行程・コース
天候
晴れのち雨
登山口へのアクセス
マイカー
その他:
女夫渕駐車場を利用。ナビには「女夫淵温泉」を目印に。林道の突き当りにある。バス停の手前にある大きな駐車場。無料。ただし、温泉宿に停まる観光客等が利用していると思われ夜間でも結構車が停まっている。綺麗なトイレあり。
この登山記録の行程
女夫渕駐車場(04:00)・・・八丁の湯(04:56)・・・加仁の湯(05:03)・・・日光澤温泉(05:15)・・・丸沼分岐(05:30)・・・オロオソロシの滝展望台(05:50)・・・鬼怒沼湿原(06:53)・・・鬼怒沼山(07:59)・・・黒岩山分岐(10:10)・・・黒岩山(10:35)(昼食~10:57)・・・黒岩山分岐・・・鬼怒沼巡視小屋(13:40)・・・鬼怒沼湿原・・・オロオソロシの滝展望台・・・丸沼分岐・・・日光澤温泉(15:19)・・・加仁の湯・・・八丁の湯(15:38)・・・女夫渕駐車場(16:42)
高低図
登山記録
行動記録・感想・メモ
本当は別な山を計画していたが、今年最初の台風が関東周辺に大量の雨をもたらしたので、別な機会に見直して急きょ目的地を変更することにした。
金曜日の夜に車を走らせ、栃木県の最深部「鬼怒沼山」を目指す。
久しぶりにやって来た「夫婦淵」。何度来ても遠い。感覚的に尾瀬よりも遠く感じるのは自分だけだろうか。
時間は23時。明日に備えて1時間でも多く眠っておこうと、到着するなり横になった。
明け方の3時に起床。先週ほどではなかったが寒さで何度も目が覚めた。
朝食をとって4時に出発した。
山深いため、まだ周囲は薄暗く足元が危険だったので、ヘッドライトを点けて歩き出す。
前回も暗いうちから歩き出して、出発早々に道を間違えてしまった記憶があるが、今回は同じ過ちを犯さないよう橋を渡ってすぐの斜面に設置されている階段を使い山へ入っていく。金属製の立派な階段で、どうして前回はこれが目に入らなかったのだろうと我ながら不思議に思った。
何度か橋を渡りながら川沿いに歩いていく。前日に降った大雨の影響で、濁流が岩を飲み込むようにものすごい勢いで流れていたが、普段はとても透き通った清流でとても自然豊かな場所。川に沿って渓谷を歩いていると、秘境として名高い「大杉峡谷」を思い出す。
4kmほど歩くと、突然、林の中に素敵な装いの温泉宿が現れる。まさに隠れ宿。一度は泊まってみたい「八丁の湯」だ。
さらに、「加仁の湯」、「日光澤温泉」と歴史ある温泉宿を抜けていよいよ登山道へと入っていく。
丸沼分岐を越えると、天空の楽園へ向けて一気に高度を上げていく。今日の累計標高差は約2,000mあるが、そのほとんどはここで稼ぐことになる。緩やかな川沿い歩きからの急登。この緩急がたまらない。
そして登りきったところに広がる天空の楽園はまさに別世界だ。ひたすら樹林帯を進み、登り切った瞬間に一変する世界に感嘆しない人はいないだろう。
日本で一番標高が高いところにある池塘の世界。空に交わるように広がる湿地帯の中に、空よりも深き青さを持った大きな池塘「鬼怒沼」が正面に見えた。
やっぱり何度来てもここは良い。
登山距離の長さや立地の関係から敬遠されがちな鬼怒沼山だが、尾瀬や田代沼山にも負けない景色があり、なにより栃木県側には日光白根山、福島県側には燧ケ岳とそれぞれシンボルのように聳えている。確かに20kmを越える工程になるが、どんなに苦労してもこの贅沢な風景は必見の価値があると思う。
そして、ここに来るのであれば人がいない早朝に限る。
今日も木道に寝そべり、池塘に映り込んだ雲の流れを楽しみながら暫し、ぼーっと至福の時を過ごした。まだ花の種類は少なかったが、それでも確実に夏の準備が整いつつある。あと少しすれば、ここ一面、色とりどりの花と風に揺れる白い綿毛に覆われることだろう。
2時間でも3時間でもずーっと景色を眺めていたかったが、実は今日の目的はここ鬼怒沼山ではなく、さらに奥にある「黒岩山」が本命。
先週、栃木四天王の三座目「錫ヶ岳:を攻略したので、勢いをつけて一気にラスボス「黒岩山」を目指す。しかし、全工程で30kmを超す長丁場となるので体力配分が重要。まず、手始めに鬼怒沼山へ足を延ばす。天空の池塘を見て満足してしまう人も多いが、鬼怒沼山の頂は大湿地のさらに先にある。しかも、地味に遠いし地味に笹薮に囲まれていて、さらに地味に眺望がないと地味が3つもあって。超絶人気がない。笑
余りにも酷い物言いだが、きっと訪れた人はみんな同じ意見になると思う。
頂についてそのまま折り返そうとしたところ、樹々の間から僅かに日光白根山が見えた。よく見るとその横に先ほどの湿原からは見えなかった連なる山の一角が見えた。先週歩いた錫ヶ岳に違いない。これから黒岩山に向かうにあたり、「無事に行って来いよ!」と元気を貰った気がした。
