行程・コース
天候
晴れ
登山口へのアクセス
マイカー
その他:
駐車場は「卯の花街道」の猪臥山トンネル南入口手前にある「チェーン着脱場」を利用。約30台。目的がチェーン着脱場だけあって、積雪時でも綺麗に除雪されていた。トイレはないため事前に済ませておくこと。
この登山記録の行程
駐車場(08:20)・・・渡渉・・・<中央ルート>・・・祠「山の神」(10:14)・・・猪臥山(10:17)・・・<卯の花街道ルート>・・・P1456(11:10)(昼食~11:49)・・・林道合流地点(13:52)・・・車道合流地点(14:05)・・・<車道>・・・駐車場(14:12)
高低図
登山記録
行動記録・感想・メモ
帰省中の雪山登山として、急きょ樹氷で有名な「猪臥山(いぶせやま)」へ行くことになった。猪臥山は、忘年会登山の候補地として元々は自分が提案していた山であり、昔から「行きたい山リスト」の上位に名前を連ねていたが、距離的に「そこまで足を延ばすならばもっと高い山へ!」と言うこともありなかなか実現することがなかった山で、名前の通り、イノシシが伏せたような山容をしている標高1,518 mの飛騨高地の山の一つだ。
用事のため参加できないという隊長を除き、いつものメンバー3人で早朝4時に集合し、一路、飛騨を目指した。寒気の接近から夜通し荒れた天候だったので、道中も「本当に晴れるのだろうか」と心配だった。
飛騨と言えば、ひと昔前まではクネクネと曲がりくねった細い道を苦労して時間をかけながら走ったものだが、福井県から白鳥までの道路整備がかなり進んだお陰で、比較的短時間で岐阜へ抜けられるようになった。
いつもの「ひるがの高原サービスエリア」で休憩を入れた後、「飛騨清見」で高速を降りて、登山口のある「猪臥山トンネル」を目指す。サービスエリアで、丁度、日の出を迎えることが出来て、遠くに真っ赤に染まった雪山が見えて心が踊った。
8時07分、登山口に到着。
トンネル前にあるチェーン脱着場がそのまま駐車場になっている。人気の山だと聞いていたが、意外に停まっている車は少なく僅か数台程度だった。
暖房の効いた車から一歩外へ出ると、一瞬ブルっと震えたが慣れると耐えられないほどの寒さではなかった。
早速、身支度を整え歩き出す。
猪臥山には、周遊に使われる「電波塔ルート」と「卯の花街道ルート」の他に、最短の「中央ルート」があるが、ここ最近の記録を見る限り「中央ルート」以外の軌跡が無かったため、おそらくトレースがないのだろうと判断して、登りには中央ルートを使うことにした。
駐車場の奥にある中央ルートの登山口から山へ踏み込んでく。
登山口時点で結構な雪があった。先日、歩いた武奈ヶ岳や野坂山に比べて明らかに積雪が多い。しかも、北陸の重い雪と違いモフモフな軽い雪でとても歩きやすかった。
歩き出して数分もしないうちに、チャレンジング・ポイントを迎える。極寒の渡渉イベントだだ。
2m程の幅の狭い沢だったが、澄み切った水がいかにも冷たそうで、しかも結構な勢いで流れている。深いところでは膝くらいの水深があり、踏み外した瞬間、即登山中止の状況が目に浮かんだ。沢の中央に顔を出していた岩の上に片足を乗せ、バランスを保ちながら対岸へと飛び移る。岩の上には雪が乗っかっていて、この短い時間にとてつもない緊張が走ったのは言うまでもなかった。
林を抜けると林道に合流し、暫くトンネルに沿うように谷間を進んでいく。中央ルートのほとんどは水平移動が占めているので、その分、後半の頂へ向かう部分は、急斜面を一気に駆け上がることになる。
全体的にトレースがしっかりしていたので、急斜面に入ってもそのままツボ足で登っていく。ストックがないとバランスがとり辛く、正直、アイゼンを履くべきだったが「歩き方の練習だ!」と、結局登り切るまでツボ足でつき通した。
