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日本三百名山最終座御在所山

( 東海・北陸・近畿)

パーティ: 1人 (1357 さん )

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行程・コース

天候

快晴/晴れ/曇り

登山口へのアクセス

電車

この登山記録の行程

休憩所(6:50)藤原岳(9:50)治田峠(12:05)銚子岳(13:05)静ヶ岳(14:05)龍ヶ岳(15:30)幕営16:15(795m/6:45)石榑峠(7:00)三池岳(9:15)釈迦ヶ岳(11:35)猫岳(12:15)ハト峰(13:25)金山(14:00)水晶岳/泊(14:55/6:25)根の平峠(1102m/6:40)青岳(7:50)国見岳(8:05)御在所山(9:10~40)車道(565m/11:10)温泉(345m/12:05)

コース

総距離
約30.7km
累積標高差
上り約3,417m
下り約3,187m

高低図

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登山記録

行動記録・感想・メモ

 三軌鉄道終点の西藤原駅で下車する。駅員に「登山者用の休憩所は何処に在りますか」と聞くと「判らない」と言う。水4ℓを分けてもらい、夜道を歩いて表登山口へ上がって行くと、山岳会の仲間が話した通り、清掃が行き届いた気持ちの好い建物が在り、板張りにエアマットを広げて寝る。

