行程・コース
天候
快晴
登山口へのアクセス
マイカー
その他:
市ノ瀬ビジターセンターの駐車場を利用。この時期は一般車両の通行規制がかかるため、市ノ瀬からバス移動となる。カーナビにはそのまま「市ノ瀬ビジターセンター」をセット。整備された駐車場(無料約300台)とトイレあり。紅葉シーズンなどは登山者で賑わうため、早朝でも満車状態になるため5時前には入っておくことをお勧めする。バスは5時から運行開始(時期によって異なるため要確認)。コアタイムは20分間隔で運行しているため、待ち時間は比較的少ない。別当出合の最終バスは16:30につき下山時間に注意。
この登山記録の行程
市ノ瀬ビジターセンター(05:33)・・・<バス移動>・・・別当出合(06:05)・・・中飯場(06:34)・・・甚之助避難小屋(07:25)・・・南竜山荘分岐点・・・エコーライン分岐点(07:56)・・・弥陀ヶ原(08:24)・・・五葉坂・・・室堂(08:49)・・・高天ヶ原(09:20)・・・転法輪の窟(09:56)・・・御前峰(10:24)(休憩~10:48)・・・紺屋ヶ池(11:04)・・・翠ヶ池(11:14)・・・血の池(11:20)・・・大汝峰(11:39)・・・巻き道の合流点(11:50)・・・御手水鉢(12:13)(休憩~12:21)・・・七倉山分岐(12:50)・・・水場(13:53)・・・白山釈迦岳(14:24)・・・白山釈迦岳前峰・・・<林道>・・・<白山禅定道>・・・白山禅定道登山口(16:57)・・・市ノ瀬ビジターセンター(16:59)
高低図
登山記録
行動記録・感想・メモ
(一部、コース外の危険ルートを歩いているため軌跡をカットしています)
10月の三連休。帰省に合わせて山仲間との恒例登山。快晴だと聞いていたので、帰る前からワクワクしていた。
どこへ行こうかと皆で悩み、定番の白山から京都方面の低山までいくつか候補があったが、結果的には隊長の意向を汲んで白山に決定した。隊長は前々日、地元の里山に登り、その翌日には白山の近くにある三ノ峰までを石徹白からピストン16kmの縦走をやり遂げ、ほぼ寝ずに3日目の白山に突入するというタフさ。年齢を考えると信じられない。
その隊長に3時にピックアップしてもらい、高速を飛ばして白山の登山口となる市ノ瀬ビジターセンターへ向かう。連日登山で疲れている隊長を気遣って運転は自分が担当した。
深夜、山間の狭い道を何台もの車が連なって走っている。こんな時間帯にこんな場所を走っているのは間違いなく白山狙いの登山者ばかりだろう。その時点で嫌な予感はしていたが、案の定、市ノ瀬ビジターセンターへ到着すると、5時前にも関わらず、奥の駐車場まで満車に近い状態だった。早朝の暗いうちから、一生懸命に赤い棒を振りながら誘導しているスタッフの方は、本当に感謝だった。そのおかげで、無事に車を停めることができた。
ビジターセンター前のバス停まで行き、チケットを購入する。
ほとんどの方が当たり前のように往復の1,600円のチケットを購入する中、「片道分(800円)で!」とちょっぴり自慢げに声を張る。売店の方も馴れたもので、「片道分ですね」と淡々と対応する。健脚な方であれば、「観光新道・白山禅定道」を使って直接、市ノ瀬ビジターセンターに下山することができるので、きっとそのコースを使うと思っているのだろう。しかし、今回、我々は更に奥にある「釈迦新道」を使って周遊する計画を立てていて、これこそが今回白山に来た目的の一つだった。さすがに釈迦新道は想像していないだろう。
釈迦新道は、2017年に大規模な崩落があり、修復に膨大な時間を要して昨年(2023年)に実に6年ぶりに開通した。ニュースを聞いて小躍りした白山ファンはきっと自分だけではなかっただろう。それ以降、行きたくてウズウズしていたのを隊長が察してくれて今回の企画に繋がっている。さすが隊長。よく自分の好みを知っている。
チケットを握りしめバス待ちの列に並ぶ。5時を過ぎてバスの運行は既に始まっていたが、かつてないほどの行列ができている。末尾を探して列をたどったらなんと、種物の裏側まで延びていた。
列に並び空を見上げると、北斗七星がくっきり見えていた。今日の天気は申し分ないはず。絶景に期待が膨らんだ。
満員のバスに乗り込み別当出合へ向かう。
左右に大きく揺られながら、バスは15分ほどでまだ薄暗い別当出合に到着した。
荷物を整えている間に徐々に周囲が明るくなって来た。
吊り橋の正面にある鳥居に、いつものように深々とお辞儀をしてから歩き出す。鳥居をくぐった瞬間、登山モードに気が引き締まるのが分かる。