樹林帯を抜けると視界が一気に開けた。目の前には真っ白な雪面が広がっている。
斜面を登り切ると一つ向こうのピークに小屋のようなものが見えた。
麓の方に目線をやると、時折、ガスが流れてこんもりと雪を被った森が見えた。それがモコモコの絨毯のようでとても愛らしかった。反対側の方面は白河だろうか。山間の街並みが遠くに見えた。
景色が良かったので、ここで隊長差し入れのスイーツを全員で頂く。
イチゴが入った雪見大福。
「雪山登山にどうぞ!」と今回参加できなかった隊長がわざわざ買ってきてくれたという。優しい味で、まさに雪景色にぴったりのスイーツだった。「隊長ありがとう!」
ここで、ワカンを装着。
折角、持ってきたので、今年初のワカンでガンガン雪まみれになろうと、早速、雪を蹴散らしながら歩き出した。
先ほど見えていた小屋のような建物は小さな祠だった。調べると「山の神」の祠とのこと。
祠がある場所が山頂だと勝手に思っていたが、山頂はもう少し先にあった。先行していた登山者が数名、標識の横に立っているのが見えた。
360度の眺望が楽しめる頂で、本来であれば東側に御岳・乗鞍・笠ヶ岳そして黒部五郎などが望めると聞いていたたが、生憎、遠くの山々は雲に覆われていて確認することはできなかった。
手前に周遊ルートの一つ「電波塔ルート」の尾根があり、一番高いピークに目印の鉄塔が建っているのが見えた。
多くの登山者が来た道を折り返していく中、我々はトレースのない「卯の花街道ルート」へと踏み込んでいく。念願の猪臥山に来たというのに中央ルートのピストンだけで終わるにはあまりにも短すぎると、「せめて卯の花街道ルートを周遊しよう!」ということになった。トレースが無くてもワカンを装着した我々であれば、もはや無敵モードだ。
そもそも雪山の醍醐味は、踏み跡のない雪原に自分の足跡を付けていくことにあると思う。勢いよく雪を蹴散らし、ラッセル車のように進んでいくと、自然とテンションが上がっていくのが分かった。
その雪原の中に、大きな獣の足跡が目に入った。
横の斜面から近づいてきて、行く手前の方へと延びている。
「目の前にお客さんがいる!」と先輩の一言。
顔を上げると僅か5m先に黒い物体が見えた。足跡の形状からすぐに正体は予想できていたが、どことなくトボケ顔のカモシカがジーっとこちらを見つめている。雪に埋もれながら佇んでいる姿が実に愛らしかった。
近づこうとしたが、途端、くるりと身を翻して雪林の中に消えていった。偶然の出会いだったが、年明け早々、カモシカに出会えたのはラッキーだった。
見晴らしの良いピーク「P1456」で休憩を入れ、昼食タイムとした。
周囲の樹々が樹氷化していて、休憩していると、時折、パラパラと氷が落ちてきた。その度に太陽の光が反射して空中がキラキラと輝いていた。
お湯を沸かして、持ってきた生姜湯を淹れて皆に配った。山と言えば淹れたてのコーヒーが最高だが、今日はどうしても雪景色の中で生姜湯が飲みたい気分だった。思い付きだったが、これがドンピシャで、身体中がポカポカしてとても美味しかった。
お腹を満たしてから再び歩き出す。ここから先は長い下山ルートとなる。
緩やかなアップダウンはあるものの、下りルートなので基本全体的には歩きやすかった。それにしても「春山か?」と思うくらい陽射しが強く、歩いていても汗が止まらなかった。
長かった下りもようやく終わりを迎え林道に合流した。斜面に沿った林道で、眼下には車道が見えている。そこをくねくねと2,3回蛇行しながら降っていくとその車道の脇にでることができた。車道まで出ると、もうゴールも同然で、数分程度で駐車場にたどり着くことが出来た。
楽しみにしていた樹氷は今一つだったが、カモシカにも出会え、後半戦の雪原ラッセルではワカンの感触を存分に楽しむことが出来たので大満足の一日となった。



























