この日の登山道もいたって問題なし。それなりの急登が続くが、特に技術が必要となる様な危険な個所も無く、道がはっきりしていて分岐も無く人も多いので道迷いの心配も少ない。やはり考えていた通り初の単独山行には持って来いのルートであった。
　往路はかなり後半まで樹林帯の中が続き、急登を進むには精神的にも疲れが溜まる。ただ今回はそれよりも脚力が悲鳴を上げた。両脚の太ももとふくらはぎが歩く度につってしまい、行者小屋手前からかなりペースが落ちた。単独でのテント泊に向け荷物を厳選することで最近の数回と同程度の重さに控えられた為あまり脚の心配はしていなかった。しかし今回の落とし穴は別にあった。朝の駐車場の件。中房温泉はシーズン中の週末は大変な混雑と聞いてはいたものの、5時前に着けば何とかと甘く見ていた。実際は遠方からの車中泊の方々で1時には満車となったらしい。いやはや。これによりしゃくなげ荘駐車場まで戻りタクシーで登山口へ。予定外に出発する時刻が遅くなった為、無意識に序盤からペースが上がり過ぎたのだと思う。歩行時間の実績にも表れている。運動不足の身体にその余裕は無かったらしい。まだまだ自分のペースが身についていないと反省。加えて朝ごはんにも原因があるかも？車中でおにぎりと野菜ジュースで済ませたが、登山前にはもう少し塩分のある物を加えれば良かったかな。
　この日の天気は雲こそあるものの空気は澄んでおり遠くの山までよく見えた。槍ヶ岳の雄姿を含めた北アルプス一体は勿論、大好きな富士山も頭を出し最高の展望。生涯でもなかなか何度もお目にかかれないと思える貴重な景色に出会うことができた。早めの到着で山の上での時間にゆとりが持てたのも良かった。燕岳山頂で昼寝までした奴はそうそういないのでは。絶景に包まれゆったりと過ごせたことで旅の満足度がグッと上がった。
　初の単独行にこの山を選んで助かったことがもう一つ、auでも電波が届くことである。今年予定が仲間と合わず一度も山に行けず病んでいた私を見かねて単独行を渋々許してくれた家族にとって、その日の無事が確認できるだけでかなり違うらしい。ただ電波が届くのは小屋東側の限られた場所だけ。この辺はやはりauというところか。
　2日目は天気が崩れる予報であったのと翌日仕事ということもあり、日の出前に朝食を済ませ、ご来光を拝んだら速やかにテントを畳み退散。まだ朝と言える時間帯に下山を済ませたことで、しゃくなげ荘の温泉で身体を休めながらも200km離れた自宅に昼には到着、家族で昼食を共にすることができた。後片付けも済ませられるため、土日での山旅はこんな感じが楽チンかもしれない。
　初の単独山行で脚力やペース配分に課題も見つかりながらも、心地よく過ごすことができた今回は、次へつながる良い山旅となったということにしときましょう！