今回、白山は2ヶ月ぶりとなる。どうしても日の出が見たいと言う妹に頼まれて、素人登山のガイドを務めたが、標準タイムに素人係数を多めにかけて行程を設計したにも関わらず、恐ろしいほど時間をかけての登山だった。山登りにおいて、人にペースを合わせてギアダウンするほど辛いものはない。室堂に着いた頃には、ヘロヘロになっていたのを覚えている。
もちろん、今日のメンバーにはそんな気遣いは不要。軽快なペースで中馬場を過ぎ、甚之助小屋まで一気に登った。むしろ早過ぎて、すぐに渋滞にぶつかり、その度にペースが乱され苦痛だった。
甚之助小屋まで来ると、視界が開けて遠くには百名山の荒島岳がよく見えた。別山や南竜山荘の方面は、かすかに色づき紅葉が始まっていた。
空がとにかく青い。稜線の輪郭がくっきり見えて、テンションがおのずと上がていくのが分かった。
「紅葉している南竜山荘を眺めながら登りたい」と言う隊長の意見に従って、エコーラインを使って登る。個人的には激坂のある黒ボコ岩コースが気に入っているが、エコーラインの空に向かって登る緩やかな斜面も大好きだ。眼下には熊笹の草原が広がっていて、南竜山荘がその中にポツンと見えた。少し離れたテント場には連休の中日だけあって色とりどりのテントが並んでいた。今夜も空は済んでいるだろうから、きっと星空も最高だろう。
遠くに目をやると、いち早く乗鞍岳や御嶽山が雲の中に見えた。眺望が良いのはエコーラインの特徴だ。真正面には白山の頂も見えている。もう目前に見えているが、大容量の山が距離感を狂わせているだけで、実際の頂へはまだひと汗、ふた汗かかないといけない。
斜面を登り切り、弥陀ヶ原に入る。
白山の天国エリア「弥陀ヶ原」。
目線の先に雲があり、まるで草原がそのまま宙に浮いているような不思議な光景が広がっている。その奥にある「五葉坂」と呼ばれる斜面を登り切った先に真っ赤な屋根の室堂が待っている。
ゴロゴロした大きな岩の急坂を、仲間と競うように息を切らせ登っていく。苦しくて足を止めたくなるのを我慢して一歩を踏み出す!を繰り返す。
ゼィゼィと呼吸ができないほどだったが、登り切った時の爽快感は半端なかった。
室堂の水場で水を補給してからそのまま頂へ向かう。
大きな鳥居越し。雲一つない青空にどっしりと迫力のある頂が聳えていた。うーん、シビレる。
途中、転法輪の窟(てんぽうりんのいわや)を見たことがないと言う隊長と仲間に、ルートを外れて白山の隠れパワースポットを紹介する。白山を開山したと言われている泰澄が祈念加持した場所と言われている。なぜ、コースを外れたひと気のない危険な場所で、お祈りを捧げていたのかと不思議に思うが、実際に行ってみるとそこから見える雄大な景色に圧倒される。正面には北アルプスの名だたる山なみも見える。ひと際存在感がある山「御嶽山」も見える。ひょっとしたら、これら神々しい山々に向かって祈るためだったのかも知れないと、一人仮説を立ててみた。
コースを外れたついでに、そのまま直接、頂を目指す。
上の方から見ていた人から「あの人たちどこから来たのだろう」と言う視線を感じたが、こそっと裏側から回り込み山頂で休憩している登山者の中に紛れ込んだ。
登頂記念に、皆で標識を囲み記念撮影をしようと思ったが、信じられないことに標識の手前には写真待ちの長蛇の列ができていた。人気の山なので列ができることはこれまでもあったが、こんなに長い列を見たのは初めてだと驚いてしまった。
写真を諦めて、そのまま御池巡りに向かう。
ガレた登山道に足を滑らせないように急斜面を降っていく。険しく尖った剣ヶ峰とその下に大きな池が見える。
一つ目の紺屋ヶ池。そこを超えるとはっと息を呑むような二つ目の翠ヶ池が見えてくる。御池巡りで最も大きく美しい池だ。
深いエメラルドをした大きな池。水面に雲を移し込んでいる。見ていると吸い込まれそうだった。霊山白山の神秘さをそのまま凝縮したような池だった。
本来の御池巡りはそのまま残りの池を巡りながら室堂へ戻るコースだが、今日の目的は釈迦新道にあるため、途中でコースを外れて釈迦新道の入口となる「七倉の辻」を目指しさらに奥へと進んでいく。
その途中で、あまりにも大汝峰がカッコよく見えたので、予定には入っていなかったが、つい登りたくなってしまった。聳え立つ頂を見ると登らない訳にはいかないのが山屋の習性と、ちょっと頂にある祠へご挨拶するために寄り道をする。ガレた登山道を登り返すのは大変だったが、大汝峰から見る翠ヶ池もまた絶品で苦労する価値は大いにある。
大汝峰の頂から七倉の辻へは直接降るルートがある。登ってきた山容とは一変して、熊笹の草原に一本の登山道が真っすぐに延びている。まるで違った山を歩いているようだった。
正面には御前峰や大汝峰にも負けず劣らずの大きな容積を持つ七倉山が聳えていた。