 早朝に車が1台上がって来て、男性が1人登って行く。登山届を出し、よく踏まれた広い確りした道を登って行く。急斜面にはジグザグ道が付けられて急勾配部は無く、半年振りのテントを背負っての山行だがあまり苦しい思いをせずに済む。
 P833で聖宝寺からの道を合わせて(830m、8:30)樹林から抜け出し、明るい潅木の疎林に入って間も無く、視界が開けて藤原山頂が姿を現し、足元の石灰岩に気を使って歩いて行くと避難小屋の藤原荘に着く(1,090m、9:25)。簡素な造りで、水槽には屋根からの天水が貯まっている。
 若い男が現れて「山頂から治田(はった)峠への道がはっきりしないんですが、一般道があるか如何か知っていますか」と聞くが、「自分も峠を越えて御在所まで縦走するんだけど、初めてなので全く様子が判らない」と答える外ない。「昨日は孫太尾根を登って御池岳へ行き、白船峠から下った水場で泊った」と言う。この間に、車の男性と思われる人も小屋の後から姿を現す。少し下って笹の間の道を行くと疎林へ入って直ぐに大岩が散乱する藤原山頂に出る。
 南への視界が開け、幾重にも重なる山並みには300名山の最後のピークとなる御在所山も見えていると思うが、どれだか特定できない。『治田峠』の道標に従って山頂から左へ折れると、油断すると見失うような歩き難い踏跡が石灰岩の上に通じている。踏跡は乱れ、右斜面の林の方へ下っている気もするが、「P965の鞍部までは、尾根通しに進んだ方が迷う心配が無いだろう」と判断して頂稜を進むと、藤原鉱山の車道を使って登ってきたと言う2人が肩で休んでいる。
 肩から南尾根に移って石灰岩の歩き難い道を下って945m鞍部を過ぎ、P965の西斜面を巻き、小さい西尾根を越えて920m地点で南西尾根へ出る。この部分は踏跡や獣道が入り乱れているうえに落葉が積もっているので、視界が無いと迷い易い。傾斜の落ちた尾根の上を行くと目印のテープが多く、標識も散発的に現れる。踏跡の域を出ない尾根道は人臭くなく、「この時期に、気心の知れた仲間と歩けば最高だろう」と、自然の趣が濃い雑木林の中を楽しんで歩く。
 最低鞍部(805m、11:15)を過ぎてからは分岐点に注意しながら進み、「少し藪っぽくなったなあ」と感じながら馬酔木の枝を掻き分けて小ピークへ登り、赤杭の横で休憩する(840m、11:30)。「ここから南へ折れる筈だ」と道を探しても見付からず、「地図と違って、西の方からピークを巻いて治田峠へ下っているのかも知れない」と考えて西へ直進している赤布と薄い踏跡を追って行くとはっきりした下りとなり、標高820m地点から谷を隔てた左下方に治田峠付近の杉林が見下ろされる。「もっと手前に、治田峠への左折点がある筈だ」と登り返して行くと、先発して治田峠へ向かった男の子がやって来て「道に迷った」と言う。2人で意見交換をして東へ向かって引き返し、左折点の道標を探し出して安堵する。
 p830から南へ伸びる尾根に入る(11:55)と道は鮮明で、治田峠へ下って一息入れる。彼は「水が無くなったから、竜ヶ岳は諦めます」と言って峠から新町へ向かって東へ下山する。
明瞭な尾根道を辿って平坦な頂稜へ上がり、静ヶ岳分岐点にザックを置いて行くと、落葉灌木に囲まれた明るい銚子岳山頂へは、5分と掛からずに到着する。
 分岐点に戻ってエネルギーを補給して鞍部へ下り、緩い尾根の乱れた踏跡を追って高度を上げる。山腹のトラバース道を行くと大きな水溜りが現れ、P1,006手前の鞍部(セキオノコバ)へ登り着く。空身で静ヶ岳を目指すと軽装の年配男性と出会い、「何処へ行くんだろう。若しかして近くに水場が在るのかも知れない」と気になる。杉林の中を進んで山頂を踏み、デポへ戻って一息入れる。
 尾根道を行くと2つ目の池が在り、水底を落葉が埋めている。「沸騰させれば使えるかも知れない」と水筒に汲むが、空に透かすと茶色味を帯び、鹿の臭いがしそうな気がして使う気になれない。藤原岳から御在所山までの縦走は魅力的なプランだが、尾根筋を歩くので水の入手が問題となる。名古屋の知り合いに聞いても水場の有無がはっきりせず見切り発車で不安を抱えての縦走だが、石榑(ぐれ)峠まで歩いて東側へ下った沢で水を手に入れる心算だ。
 龍ヶ岳手前の三叉路付近の山肌は笹に覆われ、紅葉したツツジ株が夕日に染まって点在する眺めが印象的だ。初日は山行中最も標高を稼ぐことになるが、重いザックを担ぐので疲れも大きく、「テント場があったら泊っても良いなあ」と思いながら笹の斜面に刻まれた道を登り、龍ヶ岳山頂を踏む。
 待望の石欂(ぐれ)峠が見下ろされ、四角形の建物の傍らで重機が盛んに動いているのが見える。山頂の広々とした草原はテントスペースとしては十分だが、無防備過ぎる気がして躊躇われる。「標高差400mだから1時間で下れる」と計算し、「峠まで下って水を確保しよう」と先へ進む。肩まで行って振り返ると、山肌を覆う笹の葉が夕陽を反射して漣のように見え、優しくどっしりした龍ヶ岳の一面を垣間見る。
 肩から急降下して峠が近付くと建物を解体する音が大きく聞こえて五月蝿く、「5時までは作業するだろうから、騒音の中で炊事をすることになって嫌だなあ」と思いを巡らせる。水2ℓと紅茶0.5ℓを持って登り始めたのがまだ1.5 ℓほど残っており、「明朝の炊事までは足りる」と計算して峠へ降りるのを止め、林の中にスペースを見付けてザックを下ろす。
 テントを張っていると声を掛かられて驚く。静ヶ岳で出会った男性が「よくテントを張るんですか。自分は慣れていないので峠の車に泊まる」と言うので、「水はありますか」と聞くと、「幾らでもあるよ」と期待に違わない返事が返ってくる。夕食を終えて真っ暗くなった頃に解体作業が終わり、静けさが戻る。夜は平野の灯りが鮮やかに輝き、一時的に風が出て梢を吹き鳴らすものの、明け方には無風に戻っている。

