岳と稜線歩きとなった。
「何回も八ヶ岳に足を運んでいるのに、赤岳に行ったことがないのですか?」と驚かれることがある。「いつか最高のタイミングで!」と企画を温めているうちに、つい行きそびれている山が幾つかあるが、赤岳もその一つと言える。これを熟成登山企画と呼ぶことからワインに例えてみたが、ここまで来ると最高のタイミングで開封したくなるのが人間の性。
そして今回、先輩「山仙人」からの「どうしても一緒に歩きたいコースがある」と言うお誘いを受けて、ついに赤岳の封を解くときが来た。
三連休のなか日、千葉に住んでいる山仙人と合流して一路八ヶ岳へ向かう。
渋滞している上り車線を横目に長野へ向かう下り車線はスムーズな流れで快適な旅だった。ただし、天候(台風接近)の関係で「土日」の工程を「日月」に一日ずらしたため、帰りは連休の最終日となることから確実に我々も渋滞に巻き込まれることになるだろう。これは予想以上に的中することになるが、それは帰路のお話。
19時前に「小淵沢」のインターを降りて、近くのコンビニで夕食とビールを買い込み、宿泊地「八ヶ岳山荘」へ向かう。
八ヶ岳山荘へ到着すると、駐車場は既に満車状態だった。僅かに空いたスペースに停めて、受付をする。赤岳山荘の素晴らしいところは、「仮眠室」という宿泊メニューが用意されているところ。仮眠室と言ってもゆったりとした二段ベッドにしっかりとした寝具がついていて3,000円と破格の値段。しかもついこの前までは2,000円だった。さらに豆知識として、予約をした際にベッドに張り付けられるネームプレート(紙)をキープしておいて下山時に見せると、コーヒー1杯が無料で飲めるという。もはやボランティア並みのサービス精神だ。
受付手前の食堂スペースでは、大勢の登山者たちが食事をしながら酒盛りをしていた。我々もベッドに荷物を置き、早速、買ってきた弁当をつまみに明日の赤岳安全登山を期してビールで乾杯をする。毎回、飲み過ぎてしまうので、セーブしておこうと思っていたが、それでも先輩が持ってきたワインが美味しくて気が付いた時には千鳥足になっていた。
8時にベッドに潜り込み就寝。
クーラー無しでは生きていられないほどの酷暑が2日程前から嘘のように引いて過ごしやすくなっていたが、部屋の中は少し蒸していて寝苦しかった。
1時頃、トイレに行くために外へ出たが、小雨がシトシト降っていた。天気予報では朝までに回復することになっていたが、果たして頂からの絶景は叶うのだろうか。
3時半に起床して身支度を整える。
下山後の林道歩きの負担を軽減させるため、車に乗って山荘脇の林道を更に上へと進んでいく。前方には、歩き始めた登山者のヘッドライトが暗闇の中で揺らめいていた。
走り出して5分もしないうちに車で来たことを猛烈に後悔した。左右に大きく揺れる車。ある程度の悪路は登山にはつきものだが、聞いていた以上に危険な箇所が幾つもあった。轍につかまり引き返していく車も見かけたほどで、先輩の車がスタックして前輪が空回りした時は本当に生きた心地がしなかった。素早く来る釜ら下りて後ろから車を押すことでなんとか轍から脱出することができ、幸いそれ以降はなんとか進むことが出来た。
自分の車(軽)であれば躊躇していたと思うが、頑張って車を上げたことにより、往復2時間は節約できるはず。辛い林道歩きが大幅にカットできるのは有難かった。
森の中を進んでいくと大きな建物が見えてきた。目的地の「やまのこ村」。
他にも大きな山小屋が幾つか並んでいたが、一番手前のやまのこ村の駐車場を利用させてもらう。1日1,000円也。
車を停めて、いよいよ登山開始。
車の侵入を防止するロープを跨ぎ、引き続き林道を登っていくと5分程度で赤岳に向かう登山口へ着いた。看板を照らすと、「右:南沢、左:北沢」と矢印が描かれていた。
赤岳へは森の中へと踏み込んでいく右矢印の「南沢」を目指す。ちなみに、左矢印の「北沢」から下山し、この林道をひたすら戻って来ることになる。
ヘッドライトで足元を照らしながら、慎重に登山道を登って行く。
沢沿いに登ってコースのようで、清らかな水の音が絶えず聞こえていた。
明るくなると同時に、斜度が幾分緩やかになって来た。
