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どこまでも歩きたくなる秋の稜線 大菩薩嶺

大菩薩嶺、親不知ノ頭、熊沢山、天狗棚山、小金沢山、牛奥ノ雁ヶ腹摺山( 関東)

パーティ: 1人 (Yamakaeru さん )

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行程・コース

天候

快晴

登山口へのアクセス

マイカー
その他: 今回、上日川峠(かみひかわとうげ)駐車場(無料)を利用。深夜に到着したが、第1駐車場は満車だったので、第3駐車場に停めた。仮設トイレが設置されていたが、封鎖されていた。カーナビには起点となる「ロッヂ長兵衛」をセットするとよい。シーズン中は早朝から各駐車場は直ぐに埋まり入場制限が設けられてしまうので、ゆっくり目に到着する場合は、車で10分ほど離れた大型の第4駐車場が安全。

この登山記録の行程

上日川峠第3駐車場(06:12)・・・ロッヂ長兵衛(06:15)・・・福ちゃん荘(06:42)・・・<唐松尾根>・・・雷岩(07:27)・・・大菩薩嶺(07:35)・・・雷岩(07:46)・・・標高2000メートル地点(08:01)・・・さいの河原避難小屋(08:28)・・・親不知ノ頭(08:41)・・・大菩薩峠・介山荘(08:50)・・・熊沢山(09:09)・・・石丸峠(09:16)・・・天狗棚山(09:27)・・・小金沢山(10:15)・・・牛奥ノ雁ヶ腹摺山(10:41)・・・パノラマ岩(11:03)・・・林道(11:41)・・・ロッヂ長兵衛(12:41)・・・上日川峠第3駐車場(12:46)