 峠へ下ってザックを下ろし、車道を東へ向かって10mも行くと小沢に綺麗な水が流れている。比高100mほどの小峠まで下る覚悟をしていたので拍抜けすること甚だしい。折畳水筒を満たしていると昨日の男性が上がって来て、「今日は、釈迦ヶ岳辺りをぶらつこうと思う」と言って工事通行止の柵を越えて南へ向かう。
 後を追って車道終点の通信所まで行って尾根に取付き、朝露を踏んで無数の小さい起伏を越えて進み、755m鞍部から本格的な登りに掛かる。P900まで登ると柔らかい朝陽に紅葉が映え、「山ヒルを避けていたらこの時期になったんだけど、絶妙のタイミングに出合った」と喜ぶ。
 イノシシが数mの近さの所を走り抜けるのを見て「やはり、鈴は鳴らしとこう」と警戒し、お尻の白毛の対をピョンピョンさせながら3頭の鹿が逃げていく滑稽な姿を見て笑う。野趣に富んだこの辺りの尾根は静かな山歩きが出来て、大いに気に入る。
 思ったより時間が掛かった三池岳で大休止して南へ向かう。単独の男性と出会って「長野出身で山に興味が無かったけど、2年前に故郷の山に登ってから虜になった。今は毎週歩いている」と話し掛けられ、「テントに泊まる山歩きをしたいんだけど、出来ますかね?」等々としばらくの間立話をする。
 中峠の手前で家族連れの3人と出会い、800mほど進むと田光川支谷の沢が尾根へ突き上げて侵食している所に水が流れているのを発見する。尾根の西側は緩傾斜、東面は急斜面で崖が発達しており、深い谷の上に三池岳南面の紅葉した斜面が朝陽に輝く見事な眺めを楽しんで歩いて行くと、長袖と厚手のスポーツシャツでは暑く、汗を掻いてくる。
 釈迦ヶ岳が近付くと単独、夫婦と北上して来る人と出会う。三角点がある山頂には10余人が賑やかに休んでおり、200mほどの頂稜のあちこちに幾つものグループが腰を下ろして弁当を食べ、紅葉を眺めておしゃべりをしている。たくさんの人が朝明(あさけ)渓谷から松尾尾根を登るみたいだ。
 山頂の賑わいと別れて南下を続ける。猫岳の登りからは釈迦ヶ岳南面の白い絶壁と紅葉のコントラストが見事で、皆一様に立止って写真を撮っている。白滝谷分岐にザックを下ろしてp860のハト峰を空身でピストンし、南へ向かうと分岐のすぐ先で水の流れる小沢を横断する。「こんな所で水が得られるなんて」と驚き、「根ノ平峠まで行けないかも知れないし、峠にテントを張っても水汲みに下降しなくても済む」と考え、2ℓを補給して背負う。
 朝明渓谷への下山道を見送って進むとザレた白い岩峰が現れ、ハト峰の名板が立っている。直ぐ先からも朝明渓谷への道が分岐しており、広場の横には水が流れて2人がテントを組立てている。まだ時間が早いのでp850へ急登して先へ進み、金山を踏んで中峠へ下る。平坦な峠に「幕営適地だ」とザックを下ろすと、休憩していた3人組に「まだ早いんじゃないの」と唆され、「当初の目的地は根ノ平峠だからなあ」と腰を上げる。
 緩やかな道をのんびりと歩いて水晶岳まで足を伸ばし、山頂直下の登山道にテントを張る。3ℓ以上残っているので水の心配は無く、甘いコーヒーを作って堪能しながら山頂からの夕景を楽しみ、α米とみそ汁、行動用の紅茶500㏄を作って夕食を取る。快晴の1日に恵まれ、静かで綺麗な夕暮れを迎える。夜、鹿の鳴声があちこちから聞こえる。自覚は無いものの、疲れ過ぎの所為か昨夜同様に幾らも眠れない気がする。

