尾瀬から日光澤温泉を巡る、夏の終わりの静かな山旅:関東地方境-山-群馬県境
大清水 一ノ瀬 三平峠 尾瀬沼山荘 長蔵小屋 沼尻 尾瀬沼一周 ヤナギランの丘 大江湿原 小淵沢田代 赤安山 黒岩山 鬼怒沼山 鬼怒沼巡視小屋 鬼怒沼 日光澤温泉 オロオソロシの滝展望台 ヒナタオソロシノ滝展望台 物見山( 関東)
パーティ: 1人 (山車(dashi) さん )
大清水 一ノ瀬 三平峠 尾瀬沼山荘 長蔵小屋 沼尻 尾瀬沼一周 ヤナギランの丘 大江湿原 小淵沢田代 赤安山 黒岩山 鬼怒沼山 鬼怒沼巡視小屋 鬼怒沼 日光澤温泉 オロオソロシの滝展望台 ヒナタオソロシノ滝展望台 物見山( 関東)
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初日:曇り 2・3日目:曇り時々晴れ
マイカー
その他:
●往復:大清水まで車
大清水-尾瀬沼一周-黒岩山-鬼怒沼-日光澤温泉-大清水:関東地方境-山-群馬県境 2006年8月18日(金)~20日(日)
● 全歩行距離: 44.8km 累積標高差:±2,829m
● 県境(小淵沢田代-黒岩山)歩行距離: 6.6km 累積標高差:+564m -242m
①8/18(金) 歩行距離: 14.1km 累積標高差:+736m,-261m
大清水(12:38)・・・(13:25)一ノ瀬(13:32)・・・(14:20)三平峠(14:35)・・・(15:08)長蔵小屋(16:08)・・・(16:18)長英新道JC・・・(16:43)沼尻・・・(17:05)皿伏山JC・・・(17:30)長蔵小屋
②8/19(土) 歩行距離: 19.8km 累積標高差:+1,158m,-1,429m
長蔵小屋(5:15)・・・(5:22)ヤナギランの丘(5:30)・・・(5:38)沼山峠JC・・・(6:13)小淵沢田代・・・(6:34)大清水JC・・・(7:06)袴腰山JC・・・(7:42)コル(以下C)1878・・・(7:47)赤安清水・・・(8:21)赤安山JC・・・(8:25)赤安山(8:30)・・・(8:34)登山道・・・(9:29)P2019と黒岩山間コル2001(9:42)・・・(9:46)黒岩巻道直角南下地点2015・・・(10:16)黒岩山県境北ピーク・・・(10:29)黒岩山(11:00)・・・(11:20)登山道・・・(11:34)P2021・・・(11:38)黒岩清水・・・(12:00)P2049の次のコル1997・・・(12:06)小松湿原JC (12:18)・・・(12:35)P2069・・・(13:42)鬼怒沼山JC・・・(13:54)鬼怒沼山・・・(14:01)巻道合流・・・(14:34)鬼怒沼巡視小屋・・・(14:49)鬼怒沼南端・・・(15:56)オロオソロシの滝展望台・・・(16:20)丸沼JC・・・(16:36)日光澤温泉
③8/20(日) 歩行距離: 10.9km 累積標高差:+935m,-1,139m
日光澤温泉(6:12)・・・(6:29)丸沼JC・・・(6:42)ヒナタオソロシノ滝展望台・・・(6:52)丸沼JC・・・(7:20)オロオソロシの滝展望台・・・(8:45)南端(9:10)・・・(9:20)北端・・・(9:40)物見山(10:00)・・・(11:40)湯沢渡渉(12:25)・・・(13:05)大清水
夏と秋の狭間故か、それとも尾瀬から鬼怒沼のロングルート故か、誰にも会わない、静かな山旅を味わえた。ただ、初めて見る熊さんに心騒がせたことを除いてではあるが・・・。この旅には二つの目的がある。一つは関東地方境の尾瀬から黒岩山までの群馬県境をトレースすること。二つは秘湯といわれる日光澤温泉を訪れることである。幸いなことに、このコースは大清水を起点に一回りする形となり、来た道を引き返すことなく、車を便利に使うことが可能である。
尾瀬は何度来ても良い所である。今回は季節の狭間で、全てゆったりしている。グラス片手に、山小屋の人と星を見上げながら、話をしたり、個室でくつろぐことができた。初日は少し時間があったので、尾瀬沼を一周してみた。沼尻には立派な小屋があり、昔は船で、沼を渡ってくることもできたらしい。尾瀬沼の一番のビューポイントは逆さ燧である。風が吹くとさざ波が立ち、綺麗に映らない。大気の安定している日の出前が狙い目で、虚実の境目を朝霧が蔽い、空の世界へと誘う。翌朝、早起きして、このシーンに出会うことができた。