鬼怒沼山を降って、いよいよ未到の黒岩山へ向かう。これから歩く稜線がチラっと見えたが、その稜線の1番奥に見えた山がおそらく黒岩山に違いない。目測で2〜3時間と言ったところだろうか。ピストンなので行ったら、戻ってこないといけない。あたり前のことだが、エスケープできない体力勝負の大変な山行。そこで秘技「今から登山を始めるよ!」スイッチをONにする。ここまで登って来た記憶をひとまずリセットして、気持ち新たに登山を開始する技。バカげた技だが、意外に体力も復活したような気になるので、人間の思い込みは凄い。
おふざけはコクの来にして、真面目に進んでいく。
登山道はピークを踏まず山を横切るように延びていたので、意外にアップダウンが少なくて楽ちんだった。荒れた道が多いのかと心配もしていたが、想像していたより綺麗で歩きやすかった。こんな山奥でも整備してくれている方々がいるということに頭が下がった。
途中、足元に小さな可憐な花を見つけた。
ほんのりと周囲を照らすほどに白いその花は間違いなくオサバソウ。ここからさほど遠くない所に帝釈山と言う山があり、そこには山のあちこちでオサバソウが咲き誇っている。そう言う意味では同じ植生のこの山域でも咲いていることは何らおかしくはないのだが、結局、オサバソウを見つけたのはこれを含めて二輪だけだった。群生するところとそうでないところに気が付かない何か大きな違いがあるのだろうか。
後半戦になってくるとだだっ広い稜線を沿うように歩いていく景色が増えてきた。まるで林の中を歩いているようで、自由に歩ける気楽さがある分、気を抜くとすぐにミスルートをしてしまうので、ところどころで立ち止まり方向を確認しながら進んだ。
何度か偽ピークに騙されながら、そろそろ体感的にも目的地付近だろうと思った時、足元に設置されていた分岐点の看板が見えた。
まっすぐ尾瀬方面へは5時間。やって来た鬼怒沼方面へは3時間とある。
そして肝心の黒岩山へは右に折れると矢印が描かれているだけで時間の標記は無かった。
「ここまでくればゴールも近いか?!」と安心したのが大間違いだった。正直、分岐点から頂までが、今回のルートで1番難儀したポイントとなった。先週の錫ヶ岳も薮山として紹介されていたが、正直、あの程度は薮山とは呼ばない。本当の藪漕ぎはまさにこう言うところを指す。視界が効かず、しゃがみながら踏み跡を確認して進まないとあっという間に道を見失ってしまう。頂をまわり込むようにルートが延びていたので、強引に直登しない方が良いと判断して慎重に踏み跡とピンクテープを手掛かりに進んだ。
頂に近づくにつれ藪はますます濃くなっていった。
枝を避けないと前に進むことが出来ず1m進むのに想定以上の時間がかかる。イバラが混じっていないだけましかと自分を励ましながら進むが、尖った枝で服もタイツももはや修復不能なくらい穴だらけになってしまった。ここまでくればやけくそだ。
突然、空間がひらけて真っ青な空が見えた。
あまりの嬉しさに「よっしゃー!」と思わず叫んでしまった。
藪の中に浮かぶように大きな岩が突出していて、それがそのまま頂になっている。きっとこの岩を見て「黒岩山」と名前がついたのだろうと想像する。
頂は二畳分程しかなかったが、360度ぐるりと見渡せる眺望が素晴らしかった。ここまで登ってきた苦労を労ってくれた。
岩の上に立つと、尾瀬の至仏山と燧ケ岳に加えて平ヶ岳や会津駒ヶ岳がくっきりと、もう手が届くほどの距離に聳えている。足元に見える稜線を目で辿っていくと、燧ケ岳まで延びているのが見えた。「なるほど!先ほどの分岐点を真っすぐ進むと、こういう感じで尾瀬沼方面へと繋がっていくんだな!」と思った。頭の中で地図がまた一つ繋がる。
反対側を振り返り、歩いてきた稜線を確認する。長い挑戦がズーっと延びていた。稜線歩きの醍醐味。苦労すればするほど達成感が湧き上がってくる。
栃木側には鬼怒沼山から見えていた日光白根山の他に、男体山を始めとした日光ファミリーも一望できた。
なんて贅沢な風景なのだろうか。
その贅沢な風景を見ながら持って来たお昼ご飯をいただく。
今日のチョイスは「冷やし中華」。
暑い陽射しの中、中華のダシが麺に絡んで喉ごしよく絶妙に美味しかった。こんな場所で冷やし中華を食べたのは、間違いなく自分だけだろう。笑
名残惜しかったが、早く戻らないと夕方になってしまうので、下山することにした。
しかし、これがまた一苦労。そもそも「どこから登って来たんだ?」と言うほど藪が密集していて道が分からない。登り以上に慎重に降ったが、藪に慣れていない人にはちょっと危ない山だと思った。
分岐点に戻り、来た道を折り返していく。コースはもう頭に入っているので、体力を温存する必要はない。歩く速度を上げて急いで戻った。
鬼怒沼山に戻る手前で、灰色の雲がせり出してきた。時々、風が雨を運んできてヒンヤリした。夜になると雨が降る可能性があると天気予報にあったが、どうもゆっくりはしていられないようだった。
途中、八丁の湯でついに雨に降られたが、なんとか土砂降りになる前にはたどり着くことが出来た。想定していたよりも時間をかけてしまったが、最高の景色と共に、最後の栃木四天王を無事攻略できて大満足だった。















