コース

総距離
約15.4km
累積標高差
上り約1,292m
下り約1,298m

高低図

GPX ダウンロード KML ダウンロード

登山記録

行動記録・感想・メモ

せっかくの三連休なのに、季節外れの台風で警報級の大雨が降る連休初日の土曜日。
1ヶ月以上も前から楽しみにしていた連休だったのに、なんたることか。
仕方なく溜まりにたまった仕事を片付けるべく、早朝から休日出社して働いていたが、当たり前だがどうにも精神衛生上良くない。
ふと天気予報を確認してみると、台風の経路が変わったためか、回復が早まっている。いつの間にか、日曜日と月曜日が完全晴れマークに切り替わっていた。
となるとこれ以上のご奉公は不要だ!
5時で仕事を切り上げ、速攻で帰宅して、そのままの勢いで山道具を車に放り込み、家を飛び出した。土曜日はまだ雨が残っていて、道中も激しく雨がフロントガラスを叩いていたが、もう頭の中は完全に山モードに入っていた。天気予報に運命を預け「明日は晴れる」とだけ信じてアクセルを踏んだ。
行き先はぼんやりと決めてあった東京方面。先日の雲取山から見た富士山が忘れられなかったので、走りながら、「そうだ!大菩薩嶺へ行こう!」とターゲットを決めた。雲取山のその先に位置するため、一層、富士山が大きく見えることだろう。
グネグネと曲がる奥多摩の山間部を深夜ドライブで駆け抜ける。まさか1ヶ月も明けないうちに奥多摩に2回も通うとは思ってもいなかった。
登山口へ向かう細い林道には、暴風雨が過ぎ去った爪痕で、落ち葉や枝が散乱していてアスファルトの表面が見えない程だった。
1時過ぎに峠へ到着。考えることは皆同じなのか、深夜にも関わらず第1駐車場は既にいっぱいだった。暗くてよく分からなかったが、「第3駐車場」の看板が目に入ったので導かれるまま進み車を停めた。さすがに眠かったので、朝まで少し仮眠をとることにした。
次から次へとやって来る車の音で目が覚めて5時に起床し、明るくなるのを待ってから行動を開始した。
ロッヂ長兵衛の前へ行くと、交通整理のスタッフが赤い誘導棒を振りながら、切れ間なくやって来る車をてきぱきと第4駐車場へ案内していた。まだ6時だというのに、登山口に近い駐車場(第1~3)は全部埋まったということか。大菩薩嶺の人気、恐るべしだ。
樹々の間からモルゲンロートで赤く染まった山と対象的に真っ白な雲海が見えた。写真を撮ろうとするが、樹々が邪魔をしていて今ひとつ視界が確保できない。こうなれば早めに高度を上げて、雲海が残っているうちにゆっくり眺めた方が良いと登山を開始した。
大きな樹(唐松)に囲まれた林。熊笹が絨毯のように広がっていて、その中を登山道が延びている。まるで整備された公園の散策道のようだった。早朝に歩くには最高の道だった。
コース取りとして、最初に表登山コースで菩薩峠へ向かい、その後稜線から頂を経て唐松尾根で周遊することを考えていたが、登山道脇にあったマップを眺めているうちに、富士山を愛でながら稜線を楽しむのであれば、逆周りの方がいいことに気がついた。それに頂まで最短で一気に登る尾唐尾根の方が自分には向いていた。
岩の多い斜面エリアに入り、ようやく本格的な山歩きとなる。徐々に視界が開けてきて、松尾根を半分くらい登ったところで振り返ると、青く湖面が光った大菩薩湖(上日川ダム湖)の先に、圧倒的な大きさを持つ真っ黒な山が聳えていた。まだ冠雪はしていないようだった。
突然視界に飛び込んできた富士山。不意打ちを喰らったような衝撃だった。とにかく「デカイ!」の一言。「すげーっ」と、自然に心の声が外に漏れた。
尾根を登り切ると、ちょっとした広場のようになっていて、その奥にごつごつした岩の塊があった。「雷岩」と呼ばれる場所だ。
大菩薩嶺で最も眺望が良い場所で、真正面に富士山を捉え、これまで登って来た唐松尾根コースと、大菩薩峠へと続く稜線を全部見渡すことが出来た。
まるでポスターのような完璧な構図だ。右手には雲海が広がっていて、その先に南アルプスが見えた。北岳から農鳥岳へ続く稜線や鳳凰三山の尖った頂が特徴的だった。
雷岩までくると頂はもう近い。
森の中を抜けて10分も歩かないうちに山頂に辿り着いた。標高2,057m。あまりにもあっけない登頂で拍子抜けだった。樹に囲まれた中に「大菩薩嶺」と書かれた標識があるだけで、眺望はほとんどなかった。大菩薩嶺の主役は先ほどの雷岩と言っていいだろう。
雷岩へ戻り、小休止を入れる。スタート時点は肌寒かったが、太陽が昇るとむしろ暑いくらいだった。とても11月の気温とは思えなかった。
ここから稜線伝いに大菩薩峠を目指す。狙い通りに富士山に向かっていくように稜線を進んでいく。歩けば歩くほど富士山がどんどん近くなる。こんなに楽しい稜線は滅多にないと思った。
コルのところに小さな小屋がポツンと見えた。全体的にザレた空間が広がっておいて、あちらこちらにケルンが建てられていた。それがなんとも言えない不思議な景観を生み出していた。
標識の「賽の河原」という文字を見て、なるほどと納得した。確かに言われてみれば、そんな感じだ。ただ、普通は賽の河原と言うともう少しおどろおどろしい雰囲気をした場所を指すが、こちらはどちらかと言うと石の庭園と言ったイメージで、ピクニックがとても似合いそうな場所だった。