さあ、今日は20kmのロングランで日光澤温泉を目指す。そして、この旅の第一の目的である群馬県境をトレースする。ところが、長蔵小屋から、小淵沢田代の間が通行止めで、大江湿原に迂回するルートを採ることにした。このルートはまず、沼山峠を目指し、大江湿原の途中から南東に分岐する。分岐する手前には、長蔵小屋の代々が眠るヤナギランの丘がある。3代とも、自然保護活動、尾瀬の環境保全に尽力された。前述の尾瀬沼の観光船廃止もその一つと聞く。小淵沢田代は尾瀬沼より標高が高いせいか、ほんのり草紅葉が始まっている。大きな池塘があり、鏡のように波静かで、オオシラビソ(大白檜曽)の森と、白雲の浮かぶ青空を映し込んでいる。静寂の世界から目を上げると、ひしめき合っている日光白根山や足尾の山々がくっきり見える。
群馬と福島の県境は20km余りの短いお隣さんである。長野-富山県境のトロリーバスを除くと、車で越えられない唯一の県境と聞く。歩道では会津から沼田に抜ける沼田街道が沼山峠、三平峠を通っている。自動車道の建設も着工されたが、長蔵小屋の3代目、平野長靖氏の活動もあって建設が中止されたそうである。小淵沢田代から黒岩山までの県境は完全に稜線をトレースしていて、中央分水嶺でもある。福島側は只見川、阿賀野川に合流し日本海に、群馬側は片品川の源流で、利根川に合流し、太平洋に注ぐ。道はほぼ稜線、即ち県境上を通っているが、県境が通るピークはほとんど巻いている。小淵沢田代を抜け、最初の三角点のあるピ-クが赤安山である。道は北側を巻いているが、県境をトレースし、頂上付近を藪漕ぎして、笹薮の中に三角点を見出した。ネットの山行記録で「群馬大WVのプレートがある」との記述があったので捜すと、近くの大白檜曽の木の根元に落ちていた。1977年の夏合宿と書かれているので、29年前のものになるが、固定用の針金が朽ち果てた以外は、綺麗なもので、そんなに前のものとは思えない。きっと、冬は雪に埋もれ、夏は藪の中で紫外線が当たりにくかったからであろう。黒岩山は西から見ると、水平な台形状をしていて標高は2,140m、幅500m位。その南端の突起が2,163.1mのピークである。道は標高2,015m辺りから直角に曲がり、南下を始めるが、直進し、そのまま突き上げると、台形の上辺の中央辺りに出る。ここが群馬、栃木、福島、三県の県境である。台形の北端まで行き、栃木-福島県境を偵察した。足元は急傾斜で大きな岩と灌木があり、登りには使いたくないと感じた。台倉高山までの稜線はやや不明瞭で、明確なピークもなく、くねくね曲がっているので、ルートファインディング(以下RF)が難しそうである。残雪期にするか、藪漕ぎにするか、決心しなければならない。黒岩山の下りは県境より東側に下る明瞭な踏み跡がある。尾根を巻くようにして、尾根よりやや西寄りの登山道に出る。
ここからはオンロード。鬼怒沼まで、標高2,000mから2,100m位の間で、小さなアップダウンを繰り返す。鬼怒沼湿原は鬼怒沼火山の溶岩流や火砕流によって形成された溶岩台地らしい。地形図を見るとよく判る。南南東方向に舌の様に張り出している。標高が2,020mと高く、年平均気温が2.2℃と低いため、泥炭層がなんと2m以上になっているとは驚きである。溶岩台地の縁(へり)を400m急降下すると、日光澤温泉に到着。にごり湯の露天風呂、硫黄泉の湯に浸かる。藪漕ぎし、20km歩き、温泉に入る。なんとも贅沢な一日であった。
3日目、今日は下山しなければならない。600m登り返して鬼怒沼に戻る途中、ル-トを外して丸沼方面に分岐し、対岸のヒナタオソロシ(日向恐)ノ滝を観瀑した。ル-トに戻る途中、沢の対岸のガレ場を四つん這いになって登る熊を発見。最初は距離もあり、大したこととは思わなかったが、熊の行く方向が、鬼怒沼に戻るルートに向かっていることに気付き、ルートから遠ざかるよう、大声を出した。熊はガレ場を登りきると、藪の中に消えていったが、ルートから遠ざかった保証はなく、大声で歌を歌いながら、熊の横切った辺りを、恐る恐る通り越した。巷では熊の出没が話題になっていたが、今まで一度も会ったことがなく、熊対策は何もしていなかった。静かな山旅を、最後に熊に破られたと思うのは間違いで、大声を張り上げて、静寂を破ったのはお前ではないかと呟く、熊の方が正しいのかもしれない。
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