梅雨の晴れ間には平標山に――。夏山シーズンの前、最初に高山植物が見られる貴重な山

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上信越国境にある平標山は、梅雨の最中にたくさんの高山植物に出会える山として知られている。梅雨の最中の今が、まさにその時。ハクサンイチゲ、ミヤマキンバイ、ハクサンコザクラなど、色とりどりの花が迎えてくれる。

梅雨の最中に平標山に登った。ハクサンイチゲなどの高山植物のお花畑が、日本でも最初の時期に見られる貴重な山だ。

高山植物を見るために毎年山に登っているが、夏山シーズンの前に登るのは、関東近辺で最初に高山植物が見られる平標山や谷川岳などの上信越国境の山がねらい目だ。

日帰りや1泊2日で行くこともできるのも魅力のひとつ。平標山で6月の上旬に花開くハクサンイチゲの白色とミヤマキンバイの黄色、ハクサンコザクラのピンク色の三色がそろったお花畑は、日本アルプスほどの規模ではないものの、よくまとまった高山植物のお花畑になる。

写真左/オオイワカガミは葉縁の鋸歯(ギザギザ)が多い
写真右/ショウジョウバカマ


途中にもオオイワカガミやズダヤクシュ、コシジオウレンなどの小さな花が目を楽しませてくれる。平標山の家からちょっと足を伸ばせばシラネアオイやタムシバ、ナエバキスミレなど日本海側だけにしか生えない植物も見ることができた。

写真左/シラネアオイはそろそろおしまい
写真右/ハクサンイチゲは咲きたてが一番美しい


平標山は日帰り周遊登山で登られることが多く、松手山を経由し山頂を経て平元新道を下る(またはこの反対)のがよくあるパターンだ。今回は天気が悪いこともあり、平標山の家に宿泊し、平元新道を往復した。

よい香りのするタムシバの花


ハクサンイチゲのお花畑があるのは、平標山と仙ノ倉山の鞍部近くと、松手山と山頂までの間。往復コースだと松手山の花畑に行くことができないが、今回は天候が悪いので仕方がない。そのぶん仙ノ倉との鞍部でのんびりすることにした。

写真左/ズダヤクシュの花
写真右/ズダヤクシュの若い果実


この選択が大正解だった。平標山の家で時間があったので、山小屋近くで花探索をする時間があり、多くの花が見られた。また台風が発生していたこともあって非常に風が強かったが、平標山の家の付近は風の影響が少なかった。

雨風で傷めつけられたハクサンイチゲのお花畑


さすがに平標山の山頂から仙ノ倉山までの稜線は風が強く、花の写真を撮っている場合ではなかったが、ゆっくりお花畑に滞在する時間があった。そして体力的時間的に余裕があった。

快適な山小屋、平標山の家

 

小さな山小屋である平標山の家の宿泊は快適だ。まず定員が少なめに設定されていて、のんびり静かに過ごせるのがいい。今回、山小屋の夕食のメインは山菜のてんぷらだった。ちょうど山菜の時期でもあり、コシアブラ、ネマガリダケ、ヨモギ、ヨブスマソウ、ウド、ヤマブドウなどの山菜がてんこ盛り。

平標山の家では山菜の天ぷら盛り合わせを堪能できる


平標山の家の定員は少ないので、てんぷらは揚げたて。山小屋でこんなに山菜の香りが強く残る天ぷらが食べられるとは・・・。それにお米、みそ、漬物、日本の基本の食事がみなおいしかった。山小屋の山口さんのおしゃべりも楽しい。

写真左/ランプの灯は静かでよい雰囲気だ
写真右/小屋番の山口さんが食料をボッカ


高山植物を楽しむために平標山に登るならば、時間的・体力的に楽で、山の自然を堪能できる平標山の家に宿泊しての登山を、強くおすすめする。

プロフィール

髙橋 修

自然・植物写真家。子どものころに『アーサーランサム全集(ツバメ号とアマゾン号など)』(岩波書店)を読んで自然観察に興味を持つ。中学入学のお祝いにニコンの双眼鏡を買ってもらい、野鳥観察にのめりこむ。大学卒業後は山岳専門旅行会社、海専門旅行会社を経て、フリーカメラマンとして活動。山岳写真から、植物写真に目覚め、植物写真家の木原浩氏に師事。植物だけでなく、世界史・文化・お土産・おいしいものまで幅広い知識を持つ。

⇒髙橋修さんのブログ『サラノキの森』

髙橋 修の「山に生きる花・植物たち」

山には美しい花が咲き、珍しい植物がたくさん生息しています。植物写真家の髙橋修さんが、気になった山の植物たちを、楽しいエピソードと共に紹介していきます。

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