「親不知ノ頭」を越えると、目標にしていた「大菩薩峠」が見えた。大きな小屋がありその手前では大勢の登山者が休憩をしていた。
小さなお子さん連れもいて、むしろ大菩薩嶺の山頂よりも人が多かった。
小屋「介山荘」も思っていた以上に立派で、売店では山のバッチを始めとした山のお土産が沢山販売されていて、まるで観光地のようだった。
山座同定のプレートが設置されていたので、答え合わせをしながら山を確認していく。ここまで来ると大菩薩嶺で隠れていた八ヶ岳もはっきり見ることが出来た。
それにしても見事な秋晴れ。前日の雨のおかげで澄み切った空に遠くの山の輪郭も際立っていた。無理をしてでも来て本当に良かった。
小屋の横を通り過ぎ、熊沢山へ向かって登って行く。ここまでは開けた稜線歩きだったが、一変して森の中に突入。苔むした感じが、八ヶ岳に似ていた。
山頂を越えるとまた熊笹の広がる開けた稜線に戻り、遠くには相変わらず富士山が大きく聳えていた。
見下ろすと、熊笹が広がった斜面の先に「石丸峠」が見えた。
予定ではここから上日川峠を経由して下山を考えていたが、あまりにも素晴らしい稜線の景色と心地よい青空に足が止まらない。
実は、雷岩で小休止した際、大菩薩峠の更に先へと続く素敵な稜線を見て「歩いたらきっと気持ちいいだろうなぁー」と感動していた。その時点できっと心の中では予定変更が確定していたのかもしれない。
事前に確認していた地図の外になるため、コースをよく把握していなかったが、おそらく眼下に見える大菩薩湖に沿うように林道があったはず。どこかの山で降りれば林道を伝ってきっと帰れるはずだろう。
天狗棚山を過ぎて少し進むとゼッケンを背負ったトレイルランナーがたくさん走っていた。スタッフの方が、「こっちです!頑張ってー!」と声をかけていた。
そのスタッフの方から、「今日はレースをやっているので、歩きにくいかもしれませんがすみません」と声をかけられた。なんでも、「甲州アルプスオートルートチャレンジ」と呼ばれるトレイルランの大会で最長70キロのコースを走るらしい。いやいや、凄いことだ。
後ろから走ってくるランナーに道を譲りながら歩くが、自然と触発されて徐々に自分の歩みも早まっていく。登り斜面に入るとランナーも団子状態。そこを一気に抜いていく。
トレイルランナーの1人に、「えっ、登山者に抜かれたよー」とすれ違いざまに呟かれた。
「ちっちっち、登山者ではなく山屋です」。
もっとも長距離を走って疲労困憊のランナーを抜いてもなんの自慢にもならないが、ポリシーとして走らないだけで、山屋として山歩きでは引けは取らない。
そうこうしているうちに、ひょんなことから1人のランナーと会話をしながら歩くことになった。60歳の方でウルトラ・トレイル・マウント・フジ(Ultra-Trail Mt.Fuji、通称UTMF)とかに参加されるため、ポイント集めのためにレースに参加しているとのこと。自分の先輩にもTJAR参加経験者がいるが、どうしたらそんなに激しいレースが走れるようになるのだろうか。尊敬してしまう。
「小金沢山」で下山ルートを探すため一旦別れるが、どうも小金沢には下山ルートがないようだったので、次の牛奥ノ雁ヶ腹摺山までさらに足を伸ばすことにした。スピードを上げてさっきの方にもう一度追いつくと、「あれ?このままレースに参加することにした?」と冗談を言われた。
大菩薩嶺の雷岩からここに来るまでの稜線は、とても歩きやすく素晴らしい景色に恵まれどれも最高に楽しかったが、斜面を登り切り「牛奥ノ雁ヶ腹摺山」に辿り着いた瞬間、「うわぁー」と自然に声が漏れた。突然、視界に飛び込んできたひと際大きな富士山。すっかり見慣れていたのに、改めて富士山の凄さに圧倒されてしまった。今日1番の絶景ポイントかもしれない。ここまで足を伸ばして本当に良かったと思った。
トレイルランを運営しているスタッフの方がいたので、下山ルートを聞いてみると「牛奥ノ雁ヶ腹摺山の頂から湖畔に向かって降る事ができる」とのこと。ここまでご一緒したランナーの方に、「頑張ってください」と言って手を振って別れた。
あまりにも去り難い後継だったので少し早かったが、富士山を眺めながらお昼ご飯を食べてから降ることにした。
それにしても「牛奥ノ雁ヶ腹摺山」とは実に面白い名前だ。雁が山を越えて飛ぶ際に、あまりの高さにお腹を擦ったということか。想像するとなんとなく間抜けでくすっと笑えた。
下山ルートは、林道に出てからがとにかく長かったが、それでも道に迷うことなく紅葉が混じった景色を楽しみながら帰ることが出来た。
文句のない快晴で、素敵な稜線と稜線から見た富士山。間違いなく効くに残る良い山旅となった。

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みんなのコメント

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  • ずるっ こんないいところは一人で行ったらあかん

  • 確かに。ここはみんなと歩きたくなった素敵な稜線でした。みんな、遠征にきてほしいなぁ。

登った山

大菩薩嶺

大菩薩嶺

2,057m

小金沢山

小金沢山

2,014m

牛奥ノ雁ヶ腹摺山

牛奥ノ雁ヶ腹摺山

1,995m

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