行程・コース
天候
小雨/快晴
登山口へのアクセス
マイカー
その他:
下山は、取水口の下流で車に拾って貰う。
この登山記録の行程
登山口(565m、9:40)取水口(755m、10:50)幌尻山荘(12:15/3:55)幌尻岳(6:55~7:15)下降点(1,735m、8:00)七ッ沼(8:15)稜線(1,780m、8:45)トッタベツ岳(9:15)北トッタベツ岳(10:10)P1,881(10:40)二俣(12:00)山荘(12:25)林道(14:10)登山口(14:40)
高低図
登山記録
行動記録・感想・メモ
夜道を走って日高ケンタッキーファームのキャンプ場にテントを張って一夜を明かす。奥には青森からの先客(女性1人)のテントがあり、熊に対して心強い(?)。
朝、時折小雨がぱらつく中でテントを撤収し、平取町へ車を走らせて町中で2日分の行動食を調達する。道路は空いており、皆70~80km/hrで車を走らせている。国道の横には緑の牧場が次から次へと現れて、「ああ、やっぱり北海道の牧場だなあ!」と嬉しくなる。
一時かなりの雨が降り、「峠越えして帰れなくなったら困るなあ」等と心配しながら、手入れの行き届いた砂利道の林道を20km程走って登山口に到着する。
「7月の第一土・日が山開きで、山荘は一杯で使えない」との事だったので、「山開きと小屋開きは同時だろうから、他に登山者は居ないだろう」と密かに熊の心配をしていた程なのに、平日にも拘わらず登山口には車が5台も停まっている。湘南や千葉ナンバーも交じって、百名山の人気振りを思い知る。テントはトランクに置き、シュラフと炊事用具を担いで歩き出す。
右岸の、川原から30m前後の高さに付けられた林道は車でよく踏み固められているが、今は静かだ。山荘まで4時間を要する事になっており、渡渉の心配も控えているので先を急ぎ、時に小雨に打たれながら1時間みっちり歩いて一本立てていると、空のワゴン車が上がって来て通り過ぎて行き、直ぐに引き返して来る。直ぐ上が取水口で、そこから右岸沿いの山道になっている。
山裾の道を上ったり下ったりして時々川原を歩いたりしながら暫く行くと、額平川の渡渉となる。ちょっとした川原歩きがある位にしか考えていなかったのだが、飛び石伝いに対岸へ渡るのは不可能で、杖を突きながら股上まで水に浸かっての本格的な渡渉だ。直ぐに滝を懸けた四ノ沢が出合い、連続しての渡渉を強いられる。
ロングスパッツは物の役に立たず、布靴の中まで水浸しになり、「気にしても仕方がない」と諦める。右へ左へと十数回の渡渉を繰り返し、右岸に上がって伸び盛りの山草の間を行くと山荘の屋根が垣間見え、五ノ沢出合の上流で本流を渡り、草いきれの中を左岸の山荘前広場へ上がる。
山荘まで4時間を覚悟していたのだが、2時間半と思い掛けず早い到着となる。閂を外して中に入ると、板張りの隅に1つのザックを見出す。素足になり、2階に上がって寝場所を決め、ザックの中身を広げる。靴下を絞り、靴の中敷を出して陽当りに並べていると、途中で追い越した夫婦が遣って来る。湘南ナンバーの主と判る。
ブナの大木が茂る樹林帯を急登する。道は確り踏まれて歩き易く、静けさが身に染入るようで、熊の事が気になる。標高1,500mで尾根が緩くなって一息吐く。小鞍部の先に『命の水』があり、雪渓上を慎重に進んで水筒に水を満たす。
岩稜状の尾根を再度急登すると北カールを取巻く西側尾根末端の小ピークの上に出て、正面に幌尻岳が大きく姿を現す。日高山脈の盟主であるポロ(大きい)シリ(山)が雪の残ったカールを懐に抱いて優しく、初対面の嬉しい瞬間だ。
右斜面が這松に覆われた尾根の背には残雪が続き、カール側の斜面では高山植物が芽吹き、早いものは花を着けている。ショウジョウバカマや黄花石楠花、エゾコザクラ、チングルマが見頃で、キスミレの群落は珍しく、ミヤマアズマギクの淡い紫色も目を惹く。ハクサンイチゲはこれからの初々しい姿だ。
緩い尾根を半周する格好で稜線漫歩を楽しんで山頂に立ち、大休止して北海道中央部の日高山脈の山々を丹念に眺める。南にも北にも雪に削がれた鋭い稜線を有するピークが幾つも見えているが、如何せん名前を全く知らない! 北の方には戸蔦別岳が黒々と大きく、北戸蔦別岳の更に奥にはここより高いのではと思われる鋭峰が隠れている。微風を避けて休んでいるとぽかぽかと暖く、すっかり気が緩む。
戸蔦別岳へ向かうと、北東の肩から雪原と緑に囲まれた青い七ッ沼が見下ろされる。北海道で一番美しい沼の景観との評判に唆されて、最低鞍部から沼の方へ下降する。夏道は雪の下で、草付からルンゼの急雪面に移って慎重に下るが、生半可ではない急斜面なので確実な雪上技術を要する所だ。
沼の辺に出て水に手を浸す。雪解けで水位の上がった湖底には枯れた高山植物が姿を保っており、透明だが無機質ではない生命の息吹を感じさせる水の佇まいだ。沼に映る戸蔦別岳を写真に納め、岳樺の柔らかい芽吹きを掻き分けて、稜線から眺めただけでは判別し難い起伏の間に点在する七ッ沼を、熊に注意を払いながら横断する。
雪渓を楽しく詰めて稜線に戻るとザックが2個置いてある。空荷で幌尻岳へ行ったものと思われる。小笹の中を戸蔦別岳へ登り、幌尻小屋への下降点にザックを置いて北戸蔦別岳を目指す。
岩場にはオダマキや鮮やかなナンブイヌナズナの黄色い花が咲いて目を惹く。山頂では、二岐沢から幌尻岳を往復する2人と出会う。このコースは沢を渡渉しなくて済むので人気があるらしい。
分岐点に戻り、下降に移る。直ぐに潅木帯となり、やがて岳樺と笹の世界へと変わる。沢に出た所で汗を拭いて一息入れる。沢沿いの道は何回も左右に渡り返して判り難いが、左岸に渡って確りした道を行くと程無く幌尻小屋へ帰り着く。意外な事に、湘南の2人は山頂を往復して既に小屋へ帰っている。
一息入れながらパッキングし、小屋に別れを告げる。暫く行くと胸に『炊事係』の名札を付けた数人と出会い、今日は山開きである事を思い出す。なおも下ると、後を追うように数十人の登山者が上がって来る。その中に、柏市の顔見知りを発見して、2度吃驚する。
取水口の林道に辿り着くと、ワゴン車やマイクロバスが停まっている。橋を渡って一息入れ、下って来た車に拾って貰って登山口まで楽して下る。60人程のツアーを募集したとかで、町を挙げての歓迎と役割分担の由。