整った間隔て立ち並ぶ白い樹皮のシラビソ。地面には深い緑をしたコケが絨毯のように広がっている。この風景を見ると「八ヶ岳に来た!」と感動が込み上がってくる。
樹林帯を抜けると河原のような場所に出た。目の前にギザギザと鋭いシルエットの稜線が見えた。まるで屏風のように行く手を取り囲んでいる。真正面に最も高く聳えているシルエットが赤岳で、左手側に続くノコギリの歯のような部分が横岳となる。
今からその鋭い稜線をグルっと歩くのだと思うとつい嬉しくて笑みがこぼれる。
山間に大きな小屋が見えてきた。行者小屋だ。シックな造りが実に山小屋らしく、まだ暗い小屋の中ではランプが灯っていた。
小屋の前に置かれていた木製のテーブルにザックを降ろし、水分の補給をしながら小休止を入れる。近くには10張ほどのテントが並んでおり、ごはんの準備や歯磨きをしている人等、朝の風景があった。
赤岳の右隣に負けず劣らずの大きな山が見えた。最初に向かう「阿弥陀岳」だ。さし込んだ朝日で山頂部分が光り輝いていて、まるで「早く登ってこい!」と言わんばかりだった。
その阿弥陀岳を目指して、まずは「中岳のコル」に向かって高度を上げていく。ちなみに小屋から見上げると、山が右側から阿弥陀岳、「中岳」、赤岳と並んでいて、「W」のアルファベットのように見える。中岳のコルはその阿弥陀岳と中岳の間に位置している。また、コルと言っても小屋からの高低差がそれなりにあるため、一気に登りつめる登山道はかなりの急登だった。事実、コルに近づくほど阿弥陀岳の頂が反り返るようで圧倒された。
中岳のコルに出ると、「権現岳」等八ヶ岳の南部側が良く見渡せた。赤岳まで大きくアップダウンを繰り返しながら稜線が延びている。こちらも挑戦しがいのあるコースだと思った。
ふと足元をみると、コルにはデポされたザックが多数置かれていた。壁のように立ち上がっている阿弥陀岳を見るとさもあらんと思うが、以前、仲間の一人から「山屋はデポしたらあかん!」と言われたことがある。個人的にも全く同感で、ましてやザックには滑落時等に背骨を守るという大事な役割(機能)があるので、背負ったままの山歩きが基本だと思っている。
連続する鎖を使いながら、ガシガシと登って行く。澄んだ真っ青な空が広がっていてとても気持ちが良かった。
阿弥陀岳の頂(標高2,805m)で360度の眺望を楽しむ。
美濃戸口から赤岳を目指す場合、スルーされがちな山だが、阿弥陀岳には赤岳とはまた異なる眺望が楽しめるので、絶対おすすめだと思う。
雲海の中に頭を出している富士山にカッコよさが際立つ北岳・間ノ岳。そして、中央アルプスや遠くには恵那山や御嶽山も見えていた。
中岳のコルに戻り、今度は赤岳へ向かって登って行く。その前に立ちはだかるのが中岳。
真ん中に位置するピーク程度で山とは認識していなかったが、意外にこれが急登でハードだった。
中岳を経てついに赤岳に手をかける。
完全な岩稜地帯。登山の難易度が増したことを感じた。鎖を手繰り寄せながら「岩をよじ登る」を繰り返す。大好物の岩稜地帯と鎖場にワクワクが止まらなかった。
特に山頂直下の岩壁越しに見る景色がクライミングをやっているようなダイナミックさがあり最高だった。
赤岳の頂に立つと、狭いエリアに大勢の登山者で賑わっていた。
標高2,899m、八ヶ岳の最高峰だ。
赤岳は一等三角点がある南峰と赤岳頂上山荘のある北峰に分かれていて、今立っているのが南峰。北峰とは僅か100mくらいの距離で南峰よりも広く山小屋の周辺では休憩している人達が見えた。自分たちもゆっくりしたかったので、北峰へ移動して見晴らしの良い岩に腰を掛けて食事休憩とした。
南峰では、雲がモクモクと競り上がってきていてまさに頂を覆い隠そうとしていた。一瞬で眺望が劇的に変化する。高い山ならでわだ。
これから歩く横岳と硫黄岳の方は、まだ雲が少なく周遊するコース全体が良く見渡せた。
なだらかな硫黄岳に比べ、横岳の険しい稜線が対照的で、まるで穂高連峰の岩稜地帯のようだった。
食事休憩を終えて、再び歩き出す。
まず、崖のような斜面を慎重に降っていく。降るにつれて、どんどん岩稜地帯の荒々しさが増して見えるようになってきた。そして、ついに横岳の稜線ゾーンへ突入。
