| 県営くろがね小屋
2023.03.31
くろがね小屋は建て替え工事のため休業中です
夏山シーズンの終わりとともに、山には紅葉の便りが届きはじめる。なかでも東北エリアは、いち早く9月中旬から木々が色づきだすとあって、毎年心待ちにしている登山者も多い。そこで今回は、美しい錦秋を堪能できると評判の山々を選りすぐって紹介しよう。
コース設定はいずれも日帰りなので、ぜひ温泉や秋の味覚など山麓の散策も一緒にアレンジして、秋の山旅を存分に楽しんでほしい。
宮城、秋田、岩手の3つの県境に位置する栗駒山。潅木と草原のたおやかな山稜、豊かな残雪と点在する高層湿原、多くの高山植物、さらにすべての入山口にある温泉など、たくさんの山の魅力に溢れる。
春夏だけでなく山スキーも人気で通年登山が可能だが、とくに人気なのが紅葉のシーズン。山頂付近から麓にかけて9月中旬〜10月下旬まで、ドウダンツツジやウラジロヨウラクなど目の覚めるような紅葉を楽しむことができる。その様子は「神の絨毯」とも称されるほど。毎年とても混雑するので平日の登山がおすすめだ。
登山ルートは1時間ほどのものから5時間以上のものまで全10コース以上。ここでは宮城県側にあるいわかがみ平〜東栗駒分岐〜栗駒山を往復する3時間10分のルートを紹介する。なお、秋田県側の須川温泉への縦走コースも人気だが、須川コースの一部は、火山ガス濃度が高いため、2023年現在は通行止めになっている。立入禁止区間については以下から確認しよう。
高低図
二本松市、大玉村、郡山市、猪苗代町にまたがる安達太良山。古くは万葉集に詠まれ、高村光太郎の智恵子抄に描写されていることは周知だろう。
安達太良山の人気の一因といえるのが、奥岳と薬師岳を結ぶロープウェイ。歩くと約1時間半かかるところをロープウェイを使えばわずか6分の空中散歩。下りるとすぐにこれから目指す安達太良山を望む大展望が開け、美しい紅葉の絨毯に心踊る。ミズナラ、ブナ、イヤタカエデ、ナナカマドなどが色づくのは9月下旬から。見頃は10月上旬〜中旬だ。
ここで紹介するコースは、登山口のある奥岳が起終点で、所要時間は3時間35分。まずはロープウェイで薬師山頂へ行き、仙女平分岐を経て、標高1699mの安達太良山山頂へ。そこからは牛ノ背〜峰ノ辻を過ぎると、くろがね小屋に到着する。くろがね小屋は温泉に入れる山小屋として人気だが、現在は改装中。
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青森市の南西、十和田湖の北に位置する八甲田山。最高峰の大岳でも標高は1585mとこじんまりとしているが、湿原や花畑、紅葉、雪渓と変化に富んだ魅力で人気の山だ。さらにこの人気に拍車をかけているのが、山麓に名湯と名高い酸ヶ湯温泉があること。そしてロープウェーが開通していることもあげられる。
紅葉は針葉樹林にダケカンバ、カエデが彩りを添えるコントラストが絶妙で、まさに錦絵の美しさ。秋色に染まる上毛無岱と下毛無岱の湿原の様、湿原から大岳を仰ぎ見る山肌の紅葉は、秋の八甲田を代表する景観だ。
八甲田山のもっとも手軽なコース、八甲田ロープウェーを使って酸ヶ湯温泉に下山する5時間20分のルートを紹介する。まずはロープウェーで田茂萢岳山頂に進み、赤倉岳〜大岳へ。さらに上毛無岱〜下毛無岱を経て、酸ヶ湯温泉に下山する。酸ヶ湯温泉では日帰り温泉も楽しめる。
紅葉は山頂付近は9月下旬から色づき始め、10月上旬から下旬に見頃を迎える。
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山形と秋田の県境に位置する成層火山の鳥海山は、標高2236mと東北を代表する高山だ。日本海から山頂までわずが15㎞の独立峰で、その秀麗な山容から出羽富士や秋田富士とも呼ばれている。かつては山岳信仰の山だったが、現在はスキー登山でも人気が高く、両県から数多くの登山道が整備されている。
コース内の紅葉の見どころは、祓川ヒュッテの先に広がる竜ヶ原湿原エリア。9月のリンドウの群落の後、10月上旬には一面の草紅葉に覆われる。
ここで紹介するコースは、鳥海山の東側から入る代表的なルート。秡川の矢島口から入り、七ツ釜避難小屋〜9合目の氷ノ薬師〜外輪山の七高山へ到着、下山は来た道を戻る。コースタイムは5時間45分だ。
紅葉はもちろんだが、山頂の火口にできた新山や取り巻く外輪山の断崖、さらに新山の向こうに広がる日本海、東北地方の山々など、変化に富んだ景観も魅力的だ。
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山形のほぼ中央に位置し、羽黒町、立川町、西川町にまたがる月山。山頂にある月山神社には農業の神「月読命」が祀られ、山岳信仰の山としても知られる。また、松尾芭蕉が登り詠んだ句碑も建てられている。
山頂は標高1984mと2000m近いが目立った頂きはなく、高山植物が咲き、神泉池がある広大な高原が広がる。春にはスキー場がオープンし、夏までスキーのメッカになる。
紅葉のピークは9月中旬から下旬にかけて。山頂周辺やリフト上駅周辺は9月末〜10月上旬が見頃になる。豪雪が育んだ月山ならではのナナカマドやミネカエデ、草紅葉などの多彩な紅葉は見事。
おすすめのコースは、標高約1160mの姥沢から入山するルートで、姥ヶ岳〜金姥〜牛首、そして月山山頂に到着する。帰りは下山は仏生池小屋方面に進み、8合目に下りる。姥沢からはリフトが通っているので下駅から上駅まで利用するのもおすすめだ。
このコース以外にも、リフト上駅~姥ヶ岳~月山の往復、月山八合目~弥陀ヶ原~月山の往復も人気がある。
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猪苗代町、磐梯町、北塩原町にまたがる福島のシンボル、磐梯山。標高1816mのコニーデ式火山で、1888年の大噴火で桧原湖や五色沼など大小300もの湖沼群が出現したという歴史をもつ。
会津富士という異名の通り美しい円錐形が特徴で、とくに猪苗代湖を前景にした磐梯山、五色沼と桧原湖を前景にした裏からの磐梯山はもっともピラミダルに見えると評判。紅葉の名所でもあることから、湖畔には毎年多くの人が訪れ、色づく磐梯山を望む様子が伺える。登っても見上げても紅葉が楽しめるという訳だ。
磐梯山のルートは全部で6本あるが、ここで紹介するのは最短で登れるピストンコース。スタートとゴールは磐梯ゴールドラインの最高地点、八方台で、登山タイムは3時間45分。学校登山でも人気のコースでもある。
紅葉のスタートは例年10月上旬で、そこから一気に見頃を迎え、10月下旬まで楽しめる。見頃の期間が短いので混雑は必至。平日の山行や早めの出発を心がけたい。
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