安全登山に欠かせない「現在地確認」、思い込み・勘違いに注意!

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山岳遭難事故の原因の中でも、最も多いと言われているのが「道迷い遭難」。無意識にルートを外れ、気がついたら自分の現在地が確認できなくなった。そうなる原因と、ならないために必要なことを考察してみよう。

 

夏山のシーズン真只中ですが、皆さん夏山楽しんでいますか? すでに登った人は今年は例年と違い、残雪が多いと感じたと思います。稜線直下の登山道脇のお花畑は、チングルマをはじめとする多くの高山植物が登山者の目を楽しませてくれますが、今年は雪が多く残り、登山道も雪に隠れている箇所が多く見られます。

いつもの夏山では、(地図を見なくても?)登山道を忠実に歩けば目的の山に辿り着けますが、今年は登山道のところどころに残雪があり、登山道が分かりにくい箇所もあるかもしれません。

遭難の原因の一つに道迷いがあります。「道に迷う」とは、自分の現在地が確認できなくなり、次に進む方向が分からなくなってしまう状況をいいます。たとえ地図やコンパスを持っていて視界が良くても、ルートを外れてしまうと自分の行きたい方向を見失ってしまうことがあります。

道迷いの原因の多くは勘違いや思い込みです。交差している道を直角と思い込んでしまったり、歩いた距離を多めに感じてしまったり、ガスったりして視界が悪い場合の距離はなお多めに感じたりします。思い込みは、似たような景色を強引に自分に都合よく納得させてしまいますので注意が必要です。

 

広い視野で周囲を見わたし、「自分のいるはずの場所」を地図の上で探そう

迷わないための一番良い方法は、こまめに現在地を確認しておくこと。これから進むべき方向はもちろん、今までいくつ沢を通過したかとか、遠くの山や対岸の形と地形との照合というように、目の前の道や踏み跡だけでなく、広い視野で周囲を見わたすことが大切です。

そして地図には、現在地確認のためには二万五千分の一地形図を使うことをお勧めします。それによって地図と現在の地形、距離感のイメージが合いやすくなります。山のガイドブックや広域地図の地図は、概念を掴むために利用する、といった地図の使い分けも重要です。

もし「迷ったな」と思ったら、落ち着いて周りの地形の特徴を確認し、今自分が思っている地点とは別の場所にいることも想定し、地図と地形をよく合わせて「自分のいるはずの場所」を地図の上で探す作業をします。

分からなければ無理に前進するのではなく、確実に分かる場所まで必ず引き返しましょう。道迷いを防ぐためには、行動中に目印となる物をよく確認したり、時には立ち止まって周囲を確認したりすることも大切です。

ただ人の後ろをついて行くだけではなく、常に現在地を自分で確認しながら行けば山全体を把握でき、楽しく充実感のある山が楽しめます。

 

プロフィール

長野県山岳総合センター

長野県大町市にある長野県立の施設。「安全で楽しい登山」の普及啓発を主目的に、「安全登山講座」と動植物・地形地質をはじめ山の自然を総合的に学べる「野外活動講座」を、年間約60講習開催。講習参加者のうち、長野県外の方が約6割を占める。

⇒長野県山岳総合センター
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