横岳は、名前の通り横に長い地形をしていて、南北800m程におよぶ岩稜の連なりから成っている。これがギザギザの正体で、主峰で最高点である奥ノ院(標高2,829m)の他に、石尊峰、鉾岳、日ノ岳等のピークが連続している。鎖場や大きく繰り返されるアップダウンにより、今回のコースでも一番体力をそがれた部分となった。
一方で、高山植物が豊富なエリアでもあって、赤岳から横岳にかけてはコマクサの群生地としても知られている。山仙人が「オレが初めてコマクサを見たのは横岳だった。」と懐かしそうに振り返っていたのが印象的だった。
途中、稜線上に鎮座するお地蔵さんにご挨拶をする。
そのお地蔵さんの後ろには、これまた急峻な尾根「地蔵尾根」が延びていて、多くの登山者がその尾根を伝う蟻のように登って来ているのが見えた。朝に立ち寄った行者小屋から、赤岳や横岳を直接狙うルートとして、結構、使われているようだった。
眼下のコルに小さな山小屋「硫黄岳山荘」が見えてくると、長かった横岳の岩稜地帯も終わりとなる。山荘の先には赤や黄色の混じった土が露出した硫黄岳がデンと聳えていた。
硫黄岳山荘で小休止を入れて、硫黄岳を目指す。
真っ平に見える頂は丘のように見えるが、山荘からはそれなりに標高差があるため、慌てずゆっくりと登って行く。
硫黄岳は、南八ヶ岳の最北端に位置する標高2,760mの山。
山荘から見るとなだらかな丘に見えると書いたが、名前からも想像がつくように硫黄岳は火山の山。頂から反対側を見ると、馬蹄形の爆裂火口が大迫力の景観をつくっているのが分かる。その景色が見たくて楽しみに歩いてきたが、残念なことに登っている最中に意地悪な雲がスーッと流れ込みようにやってきて、あっという間に周囲を真っ白な世界に変えてしまった。
そう言えば、以前来た時も爆風と霧の中だった。どうにも硫黄岳とは相性が合わないようだった。
雲の中にゴロゴロとした岩の平地が広がっていた。遠くの方は雲に隠れて見えないが、それがかえって不思議な世界観を醸し出している。とても山の頂にいるとは思えない風景だった。蓼科山も似たような景観を持つが、どうしたらこんな頂が出来上がるのだろうか。
ここまで頑張って来たご褒美にフルーツゼリーを取り出して、時折、雲の切れ間から覗く麓の大森林を眺めながら食した。食欲が落ちていたが、さっぱりとしたゼリーののど越しに生き返った感じがした。
軽くなったザックを背負い、山頂から直接赤岳鉱泉を目指す北沢ルートで下山をする。
「赤岩の頭」を抜けると火山独特の景観も終わり樹林帯へと入っていく。ここから先は、眼下に見えていた赤い屋根に向けてひたすら高度を下げていく。
見下ろした赤い屋根は手が届くほど近くに感じたが、実際には降ってもくだっても山小屋には着かず完全に山の大きなスケールに距離感を見誤っていた。
樹々の間に屋根が見えた時には本当にホッとしたものだった。
「赤岳鉱泉」に到着。
赤岳鉱泉と言えば、冬の「赤岳鉱泉アイスキャンディ」と名物料理「ステーキ」が有名で、いつか改めて訪れたいと思った。
赤岳鉱泉から先は、沢に沿うように緩やかに森を抜けていく。
鉱泉と言うだけあって、鉄分を含んだ水により沢の底が真っ赤に染まっていた。
最初は快適な道だと喜んでいたが、繰り返し橋を渡っているうちに飽きあきして座り込みたくなってしまった。それでも何とか林道までたどり着いたが、本当の地獄はここからだった。異常に長い林道歩きに登山以上に体力と精神をそがれてしまった。
やまのこ村へ向かう道中では、あまりの悪路に「戻るべきでは?」とさえ思ったが、こうしてみると無理をしてでも車を上げた山仙人に大きく感謝したくなった。
延々に続く林道地獄もようやく終わりを迎え、やまのこ村に到着。
文明の利器「車」に乗りかえ、朝同様に激しく揺られながら赤岳山荘へと戻り、楽しみにしていた宿泊者向けサービスのコーヒーを頂いて登山の締めとした。山仙人はホット。自分はアイスコーヒー。自分の好みにあった濃く炒った豆がとても美味しかった。
本来、山日記はここで終わるはずだが、最後に往路時に予感した「三連休最終日の渋滞」について追加で記したい。予感は現実となり、実に40kmの渋滞で抜け出すのに3時間以上。「したばたしても仕方がない」とは言いつつも、この時間が林道歩きの次に辛かったのは言うまでもない。








