 5時に起きる。紅茶を作ってパンを食べ、とうふ汁を飲む。行動食1日分だけと中身が減って高さが初日よりは10㎝は低くなったザックを見て、「数キロは軽くなった筈だ」と背負い、出発する。
 広々とした根ノ平峠へ降りて登りに掛かると右手から沢音が聞こえ、「鈴鹿の尾根歩きは、思ったより容易に水が得られる」と認識を新たにする。浸食されて凹状に抉れた道を難儀して登ると、要所に林の中へ付替えられた道があり、藤原岳に比べて御在所山周辺は手入れが行き届いているのを実感する。釈迦ヶ岳から御在所山の間は歩く人も多く、道が整備されて迷うような所は全く無い。
 標高985mで尾根の上に出て一息入れる。全天雲に覆われて陽射しは無く、昨日までの暑さが嘘のような肌寒い日だ。傾斜の落ちた尾根を独り身の気易さで歩いて行くと、東へ向かう道の突き当りに思い掛けない青岳のピーク(標高1,102.1mの表示あり)が在り、南転して一登りすると直ぐに国見岳に着く。
 木の根と岩の多い道を登って行くと後から足音が聞こえ、男性が1人追い抜いて行く。国見山頂の岩上に立つと御在所山が大きく姿を現す。緩い吊尾根を持つ三連峰で、牛の顔を正面から見るような印象だ。右端の小さな突起が最高点1,212mで、左下には藤内壁も見えている。
 国見峠へ下り、沢を横断して登ると観光客で賑わう朝陽台へ飛び出す。山上公園へ下って建物の間を抜けて参道のような道を西へ歩いて御在所山へ登り、明治18年設置の一等三角点に立つ。
 9時を過ぎたばかりにも拘らず山頂はたくさんの人で賑わい、「三百名山踏破」の喜びに浸る雰囲気ではない。奥の最高点の岩の上に立って鎌ヶ岳や雨乞岳の鋭鋒を眺め、写真に収める。
 膝の調子が悪ければロープウェイで下山する積りで居たのだが、痛みも無く腫れもしないので「有難い」と思い、「おかげで三百名山を踏破できました。治療してもらって感謝しています」と、膝や腰の故障で数年来お世話になっている整骨院の先生の顔を思い浮かべる。「三百名山を達成した事だし、鎌ヶ岳を欲張るのを止めてのんびり歩いて下山しよう。無理して悪化の引金を引かないようにして以降の山行に繋げ、千山踏破をも成し遂げたい」と、山上公園の広場で大休止しながら考える。
 表道は工事中で通行止になっており、『難路』と書かれている一の谷新道に対して「どんな所だろう」と幾許かの好奇心もあり、軽装の男性が下降点に入ったのを目撃して後に続く。歩き難いトラバース道を数十m行くと、急降下が始まる。膝に痛みが無いとは言え一定限度以上に曲げると筋肉が悲鳴を上げて耐えられないので、段差の大きい所はストックや立木、笹などに体重を掛けて下る年寄り歩きにならざるを得ない。
 右手で木の幹を掴んで全体重を掛けると、「ボキッ」と枯木が折れて頭から転落する。顔をガツンと岩にぶつけて強烈な痛みを感じた瞬間、頭を下にしてザックの下敷きになって停止する。身動き出来ずにもがき、ザックの腰と胸のバンドを外してやっと起き上がると、意外な事に眼鏡は無傷だ。口の周りから血が出ているのに気付き、頭がガンガンするので「これはやばい!」と思って恐る恐る触ってみると、出血も陥没も無いようで幾らか安心して腰を下ろし、気を落ち着かせる。
 先刻の男性が登り返して来て、「大きな音がしたけど、大丈夫ですか」と声を掛ける。「大丈夫みたいです」と答えながら頭側部の痛みを我慢して水筒の水で血を洗い流し、「藤原岳から縦走して、三百名山を踏破したと言うのに」と口惜しがると、「疲れているんですよ。登り返してロープウェイで下山した方が良いんじゃないですか」と勧める。
 左肩も負傷しているが、頭は打撲だけで思考は正常なようだ。「もう3mも落ちると、急な岩場をさらに5m以上墜落して酷い目に遭っただろう」と考えると、「太かったけど、枯木を掴んだのはやはり不注意だったか! 運が好かった」と素直に現況を受け入れる気になる。「まだ10時だし、ゆっくり歩いて下ろう」と下降を続ける。男性が「このルートは急だけど、40分で登山口へ下りれるので便利なんですよ」と言っていた通り、木の根や岩の多い大きな段差の急な下りが登山口直前まで続き、ゆっくり慎重に倍ほどの時間を掛けて登山口の車道へ下りる。
 車道を下って行くと直ぐに中道登山口が現れ、駐車場は登山者の車で溢れている。「負傷者を見咎めて拾ってくれる車が居ないかなあ」と半ば期待しながら歩いて行くが、結局、小1時間掛けて湯の山温泉まで歩き通すことになる。
 紅葉刈りの渋滞で路線バスは何時上がって来るか判らないと言われ、トイレで顔の血を洗い落として待ち、臨時バスに乗って3㎞程の湯の山温泉駅へ下ると、渋滞の列はさらに下の方まで伸びている。

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