その七倉山から延びている尾根の一つが釈迦新道のルートになっているが、遠目から見ていてもアップダウンのある険しいルートであることが伺える。
御手水鉢のところで、お昼ご飯を摂る。実はお腹が空き過ぎてもう歩けないと弱音を吐く寸前だった。持って来たおいなりさんをぱくつきエネルギーを補充する。小那覇が落ち着いたところで、隊長が入れてくれた食後のコーヒーが最高に美味しかった。
山頂に溢れかえっていた登山者も流石にここまでくる人は稀で、静かな時間だけが流れていく。大きな雲が七倉山をゆっくりと横切っていく様子をぼーっと眺めていた。
いよいよ分岐から釈迦新道へと入っていく。
稜線に沿って歩くスタイルは観光新道に似ているが、観光新道は天空の稜線を歩くイメージに対して、釈迦新道は深い山の中へ降っていく感じが印象的なコースだ。稜線の先がえぐれるようにいったん大きく降っていて、登り返した先にギザギザのピークが並んで見える。1番高いところが登山道の名前の由来になっている釈迦岳となる。もっとも、釈迦岳は他の釈迦岳と区別するため白山釈迦岳と正式には呼ばれているが、元々は鎧のような険しい山肌をしていることから鎧岳(よろいだけ)という名前が本当だったらしい。いつしか釈迦岳に変わったようであるが、その理由はよく分かっていないようだった。
登りに使った砂防新道よりも紅葉が早いのか、赤や黄色に色づいた樹々の間を進んでいく。歩きやすい快適な道。山頂で遊び過ぎたのがいけなかったのか、予定より1時間遅れていたので、心持ち歩くペースを上げる。
従って、本来は寄り道している余裕はなかったが、阿弥陀岳の分岐点で標識を見た途端、自然と頂きの方に足が向いてしまった。阿弥陀岳は、コースから少し外れたところにある完全な藪山。赤いリボンがなければ登り口さえわからない密度の濃い笹の中を登っていく。分岐点からの距離は大したことがないが、まぁ、この山を登るもの好きはそうは多くはないだろう。
山頂はタタミ2畳分ほど草刈りがされて休憩する空間ができているが、周囲は笹や低木に覆われていてほとんど眺望はない。深い山間に目を凝らすと、遥か遠くに光っている人工的な建造物が見えた。ゴールとなる市ノ瀬ビジターセンターの建物だ。まだまだ遥か彼方にある。釈迦岳登頂記念に、頂の僅かな空間でザックを降ろし持って来たデザートのゼリーを食べて元気を出す。
これでザックも一段と軽くなったとゴールに向けてラストスパートをかける。
しかし、ここから先が本当に長かった。
残雪期には別当出合から市ノ瀬までの林道を歩いたりもするが、それ以上に距離のある山の中を突っ切るのだから、そもそも生半可なことではない。最後はロボットのようにただ無心で歩いた。林道が見えた時は心の底から嬉しくて「道だー!」と大きな声で叫んでしまった。
しかし、林道に出たからと言ってまだまだ終わりではない。この林道「治山林道」を使って隣の観光新道がある尾根に移動しなければならない。陽が落ちるまでに市ノ瀬には戻りたいと急いで林道を進む。
途中で、水色の真新しい橋があるのが見えた。以前には古い小さな橋が架かっていたが、ある時、斜面の崩落があり完全に流されてしまった。なんでも近くにあったシェルターのトンネルをも巻き込む大きな崩落だったとか。それ以来、長期間に渡り釈迦新道が通行止めになり、復旧に6年も要してしまったということだった。
「ここだったのかぁ」と感慨深く橋を渡る。新しい橋は鉄骨製でかなり頑丈に作られていたのでこれであれば当分は大丈夫だろう。
橋を過ぎると微妙に上りとなり途端に足が重たくなったが、頑張って林道の1番高いところまで進むと、ようやく観光新道・白山禅定道のコースに合流した。ここから先は再び山歩きとなる。
長時間の山歩きで足の裏がすっかり疲弊していてそのまま林道で降りたいという考えも過ったが、ここまでくれば川沿いまで降る登山道の方が楽ちんだ。ゴールが見えて来たこともあり心持ち足取りが軽くなった。
小さな沢を渡り大きな杉に囲まれ道を進むと、見慣れた林道が見えて来た。市ノ瀬から別当出合を結ぶ林道だ。時間は16:50。時間的に別当出合から出発した最終バスが通過した後だろうか。ここまでくれば後1キロ弱で市ノ瀬ビジターセンターへ着く。もうバスは降りてこないだろうと道いっぱいに広がりながら、ワイワイガヤガヤと今日の登山を振り返りながらゴールを目指した。
遊び過ぎて予定より時間をかけてしまったが、最高の景色と白山を隅々まで歩き堪能した秋の1日は最高だった。企画してくれた隊長と一緒に歩いてくれた仲間に有難うと感謝を伝えたい気持ちでいっぱいだった。



































